Webガイドラインって何のためにあるの? ルールを守ってもらうための3つの理由
「ガイドライン」とは規範となるルールやマナーを示したもの。
……ん~、重要そうなことはわかるけど、そもそもガイドラインってなんのためにあるんだろう? 私が上司やメンターに教わって、腑に落ちたガイドラインを守るべき3つの理由とガイドラインを守ってもらうコツを紹介します!
ガイドラインチェックの仕事って何をするの?
私がちょうど入社した年に、コニカミノルタの全世界のウェブサイトを一斉にリニューアルしました。当時、私の指導役のメンターが担当していた、ウェブサイトの“ガイドラインチェック”という仕事をサポートしたのがきっかけで、ガイドラインに触れることになりました。
では、ガイドラインチェックのお仕事って何をするの? ということですが、私の部門では、ウェブサイトリニューアルに伴って、次の2つの基準をもとに、チェック表を作って全世界44カ国、76サイトの「ガイドラインを守っているか否か」のチェックをしました。
- デザインの統一感
- WCAGの適合度合い※
※WCAGとはウェブコンテンツ・アクセシビリティ・ガイドラインのこと
http://www.jsa.or.jp/stdz/instac/commitee-acc/W3C-WCAG/WCAG20/
たとえば、次のようなことを各国のサイトオーナーに指摘をするんです。
キービジュアルに使う画像が違います。コーポレートが指定しているものにしてください。
テキストカラーが指定のものと違います。指定の色に変えてください。
altテキストが画像に入っていません。適切なテキストを入れてください。
この仕事を始めてまず感じたことは、……小姑みたいだなと(笑)。とにかくサイトオーナーに対して、重箱の隅をつつくような指摘をしていると思っていました。大雑把な性格の私は、正直、「自分の性に合わない仕事だな」って感じていました(今だからいえる笑)。
理由①
ブランドアイデンティティ、統一感のため
そこで思ったことは、「なんのためにガイドラインチェックなんてするんだろう? ガイドラインを守ることがどのくらい大事なの?」ってことです。そんな疑問に対して、懇々とガイドラインとは何かを説いてくれたのが当時のメンターです。
私:サイトオーナーから、「テキストカラーは、自分たち独自のものがいい」と言われました。ガイドラインに違反していますが、テキストカラー位なら目つぶってもいいですか?
メンター:1つの会社が、見た目が全然違うウェブサイトをいくつも作っていたら、そこのブランドアイデンティティ(Brand Identity)※は一体どうなると思う? 全然見た目が違うAとBのコンテンツを、お客様が同じ会社のウェブサイトだと思うかな?
※ブランドアイデンティティとは、ブランドの特徴や個性をはっきり提示し、共通したイメージで顧客が認識できるように働きかけること。
私:うーん確かに、テイストが全く違うと、同一の会社かどうかわからないと思います。でも、全く同じに見せる必要がありますか? だって、ブラジルのページを閲覧している人が、ベトナムのページを閲覧すると思いますか? ロゴさえ守っていれば、ブランドアイデンティティは守られると思います。
メンター:そうね、確かにウェブコンテンツだけであれば、そういう考え方もできるかもしれない。でも全世界に共通する“うちの会社はこういう会社なんだ”っていう会社の色や文化は、どうやって表現できると思う?
私:う~ん……。
メンター:じゃあ、たとえば、「ルールなんて関係なく、自由にやっていいよ」とした場合、どこまでならば、私たちの部署(ブランドマネジメントグループ)として許容できる?
私:(´・_・`)……なんかガイドラインがあったほうがよさそうですね。
メンター:そう、ガイドラインには、「やってはいけないこと」が書かれているだけでなく、「ここまでならやってもOK」という基準が書かれているの。
つまり、ガイドラインを守るべき理由としては、
- ガイドラインを守るべき理由その①
- ウェブサイトガイドラインを整備して、サイトに統一感を持たせ、企業としてのブランドアイデンティティを守るため
理由②
ガイドラインはガバナンスをする上で重要
これは表向きの理由にならないけれど、実際に起こった話で、ブラウザのアップデート(Internet ExplorerやFirefoxのバージョンアップ)があったとき、今までのガイドラインのままだと、表示崩れが起こってしまったんです。
すぐに原因究明をして、CSSとガイドラインの改定をして、サイトオーナーに「表示崩れでブランド毀損にならないように、きちんと修正を行ってください」と連絡をしました。
ところがガイドラインを無視して勝手に作られていたコンテンツの表示崩れが直らない! ということが起こったんです。
ガイドラインを守っていることを前提に、原因究明・改定を行って、修正指示を出しているので、そのガイドラインを守っていないことが想定外のことで、起こるべくして起こってしまったことなんですが。こういったことを、なくすためにもガイドラインが大事なんです。サイトオーナーには、「ガイドラインを守っておいてもらえれば、何かあったときに私たちが調べて対応しますよ!」と伝えるとガイドラインを守ってもらいやすくなるかもしれません。
- ガイドラインを守るべき理由その②
- ガイドラインでルールを作っておいたほうが、後々、外的要因で不具合が起きたとしても、対応が早くできる可能性が上がるし、コーポレートガバナンス(企業統治)も効かせやすくなるため
後日談だけど、実はそのコンテンツ、なんと、リンクがクリックできない状態でしばらく放置されていたらしいの。気付いたから良かったものの、これがもし「お客様がお問い合わせできない」なんて不具合だったとすれば、2chで晒しものにされかねないわ(`д´;)。
理由③
お客様へのお・も・て・な・し
上記で書いた2つの理由は、「企業側目線でガイドラインを守る理由」だったけれど、「お客様へのおもてなし」をするためにもガイドラインは重要なのだと上司に教えてもらいました。
ウェブサイトに訪問してくれたお客様に、整った体裁の提供や、使い勝手を担保することによって、気持ちよく使っていただく――これがガイドラインを使ってコーポレートガバナンスをする究極の目的なんです。
たとえば、次のようなサイトを想像してみてください。
コンテンツごとにロゴの位置が変わっているサイト
フォントの種類やサイズにバラつきがあるサイト
ページごとにお問い合わせボタンがあったりなかったり、上にあったり下にあったりするサイト
これらのサイトを使うお客様にとっては、コンテンツのロゴの位置が変わると違和感を覚えるだろうし、テキストの文字がさまざまだったら読みにくいだろうし、お問い合わせのボタンがページよって場所が違ったら迷ってしまうだろうと思います。つまり、「使いにくくて、なんだかよくわからないサイト」と思われてしまう可能性があります。
だからといって、CSSでガチガチにして金太郎飴みたいなページ作りをしてほしい、とまではいわないけれど、「お客様にとってストレスなく、スムーズに使ってもらえるサイト」であったほうが良いに決まっています。この条件を満たすためにガイドラインが存在しているんです。ですから、サイトオーナーには、「ガイドラインは、“使いやすいサイトの基準”が書かれているものですよ」と伝えるとガイドラインが身近なものに感じてもらえるかもしれません。
- ガイドラインを守るべき理由その③
- お客様にスムーズに使っていただける体裁を整えておくため
ガイドラインを守ってもらう目的ってなに?
