一石三鳥、ワンランク上のブログの書き方
コンテンツは現場にあふれている。会議室で話し合うより職人を呼べ。営業マンと話をさせろ。Web 2.0だ、CGMだ、Ajaxだと騒いでいるのは「インターネット業界」だけ。中小企業の「商売用」ホームページにはそれ以前にもっともっと大切なものがある。企業ホームページの最初の一歩がわからずにボタンを掛け違えているWeb担当者に心得を授ける実践現場主義コラム。
宮脇 睦(有限会社アズモード)
心得其の百弐十四
ブログが書けないあなたに捧ぐ
「ブログを書かされてるんだけどネタがなくて困っている
」
学生時代の友人が業務命令で「ブログを書かされている
」と愚痴をこぼしていました。最大の問題は「ネタ」がないことで、次が「(文字が)埋まらない」といいます。日常の出来事をネタにする方法をレクチャーすると「そんなものでいいの?
」と驚かれましたが、そもそも毎日エキサイティングな出来事があるわけもなく「そんなものだ」と納得させます。
そして「埋まらない」とは、ネタがあっても文章力のなさから数行で文章が終わってしまうというのです。これはちょっとした技術で簡単に「埋める」ことができます。そしてブログの質をワンランクあげ、SEOも望める一石三鳥な技術です。それは「水増し」。
本稿を書くに当たり3か月ほど逡巡しました。執筆者として手の内を晒すことであり、水増しがばれて私の原稿料に響くことを怖れてです。しかし、水増しを教えた後の友人の笑顔が、サイトの向こう側にいる読者と重ねり公開することにしました。
馬の骨の説明
実際には短い文章を書くほうが難しいのですが、業務として「書かされている」ブログの場合はある程度の長さが求められます。駄文でも文字が埋められていれば「ノルマ」は果たしたことになる、かといってあまりにもくだらないことを書くこともできません。そこで「詳細情報」で水増しします。
まずは企業名などの固有名詞で使います。弊社は「アズモード」。これだけなら5文字ですが、法人格を表記すれば「有限会社アズモード」で9文字です。さらに「有限会社アズモード(東京都足立区)」と所在地をいれ、さらにさらに「宮脇睦が代表取締役を務める有限会社アズモード(東京都足立区)」とすれば30文字、6倍の文字数です。社名に対して代表者や所在地といった「詳細情報」を記すだけのことです。ちなみに町名は「古千谷」で「こぢや」、私の名前「睦」は「あつし」と読み、こうした難読地名や名前のよみがなを入れるのもありです。
ご近所情報で埋める
「アズモードにホームページの相談をした」がブログのネタだったとします。相談内容はビジネスに触れるので公開できません。こんな時は「ご近所情報」で水増しします。弊社のすぐそばには「毛長川(けなががわ)」が流れており、名前の由来には悲劇の物語があります。そこで
「ところでアズモードの近くにある毛長川はちょっとした伝説に彩られた川だという」
としてから物語を紹介します。また徒歩で10分ほどのところには「都立舎人公園」や「日暮里・舎人ライナー」があります。こうしたご近所情報を紹介していけば簡単にブログが埋まります。
「土地勘もないし、現地に行く暇もない
」
友人はいいました。そこでみせたのが「グーグルマップ」です。毛長川も舎人公園も「ネットで検索」で情報を拾うことができます。頭を抱えて文章を考えるのと、地図で周辺を探しその情報を記すのとどちらが楽でしょうか。
客観性を演出する
「アズモード」とは東京都足立区にある会社で近くに悲劇を由来とする「毛長川」が流れ、大きな公園や新交通システムがある。詳細情報とご近所情報により読者は具体的なイメージを描けます。つまり文字数を水増しすることがブログの質をあげるのです。それは一般的な「素人ブログ」が情報を粗雑に扱っていることの裏返しでもあります。
著作執筆時に編集者からこう教わりました。
「読者が知らないことを著者は書く」
当たり前のことです。だから可能な限り読者が理解するための情報を網羅し説明を尽くさなければなりません。当時の私の原稿は素人ブログそのままでした。無造作に単語を登場させ、人物の背景を説明せずに悲しみを語らせます。それは「足立区と書けば東京とわかるだろう」という独りよがりで染められていました。沖縄の漁師や、香川のうどん職人が東京の片田舎と揶揄される足立区を知らないという可能性を想像もしなかったのです。
水増しとは読者が理解しやすいようにする工夫の1つで「商品化」するには不可欠の工程だったりします。ただし、何でも付け足せばいいというものではなく、読者、客の視点に立つことを忘れてはいけません。
ブロガーの使い道
文字数を水増しするだけなら「ブロガーの○○さんもいっていたが」として「コピペ」をする方法もありますが、これはあまりオススメできません。ブロガーの一般認知度は上地雄輔さんや中川翔子さんがせいぜいで、著名ブロガーと呼ばれていてもネット界だけの称号に過ぎない人が圧倒的大多数です。読者が知らなければ説得力はゼロで、最悪のケースでは「人の意見に態度を合わせている」とされてしまいます。どうしてもというのであれば、先の詳細情報の応用で「時事問題に詳しく著作をインプレスビジネスメディアより来月出版するブロガーの○○さん」としなければなりません。
ラストに向かう前に余談を少し。出版不況が叫ばれて久しいですが、ネットを含めた総数としての「文章需要」は今後も増え続けると見ています。理由は簡単、安いからです。動画、写真、イラストと比較して文章の原稿料は安く、さらにテキストは情報量の小ささからサーバーの負荷が軽くサイトとしても歓迎すべきコンテンツです。今後はより「物書き」の末席の立ち見席ぐらいならば潜り込みやすくなるのではないでしょうか。その実戦訓練の場としてブログ、メルマガの執筆は最適です。もちろん、商品としてのクオリティは必要ですし、残念ながら物書きだけで生活するのは厳しいのですが。
文章力は身を助けるか
「今日のランチはカルボナーラ! 量が多かったけど、デザートは別腹(笑)
」に対して「だからどうした」と突っ込みをいれるのは中川淳一郎さんです。ネットの住民の実相に迫った『ウェブはバカと暇人のもの』(光文社新書)のなかで著者の中川さんはブログで綴られる内容は「一般人のどうでもいい日常
」と喝破します。その通りですが、この時カルボナーラについて詳細情報やデザート別腹説といった周辺情報(ご近所情報)を水増すことで立派な「コンテンツ」となり、三羽目のメリット「SEO」となります。これはコンテンツとして充実させることで、「カルボナーラ」や「デザート別腹説」といったキーワードが検索エンジンにインデックスされることが期待できるからです。ご近所情報の毛長川や舎人公園でも同じです。
文字数を稼ぎ、情報量を増やしSEOも期待できる「水増し力」。さらに先のように長い書籍のタイトルをすべて記し、出版社と著者名を明記するのも「水増し」だったりします。ただしやり過ぎると水っぽいスープのような旨味のない文章になるのでご注意を。そして今回、水増しの説明のために水増しし、正規の稿料を頂戴できるかという不安からいつもの「文字数」の1割り増しにしております。
♪今回のポイント
付随情報が付加価値を生む。
客観性の水増しで文字数増加と信頼アップ。
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