自社コンテンツを強化してオウンドメディアをやるべき7つの理由
オウンドメディアとは何なのか。その役割を理解して、企業がなぜいまオウンドメディアをやるべきなのか、その7つの理由について解説します。記事末では、もっと詳しくオウンドメディアについて詳しく学びたい方のために本記事の執筆者のセミナー情報も掲載しています。
オウンドメディアとは、ユーザーとの「必然の出逢い」を演出する手法
まず、オウンドメディアの役割について簡単に整理しましょう。
オウンドメディアは、「ユーザーに認知をしてもらい、商品を好きになってもらい、購買につなげる」という意味では広告と同じです。一方、広告はユーザーとの「偶然の出逢い」を期待する一方通行の手法に対して、オウンドメディアはユーザーとの「必然の出逢い」を演出する手法です。
広告は多くのユーザーにとって、生活の中に突然飛び込んでくる想定外のメッセージです。不特定多数のターゲットのなかから、企業の商品やサービスに興味をもった人に出逢う機会を狙います。しかし、「偶然の出逢い」で集客されたユーザーは一過性であり、移り気です。
一方、オウンドメディアは、ユーザーが求めるコンテンツを用意することで「必然の出逢い」を演出します。そして、集まったユーザーの行動履歴を把握し、ユーザー属性を精査していくことで「必然に出逢った」ユーザーを顧客化していくことを目的とします。またオウンドメディアは、コンテンツを蓄積することで、自然検索で流入してくるユーザーを増やし、滞留させる拠点として機能します。
オウンドメディアをやるべき7つの理由
このようなオウンドメディアの果たす役割を踏まえ、以下、オウンドメディアをやるべき7つの理由について説明します。各理由をクリックすると解説に飛びます。
理由①見込み顧客、顧客を育成できる
広告が、広く多くの人に強制的に認知させるのに対し、オウンドメディアは、ユーザー目線のコンテンツを提供し続けることで、商品やサービスに興味をもってくれそうな人を呼び込みます。本当に欲しい情報を求める人だけに効率よく訪問してもらい、見込み顧客や顧客の購入意欲を喚起するよう情報設計を行うことができます。
訪問客から優良顧客になるまでの購買ファネルのステップそれぞれの段階で、効果的なコンテンツを入念に設計して配信することで、顧客エンゲージメントの向上を図ることができます。
「購買ファネル」とは、ユーザーの購買プロセスをファネル(漏斗)の形で表現し、モデル化したものです。新規訪問から興味・関心、比較検討、購買までのプロセスを下図のような形で表します。
オウンドメディアを持つことによって、長期的には、自然検索から新たなキーワードで流入してくるユーザーも増え、留まったユーザーの会員化も考えられます。より満足度とロイヤルティが高く、より高額の商品を購入し、コンテンツを共有・拡散してくれる優良顧客に育てることが、オウンドメディアの大きな役割となります。このような優良顧客を育み、長期的に信頼関係を結ぶことこそが、長期的かつ安定した売り上げの向上につながるのです。
理由②情報が拡散しやすい
オウンドメディアを拠点にコンテンツを発信することで、TwitterやFacebookなどのフロー型のソーシャルメディアでより多くの人に情報を届けやすくなります。
ソーシャルメディアに投稿するコンテンツは、ユーザーと関連性が高く興味を引く話題に注力するべきです。なぜなら、ソーシャルメディアを利用するユーザーは、自分にとって有益な情報を友人から入手したり、人とコミュニケーションしたりすることが目的で、商品やサービスを購入するためにソーシャルメディアを利用しているわけではないからです。
つまり、ユーザーにとって本当に役に立つ質の高いコンテンツこそが、そのコンテンツに共感してくれたユーザーをオウンドメディアへ誘導できるのです。また、ユーザーと最適なコミュニケーションを図るためには、ソーシャルメディアに自社の情報を発信するだけではなく、ユーザー同士のコミュニケーションを傾聴する必要があります。ユーザーの声を傾聴するためには、
- コンテンツの影響力(どんなユーザーが読んでいるか)
- コンテンツが誘発する感情(好意的か、否定的か)
- コンテンツへの理解度(企業や商品への理解を深めたか)
以上の3点を指標に、彼らが何をシェアしているのかを観察します。観察を通して、ユーザーの趣味や関心、属性など、これまで把握しきれなかったペルソナを可視化します。そして、その可視化されたペルソナ像を踏まえたうえで、コンテンツ内容を改善していくことで、ユーザーとの関係を深め、ひいては費用対効果の最大化を図れるのです。
理由③効果検証ができる
効果測定が難しい広告に対し、オウンドメディアでは、正確な分析を行えることが大きなメリットです。もちろん効果検証といっても、ただ分析した数字を見て納得しているだけでは意味がありません。オウンドメディアを分析するときは、次のことがわかる指標を見ていくといいでしょう。
- 訪問者はだれなのか?