ここまで、ガイドラインを守るべき理由を3つ紹介してきました。ガイドラインの重要性は理解できたものの、潤沢な予算と人材を持っている部門とそうでない部門に、同じことを強制することに、やっぱり違和感を拭えずにいました。
とはいえ、「これはコーポレートで決まったルールだから、守ってもらわなくては」と、ガイドラインの基準を満たしていない部門に「ガイドラインの違反をしていますよ~。修正お願いしま~す」とチクチク言っていたら、「一体この修正せんかったらどれだけの人間が困るのか数字を出せ!」と電話越しに怒鳴られたことは、今ではいい思い出です(笑)。
怒鳴られたことによって、「ガイドラインを守ってもらう」手段が目的となって、大事な目的を忘れていたことに気付かされました。
私がガイドラインの番人をするのは何のため? と改めて考えたときに、私の役割は「ブランドを守ること」だということを思い出しました(この回答は、会社の方針や部門によって変わってきます)。
私が所属するブランドマネジメントグループの仕事は、ブランドを醸成する仕事もあれば、守る仕事もあります。つまり、ブランドを守るためには、予算や人材が少ない部門にも、ガイドラインを守ってもらうことが大事なんです。
たとえ今すぐに修正できなくても、「こういうルールがあるんですよ」ということを、まずは伝えることも重要だと思いました。そう思えたとき、やっと自分の小姑みたいな仕事も意味があることだって腑に落ちました。
ブランド、ガイドライン、予算、リソース……とぐるぐる考えても結論が見いだせず。迷走したときは、社会人として当たり前だけれど、自分の仕事の目的がどこにあるのかに立ち返ることが大事なんだよねぇ。
ガイドラインを守ってもらうコツ
私の仕事はガイドラインのチェックすることと違反している場合はその修正を進めてもらうことの2つです。伝えることも重要だと前述したけれど、やはり違反している場合は、修正を進めてもらわなければいけません。
サイトオーナーに「ガイドラインを守るとブランドが守られます、だから、このガイドラインを守ってください」と伝えたところで、「いまはできない」と言われて、なかなかその修正が進まず落ち込んでいました。
そんなとき、あるサイトオーナーからかけてもらった言葉があります。
ガイドラインもさ、自分にとってのメリットがわかれば動く気になるんだよね。これを守ったときのメリット、守らなかったときのデメリット、説明できる?
「そうか! メリットがないのに何で動かなきゃいけないの? ってそりゃなるよね!」と納得してしまいました。この言葉を聞いてから、ガイドラインに書かれている一つひとつの意味と、作られた背景をきちんと把握するようになりました。たとえば、altタグにテキストが入っていない場合は、
altテキストをきちんと入れることによって、目の不自由な方にもきちんと情報を伝えることができますよ。ユニバーサルデザインをうたっているあなたのコンテンツにもってこいです! お手数ですけど、適切なaltテキストを入れてください。お願いします!
といったように、メリットと修正内容をセットで説明するようにしたら、修正してくれる部門の数が増えたしコミュニケーションのスピードが上がりました。
ガイドラインに書かれている背景や理由までわかると、ガイドラインは「ウェブサイトはこうあるべきだ、こうしろ、あぁしろ」って記載したうるさいルールブックではなくて、「ウェブサイトがなぜ、こうでなければいけないのか」が記載された困ったときの教科書だ、と捉えられるようになりました。
メリットと修正内容をセットで説明するって考えてみれば当然のことで、そんなことにも気づかなかったなんて阿呆ですか、って今になって思うんですが(笑)。最初は性に合わないかも、なんて思っていたこの仕事……。背景事情や理由がわかってからは、鬱陶しがられるけど、実は大事な役割だったのねと思えるようになりました。自分が納得するまで根気よく指導を続けてくれたメンターと上司に感謝です。
ガイドラインはブランド統一のため、コーポレートガバナンスをするうえで必要なツール
ガイドラインを使ってお客様にスムーズに使ってもらえるための「おもてなし」マニュアル
ガイドラインは
うるさいルールブックではなく、困ったときの教科書ガイドラインを守ってもらうコツは、メリットと、そのルールが作られた背景を理解し、正しく伝えることで、コミュニケーションが円滑になる
ソーシャルもやってます!