※本記事は、アタラ合同会社 Official noteにて公開中の記事を転載したものです。
目次
・ダッシュボード構築に入る前に、押さえておくべきはKPIの概念
・KPIとは?
・よくあるKPIの間違った作り方と結末
・KPI設定のための、3つの登場人物
・3つの登場人物を意識して、ストーリーを設計する
・CSF設定時の3つのポイント
・次回予告
こんにちは。アタラ合同会社コンサルタントの村田直哉です。
本記事では、「KPIマネジメントの基礎知識:前編」ということで、KPI設計の基本的な概念と、KPI設定に欠かせない登場人物についてお伝えしていきます。
ダッシュボード構築に入る前に、押さえておくべきはKPIの概念
ATARAのデータイノベーションコンサルティングチームでは、データの活用促進・データによる意思決定文化の定着を目指し、コンサルティング支援をしています。
最も多くあるケースが、BIツールの導入を通じて、
「既存のExcelレポートを自動化したい」
「数値の羅列された表形式の集計を、グラフ化をしてわかりやすくしたい」
というものです。
事業にまつわる多くのデータを、あらゆるデータソースから手元に集めて日々眺めているものの、作成に時間がかかりすぎたり、パッと見て事業の良し悪しが判断ができず結局よくわからない、という点に悩まれていることが多いように思います。
BIダッシュボード化は、そうした課題の解決に繋がるものではあります。しかし、「見るべき数値を絞り込む」「各数値の見る順番を決める」というポイントが定まっていない限りは、ただ既存の表をオシャレに組みなおしただけ、になってしまい、大きな効果は得られません。
そこで今回は、BIダッシュボードの設計図ともいえるKPIの組み立て方について、前後編2回にわたりご紹介します。
前編となる本記事は、KPIの基本的な考え方と、KPIを考える上で関連してくる構成要素・登場人物についてまとめています。
BIダッシュボードの導入を考えていない場合でも、考え方としては活かせる大切なポイントも多く含みますので、ぜひ読み進めてみてください。
KPIとは?
KPIとは、Key Performance Indicatorの略称で、一般的には「重要業績評価指標」と言われます。
そのままに近い形で訳すと「(事業成功のための)カギとなる成果を数値化したもの」と言ったところでしょうか。
「何を」「どの期間に」「どの程度まで」到達させるか、という目標数値とセットで日々確認し、事業成功、あるいは事業成長のベンチマークをするためのもの、まさにKeyとなる数値指標、のことです。
よくあるKPIの間違った作り方と結末
当然ながら、ただやみくもに「重要そうな値」を想定して、施策の実行等を進めても上手くいきません
よくある間違ったKPI設定の仕方と、その結果どうなるのか、を図にまとめるとこのようになります。
「手元にある数値の中で、それらしきものはこれだ」
「長年この数値を指標として追いかけていたから、これが正しいはずだ」
といった組み立て方をしてしまうと、目標数値に届かないケースが続いてしまった時に、本当にこの目標を追うことが正しいのか?という疑念が生じてしまい結局頓挫、ただ数値取得の手間だけがかかり、無駄な営みになってしまいます。
KPIは「なんとなく、重要そうな数値」ではなく、次の道に繋がる扉を開くためのカギであることが重要です。
KPI設定のための、3つの登場人物
こうした悲しい結末とさせないために、KPIの設定には、
● ビジネスプロセスの全体理解をする
● どのプロセス数値が事業成功のKeyとなるのか、の見定めと優先順位付けをする
● その上で、どの程度の数値目標を目指すべきなのか、の設計をする
といったステップが必要になります。
このステップを構想するために、3人の登場人物を理解しておく必要があります。
まず登場人物1人目は、KGI=Key Goal Indicator です。
KPIと名前は似ていますが、二文字目がPかGか、つまりPerformanceを指すものか、Goalを指すものか、という違いがあります。ゴールを数値目標化したものがKGIであり、「事業において最も重要な数値目標」を指します。
次に登場人物2人目は、CSF=Critical Success Factor です。
これも同様に訳すと、「成功のための効果的な要素」と言ったところでしょうか。こちらはIndicatorの名前はついておらず、具体的な数値のことではなく、成功のためのカギそのもの、「事業成功のカギを握る戦術要素」を指します。
最後の登場人物3人目がKPI、となっており、先に説明した通り「事業成功のためのカギを数値目標化したもの」です。
つまり、先に目指すGoal(KGI)があり、そこに到達するための戦術(CSF)があり、それを数値化したものがKPI、という関係となっているのです。
3つの登場人物を意識して、ストーリーを設計する
各要素の関係性を図式化するとこのようになります。
● まず、事業におけるGoalがある
● それを数値目標化したものがKGIとなる
● Goal到達のための戦略のうち、もっとも有効な勝ち筋をCSFとして設定する