- どんなキーワードで辿り着いたのか?
- どのページに訪れたのか?
- どれくらいのリピート率なのか?
これらの分析結果を検証することは、PDCAを回していくうえで、サイトの改善やユーザーとのコミュニケーション施策を考える際のヒントになります。たとえば、検索キーワードを分析することでユーザーのニーズを探ったり、コンテンツ制作に反映させたり、流入経路を分析したりすることで広告出稿時の参考にできます。また、広告出稿や記事数を増やしたことが訪問客の増加にどのように寄与したのかなどを分析することで、次の施策に生かすことができます。
ユーザーのデータを継続的に取得・蓄積し、マーケティングに活用していくことは企業にとって大きな資産になります。これまで見えていなかったファン化・顧客化・ロイヤルティ化を数字で可視化することで、訪問客から見込み顧客、顧客までを資産として考えることができるのです。
理由④広告のみに依存しない戦略が立てられる
マス広告、リスティング広告、バナー広告といったペイドメディアは、費用をかけるほど認知拡大や自社サイトへの集客が期待できます。しかし、広告で集まったユーザーが、必ずしも商品やサービスに強い関心を抱くとは限りません。仮に商品やサービスに関心を抱いたとしても、クリックひとつで類似商品と比較検討し、すぐに競合サイトへ立ち去ってしまうことも十分考えられます。
また、近年はソーシャルメディアの普及に伴い、自らコンタクトする情報を取捨選択したり、親しい友人などから得た情報を価値判断の基準にしたりする傾向にあり、一方通行の広告を鵜呑みにして受け入れることを、敬遠するムードも高まっています。ひいては①宣伝・広告コストのエスカレート → ②顧客獲得コストの増大 → ③利益率の低減 → ④成長の鈍化という悪循環に陥るリスクさえ伴います。
オウンドメディアでは、ユーザーに有益な情報を継続的に発信することで、消耗戦に陥りがちな広告のみに依存しない持続的な戦略を立てることが可能になります。マス広告などのペイドメディアでは困難な「ユーザーとの直接のコミュニケーション」をオウンドメディアで図ることで、長期にわたってユーザーとの信頼関係を醸成できるのです。
広告で集めた一時的に立ち寄るだけのユーザーではなく、商品やサービスに興味を持ち、根強いファンになってくれるユーザーと信頼関係を深める――それがオウンドメディアの大きな役割なのです。
理由⑤ストーリー戦略でファンを育てられる
今日、私たちはどんな商品やサービスもネット上で簡単に比較検討ができます。そんな時代において、「ストーリー」なき商品やサービスがたどり着くのは、過酷な価格競争と過剰な宣伝合戦です。そんな競合との過当競争を経て呼び込んだ顧客は、「より安く、より目立つ」企業の商品やサービスに目移りしていきます。ストーリーのない企業は顧客に再訪してもらうために、エンドレスの過当競争を続けるという負のスパイラルに陥るリスクを負うことになります。
何度も訪問して購入してくれる固定顧客を育むためには、継続的に訪問したくなるストーリー戦略が欠かせません。オウンドメディアは、ユーザーを惹きつける長期的なストーリー戦略が描きやすく、継続的に高い付加価値を生み出すコンテンツを提供するのに最適な拠点となります。ユーザーと体験価値(理解・共感・安心・期待)を共有し、信頼関係を深めることでユーザーをファン化させるのに最適なメディアがオウンドメディアなのです。ではオウンドメディアを拠点に、どのようにしてコンテンツを作り、発信していけばよいのでしょうか。
オウンドメディアのコンテンツは、ユーザーの利益の最大化を目的とします。訪問したユーザーの多くは「課題・悩み・欠乏感」の解決策を探し、どの商品やサービスを利用するかを漠然と検討している段階です(まったく検討してない場合もあります)。
よって、ユーザーに「課題・悩み・欠乏感」の解決策をどれだけ提示できるかが、ユーザーを顧客に育成していくカギとなります。まずコンテンツを作るためには、この迷えるユーザーの「課題・悩み・欠乏感」に解決策を提示し、継続的に訪問したくなるストーリー戦略を組み立てます。
企業がユーザーに認知され、商品やサービスを購入してもらうためには、まず相手の立場になって「ストーリー」を用意しなければなりません。ユーザーと「課題・悩み・欠乏感」を解決する付加価値の高いストーリーを用意し、ユーザーと信頼関係を深めるのに最適な拠点が、オウンドメディアなのです。
理由⑥コンテンツ資産が最強の武器となる
マス広告の影響力が縮小するに伴い、ソーシャルメディアで効率よく拡散させる傾向が高まってきています。また、オウンドメディアにコンテンツを蓄積することが広告費の節約や営業効率の向上につながるため、コンテンツの充実を検討する企業が増えています。
