プロ野球球団に学ぶ企業コミュニケーション

※この記事は読者によって投稿されたユーザー投稿です:
  • 編集部の見解や意向と異なる内容の場合があります
  • 編集部は内容について正確性を保証できません
  • 画像が表示されない場合、編集部では対応できません
  • 内容の追加・修正も編集部では対応できません

「プロ野球球団に学ぶ企業コミュニケーション」と題して、東京ヤクルトスワローズの広報・PR活動について、株式会社ヤクルト球団 広報部 加藤謙次郎さんにお話を伺いました。
「プロ野球」の広報・PR活動と聞くと、企業とは異なる特殊なものとイメージされるかもしれませんが、本質は同じであり、一般企業にも通じる多くの示唆をお伺いすることが出来ました。

球団を知ってもらい、興味を持ってもらうことで、球団の人気を底上げする

そもそも“球団広報”ってどんなお仕事をされているのですか?

一般的に球団広報と言うと、監督や選手のインタビューを調整・セッティングする仕事だとイメージされることが多いと思いますし、球団によってはそのような業務を主に行っているところもありますが、実際その業務・役割は球団によって異なります。

ヤクルト球団の場合は「球団を知ってもらい、興味を持ってもらうことで、球団の人気を底上げする」ことを目的に、
*マスコミ対応
*WEBプロモーション
*紙媒体の制作・発行(主催ゲーム時に球場で発行する広報誌など)
*地域プロモーション
*マスコットプロモーション
*広告プロモーション
*他スポーツとのコラボレーション
など多岐にわたる活動を色々と組み合わせながら、2名で行っています。

「マスコットプロモーション」と言えば、マスコットキャラクター「つば九郎」を積極的に活用されていますね。

まずマスコットの特徴として、選手と違い怪我をしないこと、スケジュール調整が容易であることが挙げられます。また野球に興味がない方にも、マスコットキャラクターであれば関心を持ってもらうことも可能です。そしてマスコットを活用することで、球場外など活動の範囲を広げることが出来るようになります。そこでマスコットを積極的に活用した展開を進めています。

例えば「つばさんぽ」という企画を2010年から行っていますが、これは東京都内の観光地や商店街など地域性の高いところに赴いて「つば九郎」が散歩するというものです。当初は本当にぶらぶら町中を散歩するというものでしたが、最近ではおかげさまで多くの方々が殺到されるため、混乱を避けるためにトークショーなどイベント的なものに変わってきています。

またオフシーズンには「つば九郎、フリーエージェント宣言!」という企画を実施し、JリーグのFC東京さんや角界などとコラボレーションしたり、「つば九郎の契約更改」といった企画を展開したりするなど、マスコットを積極的に活用しています。

マスコットプロモーションを展開されている目的は何ですか?

昔は誰もが多くのプロ野球選手を知っていましたし、プロ野球の話題が日常的に交わされていましたが、最近は世間でも言われている通り、プロ野球離れが進んでいます。

東京ヤクルトスワローズは東京に本拠地を置く球団ですが、東京都の人口が約1,300万人に対してホームゲームの年間来場者数は約130万人であり、1割にしか過ぎません。プロ野球は今でもマスコミが積極的に取材してくれる土壌にあり、相応の報道がされているにも関わらず、観客数の増加につながっていないのが実情なのです。

そうした中で、チームの勝敗や選手の人気をコントロールすることは出来ませんが、それ以外の部分でチームを盛り上げることによって、東京ヤクルトスワローズという球団を知ってもらい、興味を持ってもらい、そして球団人気の底上げを図ろうと考えました。つまり中長期視点でファンをつくっていくということです。

その一つが「マスコットプロモーション」であり、「つば九郎」を積極的に活用することでメディアに取り上げられる機会を創出するほか、「地域プロモーション」や「他スポーツなどとのコラボレーション」などとも絡めながら相乗効果を図っています。

スワローズが考えるSNS戦略(Swallows Network Strategy)とは?

