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予想を上回る二桁の改善率

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予想を上回る二桁の改善率

プロジェクトが立ち上がったのが10月だったが、準備はすばやく進め、その年の12月25日にはテストを開始していた。

この時期は航空会社にとっては繁忙期でありサイトへのアクセスは多かったため、統計的に有意なテスト結果が2週間ほどで出た。その結果レポートが1週間ほどでANAに提出され、さらにその結果を元にした改善を行った。

そうした改善フローをまわした結果、対象となった各ページで、予約完了率が以前に比べてそれぞれ25.6%と31.7%向上した。二桁の改善率というのは、予想を超えるものだったという。

※改善率は完了率の比。たとえば(仮の数値だが)以前の予約完了率が10%だったならば、改善して12.5%になったという意味(10%が35%になったわけではない)。
テストにより、サイトの成果へのコンバージョンが25%~30%改善していることを確認できました。
以前のページと比較して、「旅割55」ページでは 31.66%、 「特割」ページでは 25.64% の改善。訪問者が商品を理解しサイト訪問のゴールを達成しやすくするために、重要度の低いコンテンツを非表示にしたり、コンテンツを置く場所を移動したりした。

もちろん、提案されたすべての仮説が正しかったわけではない。そうしたことを確認できるのもテストの利点であり、仮説が誤っていたことが明らかになることは、失敗ではなく前進なのだ。

たとえば「コンテンツヘッダーを非表示にすると売上インパクトがある」という仮説は、テストの結果、旅割のページでは有効だったため採用されたが、特割ページでは非表示にしないほうがコンバージョン率が良かったため採用されなかった。

また「特割」ページで「お知らせ欄を非表示にすると売上インパクトがある」という仮説も提案されテストされたが、実際にはお知らせ欄は表示したままのほうが良かったのだという。

短期的なROIでは広告のほうが良いが、サイト改善は効果が続く

費用対効果という意味ではどうだったのだろうか。

実際のところ、“このプロジェクトにかけた費用に対してこの期間で得られた売上向上”という意味では、広告に負けます。つまり、同じお金を使って広告出稿していたほうがリターンは大きかっただろうということです。

しかし、サイト改善による成果向上はこの先もずっと効果があります。広告はお金を出している期間しか成果を生み出しませんからね。ROIという意味では、近い将来に広告を上回る状態になるでしょう。また、今回の改善によって、今後の広告出稿による集客のROIが高まりますから、大きな成果だと考えています」(大野氏)

アクセス数の多い国内線のページでテストをしたことは、その後の動きにも良い影響を与えている。テスト結果を早く出せたことで、早期に他のページにもその結果を適用できるようになったのだ。

国内線に続いてすでに国際線のページでもテストを行っていますが、国内線で明確になった点以外の部分をテストするだけでよいので、テストはスムーズになっています」(関沢氏)

また今後は航空券のページだけでなく、ツアーのページでもテストを実施する予定だという。

単純なROIでは広告のほうが高く見えます。でもサイト改善による売り上げ増加は効果がずっと続きますし、今後の広告出稿のROIも底上げしてくれます。

ANAでは、こうしたテストを進めることで成果をさらに上げていくのだろうか。

もちろん予約完了率を向上させるためのテストは行いますが、また違った観点でのテストも行うべきだと考えています」(関沢氏)

それは、「まだ買おうと決めているわけではない人」に提示するべきメッセージの見極めだ。

今回テストで対象としたのは自社サイト内のコンテンツであり、基本的にはANAに興味があって来訪している人が見るページです。そのため、ANAで航空券を買おうとしている人に対して、よりスムーズに購入できるような改良を加えることが主眼となっています。改善はファーストビューに空席照会ボタンを置くなどの、『すぐに購入できる』ようにするためのものでした。

しかし、サイト訪問者のなかには、どこで航空券を買うかをまだ決めていない人もいます。そういう人には、購入のために来ている人とは異なる文脈があるはずです」(大野氏)

同じページのファーストビューに近い部分では大多数の「チケットを購入しようとしている人」向けにユーザビリティを向上するとともに、そこでは決めずにさらに情報を探す人向けに、ページをスクロールしていった先では「検討している人」向けのコンテンツを作り込む。次のステップのページ改善としては、そんなことも考えていく予定なのだという。

テストの結果がさらに新しい気づきを生み出してくれる。

テストを行うことは、成果を伸ばすだけでなく、さらに新たな気づきを得て次の改善案につながる。企業サイトとは、こうした改善の連続でさまざまなユーザーにとって役に立つものになっていくのだろう。

事例企業全日本空輸株式会社(ANA)
  • 所在地: 東京都港区
  • 設立: 1952年12月27日
  • 事業内容: 定期航空運送事業、不定期航空運送事業、航空機使用事業、その他附帯事業
  • URL: https://www.ana.co.jp/
導入ツールAutonomy Optimost(オートノミー・オプティモスト)

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