![担当者に聞きました](http://netpr.jp/wp-content/uploads/2016/09/jirei_wacoal-2-644x429.jpg)
ワコールでは、さまざまなキャンペーンを通じて、パンツで親しい人にエールを送ったり、頑張る人のゲン担ぎアイテムとしての新たな価値を提案しています。
今回、そうした“パンツPR施策”を振り返ってお話を伺ったら、ソーシャルで話題化させるいくつものポイントや、リリースの情報価値の高め方など、ネットPRに生かせるさまざまな知見が得られました。
お話を伺った方々
株式会社ワコール
布川 篤氏(総合企画室 広報・宣伝部 京都広報・宣伝課)
北見 裕介氏(総合企画室 広報・宣伝部 WEB・CMR企画課)
(※役職は2016年8月現在)
8月2日「パンツの日」企画に込めた想いとは?
──ワコールでは今年、申年に赤い下着を身につける「申赤」キャンペーンや「パン捨離」など、楽しい企画をいろいろ打ち出していらっしゃいます。今回は、そうしたさまざまなパンツ企画を改めて振り返ってお話を伺いたいと思います。
北見(以下、敬称略):最初にご説明させていただくと、当社ではレディースアイテムは基本的に「ショーツ」と表現しています。
ですが年に一度、8月2日の「パンツの日」前後だけは「パンツ」という表現を期間限定で使っています。そのほうが男性にも女性にも幅広い人たちに楽しんでもらえる企画になるからです。
布川:ワコールは女性の下着だけではなく、男性用の下着も取り扱っています。「パンツ」という共通のワードならば、すべての方に話題が提供できる。
8月2日の「パンツの日」はパンツの話題が最も拡散しやすいタイミングですので、女性はもちろん、ワコールは男性用のパンツもやっているんだよ、ということも知ってもらうためにいろいろとネタを考えています。
北見:「パンツの日」は語呂合わせなので、「8月2日はパンツの日」と聞くだけで面白味がありますし、盛り上がりやすい。
記念日では他にも、2月12日の「ブラジャーの日」がありますが、1914年にブラジャーが世界で始めて特許申請された記念日で、当社ではその日は「自分のカラダに合ったブラジャーを身につけましょう」という啓蒙的な企画を主に行っています。
由来が真面目だと、記念日企画も比較的真面目なトーンになりやすいというのはあると思います。
「キーワード化」するとシェアされやすい
![株式会社ワコール 北見 裕介氏](http://netpr.jp/wp-content/uploads/2016/09/wacoal_ph3-1-644x429.jpg)
株式会社ワコール 北見 裕介氏
──なるほど、「パンツの日」はそういう意味ではソーシャルメディア向けの記念日ですね。ネットで話題化しやすい企画はどうやって生み出しているのですか?
北見:2014年に「あなたのBlogで、『私はパンツ』というテーマで短編小説を書きませんか?」という企画を行ったとき、最初は「パンツで小説!?ワコールは突然何を言い出したんだ?」という反応だったんですが(笑)、応募してくれた方々がみなさんアイデアを練ってきちんと書いていただけたおかげで、面白がりながらも好意的な雰囲気で話題が広まったと思います。
その延長線上で2016年は、「クラウドパンツィング!?」という公募企画を行いましたが、これまでソーシャルメディアでキャンペーン企画をいくつか行ってきた経験から、まず一つは「キーワード化」するとシェアしてもらいやすくなるというのは言えると思います。
「身内ウケ」で盛り上がれる話題を提供
──「クラウドパンツィング!?」という造語はユニークでした。
北見:「クラウドパンディング!?」と「クラウドパンツィング!?」ならどっちのネーミングのほうがわかりやすいかという社内議論も途中にはありました(笑)
2つめは、「身内ウケ」をできるだけ多く作ることを心掛けました。企業がソーシャルメディアで情報発信すると、大量投下でマス広告と変わらなくなりがちなので、ソーシャルで話題にしてもらいたいときは、身内で盛り上がれるネタやワードをいくつも提供することが大事だと考えています。
「クラウドパンツィング!?」は、応募してくださった団体の活動に「いいね!」やRTで応援してもらい、シェア数を独自集計して「パンツポイント」と名付け、そのパンツポイントを82集めたらパンツをプレゼントします!という企画です。
まずは応募団体の方たちが「私たちこの企画に参加しています!」とシェアしてくれる動線ができ、それを見た知り合いの方たちが反応してくれる。そんなふうに小さな応援の輪をたくさん作れたらいいなと。
──知り合いのツイートやFacebookなら気軽に反応できますね。
北見:ただ、一つだけ今回の反省点としては、ほぼ一瞬で全チームが82パンツポイントを達成してしまったのがちょっと早すぎたな、と。
