アンケート調査で若年層のリアルな声が欲しい! 設問作り7個のTipsも公開
アンケート調査をやってみたい、アンケート調査をする必要がある、そういうタイミングはあるだろう。
- 2~3日でアンケート調査を実施したい
- 新しい企画を考えてその裏付けをとりたい
- 若年層(10代~20代)を対象にアンケートを取りたい
LINEが展開するLINEリサーチは、約529万人(2020年7月時点)ものモニターを保有し、その約70%が調査慣れしていないフレッシュなユーザーという国内最大規模のリサーチサービスだ。メニューは9,800円から使える「ライトコース」と、リサーチャーによるサポートが受けられる「サポートコース」の2つがある。LINE社では、「ユーザーの声を一番に尊重する」という信条のもと、社内社員の誰もがLINEリサーチのライトコースを使える環境にあるという。
1000人の回答のアンケートが2~3日で集まるので、新規企画の裏付けデータやプレゼンで必要なニーズ調査など広く使われている。LINE社内で、LINEリサーチのアンケートはどのように使われているのか? スマホアンケート調査で回答率を高めるポイントなど、LINEリサーチの地福節子さんに聞いた。
スマホ調査に最適な設問の作り方とは?
――一般向けのサービスとして展開しているLINEリサーチですが、社内の企画者・マーケターにも使われているというのは、本当ですか?
地福節子さん(以下、地福): はい。社員は全員、申請すれば「ライトコース」が使える状態になっています。企画者、マーケターだけでなく開発者、デザイナーも使っていますよ。スマホサービスの新規企画立案には、「スピードが命」みたいなところがありますから、「当たりをつけたい」「来週のプレゼン資料に使いたい」「大まかにどの程度か数値で押さえたい」などの要望に合わせて、各社員自らが設問を作成し、サッと調査ができるようになっています。結果は2~3日後には受け取れるようになっています。
――アンケートの設問を社員が自分で作るって難易度が高いように感じますが……。
地福: そうですね。初めて読む人が読みやすいことを意識した目線で作ることが大事になりますね。具体的には、以下のようなことがポイントですね。詳しく知りたい方は、ライトコースのアカウントを作っていただければお役立ち資料としてお渡ししています。
- 文章表現は、できるだけ短く、簡潔に
- 選択肢の数は7コ以下/最大15コまでを心がける
- 調査票に必要な基本要素は「疑問文」「回答形式」「選択肢」
- みんなが答えられる質問にするには、質問に関係ない人/関係の薄い人が、選べる選択肢を用意する
- 質問の順番は、回答に思い込みや記憶による偏りを与えないようにする
- 選択肢づくりのコツは、ネット上にあるオープンデータ情報をうまく活用する
- マトリクス型アンケートは読みやすく、1問ずつに
――スマホ調査とPCで行うアンケート調査で設問の作り方は違いますか?
地福: はい。スマホ調査は小さな画面上で回答をしていくので、質問の数が多い、質問文が長い、漢字ばかりで読みづらい、などは敬遠されがちです。まして、LINEアンケートは初めてアンケート調査というものに参加される方が非常に多いので、普通のサービスページ程度の文字数になるべく抑えることを意識しています。
LINEリサーチのライトコースの使い方
――確かに普段見ているLINEのサービスの画面は、あまり文字が多いという印象はありませんね。それに合わせていると。因みにライトコースは、いくらで使えるんですか?
地福: 設問数が1~3問、100サンプルまでの場合に、9,800円から使えます。
※料金表はこちら → https://www.linebiz.com/jp/service/line-research/lite/
――ライトコースはどうやって使うのですか?
