【レポート】デジタルマーケターズサミット2023 Winter

ド文系からデータ分析人材になる! 知っておきたい「5Dフレームワーク」

元文系のデータサイエンティストが、企業が抱える課題を解決し、成果につなげるデータ分析の基本的な思考法「5D フレームワーク」を紹介する。

データサイエンティストと言えば理系のイメージが強いが、本当に必要とされるデータ分析人材に求められるスキルはなにか。

デジタルマーケターズサミット 2023 Winter」に、文系IT営業マンで現在は三井住友海上火災保険 CXデザイン部長兼CMOを務める木田浩理氏が登壇。著書である『ビジネストランスレーター』を基に、自身の経験を振り返りながら、文系からでもデータ分析人材になるための必須スキル、効果的なデータ分析の進め方「5Dフレームワーク」について解説した。

三井住友海上火災保険株式会社 CXデザイン部長兼CMO(Chief Marketing Officer) 木田 浩理氏

ビジネストランスレーター データ分析を成果につなげる最強のビジネス思考術』(著者:木田 浩理、石原 一志、佐藤 祐規、神山 貴弘、山田 紘史、伊藤 豪 出版:日経BP)

文系の人材でも分析は可能。より必要なのは橋渡し的なビジネストランスレーター

2000年代初頭から「データ分析」に対する期待は高まりを見せるが、現在ではデータ分析に対する過度な期待が薄れつつある。一方で、DXにおいてデータ活用は欠かせない。どのようにデータ分析人材を確保するのか頭を悩ませている企業も多いと木田氏。

そこで注目すべきは「社内に多くいる文系人材」。ノンプラグラミングツールなどを活用すれば、文系人材でも分析が可能になる。

高度な専門知識を持つ者だけが分析人材なのではありません。重要なのは、どうデータを活用するのかを見定めること。問題を発見し、仮説を立て、導き出された結果に対して、現場を巻き込んで実行する力がデータを活用する上では欠かせません。ビジネス成果につながるデータ分析をすることが大切なんです(木田氏)

データ分析者とビジネス担当者の間にはギャップがある

そこで重要となるのが、データ分析者と現場、意思決定者をつなぐ橋渡し役である「ビジネストランスレーター」だ。

データ分析者とビジネス担当者のギャップを埋め、ビジネス成果に繋げられる人材が必要

データ分析の進め方「5Dフレームワーク」

ビジネストランスレーターの役割は、分析ステップを正しく進めることだ。そのために木田氏が提唱しているのが「5Dフレームワーク」。データ分析に必要な5つのステップをまとめたものだ。

  • Demand: 要望・要件(ビジネス上の問題を聞き出す)
  • Design: デザイン(要件定義をする)
  • Data: データ(分析に必要なデータを収集し、整備する)
  • Develop: 分析(適切なアルゴリズムを選択する)
  • Deploy: 展開(分析結果を出力し、現場に展開する)
5Dフレームワークは「料理のおもてなし」で考えると理解しやすい

データを活用できない時は、これらのステップで何かしらの失敗が起きている時だ。ステップ別の失敗例を5つ紹介する。

失敗例①明確な目的を合意しないまま進めたDemandの失敗事例

Demandの失敗例。実際によくあることだという

たとえば、「データがあるから素晴らしい分析ができるはずだ」と明確な目的を合意しないまま、分析者が差し出されたデータをあれこれ分析するが、「こんな当たり前のインサイトは知ってるよ」と言われ、データ分析は役に立たないと結論付けられてしまうことがある。

失敗例②課題解決のための分析設計を事前に怠ったDesignの失敗事例

Designの失敗例。現場を知らない分析者に多い

現場を知らないで分析を進めて、見当違いな結果を共有して失敗する例もある。たとえば、「商品Xの売上はさらに減少する」「商品Aは伸びる」「商品BとCの買い併せが良い」などが分析結果から得られたとしても、「商品Xの売上が悪いからその打開策が欲しかった」「商品Aは販売終了している」「商品BとCは買い併せが当たり前」など、現場では当たり前の前提条件を知らないがために、結局使えない分析プロジェクトになってしまう。

失敗例③量はあるが目的達成に役に立てなかったDataの失敗事例

Dataの失敗例。データに偏りがあると正しい分析ができない

データの量はあるものの、そのデータベースには成功したデータ結果しか入っておらず、正しい分析ができないケースもある。データ分析は、成功と失敗を比較分析することが基本であり、データ量が多かったとしても、成功したデータしかない場合、どうすれば成功するのか示唆が得られない。

失敗例④分析手法ありきのDevelopの失敗事例

Developの失敗例。分析ありきはNG

高度な分析手法を使ったからといって、必ずしも有用であるとは限らない場合もある。高度な分析は限られた人材しか細かな調整をできない場合もあり、前提や条件が変われば使えない可能性もある。「分析手法ありきの取り組みは、失敗しがち」と木田氏。