布川:そういう意味では、ネット上の反応はものすごくよかったと思います。達成するパンツポイント数をいくつにするか話し合ったときに、「パンツの日」と同じ語呂合わせで「82」がいいだろうということになりまして。
パンツポイントを獲得するには、団体のメンバー以外の人にシェアしてもらわないといけないので、82でも少しハードルが高いのではないかと思っていたんです。ですが結果的には、クリア目標の2倍近くシェアが集まりました。
マスコミ関係者に響く仕掛けを組み込む
![株式会社ワコール 布川 篤氏](http://netpr.jp/wp-content/uploads/2016/09/wacoal_ph1-1-644x429.jpg)
株式会社ワコール 布川 篤氏
──不思議だったのは「クラウドパンツィング!?」の企画と、しりあがり寿氏の関係です。今回、キャンペーンページのタイトルとイラストをしりあがり寿氏が手掛け、ワコールはしりあがり寿氏の個展「回・転・展」を応援していました。
布川:「パンツの日」は、たくさんの方にパンツを楽しんでもらうことを目的に企画を立てていますので、しりあがり寿さんのお名前はこれ以上ないくらい最適ではないかと思っています。英語にすると「ヒップ・アップ・ハッピー」ですから(笑)。我々がお伝えしたい「パンツでハッピーに」そのままです。
──「“しりあがり寿さん”を英語にすると?」は、周囲の編集者やライターの人たちが反応していました。
北見:当社はこうしたWeb企画を社内で考えることが多くて、部署内の雑談レベルでいろいろなアイデアが飛んできたり、社内ですれ違いざまに意見交換したりする中で企画が固まっていきます。しりあがり寿さんも、そうした中から飛び出したアイデアです。
しりあがり寿さんはお仕事柄、出版や広告といった業界の人たちに非常にウケがよくて、そういう方たちはソーシャルでの発信力やメディアへの影響力があります。「しりあがり寿さん+ワコール」という組み合わせの意外性のほかに、そういった影響力を狙ったというのはやはりありますね。
というのも、これまでのワコールの認知の高さは「ブラジャーの会社」というイメージがメインです。それは僕らの先輩たちがずっと作り上げてきた大切なブランドイメージでもありますが、一方でメンズパンツもやっていることは、まだあまり知られていません。
「ワコール」と「メンズパンツ」という2つのワードを上手くつなぐために、消費者間で情報を流通させるにはどうしたらいいだろう?と考えて、いろいろなルートで意外性というか、ちょっと違和感のある話題を投げかけるということをここ数年やっています。
2つの言葉を組み合わせた「違和感」が楽しさを生む
──違和感のある話題というと?
北見:「私はパンツ」企画は「パンツ+小説」。「クラウドファンディング+パンツ」もそうですし、2015年のバレンタインデー企画は「バレンタイン+パンツフラワー」でした。それぞれ2つのワードを足してみたら、すごい違和感がある。それでいて、情報を目にした人がすぐに趣旨を理解できて、話題にしやすい。
理解されやすいメッセージにするために、余計な要素は足さずに中心となるメッセージをストレートに伝える配慮もしています。
例えば、バレンタインデー企画では「パンツをまるめたら 花になる」というアスキーアートをソーシャルメディア上に置いたんですが、アスキーアート自体はネット上でよく使われているものを2つ組み合わせただけで、新しいものを創り出しているわけではありません。
でも、ネットでよく目にするものだからメッセージがすんなり伝わった。
Web企画はリアルとの連動が必要
![wacoal_ph6](http://netpr.jp/wp-content/uploads/2016/09/wacoal_ph6-1-644x429.jpg)
──組み合わせの妙ということですね。ソーシャルメディア企画は、そのくらいの気楽さで行ったほうがいいのかもしれないと思いました。
北見:とはいえ、Webの中だけで完結するような情報は、あまりウケないと自分は思っているんです。ネットはリアルの出来事が情報化されて反映される場だと思っていて、情報のもとにはリアルな出来事があるはずです。
Instagramは、まさにそういう文化ですよね。企業が発信する情報やWeb上のキャンペーンも、リアルのファクトやイベントと連動しているほうがいいと僕は思っているんです。まあ、企画でそれをやるのは大変ですけど(笑)
──今回の「クラウドパンツィング!?」は、そのリアルの部分を参加チームの活動が担っていたわけですね。
北見:そうです。
他にも、Web企画とリアルの連続性を示すためによくやるのは、面白さを狙った企画でも、そのリリースは真面目に調査データなどを交えて企画の背景を説明するという。
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