「仕事の重要度」はこの10年で大きく低下、「人生は自由に動かせる」という肯定感が戻る【電通総研・同志社大調べ
電通グループの社内組織である電通総研と同志社大学(メディア・社会心理学研究分野 池田謙一研究室)は、「世界価値観調査2019」の日本調査の結果を発表した。意識の変化について時系列比較などの分析を行っている。
「世界価値観調査」は1981年に開始され、現在およそ100カ国・地域の研究機関が参加している国際的な調査。日本における調査は2019年9月に実施されており、その結果を先行して発表するものだ。なお「世界価値観調査」はほぼ5年周期で実施されており、今回で計7回めだが、前回調査は2010年に実施されている。
調査結果の概要としては、以下の項目があげられている。
- 「働く」ことの優先順位が低下。「仕事」への意識が大きく変化。
- 自分の「人生を自由に動かせる」意識、増加。若年層に顕著。
- ダイバーシティを尊重する意識、9年前に比べ向上。
- 幸福度と生活満足度は微増で維持。
- ジワリ広がる格差。生活レベルの意識は「上」「下」が微増。
- 21世紀は「日本文化や伝統的価値観」を尊重しつつ、世界と協調する時代に。
- 「政治への関心」はこの9年前に比べ減少。若年層ほど政治への意識は低い傾向。
仕事より他のなにかが重要、人生は自由に動かせるという意識の高まり
まず「家族」「友人・知人」「余暇時間」「仕事」について「生活における重要度(非常に重要+やや重要)」を聞くと、今回調査では「仕事」が他に比べ大きく低下した(2010年84.2%→2019年80.0%)。「働くことが大切でなくなるのは良いこと/気にしない/悪いこと」に聞くと、「良いこと」「気にしない」の合計は、2010年の21.1%から2019年は42.6%と倍増しており、“仕事”“労働”に関する意識がこの10年で大きく変化したことが判明した。年代別ではやはり若い世代ほどその傾向が強い。
また、「人生を自由に動かせる程度」を「自由になる/わからない/自由にならない」で聞くと、「自由になる」という人が前回調査より増加していた(2010年50.0%→2019年58.4%)。2000年、2005年の調査では60%を超えており、2010年はいったん落ち込んだ状態だったが、その閉塞感を抜け出した段階と考えられる。
多様性を尊重する傾向も伸びており、たとえば同性愛について「正しい(認められる)/わからない/間違っている(認められない)」で聞くと、2010年の33.2%から2019年は54.4%まで増加し、調査開始から初めて半数を超えた。性・年代別では、女性のほうがやや「正しい(認められる)」の数値が高い。また若い人ほど同性愛に肯定的だ。
なお「男性の方が経営幹部や政治の指導者として適している」という項目についても、過半数が「反対」と回答しており、調査開始以来初だ(経営幹部2010年42.7%→2019年63.6%、政治の指導者2010年37.3%→2019年54.4%)。
21世紀の日本は「日本文化や伝統的価値観」を尊重しながらグローバルを目指す
「21世紀の日本および日本人はどうあるべきか」を聞くと、「日本文化や伝統的価値観を大切にすべき」91.1%が最も多く、以下「生き生きと自己実現できる社会の構築」79.7%、「アジアの国々との交流を深め、頼りがいのある国へ」68.7%、「日本のやり方の良さを世界に広める」67.2%、「外国人に理解されるように変化」58.1%など、日本への愛着を持ちつつ、世界との交流を志向するグローバリズムを感じさせる項目が多く上がった。
一方で「政治への関心度」は前回調査より若干低下。若年層ほど低い傾向が見られた。
調査概要
- 【調査内容】世界のおよそ100ヵ国・地域の研究機関が参画する国際プロジェクト
- 【調査対象】各国・地域に在住する18歳以上男女
- 【調査方法】同一の調査票に基づき、政治観・経済観・労働観・教育観・宗教観・家族観など約90問190項目を質問
- 【調査期間】2019年9月
- 【集計サンプル数】1,000サンプル程度を回収
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