「最終製品を使った臨床試験」によって機能性評価を行う条件は3つある(表)。トクホに準じた試験とは、前回説明した「ランダム化比較試験(RCT)」がベース。併せていくつかの要件を求める目的は研究の「再現性」、つまり誰が行っても同じ評価、結果になるという"確からしさ"を担保するためだ。この考えは、機能性評価を行うもう一つの手法である「システマティックレビュー」でも一貫している。
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最近、「ディオバン事件」や「STAP細胞」など医療分野で不祥事が相次いだ。高血圧治療薬の臨床研究に製薬会社の社員が関わっていた利益相反の問題、再生医療への貢献が期待された万能細胞の論文に対する疑問が呈された問題だ。いくら「STAP細胞はあります!」と言っても、それが世界中の誰がやっても再現できないものであれば、研究過程に欠陥があったと疑われてしまう。
こうした問題を少なくすることを目的に臨床研究分野で取り入れられ始めたのが、論文投稿の際に記述すべき項目をリスト化した「CONSORT(コンソルト)声明」や、研究計画を事前登録する「UMIN(ユーミン)臨床試験登録システム」になる。これら要件を満たした上で「査読付き論文」で報告する必要がある。
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ただ、査読(論文投稿基準に沿った専門家の審査)を受けた論文といっても、一部の学術誌への掲載はカネで買えるものでもあり、形式的な査読しかしないものも多い。昨今のジャーナルビジネスは隆盛で、毎年のように新たな学術誌が発刊され、企業・業界寄り、ビジネス目的のものも多いからだ。投稿数が足りずに掲載を破格で依頼してくるものまである。
“それでは意味がない”と思うが、こうした不正を事前に防ぎ、仮に横行しても論文を読んだ人がきちんと“質”を判断できる基準となるものが、「コンソルト声明」や「UMIN―」になる。
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「コンソルト声明」や「UMIN―」の中身は次回触れるが、よく学術誌の権威を評価する際に使われる言葉に「インパクトファクター(IF)」と呼ばれるものがある。「STAP細胞」の研究が投稿された英科学誌「ネイチャー」や米国の「サイエンス」「セル」といったトップジャーナルの場合、IFが「20~30」になる。数字が示すのは、その学術誌に掲載された論文が1年間でほかの論文に引用された回数の平均値。「20」であれば、その学術誌に掲載された論文が年平均20の論文に引用されていることになる。このレベルの学術誌になると、論文の採用率も0.1~0.5%と極めてハードルが高い。
ただ、IFが「2」だから論文の“質”が悪いということはない。IFは研究分野によっても異なるし、一つの優れた論文が学術誌全体のIFを稼いでいる場合もある。重要な論文が掲載される可能性が高いことは確かだが、がん研究など関心の高い分野の学術誌であればIFは高くなるし、反対に、「天然由来の健康食品は未知の部分も多く、科学としては“真実性が低い”との評価を受けやすい。健食の研究であればIFが『0.5』であっても普通」(企業の研究開発担当者)といった見方もある。科学として最先端で、興味深く、真実性が高くなければIFの高い学術誌にも採用されにくい。
IFは論文の質を評価するものではなく、あくまで学術誌の評価でしかない。ちなみにIFがつくのは英語論文のみ。日本語で投稿できる国内誌の場合、どんなものでもIFは「0」になる。高いことに越したことはないが、それより、どんな学術誌に掲載されたものであれ、きちんと研究されているという真実性や再現性を担保する「コンソルト声明」や「UMIN―」がより重要になる。
「機能性表示食品制度」に関連した連載です。 前回までの記事は以下をご参照ください。
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オリジナル記事:機能性表示食品制度で「UMIN臨床試験登録システム」「コンソルト声明」が重要視される理由 | 通販新聞ダイジェスト | ネットショップ担当者フォーラム
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