コミュニティのチューニングノウハウ
コミュニティのチューニングノウハウ
「ケータイと恋愛の法則」コミュニティの加入メンバー数は、キャンペーン終了時の4月末時点で1万6000人を超えた。毎週「ケータイと恋愛」に関するアンケート調査をコミュニティ上で行ったが、最終アンケートの回答者は3000人を超え、当初の目標を上回る結果を手にすることができた。ここでは、そのためのチューニングのノウハウを解説しよう。
コミュニティのチューニングノウハウ(1)
なにをするコミュニティかを明確に宣言すること
コミュニティには紹介文があり、誰もが最初はその紹介文といくつかのスレッドを覗いてから入るかどうかを決める。紹介文が宣伝臭に満ちているのはSNSにおいてはあまり好まれない。今回のコミュニティでは図3のような紹介文を使用した。
ボーダフォンが運営していることを冒頭で宣言しつつも、主役はユーザーの恋愛体験であることを強調している。恋愛心理研究家の先生の分析が受けられるというライブなインセンティブを提供しながら、運営側がユーザーと共に作っていきたいという姿勢を明確にしている。
コミュニティのチューニングノウハウ(2)
コミュニティ一覧でかわいさが目に付くアイコンにすること
mixiのコミュニティアイコンにはGIFアニメが使える。キャンペーンコミュニティではループで変化するGIFアニメを採用した。また、最も目立つ形状である正方形のカドマルを使い、参加ユーザーのコミュニティ一覧の中で目立つようにした(図4)。
これは、参加ユーザーがアクセスをしやすくすることを目的としているのではなく、参加ユーザーの友人がコミュニティ一覧を見たときに興味を持つようにするためである。新しいコミュニティに入る動機は自分のマイミクからもらうことが多いからである。ある嗜好性を信頼している友人のコミュニティ一覧に入ることは、バイラルを誘発する要因として極めて重要である。
コミュニティのチューニングノウハウ(3)
コミュニティ更新情報一覧に常に入るようにすること
コミュニティ運営の難しさは、加入させることにあるのではない。加入してから継続してアクセスしてもらうことにある。そのためには、常にスレッドがアクティブであり活気に満ちている必要がある。
しかし、複数のスレッドが同時にアクティブになりすぎると、参加ユーザーのコミュニティ更新情報一覧がそのコミュニティに占有されてしまうという事態にもなりかねない。そうなってしまうと逆に「うざい」と感じられて退会されてしまうという可能性が出てきてしまう。
理想の更新頻度とは、常に1つのスレッドがユーザーのホーム画面に表示されるようにすること。そのために、スレッド自体が常に書き込まれるような発問になっていることはもちろん、コミュニティ全体の複数のスレッドの中でどれが現在書き込むべきスレッドなのかを明確にする必要がある。
「ケータイと恋愛の法則」コミュニティでは、毎週アンケートをとるスレッドをメインに設定して、その他常設スレッドは2つに絞ることで、更新情報への出現度をコントロールした。
コミュニティのチューニングノウハウ(4)
スレッドの書き込みパーミッションを図形を使って明確にすること
図5は、「ケータイと恋愛の法則」コミュニティのある日のトップ画面の表示である。●や▲がスレッド冒頭に付いている。これは、ユーザーに書き込んでもらいたいスレッドとリードオンリーもしくは書き込みを終了させたいスレッドを明確にするための手法である。
mixiのコミュニティはその機能上、動的に書き込みのパーミッションを変更できない。ある期間からある期間までは書き込みOKで、ある期間からはNGにするということができないのである(アンケート回答期間は設定できるが、コメントはいつまでも書き込み可能)。
しかし、このパーミッションを曖昧にしておくと、いつまでもユーザーが書き込みを続けてしまい、その結果、先に触れたように同一コミュニティの更新情報が複数ユーザーのホーム画面に上がってしまうという好ましくない状況を誘発する。そのため、スレッドごとの書き込み可不可の状態を示すある法則性を作り、記号と共に表記するのである。コミュニティ紹介ページには図6のように表記した。
コミュニティのチューニングノウハウ(5)
心に入り込む発問をすること
コミュニティで最も大切なのは運営側とユーザーがきちんと対話することである。それはスレッドの中で対話するというだけでなく、そのコミュニティがある全体性の文法を持ってユーザーに接していくということ。
「ケータイと恋愛の法則」コミュニティではアンケートの発問に関して運営スタッフと恋愛心理研究家と議論を重ねてチューニングをほどこした。キャンペーン全体をくくる「自分ごと化」をテーマとして「ケータイ」の使用シーンや「恋愛」の状況についてのアンケートに答えるときに必ず自分の経験や体験を参照しなければいけないような発問にした(図8〜図10)。
このような発問は、誰もが自分の体験済みのことであるので参照しやすく、さらに相手や事柄に連鎖しやすいのでより心が動く可能性が高まる。書き込んだユーザーのコメントを見て共感したり、自分の場合はどうだっただろうかと考えたりということを誘発しやすいので、回答率だけではなくコメント率も上げることができた。
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このようにSNSにおけるコミュニティ運営は1つ1つ細かいチューニングをほどこすことで、コミュニティ全体に居心地のいいオーラを発生させ、口コミで大きく広げていくことが可能だ。運営側が心を込めて細心の注意を払い、ユーザーの心の動きを感じながら進めていくこと。それを決して忘れなければ、「炎上」などしないビジネスコミュニティの運営が可能になる。
※この記事は、『Web担当者 現場のノウハウ vol.2』 掲載の記事です。
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