地福: 無料のアカウントを取得してもらい、アンケートの質問項目や選択肢はご自身で作成して事務局に提出していただきます。できることの自由度はリサーチャーという専門職が対応する「サポートコース」よりも制限されますが、コストは下げられますし、スピーディーに始められます。
ライトコース 利用の流れ
地福: 無料のアカウントを申請していただいたあとは、以下のような流れです。
①お客様: アカウント申請
②お客様: アンケート内容(質問や選択肢)を作り、自分で入力、もしくはエクセルのフォーマットに入力して事務局に送信
③事務局: オペレーターが内容を審査
・ルール違反(個人情報収集や外部サイトへの誘導など)がないか
・基本的な不備(意味が分からない、必要な選択肢がないなど)がないか
・要配慮の内容が含まれていないか
④事務局: オペレーターがアンケート画面を作成または確認し、審査結果のコメントをつけて、お客様に返信
⑤お客様: アンケート画面と審査結果を確認、修正があれば修正し、アンケートを開始
⑥お客様: アンケート終了後、管理画面から集計表とグラフをダウンロード可能
的確な審査・アドバイスと回答者への配慮
――「基本的な不備」と「要配慮」は具体的にどんなことでしょう?
地福:たとえば、基本的な不備としてよくあるのは、選択肢として[この中にはない]などが入っていないことです。冒頭にお伝えしたスマホアンケート調査のコツにもTipsとして紹介していますが、たとえば、スニーカーの好きなブランドを聞く調査をするとします。
当然選択肢には、スニーカーのブランド名が並びますが、回答者の中には「履きやすければ何でもいい」「ブランド名もよく知らない」という人もいます。そういったすべての立場の人が回答できる選択肢を作るという点で、審査・チェックという第三者視点が入ります。
「要配慮」というのは、回答者への配慮が必要な項目に該当しないかチェックをするということです。主にプライベートなことが対象となりますが、結婚や恋愛、身体についてなども該当します。これらは、人によっては聞かれたくないこともあるでしょう。
回答するときにできるだけ不快な思いをしてもらいたくないという思いから、要配慮テーマの場合は、アンケートの冒頭に何についてのアンケートか記載することがあります。
「○○について聞いていいですか?」「いいですよ」という確認を入れることで、苦手な人は回避していただくなど、回答するときの負担が減るかと思います。
――確かに、その配慮があることで、回答者も心の準備をしてアンケートに臨めますよね。
地福: はい。そのような配慮をしつつ、時代に合った早さを1番に追求したのが「ライトコース」です。ただし、「高スペック」「チャレンジング」「複雑で精緻」な調査の場合は、リサーチャーという専門家が入る必要があります。その場合は「サポートコース」の利用が望ましいです。
もともと社内向けにできたサービス「LINEリサーチ」
――改めて地福さんのプロフィールとLINEリサーチの成り立ちについてお聞かせください。
地福: 元々は調査会社でリサーチャーをしており、LINEにはサービス企画の担当者として入社しました。その後、LINEアプリの拡大に伴って、社内向けアンケート組織を作ることになり私に声がかかりました。「LINEリサーチ」は元々、社内向けのインフラで、社内の企画担当者がLINEユーザーの意見を聞くためのサービスでした。
――なるほど、外向けに開発されたサービスではなく、最初は社内向けインフラとして立ち上ったのですね。
地福: はい、そうなんです。社内での活用も徐々に進み、チームメンバーも増えてきて、現在私の所属している調査の部署ができました。
調査を実施していくなかで、LINEアンケートの意見が本当にリアルで素朴で、質がよかったんです。私自身がもともとリサーチャーでもあったため、それまでたくさんの色々な調査サービスを使ってきましたが、このモニター組織はだいぶん毛色が違うなと思いました。素の感覚で回答している方が多い。
外部の調査会社からインフラとして使わせてほしいとの相談もあったので、それから5年後に、外部の調査会社向けにアカウントの提供を始めました。
――リアルな声が集まるとはどういうことですか?
