KPIは結局PV!? でも売上には影響ナシ
KPIは結局PV!? でも売上には影響ナシ
以前、某生活消費材メーカーのWebの担当者の方と話したとき、「KPIはPV(ページビュー)。ただし、新しいCMオンエア後の、該当商品ページのPV」って仰ってました。そして、それを代理店の人に伝えて、CMの評判のよしあしを評価していたそうです。この会社の場合は、PVと売上の相関がほとんどないことは会社として周知の事実だったので、PVはCM評価のためのKPIと確信犯的に設定していたようです。
そうですよねぇ。某自動車メーカーの担当の方も「結局はPVだ!」とおっしゃってました。WebのPVが上がれば、資料請求数もディーラーでの試乗者数も上がり、結果、車の販売も伸びる。ここは比例しているからPVを測っていればOKと。
こういうのって、Webでコンバージョンしない商材の宿命なのかもしれませんねぇ。
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でもですね、家電や車や不動産や金融のように、購入検討者の多くがWebを見てくれる商材はそれでもいいと思うんですけど、生活消費材のように、必ずしも購入前にWebを見てくれない商材については、PVと売上ってそこまで相関関係があるのか、という疑問もあります。
そうなのよ!だから、さっきも言ったんだけど、 生活消費材の場合は、商品ページのPVと売上の相関はないのよ。実際、以前ネットデイズにいたときに、さっき言った生活消費材メーカーさんからWebのデータを見せていただいたことがあったんだけど、見事に相関関係に無いことが検証できちゃったことがあったわ。
ですよね。調味料や清涼飲料水、アルコールやお菓子、アイスクリーム。私個人で考えたとき、ひとりの消費者として、購入前に企業サイトやブランドサイトを見に行ったことはあんまりないんですよね……。
(そうそう、頷く)
洗濯用洗剤とソーシャルメディアって相性いいの?
とはいえですね!!美咲ちゃん!!
は、はい!
美咲ちゃんはソーシャルメディアに詳しいじゃない? あえて聞くけど、「洗剤とソーシャルの相性」ってどう思う??
ええ!? 「洗剤とソーシャルの相性」ですか? 洗濯用洗剤のような日用品は、購入の決め手になるのはやはり認知度とチャネルカバレッジですよね。
そうそう、 結局、決め手はドラッグストアのワゴンでどーんと山積みされていたり、スーパーの棚で目立つところに展開されてる商品が購入されやすいっていうのは分かってるのよ。
ですよね。私も以前は食品メーカーだったのでよく分かります! 価格弾力性が強い商材なので、結局インストアマーチャンダイジングが大切で、場所、棚の位置、フェイス数、店頭価格が一番重要だったりして。
でも、なにかそれ以外に解はないんだろうか?と考えてるの。絶対あきらめたくない性格なのよね。
私もです! むかし、ある生活消費材の方のお話の中で、特定カテゴリーにおけるブランド想起(マインドシェア)は、1~3つだとうかがったことがあります。つまり、85%が店頭決定されるスーパーやコンビニ、ドラッグストアにおいて、商品を買ってもらうためには、どのくらい短期記憶の先っちょに自社ブランドが置かれているかってすごく大切だと思うんです。
そうよね……もし、美咲ちゃんが、洗剤メーカーから「ソーシャルメディアを使って何かやりたい」って言われたら、何て答える??
私だったら、「一番最初に思い出してもらえるブランドになりましょう!」って言うかなぁ。もちろん、マスマーケティングや他の施策とも連携して、という前提ですけど。私も以前食品メーカーにいたからいろいろ歯がゆい思いをしたんですけど、消費者は私たちのブランドのことなんて1日に1秒も考えてくれてないんですよね……。びっくりするくらい関与度が低い。買ってくれてくださっている方でさえ、「無意識」で購入し、「無意識」で消費しているんだと思うんです。
そうよね。実際、私もそうだな。
そんな関与度が低い商材が、関与度を上げてください!って言ったって無理ですよね。生活消費材なわけですから……。
CMを見て、気になる商品があって、ちょっと買ってみようかなと思って、実際お店に入った途端、お店の中の陳列状態やプッシュの強さで、完全に忘れちゃうのよね。あるいは、「あ、こっちの方がよさそう」って、なっちゃう。
だからこそ、関与度を上げてもらうのではなく、「いつもそっと隣にいる」みたいな関係性が大切だと思うんです。テレビはある程度の予算をかければ多くの人たちの認知を獲得することができますが、昔に比べると効果は落ちてきています。
むりやりはダメ! いつもあなたの隣にいるよ
そうよね。だからわたし三立瞳、生活消費材メーカーにWebの推進役としてヘッドハントされてきたんだけど、そんなわけで前途多難なの!
なるほどぉ。でも瞳さんなら大丈夫ですよ! きっと!
ありがとう! あ"~~~、頭が痛い! もう入社の挨拶のときに営業の人から洗礼受けちゃったし。今度、美咲ちゃんに、助っ人で登場してもらおっかな。
行きます! いつでもどこでも何度でも! でも、そういう逆風の中で「Webやソーシャルの役割は何か」、それを考えるのが私たちのテーマですよね。でも私はすごくここに可能性を感じているんです!
