企業ホームページ運営の心得

差別化のゴールは神。できないのなら商売を辞めろ

Web 2.0時代のド素人Web担当者におくる 企業ホームページ運営の心得

コンテンツは現場にあふれている。会議室で話し合うより職人を呼べ。営業マンと話をさせろ。Web 2.0だ、CGMだ、Ajaxだと騒いでいるのは「インターネット業界」だけ。中小企業の「商売用」ホームページにはそれ以前にもっともっと大切なものがある。企業ホームページの最初の一歩がわからずにボタンを掛け違えているWeb担当者に心得を授ける実践現場主義コラム。

宮脇 睦(有限会社アズモード)

心得其の百参

12年前の自分にかける言葉

「待っていたよ。今から御社と取引させてほしい」

「代金は前払い、言い値で結構」

会社員時代に夢見た台詞です。飛び込み営業で露骨に「キョヒられる」のは日常で、商談にこぎ着けた彼岸では強烈な値引き交渉が待っていました。独立後、冒頭の台詞に現世で出会えました。請求書を懇願され、代金を上乗せして支払いたいという申し出もあります。値下げしろではなく、値上げしてくれとお客さんが頼んでくるのです。タイムマシーンがあるなら、目の前で名刺をゴミ箱に捨てられていた時代に戻り、ひとまわり若い私の肩を叩いてこう告げるでしょう。

「差別だよ。差別化」

前回の「技術」は入り口に過ぎません。差別化のゴールは「神」となること。クリスマスには「福音」が適切でしょうが、我が家は浄土真宗ですので念仏と共にお届けします。

ハイエナから神へ

営業マンと対峙した客は警戒します。財布を狙う「ハイエナ」のイメージがあるのでしょう。しかし、渋谷109のカリスマ店員や、3つ星レストランの給仕係の「オススメ」に「ありがとう」と答える人は少なくありません。大別すればどちらも「営業マン」。ハイエナは警戒され、カリスマと3つ星給仕は感謝されます。

両者の違いは「情報」です。カリスマ店員は流行色や着こなし術を語り、給仕は旬のブリが水揚げされた海の説明をします。取引に関係のない「情報」を提供し金銭以外の「価値観」を示すことで、客は「教わる立場」となります。シュシュの可愛い使い方をティーチングされ、三陸沖の魚が旨い理由を教育された客の目に、営業マンは啓示を与えてくれる「神」に見えることでしょう。これを「情報の上流に立つ」といいます。

一方、ハイエナ営業マンは商品と価格を語ります。客はわかり易い「価格」を軸に評価を下し、損をしたくないという心理から低めの「価値」を査定します。

足立区に見るダメ差別化

パッケージ、イベント、ネーミングといった差別化の技術は「情報の上流に立つ」ために使います。情報を流す側になることで、主導権を握り、客をコントロールします。ヨーロッパの高級ブランドはその最たるもので、彼らは「ブランド」という「情報」で客を管理下におきます。差別化=ブランドといってもいいでしょう。そしてブランドは「育てる」ものです。

この「育てる」には注意が必要です。我が町足立区は産業と観光に力を入れており、産業振興として優れた製品・技術を認定する「足立ブランド」、観光では東武伊勢崎線竹の塚駅からの道路をイルミネーションで飾り付ける「光の祭典」を主催してブランドを作り出そうとしているのですが……。

スタミナ苑という観光資源

足立ブランドに認定されるのは「製造業」ばかりで、竹の塚駅前で八百屋を営む義父は「光の祭典」の経済効果を感じていません。

ブランドを作りだすために、新しいことを始めたがる人がいますが、多くの場合「幸せの青い鳥」というオチが待っています。区内の製造業から元気な話しはあまり聞こえてきませんが非製造業は元気で、トレジャーファクトリーというリサイクルベンチャー企業は株式上場を果たし、焼き肉のスタミナ苑には台湾から客が訪ね、「涌井」「田中商店」という人気ラーメン屋の周辺では駐車場待ちのクルマがたむろします。これらは「観光資源」でもあります。あなたが「産業観光局」の責任者ならどちらを活用するでしょうか。

「新しい取り組み」と「ブランドを育てる」とは似て非なるものです。すでにあるものから取り組むのが成功の早道です。

すべてのビジネスに通じること

ブランドを作りだせる特徴(差別化)がないという相談に「ならば商売を辞めなさい」と答えます。それは、こういっているのと同じだからです。

「弊社には客にオススメできる商品も技術もありませんが金を払ってください」

特徴がないと堂々といえるのは客を軽んじている行為です。実際には「長所」は多く、餅は餅屋の例えがあるように、専門的な知識や、客を惹きつける魅力が必ずあります。だからこそ「あるもの」から取り組むことを薦めるのです。平たくいえば客が「誉めてくれる」ところがブランドの原点です。

とはいえ「謙遜」という日本人的奥ゆかしさが捨てきれない方には「ニュース」を使う方法をアドバイスします。109のカリスマ店員や3つ星給仕は得意分野の情報を使いますが、ニュースでも「情報の上流に立つ」ことができます。差別化に比べれば威力は弱いのですが、ゼロかイチなら迷わず「イチ」を選択するのも商売用ホームページの鉄則です。

専門性が作る神の後光

「リーマンショック 解説」で検索するとヤフーグーグルそれぞれの一番目に表示されるのは埼玉県春日部市にある「だるま不動産」です(12月6日現在)。街角の不動産屋にリーマンショックの解説を求めて客が訪問することは考えにくいのですが、リーマンショックの解説をネットで探していた「近所の地主」ならどうでしょう?

物流業のライフサポート・エガワはエコキャップ運動に参加しており、2008年11月28日集計で、足立区内の企業・団体部門で首位となったことをホームページで公開しました。CSRに熱心な企業が、新たな物流業者を探しているときにこのことを知れば「商談」につながる確率は高くなります。

ホームページは安価に公開でき、修正も容易です。中小企業が差別化を成功させ「ブランド」となるにはこれ以上のツールはない! と、名刺を捨てられなくなった今の私は断言します。専門知識やニュースを「差別化」を意識しながら公開していく。まとめればこれだけで、神への扉が少し開きます。但し、情報公開という手段を目的にすると本末が転倒しますのでご注意を。

聖なる夜に同業者へプレゼントを。

情報で差別化を目指すなら「HP技術」の解説は徒労ですよ。圧倒的多数の一般ピープルには何が書いてあるのか理解できませんから。

♪今回のポイント

あるものを活かすのが差別化の基本。

情報を発信する側にまわることでハイエナから神へ。

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