● CSFを数値目標化したものをKPIとして設定する
という関係性が、各要素の間に成り立っている・ストーリーでつながっている、ということが大切です。
具体的な例を挙げてみます。
皆さんも取り組んだことが少なくないプロジェクトであろう(笑)、ダイエットをする・痩せるためのKPI戦略を考えてみましょう。
● Goalは痩せることである。
● KGI:具体的に期日とあわせて数値目標をおく。「夏までに‐5kg」を目指したい。
● CSF:そのために考えられる戦略は、「消費カロリーを増やす」「摂取カロリーを減らす」「基礎代謝をあげて、痩せやすい体をつくる」などが考えられる。
● KPI:「消費カロリーを増やす」ためにランニングをする、をCSFと設定した場合、その数値目標を「毎日10km走る」が、数値目標として設定される。
といったストーリーが設計されます。
ここで大事になってくるのは、痩せるための方法=CSFはひとつではない、ということで、CSF候補のうちどれを選ぶかで、設定すべきKPIも変わる、ということです。
先程とは違い、「摂取カロリーを減らす」を戦略=CSFとして採用すると、食事制限をし、1日800kcal以下に抑える、というKPIの設定に繋がります。
このように、Goalに到達する道筋が1つだけではない場合、どのようなCSFを設定するかによって、目指すべきKPIと、とるべきアクションは異なってきます。
同じ「痩せること」を目指していても、CSFとして「走ること」「食べないこと」のどちらかを選ぶかで、見るべき指標KPIと、それを達成するために取るべき行動は変わってきますよね。
ですので、KPIはその1つ前の戦略要素CSFとセットで考える必要があり、この全体ストーリーの中で最も重要なのは、CSFをいかに設定するか、という点になります。
CSF設定時の3つのポイント
CSFの設定では、意識するべきポイントが大きく3つあります。
①Goalと見比べながら、フォーカスしていく
CSFはGoalによって変化するので、CSFの設定に悩んだときは、Goalをより細かく設定することも必要です。
痩せるための方法はいくつかありますが、「時間をかけて大きく減量したい」のか「少しでいいからすぐに痩せたい」のか「体型をずっと維持したい」のかで、取るべき方法は変わってきます。
CSFを考える過程で、「どうなりたいのか」というGoal像の解像度を上げることにも必然的に繋がってくる、と言い換えられるかもしれません。
②コントロール可能かも重要なポイント
そもそも現実的に、それに取り組むことができるか、コントロールができるか、も考慮にいれないと実行できない計画倒れのプランになってしまいます。
例えば、代謝をあげてたくさん汗をかくには、気温を上げることが最も手っ取り早い気がします。しかし、南国に移住でもしない限り実現できず、現実的ではありません。これはコントロール不可能として、CSF候補からは外すべきです。
また、先程挙げた例では「毎日ランニングする」「毎日の食事制限をする」がありました。
この2つ、どちらの方が取り組みやすいか?と聞かれると、人によって答えは変わってくると思います。もちろんどちらも並行して行うのが一番良いわけですが、継続できず失敗、リバウンドしてしまうことを防ぐには、取り組みやすさも考慮に入れなければなりません。
③取り組みやすさ×効果の大きさのバランスを見定める
取り組みやすい方法だけを選んでいても、大きな成果には繋がらないので、効果の大きさとの兼ね合いを見ながら、CSFを設定することが必要です。
「散歩」は取り組みやすいけど効果は小さい、「筋トレ」は効果は大きいけどなかなか継続できない、となったときに、どちらを選ぶかということです。なかなか難しい選択ですね。
ここでおすすめなのが、時期によって採用するCSFを変更する、という方法です。
たとえば「散歩する」は、ランニングや筋トレほどの効果はないかもしれないけれど、まず「運動する習慣を身に着ける」「とりあえず明日から始められる」という観点では有効です。
始めの1ヶ月は「散歩する」としてKPIを「●km歩く」とし、その後徐々にランニングや筋トレに切り替え、2ヶ月目からはKPIを「●km走る」「タイムは●分を目指す」「●kgのダンベルを挙げる」に変えていく、というやり方です。
次回予告
今回はここまで、KPIの設定をする上での基本的な考え方と、大切な考慮要素についてまとめました。
なるべくイメージしやすいようにダイエットを例にとりましたが、KPIは決して、事業設計のような限られた人のみが考えるべきものではありません。「何らかの取り組み」を評価するには何にでも使えるものであり、無意識的に実は誰もがやったことがあるはずのもの、ということがイメージできたのではないかと思います。
次回の記事では、KPIを設定し、運用していくにあたっての正しいステップを、より実践的な例を交えて紹介させていただきます。
ぜひ次回の記事もあわせて、参考にしてみてください!
「アタラ Unyoo.jp 特選コラム」掲載のオリジナル版はこちら2022/04/08
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