地福:ひとつはパネルがフレッシュなことです。そして、現在のところ頻度を抑え負担が大きすぎる調査は流さないようにしています。それにより、アンケートに回答してくれる方の幅が広く、楽しんで回答していただける環境を保てていると思います。また、疑似的なパーソナルスペースであるメッセンジャーであることも要因かもしれませんが、日常の中で偶然目に留まり、回答する。それが構えないリアルさにつながっていると思います。
現在の調査サービスのパネルの多くは、PCでインターネットを使うのが主流だった2000年代に作り始めたものが多いです。PCで行うアンケートは、画面も大きかったので、クライアントの要望に応える中で、途中からどんどん高負荷化してしまい、それに耐えうる性質の人が回答者として残っているのが現在です。
その方たち用の調査の設計を、スマホしか使わない人、特に若年層にそのまま当てはめようとすると、どんどん離脱してしまいますし、新しい人を取り込むのも難しいのです。なので、それはしないようにしています。
LINEが毎年行っている、調査員が家に訪問して調査を依頼する手法で行う、ネット利用者の実態に関する定点調査があるのですが、ネットをスマホのみで利用する方が49%もいらっしゃるんです(2019年10月実施)。スマホのみの方にも調査が実施できたほうが、調査対象を広くカバーできるということになります。
地福: とはいえ当初は運営方針で悩みました。リアルさ・カバーの広さに拘ると大きな調査は受けにくくなります。ですが、たまにアンケートに参加するくらいの気質のライトユーザーさんの回答もあってこそ、時代が反映される貴重なものだと気づいてからは、この方針を守っています。
モニター数は529万人のLINEリサーチ
――LINEリサーチのモニター数はどのくらい現在いるのでしょうか?
地福: LINEリサーチのモニターは約529万人、LINEアンケートのLINE公式アカウントの友だち登録者数は1523万人です(2020年7月現在)。スマホのアクティブ利用者の分布と同じく、LINEリサーチのモニターは若年層が多いのが特色です。
調査モニターで少ないと言われる、学生や富裕層、美容師などの職種の方にもアンケートができます。また、LINEのモニターは2000年代に立ち上がった従来の調査モニターと比較すると、以下のような違いがあることがわかっています。
- 連絡を取り合う友人の数が多いなど、人との関わりが活発
- 流行に興味を持ち、一般消費財の自己購入品目数が多く、消費活動が活発
- アンケート回答頻度・モニター登録数が多くない(ヘビー調査モニターでない)
- 若年層、PCの前にいない人など、今までリーチできなかった層にリーチできる
- アンケートの開始をプッシュ通知で届けるので、反応が早い
- 他のアンケートモニターに登録していないフレッシュなモニターが7割
- モニターはアクティブな人が多く、ごく一般的な人の状態に近い
LINE社員も使っている!社内でのライトコース活用例
実際に社内でライトコースを活用している社員の方に話を聞いてみました。
活用例1
LINE株式会社 グローバルスタンプチーム
「1000サンプルが2~3日で集まるスピードには助けられます」
2019年に「LINEスタンプ プレミアム」(クリエイターズスタンプのサブスクサービス)をスタートし、今年は大きなキャンペーンの前後で、認知度やユーザーの好みなどを聞きました。それを開発の優先順位や今後のマーケティング企画、リソースを決める時に活用しようと思っています。1000回答のアンケートが2~3日で集まるので、とても助かりました。
「ライトコース」を活用する前は、LINEスタンプのLINE公式アカウントでアンケートを行っていましたが、LINE公式アカウントはスタンプに関心がある人がメインで友だち追加をしているため、その結果と、スタンプを使っているかどうかにかかわらずモニター登録している人に対して行うアンケートでは結果に違いがあって、役に立つ情報が集められました。大きいキャンペーンの実施前後は認知度を測りたいので、定期的にライトコースを使おうと考えています。
活用例2
LINE株式会社 GSS新事業チーム
「仮説をデータとして見える化したい場合ライトコースが適しています」
