PR 2.0の現場から

まず、自分たちの基準でやってみる

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まず、自分たちの基準でやってみる

YouTubeに日本オラクル公式チャンネルをオープンしたのと同じ時期に、ITmediaオルタナティブ・ブログで玉川さんがブログを開設しました。

玉川氏のブログ「ニュータイプになろう!」
http://blogs.itmedia.co.jp/newtype/

玉川さんがブログを始めるまえに考えたのは、「実名でブログを書く」ことの意味だそうです。

とにかくとことんまでコミュニケーションすること。何があっても逃げない、というのが大事。徹底的にコミュニケーションをすることを考えたら、失敗はあるかもしれないけれど、できるだけ事実に即したことを書くというブロガーとしてのマナーを持つように意識しました」(玉川氏)

(PR 2.0を)始めた頃は、チームにブログを書くことについて詳しい人間はいなかったんです。でも、何かわからないことがあるたびに、『これはどうしたらいいかな』と調べて、皆で情報をシェアして、相談しながらやってきました。だれにも正解はわからない。だからこそ、革命的なことができるような気がしました」(野見山氏)

個人的には、みんなブログは知っていたけれども、それをどれくらい会社に持ち込んでいいのかわからなかった。デジタルネイティブの世代の人たちはすでに持ち込んでいたんですけど、それ以外の人たちはその感覚は持っていなかったんだと思います」(伊東氏)

日本オラクルでは、グローバルでブログに関するガイドラインが用意されていたそうですが、実際に始めるには、それだけでは不安があったようです。

グローバルのガイドラインには、“やってはいけないこと”は明記してあるが、“何をしていいのか”や“どこまでやっていいのか”の範囲がわからないんです。それを僕らが自分たちの基準でやってみせることで、みんながついてくるようになりました」(玉川氏)

そうしているうちに、ブログへの敷居が低くなってきましたね。社内ブログは随分前からできるようになっていたのに、以前は書く人はさほど多くはなかったんです。でも、PR 2.0の取り組みを見て、『あ、ブログって書いてもいいのね』と書く人が大きく増えました。まちがいなく、PRが起爆剤になっていると思います」(野見山氏)

玉川さんをはじめ、社外でブログを通じて情報発信している社員の方々のブログそのものが、ブログを書く際の1つの指針となりました。現在、日本オラクルでは、社内にブロガーを増やすために、外部パートナーと協力してブロガートレーニングを開発中だそうです。

ディレクションからディスカッション、そしてエグゼキューションへ

グローバルからのPR 2.0へのギアシフトというディレクションの一方で、実際のアクションは各事業部に任されていました。PR 2.0の活動をディスカッションするために、アジアのマーケティングとPRの担当者がシンガポールに集まり、3日間の合宿を実施したそうです。

ブログは読んだことがある、wikiだって知っているが、コミュニケーションに使うというのは大きなチャレンジでした。メンバーの多くはデジタルネイティブの世代ではなかったので、強制的にやっていかなければならなかった。これは日本だけの問題点ではなく、他の国々でも同じでした。

合宿では、7~8名のチームで分科会を作り、ワークショップをやったりして、どうやってPR 2.0をエグゼキューション(実行)していくのかを考えました。それぞれが社内ブログやwikiを使ってディスカッションしていったのですが、そのアクションを通じて、自身が体験してフィードバックするというWeb 2.0のスタイルを実際に体験して実践していくことになりました」(玉川氏)

この合宿の後、「急ピッチで変わらなければならない」(玉川氏)という意識のもとに国内でディスカッションがスタート。最初の2~3か月は「毎日が発見」だったそうです。

現在、日本オラクルではPR 2.0のテーマとして次の3つを設定しています。

  1. ステークホルダーマネージメント
  2. 何を使ってPR 2.0を体験・実践するのかというエグゼキューション
  3. どうやってモニタリングするかの効果測定

PR 2.0におけるステークホルダーマネージメント

3つのテーマのうち、ステークホルダーマネージメントは、社内からスタートしました。まず経営会議でPR 2.0の実施を宣言したそうです。

経営陣は、ブログがあることはもちろん知っています。ブログを活用することに対して経営層から受けた質問は『今までの仕事はどうするの?』というものでした。それに対して我々が『もちろん引き続きやります』と答えたところ、『パフォーマンスを維持できるならいいよ』という感じでした(笑)」(玉川氏)

従来から社内で活用していた、メールや電話でのコミュニケーションに加えて、新しいツールの活用を推進していくことは、社内の情報流通を変えることになります。そういった取り組みを社内に浸透させていくためには、工夫も必要でした。

最初に、社長自身にYouTubeに登場してもらったんです。買収をしたあの会社の事業はどうなったのかなどの情報を、社長が動画で直接語りかけることで、社内ブログにも良い影響があると期待しました。