スワローズでは「マスコットプロモーション」のほか、「SNS戦略(Swallows Network Strategy)」を謳うなどソーシャルメディアも積極的に活用されていますね。

地上波での試合中継の減少などメディア環境の変化はもちろんですが、スワローズ自体の事情も大きな要因として挙げられます。人気球団にはマスコミ1社で複数の担当記者を配したり、地方球団も地元メディアに大きく取り上げられたりします。しかしそれ以外の球団は担当記者が1人しかいないところも多く、マスコミで取り上げられる量は担当記者の人数と比例するため、どうしても人気球団や地方球団と比較すると少ないのが実情です。したがってそのような球団と報道量で競うのではなく、既存メディア以外でのチャネルを開拓しようと考えました。

そうした中で、Facebookやtwitterをはじめ、さまざまなSNSが日常的に利用される環境が整ってきましたので、新しいコミュニケーションチャネルとしてウェブ、特にSNSを積極的に活用することにしました。

具体的にはどのように展開されているのですか?

オンライン施策を行うための仕組みづくりとして、2011年はプラットフォームの拡充を、2012年はコンテンツの深化をテーマに進めてきました。

まずプラットフォームの拡充についてですが、現在オンライン上のチャネルとして、公式サイト、モバイル・スマホサイト、メルマガに加え、Facebook、twitter、Google+、mixi、YouTubeにて公式ページを開設しています。

そしてこれらを個別に展開するのではなく、他のSNSとの連動が容易なYouTubeやTwitterを活用しながら、公式サイトと各SNSを結び付けることによって、最大限の効果を図ろうと考えています。公式サイトはファン側から能動的にチェックしに来る媒体であるのに対して、SNSはファン側が受動的に情報を受け取る媒体であり、それぞれ性質が異なりますので、それぞれの媒体特性に合わせて上手く連動させることを意識しています。

展開するチャネルを拡充するとともに、連動させる仕組みを作ってきたわけですね。一方コンテンツの深化は、具体的に言うとどのようなコンテンツですか?

春季・秋季キャンプの映像をほぼリアルタイムに近い状態でYouTubeにアップしたり、試合ダイジェストや注目選手インタビュー、イベントレポートなどを編集した「つばTUBE」というダイジェストコンテンツをウィークリー配信したりしています。またYouTube Liveで新入団選手発表をライブ中継したり、「Google+」のハングアウト機能(テレビ電話)を活用して、ファンの方とつば九郎とのトークライブを行ったりもしました。
他にもライトファン向けには“美人時計”風に予告先発を告知する「Jingu-Cuties」を実施したりするなど、ライトファンからコアファンまで幅広くご満足いただけるようなコンテンツづくりを進めてきました。

これらはいずれも既存メディアでは取り上げられなかったり、取り上げられてもわずかに過ぎなかったりします。しかしウェブやSNSを活用することで、ファンへ充実した情報を確実に届けることが出来るようになりましたし、アーカイブとして残りますので、いつでもどこでも観ることが出来るというのも大きいですね。

スワローズの広報・PR活動から考える企業のコミュニケーション活動

なるほど。今日のお話を一般企業に当てはめると以下のようなことが言えると思います。

*既存メディア(スポーツニュース、スポーツ新聞、試合中継など)だけで考えるのではなく、幅広くコミュニケーションチャネル(ウェブ、SNSなど)を検討・開拓する。
*事業(野球)はもちろん、事業以外のテーマ(マスコットキャラクターなど)も含めて多面的に訴求することで、認知獲得・関心喚起を促進し、事業へ結び付けていく。
*大手・競合(人気球団・地方球団)と同じことをやるのではなく、自社(スワローズ)が勝機を見いだせるやり方を考える。
*施策を個別で考えるのではなく、連動させる仕組みを作ることで、効率的且つ効果的な展開を図る。
(※カッコ内はスワローズの場合)

そうですね。実際のところ、私たちも最初から今日お話ししたようなことを考えていたわけではなく、試行錯誤しながら今のやり方にたどり着いたというのが正直なところです。まずはやってみる、そしてやりながら考える。そういう柔軟な姿勢が大事だと思います。

本日は貴重なお話を有難うございました。今シーズンの優勝を期待しています。

【インタビュー企画・実施】
「広報スタートアップのススメ」編集部: http://www.pr-startup.com
(運営会社:合同会社VentunicatioN http://www.ventunication.com

この記事が役に立ったらシェア!
メルマガの登録はこちら Web担当者に役立つ情報をサクッとゲット!

人気記事トップ10(過去7日間)

今日の用語

インフィード広告
広告の種類。ネイティブ広告の 1 種。コンテンツが時系列に表示されるタイムライン ...→用語集へ

インフォメーション

RSSフィード


Web担を応援して支えてくださっている企業さま [各サービス/製品の紹介はこちらから]