ペイドメディアは一時的な集客には効果的ですが、資金を投入したコンテンツが企業にとって自社の資産となりにくいのが大きな欠点でもあります。集客のために競合他社とのイタチごっこの過当競争に巻き込まれかねません。またペイドメディアは、広告を好まないユーザーに対しても強制的に認知させるプッシュメディアのため、ターゲットを誤ると企業ブランディングにおいて逆効果にもなりかねません。
オウンドメディアは、ユーザーの利益を最優先した情報を継続的に発信・蓄積していくことで、コンテンツを資産にできます。ソーシャルメディアとの親和性も高く拡散しやすいため、SEO的にも高い効果を生みます。
また、ユーザーの求めるコンテンツを蓄積し、PDCAサイクルを回しながら運用していくことで、より効率的に優良顧客を育てるメディアへと成長していく可能性を秘めています。蓄積した良質なコンテンツこそが、ユーザーとのコミュニケーションを図る最強の武器となり得るのです。
理由⑦新市場を創出できる
情報やモノがあふれる時代において、たとえ付加価値の高い商品やサービスであっても、企業にとって競合他社と差別化を図り、適切なターゲットに向けて伝えていくことは非常に難しい課題となっています。企業目線で自社の商品やサービスのスペックだけを訴求しても、ユーザーにその魅力はなかなか伝わりません。多くの企業は差別化を図るためのストーリー戦略、ブランド戦略を立てられずに、価格競争に巻き込まれているのが実情です。
オウンドメディアは、業界(競合)全体の情報をはじめ、ユーザー動向から導き出した情報、ユーザーが欲しがる情報、ユーザーがつくる情報など、ユーザーの利益を最優先したコンテンツを提供するのに適したメディアです。
ユーザー視点のコンテンツを継続的に提供することでユーザーとの信頼関係を築き、ユーザーの期待を膨らませることができます。また、企業の特性やオリジナリティを活用して、特定のターゲットに絞り込んだコンテンツを発信していくことで、競合との価格競争に巻き込まれないブルーオーシャン(新しい市場)を創出できます。
オウンドメディアとはユーザーに役立つコンテンツを提供し、ストーリーで共感を呼び、自分ゴト化してもらう
以上、オウンドメディアをやるべき7つの理由についてご紹介しました。オウンドメディアを成功させるためには、中長期的な戦略に基づいた運用が欠かせません。運用していくなかで、コンテンツの見直しや、サイトのユーザビリティなど、時代の変化に合わせて継続的なチューンアップを実施します。PDCAを回していくことで、検証・改善、他メディアへの流用対応など、より効果の高いコンテンツの作成と配置を検討し、結果を出していきます。
オウンドメディアの運用は、決して短期的に売り上げアップのみを目的とするものではありません。ユーザーとの最適なコミュニケーションを図り、信頼関係を築き、最終的に商品・サービスを購入してもらうことにあります。
企業がオウンドメディアで提供するのは「商品・サービス」の情報だけではなく、ユーザーが自分ゴト化できる「価値体験」といってもよいでしょう。ユーザーの役に立つコンテンツを提供し、ストーリーで共感を呼び、自分ゴト化してもらう――その「価値体験」をデザインすることがオウンドメディアの担う使命なのです。
オウンドメディアで「必然に出逢った」ユーザーを顧客化する方法がわかる
「オウンドメディアのコンテンツ企画・作成ワークショップ」
2日間講座で本記事の筆者インフォバーンの成田氏が講師を務めます!
「必然の出逢い」でオウンドメディアに集まったユーザーを顧客化していくそのノウハウを2日間にぎゅっと凝縮したワークショップ型の講座を9/11(木)・12(金)で開催します。
- 顧客にしたいターゲットユーザーにいかにしてオウンドメディアに訪問してもらうか
- コンテンツの品質や成果達成を継続的に維持するためにはどうすればよいのか
- 企業サイトのコンテンツは、どのように企画してどのように運営していけばよいのか
といった、すでに運用をしている方の課題や悩みを解決するだけでなく、これから自社サイトをオウンドメディア化していこうと考えている担当者の方のための講座です。
■講座内容
講座1日目 9月11日(木)
- 上司を説得するオウンドメディア5つのメリット
- インフォバーンのオウンドメディア運用例
- オウンドメディア事例にみる企画立案から運用プロセスまで
- コンテンツマーケティング成功の条件
- 【ワークショップ】オウンドメディア立ちあげ大作戦
- オウンドメディアの予算と制作費用
講座2日目 9月12日(金)
- おいしいコンテンツの作り方
- オウンドメディア事例にみる企画立案から運用までのプロセス
- 【ワークショップ】コンテンツ視点で考えるオウンドメディア
- 【ワークショップ】「ペルソナ」を理解して、自社にとっての「ペルソナ」を作ってみよう
- 【ワークショップ】カスタマージャーニーマップを作ってみよう
ソーシャルもやってます!