社内の20代エンジニアは、こういったアクションへの対応は早く、すぐに理解してくれましたよ。そこで、PR 2.0に抵抗する人たちに対して、直接話をしたり経営会議で説明したりして、この取り組みを若手がどう評価をしているかの声をフィードバックしていきました。すると、徐々に『結構、効くんだね』という理解を得られるようになっていきました。

あとは何か発表会があるたびに、スポークスパーソンにインタビューして、動画でYouTubeに公開しています。そうすることで、PR 2.0に直接関わる人が少しずつ増えていくんです。否応なく巻き込んでいく、なにかを広げるときの原点ですよね」(玉川氏)

社外のステークホルダーマネージメントはどう変わっていったのでしょうか。特に、これまで広報として最大のステークホルダーであったメディアの人たちとの関係はどう変わったのでしょうか。

オンラインメディアの人たちはPR 2.0を理解していますが、紙メディアの人たちの変革が大変なんです。彼らはオンラインメディアを肯定しすぎると自分たちのビジネスモデルを破壊してしまうことになるのです。まさしく、イノベーションのジレンマですね。

とはいえ、メディア王と呼ばれるルパート・マードック氏が、ネットの大きな力を認めざるを得ないといったことを、ニューズ・コーポレーションの社員集会で言っているんです。つまり、時代はこちらに向かっている。僕はそれを信じたので、メディアの方々に影響することを意識するようにしました。もともとPR 2.0という大きな波に対しての認識は非常に高い方たちなので、オラクルがそれをやるとなると無視できない、と思ってくれたようです」(玉川氏)

玉川氏はミニブログのtwitterも利用しており、玉川氏のtwitterアカウントのフォロワー(情報をチェックしている人)には、専門誌の記者もいるそうです。メディア企業のオンラインへの流れは、もはや止めることができません。そんな中、日本オラクルのPR 2.0への取り組みは、メディアとしても注目をせざるを得ないという状況なのでしょう。

玉川氏のTwitterアカウント
http://twitter.com/Wagamatt

コンテンツとコミュニケーションにフォーカスを

YouTubeやブログを積極的に活用して、スピーディに展開している日本オラクルのPR 2.0への取り組み。とはいえその効果測定やモニタリングについては、まだ明確な結論には至っておらず、議論が続いているそうです。しかし、玉川さんは、少なくともページビュー数が指標になるとは考えていないと明言します。

ロングテールだと言われているブログスフィア(ブログ界)で、単にPV数を計ることはロングテールではなくヘッドの話になってしまいます。そうではなく、コメントがつくこと、トラックバックがつくこと、リンクがつくこと、そういった状況しっかりモニタリングしています。

単にPV数を向上させるのであれば、オラクルに関係ない話題で、今はやりの話をすればいいんですよ。でも、それでPV数が増えても意味がないですよね。一定の求心力が必要だとしても、PR 2.0ではPV数にこだわるのはおかしいと思うんです。僕らが見たいのは、“何について”、“誰と”、“どう”コミュニケーションできたかということ。結果としてのPV数ではなく、コンテンツとコミュニケーションの中身をみることにフォーカスしています。コミュニケーションが発生したときに、中身がポジティブなのかネガティブなのか、そこに課題や論点があるのか、そういった数値化のできない定性的な評価をしています。

そこにきちんとした分析や評価をどうやって入れていくかは、今後の課題として残っているのですが」(玉川氏)

ワールドワイドで開催された勉強会では、直近のあるテーマについてPR 2.0を実行するプランを作って、それをシミュレーションではなく、一般の人に見える形で実施するといった動きもしているオラクル。世界規模でシェアされる効果測定やモニタリングの仕組み作りがどういったものになるのか楽しみです。

◇◇◇

日本オラクルといえば社員数が2,000人を越える大企業です。PR 2.0のようなオープンで新しいものへの取り組みとはほど遠いイメージがありましたが、今回の取材で、そのイメージは払拭されました。

自らPR 2.0を実践している玉川さんは、この新しい挑戦について「自分たちが走りながら同時に道ができていく。走っていくと行き止まりだったり、崖だったりはあると思うが、戻るか、別の道を選択すればいいだけですよね」と言い切り、まったく失敗を恐れていません。広報部門として、根回しをはじめとした社内のコミュニケーションのプロが実施しているということもあると思いますが、「会社として先駆者でありたい」という伊東氏の言葉に、オラクルの持つイノベーターとしての企業文化を感じました。

多くのメディアが注目している日本オラクルのPR 2.0の取り組み。「PR 2.0の現場から」をお読みのみなさんにとっても、具体的に何を、どうするのかを示す指標となるのではないでしょうか。

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