私も感じてるわよ、可能性っ!
自社の商品にある程度興味を持ってくれている人であればテレビCMも見てくれるし、覚えてくれるかもしれません。でも、そもそも興味がない人にはどうやってアプローチしたらいいんでしょう。私はそこにWebやソーシャルの可能性が隠されている気がするんです。
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そもそも興味のない人には、何を見せても聞かせても効果ゼロ。コトラー大先生も言ってます。(フィリップ・コトラーによる、人間が何かの情報を得るときには「3つのバイアス」があり、これらを乗り越えなければ、潜在顧客にメッセージは届かないとする。3つのバイアスとは、選択的注意:自分のききたいことしかきかない、選択的歪曲:自分の都合のいいように解釈する、選択的記憶:自分の憶えたいものだけ憶える)
マスメディアを使って消費者とコンタクトするにはある程度の予算が必要ですよね。それはそれで続けるべきだと思うんですが、その予算の一部をWebやソーシャルにアロケーション(割り当て)することによって、今までのマーケティングコミュニケーション施策ではアプローチできなかった層にもコンタクトすることができるんじゃないか!?と。
人は、興味のあることを、見て、聞いて、覚えておく、と。
そうですね。マスメディアを使った広告は、基本的には自社が言いたいことをプッシュする場所ですよね。でも、それに響かない人には、こちらが言いたいことを言いたい場所で言うのではなく、相手が多くの時間を過ごしている場所で、興味がありそうなコンテクストやコンテンツにしてコミュニケーションを取るというアプローチが有効だと思うんです。
マンガやゲームもありってことね?
そうなんです。たとえばコカ・コーラさんとかが、モバゲーを使ったキャンペーンを実施してましたよね。「コカ・コーラ×モバゲータウン キャンペーンサイト」を開設したりして。ああいうアプローチって、すごくありだと思うんですよ。テレビも見ているけど、同時に日常的にゲームを楽しんでいるターゲットの中にゲームというコンテンツを軸に入っていく。「ユーザーが楽しみながら自社との関係性を持つ(もしくは持ち続けてくれる)ことを見事に設計していると思うんです。
むりやり購買行動に向かわせるのではなく、関係を持ち続けることで、購買行動をとるときに、思い出してもらいやすくなる、ってことね。
清涼飲料水の場合は、商品購入の決め手としてフリークエンシー(頻度)ってすごく重要だと思うんです。先ほども言いましたけど、のどがかわいたときに、「あ、コーラ飲みたいな」って一瞬で思い出してもらうためには、どれだけ最近、コミュニケーションを取っていたか、ということです。ソーシャルゲームは毎日のようにログインして遊びますから、そういう意味では、テレビCMや雑誌広告よりも、フリークエンシーを取れ、短期記憶の先っちょを取り続けることができると思うんです。
清涼飲料って、どういう動機で買うんだろう? やっぱり味とか好みかな。
そうですね。たとえば、お茶を買おうと思ったとき、どのお茶を買おうかなって、店頭や自販機で1秒~2秒くらいで決定しますよね。味や好み「以外」で「なんとなく」選ぶ人の「ポチッとな」をどうやったら取れるか、という課題だと思うんです。
ただ、いくら頻度が高くても好みじゃないと、手は出ないよね。でも、ちょっと興味あるって感じだと手は出るかもしれないけど。
ですです。
市場にいる浮遊層を狙え!なやり方ね。
私も「商品そのもの」に対する趣味・嗜好の壁をコミュニケーションだけで超えられるとは思っていません。そこは根本的な「マーケティングの課題」だと思います。ブランドロイヤリティが高い人は、ずっと買い続けてくれます。
いわゆる、マーケティングの4Pの要素も必要ね。当然ながら商品力(Product)があって、流通(Place)、価格(Price)、販促(Promotion)で周辺をかためて。だから、今はちょうどそこの「プロモ」と「流通」の話をしてる感じですね。
でも、昨日はこれ、今日はこれ、のような人に、どうやったら「買い続けてもらえるか」、そこがすごく大切だと思うんですよぉ。「買いたい」というよりも「買わなきゃならない」商材って多いですよね。歯磨き粉やシャンプーもそうです。何かは買わなきゃならない。「あ、美咲、シャンプー買いたくなってきたかも!」って感じじゃなく、なくなっちゃったから買わなきゃ、と。
選ばれるときに選ばれるための戦術が必要、と。
そうですね。マスマーケティングで多くの消費者の認知をカバーしつつ、認知だけでは取りきれない人にきめ細かくWebやソーシャルでアプローチするやり方って可能性があると思うんです。短期記憶の争奪戦!みたいな。先っちょの。
それがソーシャルの貢献、ということ?
そうですね、生活消費材にとっての、ひとつのソーシャルの活用の仕方だと思います。ソーシャルって言うと、すぐにクチコミ、クチコミって思うじゃないですか。でも、生活消費材のクチコミって、すごく少ないですよね……。
そうそう、極めて少ない。
私がおうかがいする企業のご担当者の多くは、「ソーシャルメディア活用=自社のファンに商品をクチコミしてもらう」って感覚をお持ちの方って本当に多いんです。でもそうじゃないですよ!って。
なんか短絡的よね。
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