HC大手とEC専業のタッグは小売をどう変える? カインズ+大都が挑む「新たな価値創造」 | ネットショップ担当者フォーラム

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ホームセンター大手のカインズと、DIY用品のネット通販を手がける大都が資本提携を結んだのは2017年8月。なぜカインズはEC企業との協業を選んだのか? 資本提携時、カインズの土屋裕雅社長が「小売業界においては、ECとリアル店舗がより密接に連携し、トータルでサービスを提供していくことが、今後の競争の鍵となる」とコメントしたように、両社の提携は小売業が成長を続けるためのヒントとなる。カインズの高家正行副社長と大都の山田岳人社長がトークセッションに登壇、オムニチャネルコンサルトの逸見光次郎氏をモデレータに「実店舗企業とネット企業による協業の可能性」を探る。写真◎Lab

大手ホームセンター + DIYのネット通販のタッグで「新たな価値創造」

「DIYを日本の文化として定着させたいという理念が一致した」。カインズの高家正行副社長は、大都と資本業務提携を結んだ最大の理由をこう説明した。

株式会社カインズ 取締役副社長 高家正行氏
株式会社カインズ 取締役副社長 高家正行氏

全国208店舗のホームセンターチェーンを展開するカインズと、DIYのECサイト「DIY FACTORY ONLINE SHOP」を展開する大都。実店舗企業とEC企業が提携することで、それぞれの強みを生かし、オムニチャネルを推進できると考えたという。

資本提携を結んだ際のリリースで、土屋社長も今回の協業について次のようなコメントを発している。

大都のDIYに対する柔軟なアイディアと、弊社の豊富な商品カテゴリーが組み合わさり、企業文化の異なる両社が融合することで、新たな化学反応を起こし、これまでにない価値を生み出していけるものと確信しております。(土屋社長)

2社は2016年9月に業務提携契約を締結し、DIY関連商品の共同仕入れを行っているほか、カインズが2017年4月にオープンした「広島LECT店」のDIY用品の売り場を大都がプロデュースするなど関係性を深めてきた。

2017年8月には協業を一層深めるため、カインズが大都に出資。2社の知見を生かした売り場作りやプライベートブランドの共同開発、人材交流、オンラインコンテンツの共同制作などを進めている。

近年、大手企業がネット通販企業を買収、もしくは資本提携するケースが増えており、EC企業が持つネット通販ノウハウなどを取り込むことを目的にしているのがその多くを占める。ECに関する人材、仕入れルート、顧客データなどを、買収や資本提携によって自社のECビジネスに取り組みたいといった思惑があるためだ。

ただ、カインズと大都の資本提携は多くのそれとは異なる。両社の目的は「新たな価値の創造」にあるのだ。

2017年4月にオープンしたカインズ広島LECT店のDIYコーナー
2017年4月にオープンしたカインズ広島LECT店のDIYコーナー
カインズの売り場改革とデジタル戦略に大都の知見を活用

カインズは近年、商品の「体験」を重視した新しいコンセプトの店舗を出店している。たとえば、2017年4月にオープンした「カインズ広島 LECT店」は従来よりも大きなDIY工房を設けている。

また、2017年9月にオープンした「Style Factoryテラッセ納屋橋店」には、DIY工房のほか観葉植物コーナー、インテリアコーナー、キッチン用品コーナーなどの体験スペースを作った。

商品を棚に並べるだけでなく、商品の利用シーンをイメージしやすい「ライフスタイル提案型」の売り場。坪効率を優先した従来の店舗とは異なり、「良い意味でホームセンターらしくない」(モデレータの逸見光次郎氏)のが特徴だ。

2017年9月、体験を重視した新業態の店舗をオープンした Style Factory テラッセ納屋橋店
2017年9月、体験を重視した新業態の店舗をオープンした

高家正行副社長は、カインズが新しいコンセプトの売り場を作った理由について、「お客さまにエモーショナルな体験をしてもらうための、新しい売り場が必要になっている」と説明する。

そして、売り場改革と並行してデジタルマーケティングも強化。DIYで椅子や机などをつくるイメージ動画を制作し、SNSで発信するなど、オンライン上での顧客とのコミュニケーションに取り組んでいるという。

カインズのデジタル戦略においては、2002年からネット通販を手がけている大都のノウハウに加え、2017年3月に大都が事業買収した植物に特化したSNS「検索結果 GreenSnap(グリーンスナップ)」の知見も生かされている。