失敗例⑤最終的な活用環境を考慮しなかったDeployの失敗事例

Deployの失敗例。どのように現場に展開するかまで考慮する

PCのスペック不足が原因で、分析データがスムーズに動かないこともある。分析者が使うPCはハイスペックであることが多いが、分析の依頼者のPCスペックにはばらつきがあり、環境によっては動かない場合もあるので、最終的に「誰が・どのように・利用するのか」をヒアリングしないと、結局使えない成果物になってしまう。

 

5つの失敗例を紹介したが、「あるある」と感じる読者も多いのではないだろうか。では、一体なぜこうした失敗が起きてしまうのだろうか。

木田氏によると、原因は、各関係者間の認識や理解の齟齬にあるという。「意思決定者、分析者、現場の3者を繋ぐことを怠れば分析プロジェクトは確実に崩壊する」と指摘する。

これら3者を繋ぐのがビジネストランスレーターだ。5Dフレームワークを利用して5つの課題を乗り越え、分析を成功に導く。

5Dフレームワークをいかに正しく回すかが重要

5Dフレームワークのフローは、基本的に「Demand」→「Design」→「Data」→「Develop」→「Deploy」→「Demand」→……といった順に進み、うまくいかない時はたいてい、ステップを飛ばしていたり、順番を逆にしていたりするのだという。

うまくいかない時はこのステップのどこかに間違いがある

5Dフレームワークの取り組み事例

かつてIT営業マンから百貨店へと転職したことがある木田氏は、転職時『ジョブ理論』(クレイトン・クリステンセン著)から影響を受け、自身も分析時に「ジョブ」を意識するようになったと振り返る。

『ジョブ理論』のなかで、『ジョブ』とは『特定の状況で顧客が成し遂げたい進歩』と説明されています。たとえば、朝ミルクシェイクを買う顧客は、ミルクシェイクがほしいというよりも、『通勤のドライブで退屈を紛らわしたい』というジョブを解決するために、ミルクシェイクを買うといったことです(木田氏)

データ分析者はしばしば、データを見ているだけで顧客を知った気になってしまう。真の「ジョブ」を理解するには、現場を知り、顧客と同じ目線になることが重要だ。

 顧客を見るだけでなく、顧客の視点でものを見る

5Dフレームワークを正しく進めるスキル

5Dフレームワークの重要さは、言われてみれば当たり前に聞こえるが、正しく進めることは難しい。失敗の要因として、必要な関係者を巻き込めていない、課題背景を正しく理解できていない、分析結果を正しく解釈できていない、といったことが挙げられる。

では、正しく進めるためにはどうすれば良いのか。分析プロジェクトを進めるビジネストランスレーターには次の4つのスキルが必要だという。

  • ビジネススキーマ活用力: 現場に入り込んでビジネスの前提や背景を理解する力
  • プロジェクト遂行力: キーマンだけでなく、影のキーマンをも把握し、巻き込むことでプロジェクトを遂行する力
  • ビジネス背景理解力: 自社・顧客・競合の状況を把握する力
  • データ解釈基礎力: データ解釈を含む、必要最低限のデータ分析に関する基礎知識
ビジネストランスレーターに必要な4つのスキル

最後に、データ分析においては、現場と分析者、そして意思決定者を繋ぐような人材=ビジネストランスレーターが必要であること、5Dフレームワークに基づいて課題を乗り越えること、ビジネストランスレーターの4つのスキルを身に付けることが重要だと紹介し、今回の講演を締め括った。

講演のまとめ。分析人材に必要な多くのスキルが、文系人材が得意なものだとわかる
◇◇◇

本講演の詳細は、木田氏らが執筆した以下、書籍にまとまっている。さらに深く知りたい場合は、ぜひ書籍を手に取ってもらいたい。

ビジネストランスレーター データ分析を成果につなげる最強のビジネス思考術』(著者:木田 浩理、石原 一志、佐藤 祐規、神山 貴弘、山田 紘史、伊藤 豪 出版:日経BP)

Web担主催イベント【Web担当者Forum ミーティング 2024 春】5/30・5/31開催。全20講演超の無料セミナー

Web担主催イベント

ソフトバンク、ANA、博報堂などが語るセミナーイベントをリアル(渋谷)+オンラインで実施!

「誰も本当のことを教えてくれないSEOネタ」「マーケティング業務における生成AI」「GA4でパフォーマンス改善を行う難しさの本質」「不確実性をマネジメントして、目標達成するための心得」など20以上の講演を5/30・31にハイブリッドで実施!
この記事が役に立ったらシェア!
メルマガの登録はこちら Web担当者に役立つ情報をサクッとゲット!

人気記事トップ10(過去7日間)

今日の用語

勝手広告
企業広告を消費者や第三者が勝手に作って公開する自主制作の広告。 ...→用語集へ

インフォメーション

RSSフィード


Web担を応援して支えてくださっている企業さま [各サービス/製品の紹介はこちらから]