GSS新事業チームは新規事業の立ち上げ部署で、来年ローンチ予定の新規サービスにおける事業企画やサービス開発に活かすために、ライトコースを使いました。聞いた内容は、そのサービスに求める機能、現状感じている不満やニーズ、その領域の各大手サービスの認知度、使用状況や頻度、そのサービスにどういうイメージを持っているかなどです。
どのような差別化をすれば選んでもらえるかというのは、ある程度の仮説を持っていますが、新規開発では社内外の意思決定者やステークホルダーに説明する必要があります。その時、ファクトとして数字で示せると強い。アンケート結果自体は、ある程度仮説通りでしたが、そういう意味ですごく役に立ちました。しっかり仮説があって、それをデータとして早く見える化したいという場合は、ライトコースが適していると思います。
活用例3
LINE MUSIC株式会社 マーケティング&PRチーム
「きちんとデータで取れるので確信が持てるようになります」
LINE MUSICでは、サービスの認知や機能の利用状況、ブランドイメージ、コンテンツの調査など、アンケート調査は頻繁に行います。多くはリサーチャーに入ってもらう調査ですが、ピンポイントで聞きたいことがある場合や、すごく急いでいる場合には「ライトコース」を使います。
最近の例では、LINEのプロフィールに設定できる「プロフィールBGM」が無料会員様でも設定し放題(有料会員は無制限)という期間限定キャンペーンがあり、これについて「ライトコース」で調査しました。このコースを使うことで、客観的なデータに基づいて施策を立てられるので、施策の方向性が大きくずれる可能性を抑えられる点がメリットです。
感覚値に頼らないように、客観的なデータ分析の結果から、具体的なアクションプランを策定したり、きちんとデータで取れるので確信が持てるようになります。
8月のアップデートで「オンラインで作成」が可能に
――「ライトコース」は8月25日に機能強化されましたね。
地福: はい。アンケート内容をご自身で作ってエクセルに入力して提出していただくという話をしましたが、さらにより早くということで、オンラインでセルフ作成するという方法を追加しました。
ブラウザ上で専用ツールから質問文を入力したり、アンケート対象をプルダウンメニューで選んだりできます。エクセルに入力するより直感的に分かるという方もいると思います。また、画面上で入力がすむと、アンケート画面がポップアップで出ますので、そこですぐに確認できます。
夜中に思い立って、アンケートを作って審査依頼ボタンを押しておけば、翌朝審査がはしり、問題がなければ当日中にもアンケート開始となります。確実に数時間スピードアップできるというわけです。
オンラインでの入力や操作は苦手・そこまで急いでないなら従来通り「エクセルで作成」で、オンラインでの入力や操作は慣れている・すごく急いでいる場合は「オンラインで作成」を使うのがいいのではないでしょうか。作成の手助けになるテンプレートや利用ガイドもご用意しています。
「ライト」だが「チープ」ではない
――では最後に、あらためて「ライトコース」の意義やメリット、今後の展望などを教えてください。
地福: 強調したいのは、「ライト」だからといって、「チープ」なものではないということです。
誰もが使えるよう、提供スペックを絞っていますので、複雑かつ長大なものにはあえて対応していませんが、市場を俯瞰して実態把握、ニーズ調査、ABテスト、コンセプトチェックなど、気軽に何度も使ってもらえばよいと思います。回答者はもちろんサポートコースと同じフレッシュな目線で誠実な回答をくださっています。人口比率での回収もできるようにしています。つまり数字の質に問題はありません。
「役立つ調査結果が、実務に耐えうる早さで手に入る」方がいい。そういう発想で作られているのが「ライトコース」です。これは私が一般企業の調査部署にいるせいもあるでしょうね。実を取ったサービスになっていると思います。そして、さらに早さを追求するために、新しい機能を追加しました。
調査のセルフサービスの使いやすさは、調査スペックとのバランスにあります。「ライトコース」はまだまだ使いやすさを上げている途中です。より便利に、数字の質のよいサービスにしていきたいと思います。LINEで全社員がいつでも調査アカウントを使えるようにしてあるのと同じに、お客様の社員様にも全員が使える形にして、法人様単位の契約もできますので、ご相談ください。企画力を上げるのには非常に役立ちます!
――面白いお話をありがとうございました。
ソーシャルもやってます!