外注の熱意を引き出すオリエン資料の作り方(第4回)
京セラ、第二電電(現KDDI)の創業者である稲盛和夫氏の言葉を借りると、仕事の成果は「考え方×熱意×能力」で決まります。熱意と能力には「0」から「100」が、考え方には「-100」から「100」の値がはいります。考え方が「0」からではなく「-100」からになっており、掛け算になっているのがポイントです。どんなに熱意や能力があっても、考え方が誤っていると成果も誤った(マイナス)成果になるのです。
第2回、第3回と目標設定について見てきましたが、目標がここでいう考え方に該当し、正しい目標設定が正しい方向付けをします。あとは熱意と能力ですが、別の見方をすると、正しい考えのもとで熱意をもって仕事に取り組めば、たとえ能力が1でも仕事の成果がだせるということです。実は、「外注に熱意をもって取り組んでもらうこと」がおろそかになっているために、外注の能力が発揮されていないことが多いです。今回は外注に熱意を持って取り組んでもらうための話をします。
ダメなオリエンテーション、よいオリエンテーション
発注側と外注、両方の立場を経験してわかったことがあります。それは、オリエンテーション(キックオフミーティング)の内容に外注の成果物の質が左右される、ということです。施策のキックオフはオリエンテーションから始まります。オリエンテーションは簡単に言ってしまうと、外注への仕事の依頼です。そして、依頼の仕方1つでその仕事への取り組み方は大きく変わってきます。
クリエイティブは今風のセンス溢れる感じがいいね。あと、インパクトがあって、ばーんって訴求力がある感じで。とりあえず10案ぐらいお願いね
こんな風に仕事を依頼されたのでは、外注が熱意を持って仕事に取り組むことはできないでしょう。思いつきで「あれも、これも」と二転三転し、打ち合わせのたびに言っていることが毎回異なるなど、スケジュールぎりぎりまで提案を繰り返し求められ、最終的に間に合わないからと、何かを犠牲にする光景が目に見えています。
外注に熱意を持って仕事に取り組んでもらうには、発注側の誠意を伝える必要があります。上記のように資料すらなく数分の口頭のみで終わってしまうケースがある一方、時には半日以上かけて、商品の作られている現場まで見せる発注側もあります。明らかに後者の方が良いものができることは間違いありません。
いくら優秀な外注でも商品や業界、競合の知識に関しては、発注側にかないません。もちろん外注も市場や書籍、ネットなどで情報を収集しますが、業界関係者つまり発注側しか知らない情報もたくさんありますし、オリエンテーションを通じて、発注側の歴史や技術優位性、消費者のニーズやトレンド、競合の動きなど、必要な業界の情報を共有することで、知識の底上げができます。そして、外注は多くの情報のなかからより良いものを選択できます。
オリエンテーションをしっかりやらないと、外注は理解できないまま仕事を進めることになり、外注はアイデアを出し切れないばかりか、アクシデントが起こったときに的確な判断ができないため、発注側から言われた通りにしか動けません。しかし、外注が理解してやっている仕事なら、その時点で的確な判断をして発注側に提案することができます。
オリエンテーションでは何を説明すればいい?
オリエンテーションで説明する内容は、目的によってさまざまですが、僕はオリエンテーションを受ける立場だったらどんな情報がほしいかを考えるようにしています。これは、第2回、第3回で説明した目標設定ができていれば、それほど大変な作業ではありません。
実際にある新商品のキャンペーン企画を依頼する場合を例に考えてみましょう。
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