カインズが「店補での体験」を重視するように、米国でも「体験の場」としての実店舗運営に注目が集まっている

『ネットショップ担当者フォーラム』が連携している米国大手のEC専門誌『Internet Retailer』によると、「街の広場が少なくなっているのに対し、便利なツールの発達によって消費者の自由な時間が増加しています。そう、消費者は時間を過ごす場所を探している」と指摘。その楽しむ場、体験の場を構築するために、新たなイノベーションが必要となってくるのだが、それは、「外部企業との提携」「スタートアップの買収」で実現できると提案している(詳しくはこちら)。

GreenSnap 月間アクセス者数29万人突破 アプリ会員数26万人突破 累計投稿数110万突破 ロハス系、生活感度の高い主婦が中心
大都が運営する植物のSNS「グリーンスナップ」
大都はカインズの店舗網を活用してリアル店舗事業を強化

2002年にネット通販をスタートし、当時はホームセンターの競合のような状態でした。でも途中で気が付いたのです。誰かから奪う売り上げはいずれ誰かに奪われる。そこに社会的な価値があるのか。新しい市場を創造することにこそ価値がある。(大都・山田岳人社長)

大都がカインズと資本提携を結んだ際のリリースで、大都の山田社長はこのようなメッセージを記載した。DIY用品のECを手がけてきた大都にとり、カインズと提携するメリットは大きい。ネット企業ならではの「価値」を、リアルでも提供できると考えているためだ。

また、山田社長は近年のEC市場の動向を踏まえ、「インターネットだけでモノを売っていくことには限界があるのではないか」と指摘する。

日本の現在のEC化率を踏まえると、インターネットだけでは人口の95%に買ってもらえない。市場シェアを拡大するためにはリアル店舗も必要になる。(大都・山田岳人社長)

株式会社大都 代表取締役社長 山田岳人氏
株式会社大都 代表取締役社長 山田岳人氏

大都は2014年に体験型DIYショップ「DIY FACTRY」を大阪市内に出店し、会社帰りの女性などをターゲットにしたDIY教室を運営している。2015年には東京・二子玉川に2号店を出店した。

リアル店舗の重要性が増しているとはいえ、大都がすべて自前で出店するには莫大な投資が必要になる。そこで、200店舗以上のホームセンターチェーンを持つカインズと提携することで、リアル店舗事業を迅速に展開できるようにした。

DIY教室などの開催場所として、カインズさんの店舗スペースを活用させていただく。カインズさんにとっては、会社帰りの若い女性など新しい客層を取り込めるメリットがある。そういった相乗効果を生み出したい。(大都・山田岳人社長)。

DIY FACTORY FUTAKOTAMAGAWA
大都が運営する体験型DIYショップ「DIY FACTORY」
クリック&コレクトの実現をめざす

カインズと大都がめざすオムニチャネルの具体的な取り組みの1つとしてあげたのが「クリック&コレクト」の実現。クリック&コレクトとは、オンラインで商品を注文し、リアル店舗などの専用拠点で商品を受け取る買い物形態のこと。

DIYで使われる工具や建材、ネジといった商品は業務用の注文も多い。そのため、「工具などが必要になったときに、注文してすぐに商品を使いたいというニーズは非常に多い」(山田社長)と言う。

現在は、工具や建築部材などが必要になったとき、ホームセンターに行って商品を探すのが一般的。その際、店舗に在庫がなければ他店に探しに行かなくてはならない。山田社長はクリック&コレクトの仕組みを作ることで、こうした不便を解消したいという。

クリック&コレクトは米国などではかなり普及している。いずれ日本でも普及すると思う。カインズさんと、そういうことも一緒にやっていけたら良いと思っている。(山田社長)

逸見氏、高家氏、山田氏

カインズはデジタルを活用して取り組みたい施策の1つとして、顧客の属性や購買履歴などの分析強化をあげた。カインズの208店舗のレジを通過する顧客の人数は1年間で延べ1億人を超える。

そうした膨大な購買データを会員情報と紐づけることで、「いつ、誰が、何を、なんのために買いに来ているか、お客様のライフワークをリアルタイムで知りたい」(高家正行副社長)と言う。

また、ホームセンターに来店する前に、ネットで商品を調べる消費者が増えていることに対応するため、大都が持つデジタルマーケティングの知見も生かしたいと意欲を示した。

DIYを日本の文化として定着させることが、ホームセンターのオリジンとして大事だと思っている。大都さんの力を借りて、一緒にそれを実現したい。(高家副社長)

