企業ホームページ運営の心得

ビットコインは脱法通貨? ネット決済に存在する税のハードル

決済手段として期待が高まる仮想通貨「ビットコイン」ですが、実務面では高いハードルが存在します
Web 2.0時代のド素人Web担当者におくる 企業ホームページ運営の心得

コンテンツは現場にあふれている。会議室で話し合うより職人を呼べ。営業マンと話をさせろ。Web 2.0だ、CGMだ、Ajaxだと騒いでいるのは「インターネット業界」だけ。中小企業の「商売用」ホームページにはそれ以前にもっともっと大切なものがある。企業ホームページの最初の一歩がわからずにボタンを掛け違えているWeb担当者に心得を授ける実践現場主義コラム。

宮脇 睦(有限会社アズモード)

心得其の349

ビットコインは普及するか

ネット通販の運営において「支払い(決済方法)」の多様性は重要です。クレジットカード払いは万能ではなく、「現金主義」のお客もいますし、会社の規定から銀行振り込みしか利用できないという人もいれば、コンビニ決済の需要も根強く、可能な限り多くの決済方法に対応するのが望ましいといえます。ただし、選択肢の増加は事務経費の増大も意味するので実務との兼ね合いが求められます。

電子決済の新たな手段として関心を集めている(日経新聞2013/11/28)

と、されるのは、インターネット上の仮想通貨「ビットコイン」です。ネット上だけでなく、ビットコインで支払い可能なレストランやホテルが登場するなど、リアルの世界でも利用が広がりつつあります。

しかし、実務面からみると、ビットコインの普及には高いハードルが存在していることは明らかで、決済方法の1つに加えるには注意が必要です。

現時点ではメリットがある

改めて説明すると、ビットコインとは「BTC」を単位とする、2009年に運用開始されたネット上で流通する仮想通貨です。わずかな手数料で送金でき、世界中にある専門の取引所を通じてリアルの貨幣と交換できます。

当初はさほど注目されませんでしたが、欧州の金融危機などを背景に、取引が活発になっています。たとえば、東地中海に浮かぶキプロスの政府が、財政再建のために預金残高に応じて税金を徴収する方針を固め、その準備として預金封鎖を発表したのは1年前のこと。このとき、国民が一斉にビットコインへと資金を避難させ、世界の注目を集めました。

ビットコインは各国政府の管轄外にあります。FRB(米連邦準備制度理事会)や米国の著名投資家が肯定的なコメントを発していますが、日本では一部の好事家の利用にとどまります。ビットコインが利用できる店舗を、地図上で案内する「コインマップ」で調べると、関東一円でわずか10店舗、そのうちの5は「中国語教室」です(執筆時点)。

今の日本でビットコインを取り扱うメリットとしては、「広告効果」が挙げられます。六本木にある多国籍レストラン「The Pink Cow」は、ビットコインの「導入事例」として、テレビや新聞で繰り返し紹介されています。実際の収益への寄与度は不明ですが、知名度向上には役立っていることでしょう。

相場というファクター

現金と等価の一般的な電子マネーとは異なり、ビットコインの価値は需要と供給で変動します。

昨年の11月、1BTCが1,000ドルを超えました。月初は215ドル前後だったので5倍弱、昨年の始まりは13ドルでしたから80倍以上の暴騰、かと思えば、翌月(実際には一夜で)は500ドル台と半値に暴落し、年が明けた1月は再び1,000ドルに達します。本稿執筆時(2014年2月17日)は600ドルちょっと。これを「乱高下」と呼びます。

相場に上下はつきもので、今年に入って日経平均株価は、最大で2,000円を超える下げを記録し、市場は悲観論(リスクオフ)につつまれましたが、下げ幅を割合にすると12.5%。一方のビットコインは一晩で50%も下げることがあります。

ビットコインを決済手段に取り入れるということは、この相場の影響を受けるということ。仮に1BTC=5万円だとすると、翌月にこれが2万5,000円になったり、10万円になったりすることを覚悟して、経営しなければならないということです。

経営が成り立たないわけ

消費税もハードルとなります。この4月以降、1万円の消費税は800円で、ビットコインの決済ではこれが翌月に400円や1600円となることもあるということです。発生主義により消費税額は取引時に確定します。すると1,600円になっていれば、差額は「益税」として収入に寄与しますが、400円なら差額を負担しなければなりません。

受けとった「代金」の価値が、毎日のように変化するのがビットコインです。これでは経営は成り立ちません。そもそも現時点においてビットコインは「脱法」状態にあるのです。

税制度というハードル

日本での納税は日本円で行います。つまりビットコインを取引所で「換金」しなければなりません。このときの差益の取り扱いについて、地元の税務署で確認したところ、対応にあたった女性は、具体的な回答をしかねると困惑していました。そこで東京国税局に電話をし、「法人税」からアプローチします。こちらは男性が対応し、調べてみますと保留音が流れてからしばし後「答えが見つからない」とのこと。

一般的な解釈として、利益がでたら納税しなければならず、損失はその他の利益と相殺することができます。しかし、日本国内の税制上、ビットコインを処理する細目がないのです。税制からみたビットコインは「脱法通貨」なのです。

相場のリスクに加えて、間もなく迎える年度末の決算の手間も、ビットコインは増やします。規定がないからといって、利益を「申告」しないで放置しておくと、当局の「解釈」により、後に「修正申告」、あるいは「追徴課税」の対象となることもあります。これが実務面からみた普及への高いハードルです。

価値の創造、想像

仮想通貨で思い出すのが「セカンドライフ」で流通した電子通貨「リンデンドル」です。通貨とは国家に帰属します。対ドル、対レアルで相場が変動するのは、通貨を発行する国家への信認で、セカンドライフでも日本国でも理屈は同じです。このことは、リンデンドルがセカンドライフの没落と同じ放物線を描いたことが証明します。

ビットコインは特定の国家に帰属しません。だからこそ安心だとは言えません。国家の背景を持たないビットコインは、そこに価値がある(かも)と思っている人の「信認」のみで価値が形成されており、20世紀の「たまごっち(白)」や「ビックリマンシール」、コンプガチャにおける「レアカード」が高値をつけた理屈と同じです。

なお、先の税務相談にビットコインはこれらに準ずるかと訊ねてみると、

取得原価主義ですので、現物が存在する「たまごっち」や「ビックリマンシール」は、付加価値が付いても取得時の価格で評価します。しかし、現物が存在しない「ビットコイン」はこれにも該当しません

とのことです。

今回のポイント

客寄せとして価値はあるかも

税務処理と相場リスクの負担は大きい

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