- 編集部の見解や意向と異なる内容の場合があります
- 編集部は内容について正確性を保証できません
- 画像が表示されない場合、編集部では対応できません
- 内容の追加・修正も編集部では対応できません
株式会社オムニバスによる事例インタビューの連載です。本インタビューでは株式会社マクロミル マーケティング&プロダクト本部 マーケティングコミュニケーションユニットの広瀬 信輔さんにお話をお伺いします。第三本目となる本記事は「マーケターの将来像」についてお届けします。
マーケターとしての視野を持ったアドテク活用を
—— 広瀬さんの発言で、『アドテクをアド以外で使う』というのが印象的でした。この点について、詳しくお聞かせください。
今では、アドテクノロジーの根幹をなす技術であるCookieやSDKですが、これらはアド(=広告配信)から生まれたテクノロジーではありません。テクノロジー登場後にアドへ活用できる仕組みが整い、デジタルマーケティングに取り入れられるようになりました。
そもそもアドテクノロジーは、アドのみに留まらず、マーケティングにおいて幅広い活用が可能です。しかし、広告配信でしか活用されていないケースが多いため、今後、より広い“マーケティング”という観点でテクノロジーを活用していくべきだと考えています。
サービス開発の例でお話しすると、弊社には「AccessMill(アクセスミル)」という、広告接触者にリサーチするサービスがります。このサービスは、第三者配信が登場する前から存在していました。当時は、企業のオウンドメディアにタグを設置し、その訪問者にリサーチすることが主な用途でした。しかし、第三者配信登場後、ピギーバックという機能に目をつけ、より多くのユーザーにリサーチすることが可能となり、サービスの価値を高めていきました。今では、弊社のリサーチ事業を支えるサービスに成長しました。アドテクノロジー全体で見ると、広告のためのテクノロジーに見えますが、様々なテクノロジーが束になっているため、分解して理解すると違った活用方法を見出しやすくなります。
—— その問題の一因としては、データを分析して、ユーザーの属性やインサイトまで推察し、マーケティングをプランニングできるマーケターが少ないという現状があるのかもしれませんね。
分析よりもプランニングの難易度が高いと思います。例えば、優良顧客の共通点を1st Partyと3rd Partyの2軸で探り、 “最優良顧客群”というセグメントを作ったとします。これをもとに「WebサイトやアプリのデザインやUIをどうすべきか」「どんなキャンペーンを企画すれば喜ばれるか」「メッセージを配信する時間帯やタイミングは適切か」など、マーケティングの議論が進みます。
しかし、その際に注意しなければならないのは、優良顧客群への最も良いであろうプランが必ずしも正解ではないことです。ダイレクトマーケティング施策を考えるのであれば、複数のセグメントにパーソナライズしたコンテンツを発信できますが、オウンドメディアやソーシャルのコンテンツなどは特に、パーソナライズしづらい部分があります。このような場合、(売上やLTVを最大化するための)最大公約数のような考え方で、施策を選択してプランニングする場合もあります。紅白歌合戦の出演者がオリコン上位の歌手だけではないのと同じ理屈です。
—— 最近、デジタルマーケティングの具体的なエグゼキューションまで含めた経営視点でコンサルティングを行う会社も増えていますが?
テクノロジー自体ではなく、使う側の課題の方が多いため、基本的には良い流れと捉えています。しかし、広告配信は外部の広告会社が関与・サポートしてくれる領域ですが、その手前は、本来自社のマーケターが推進すべき領域のはずです。これが出来なかったため、マーケティングの上流からサポートが必要になってきたのではないのでしょうか。反対に、今まで広告配信ばかりが注目されていたのは、それが広告会社の関与できる領域だったからとも言えます。コンサルティング会社が、クライアント企業の中からデータドリブンマーケティング(以下、DDM)を推進することで、ようやくデータを積極的に活用したマーケティングが始まるのかもしれません。
もちろん、データを活かし成果を上げているマーケターもいます。個人的な考えですが、現在DDMを推進しているマーケターは、必要性よりは、「DDMをしてみたい」というモチベーションで動いている気がします。多くのマーケターがDDMに取り組むには“必要性”を感じなければいけません。年代的にマーケティング部のトップはDDMの現場経験があることは少なく、そもそもマーケティングの経験がほとんど無いこともあります。この場合、現場のマーケターにDDMの必要性を説き、推進することは難易度が高いように思います。自社のマーケターが推進するのが最も良いですが、難しい場合は、専門知識を持つコンサルティング会社によるサポートで解決するかもしれません。
—— 株式会社マクロミル マーケティング&プロダクト本部 マーケティングコミュニケーションユニットの広瀬 信輔氏のインタビューをお届けする本連載の第四弾は動画コンテンツマーケットプレイスへの期待と課題についてお届けします。
人物紹介
広瀬 信輔氏
株式会社マクロミル
マーケティング&プロダクト本部 マーケティングコミュニケーションユニット
—2008年に株式会社マクロミルに入社し、現在同企業のWebマーケティング部門の責任者として、デジタルマーケティングを推進。
また、同氏は自身が運営するメディア「デジタルマーケティングラボ」にてフリーのマーケティングコンサルタントとしても活動。ビジネスメディアでのコラム執筆やイベント出演、大手企業のマーケティング支援など活動範囲は多岐に渡る。
著書:『アドテクノロジーの教科書』
ソーシャルもやってます!