Web担当者たるもの、かくあるべし 「Web担道」秘伝の書

Web成長期に挑んだ担当者インタビュー: 劇団四季「ウェブプラン2010」とプロジェクトの“バイブル”

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限られた予算と期間でプロジェクトをいかに成功させるか

高松: 今回のプロジェクトはどれくらいの規模だったのでしょうか?

植田: 2000年にチケット予約システムを中心とした基幹システムを導入したときと同様に、かなりまとまった投資となりました。

今回は、基幹システムの老朽化もあって、“建て替え”しなければいけいないタイミングで、「チケッティングシステムとコンテンツの融合、入場システムのサポート」を盛り込みました。どうしても基幹システムの“建て替え”には予算をかけざるをえないのです。決して予算に余裕があるわけではなかったので、外部パートナーには、予算の中でうまくバランスを取ってもらうようお願いしました。

高松: 外部パートナーへ予算の“やりくり”をしてもらうコツはなんですか?

植田: 外部ベンダーの中に協力者を見つけることですね。外部パートナー会社の中から、営業だとこの人、SEだとこの人、という風に信頼できる人を見つけることです。

そして、「この人だ」という方がいれば「密談」も頻繁にしていました。決して悪いことを企む相談ではないです(笑)。1対1で、細かい具体的な話をすると言うより、次回の全体ミーティングの方針を確認し合うとか、Webのトレンドの話とかです。そういうことを積み重ねることで、信頼関係が出来あがってきたと思います。

ちなみに、社内会議室ではなく、外のカフェなどで行うのもポイントかもしれませんね。個人的にカフェ好きというのもありますが(笑)。

「こういうことがやりたいけど予算はこれだけしかないです、実現する方法を教えてください」と真摯に伝えると、外部パートナーさんも親身になってくれると思います。

高松: “やりくり”してもらうだけじゃなく、“親身になってもらう”ですか?

植田: 言い換えれば「頼る」ということだと思います。やはり「餅は餅屋」です。私は演劇の世界にいる、“ちょっとITに詳しい人間”です。でも、IT専門家ではないので、そこは素直に「頼る」ことが大事だと思います。決して丸投げとかと言うことではなく、信頼したパートナーの裁量に委ねる“思い切り”とでも言いましょうか、そういう想いはパートナーにも伝わると思います。

高松: 確かに、ガチガチに決まった中で頼られると、外部ベンダーとしても工夫に限界があるかもしれませんが、ある程度やり方の幅がある中で頼られると、信頼関係があれば、頑張りたくなりますね。“勇気ある寛容”とでも言いましょうか、そうしたことがクライアント側には必要だと思います。

植田: 私の場合、外部パートナーの社内会議に出席を依頼されたことがあります。弊社の要望に対する“作戦会議”に、クライアント側の人間が入ることはそうないと思います。こちらが信頼するだけでなく、外部パートナーからも信頼されることが、最高のパフォーマンスを上げるチームを作るうえで非常に重要だと思います。

Web担当者は、とにかく信頼できる専門家チームを作ることが最も大事なので、社内にいるのではなく、自らどんどん外に出て、外部パートナーと打ち合わせするほうが良いと思います。そのほうが新たなアイディアや施策が浮かんできますから。

高松: とは言え、ある程度幅があるなかで任せてしまうと違うものが出てくる可能性もあると思いますが、チェックはこまめにしなくて良いのですか?

植田: そこは、サービスとしてのゴールが決まっているので、あまり気にしていません。サービスを実現するために、本来ならやるはずの業務を省いたり、クライアントも外部パートナーもある程度のリスクテイクを許容しないと、“やりくり”もできないですし、信頼関係も築けないと思います。

成長期のプロジェクトを経て、Web担当部署の重要度はどう変わったか

高松: 今回のプロジェクトの実現で、Web担当部署の社内の評価に変化はありましたか?

植田: まさに今変わりつつあるところです。

従来から「四季の会」というファンクラブがあり18万人の会員が存在していましたが、劇団四季idセンターというWebの会員制度が今回のプロジェクトから生まれ、約1年余りで数万人規模に成長しました。このWeb会員は、「四季の会」と重複する方もいますが、基本的にWeb経由で登録されたお客様であり、会員の増加とともに私たちWeb担当部署の重要性は増していると思います。

また、会員にとっても使いやすいサイトになってきているので、弊社のWebサービスに対する利用度も高まっていくと思います。

高松: 最後に、今後のWeb担当者としてのキャリアをどうお考えですか?

植田: もともと劇団四季に入社したのは、演劇そのものというより、劇団四季の経営手法に興味があったからです。ロングラン公演を効率的に実現させるために自前で劇場を作ってしまう、というダイナミックさや劇団四季の企業風土が好きなんです。なので、今たまたまWebを担当していると言う感覚で、Web担当に今後も強くこだわるというのはありません。ITの専門家を目指しているわけではないですからね。

取材を終えて

担当者としての仕事や今後のキャリアについて、ざっくばらんに“自然体”で話される植田氏。一方で植田氏は“ビジネスマン”として、Webのみならず、広く経営の視点から仕事を進められていて、SIerなどの“外部の力”をうまく引き出しながら、大きなプロジェクトを進めていったことが大変印象に残るインタビューでした。

植田義人氏プロフィール

四季株式会社 広宣部インターネット担当 シニア・チーフ 2000年劇団四季に入社。入社後、チケットセールスや営業企画などを経て、2008年よりWeb担当者に就任。Webチームは、システム担当も含め6名。自他ともに認めるAppleマニア。

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