海外のオムニチャネル最新動向を逸見氏が解説

トークセッションでモデレータを務めたオムニチャネルコンサルタントの逸見光次郎氏が、今後のオムニチャネルに求められるポイントを解説した。

オムニチャネルコンサルタントの逸見光次郎氏
オムニチャネルコンサルトの逸見光次郎氏

逸見氏は、三省堂書店やソフトバンク、セブンネットショッピング、アマゾンジャパン、イオン、カメラのキタムラ、ローソンなどでデジタルマーケティングやオムニチャネルに取り組んだ経歴を持つ。

逸見氏はオムニチャネルに取り組む海外企業の事例として、オムニチャネル先進国である米国のメイシーズ、ホームデポ、ウォルマート、ホールフーズ、英国のカタログ通販企業のアルゴスと百貨店のジョンルイス、ドイツのファッションEC大手のザランドなどの取り組みを紹介した。

たとえば、ホームデポはアプリで店頭在庫の残数を確認でき、POSレジの情報がほぼリアルタイムにECサイトにも反映されるという。ウォルマートはECで注文した商品の受け取り専門店舗を運営し、Jet.comを買収して実店舗とECの融合を本格化しているとのこと。英国の百貨店、ジョンルイスはEC化率が20%に達しており、店頭とECの品ぞろえがほぼ同等であることを説明した。

米国 ホームデポ(ホームセンター)
ホームデポなど、海外のオムニチャネルの事例を紹介した

そして、これからのオムニチャネルで重要な5つのキーワードとして次の5つをあげた。

① 顧客理解

国内の人口が減少しており、新規顧客の分母は増えないため、同じ顧客に何度も買ってもらうことを意識する。商品が何個売れたかではなく、「何円使ってくれる顧客が何人いるのか」を考える。「KPI」はライフタイムバリューを重視すべき。

② 単品管理

商品マスターを整理し、在庫情報をインターネットで表示する。商品の単品管理が必須になる。

③ 組織と評価

ECから店舗に送客した場合、売り上げに応じてEC部門を評価する仕組みが必要。ECの評価指標はページビューやユニークユーザー数だけでなく、「売り上げにどれだけ貢献したか」を評価する必要がある。

④ 社外連携

オムニチャネルを自社だけで実現するのが難しい場合、相性の良い外部企業と組むことを考えるべき。ユーザーにも企業にもメリットが見込めるのであれば、積極的に業務提携したほうが良い。

⑤ ITの進化

ITに投資する際は、「店舗のオペレーションが楽になる」「社内の作業効率が良くなる」といった投資のメリットを事前に明確にする。そして、作業効率が向上したことで浮いた人員をどこに振り分ければ顧客満足度が上がるか考える

また、逸見氏はオムニチャネルのポイントとして「顧客が触れる情報が、企業の中で統一されている必要がある」と強調。「ECサイトと他の媒体で商品情報が違っているとか、ネットとリアルの顧客情報が連動してないということは避けなくてはいけない」(逸見氏)と言う。

そして、顧客が商品やサービスの情報を知る「情報のチャネル」と、商品の購買にいたる「販売チャネル」の2つのチャネルにおいて、デジタルとアナログによる顧客とのあらゆる接点で、顧客に合わせた情報提供を行うことが重要だと指摘した。

最後に逸見氏は、オムニチャネルの目的を次のようにまとめた。

大量生産・大量販売時代が終わり、価格競争だけではない時代になった。今は顧客から見た自社の強みを理解し、顧客中心の仮説を立てながら、商品・サービスを提供する仕組みを作り、改善し続ける時代。オムニチャネルはあくまで手段。言葉がバズワードで消えても、ネットを活用して商売する時代は変わらない。顧客の立場で考え、便利で安くなったITツールを活用し、より便利で楽しい買い物によって顧客満足を高め、継続的な顧客と関係性を持ち続けて利益を得ることがオムニチャネルの目的だ。

逸見氏、高家氏、山田氏

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渡部 和章
ライトプロ株式会社 代表取締役

渡部 和章(わたなべ・かずあき)

新聞社で約7年半、記者を務めた後、2015年に編集プロダクションのライトプロを設立して代表に就任。編集者兼ライターとしても活動中。

趣味は料理と漫画を読むこと。東京都在住。1983年生まれ。

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