リサーチ新時代到来!「本当の顧客のインサイト」を探索する博報堂×博報堂DYメディアパートナーズ×LINEリサーチの新しい挑戦
良いものを作れば売れるという時代ではなくなってから久しいが、顧客のニーズに合わせた製品開発もすでに「やりつくした」という企業も多いだろう。顧客のニーズが多様化し、あらゆる商品がオンラインで簡単に見つけられるようになった今、顧客自身も気づいていない潜在的なニーズを探索することが製品開発においても、マーケティングにおいても重要なアプローチになっている。
深層心理に迫るような顧客理解の手法の一つがアンケート調査だ。LINEが提供する「LINEリサーチ」は、LINEのプラットフォームを活用したアンケート調査で、サービス開始以来多くの企業に活用されている。
2020年12月、博報堂と博報堂DYメディアパートナーズが、LINEリサーチの国内初のセールスパートナーとして認定。彼らがLINEリサーチに注目した理由、そしてこのパートナーシップでLINEリサーチと共にどう進化するのか、お話をうかがった。
博報堂と博報堂DYメディアパートナーズが着目した
LINEリサーチのパネル
博報堂DYメディアパートナーズの星野氏は、マーケティングに関わる先進的なソリューションやテクノロジーの発掘を業務のひとつとしている。星野氏がLINEリサーチの可能性に気づいたのは、そんな情報収集の一環としてとあるマーケティングイベントに参加した時だった。
LINEというプラットフォームで調査ができるので、一般的なユーザーの声を拾い上げやすいのではないかという期待がありました。パネルを世の中の縮図として考えた時、LINEのユーザーは世の中を反映したパネルとしてのケイパビリティ(潜在能力)が高いと感じたのです(星野氏)
星野氏は、広告の効果分析のため調査会社に依頼してアンケート調査を行うことがあったが、調査パネルが市場全体を本当に表現しているのか、常日頃から漠然とした疑問を感じていた。調査パネルの市場代表性は調査結果の品質そのものにダイレクトに影響するので、重要であると考えていたという。
その点LINEリサーチのパネルは、従来の調査モニターでは不足しがちな若年層が数として十分にいること、他の調査パネルと重複のないフレッシュサンプルが大半を占めていること、そしてスマートフォン、それも日頃利用しているLINEでアンケートを行うという日常生活に則した接触ポイントが調査の場になっていることで、一般ユーザーの調査パネルへの参加のハードルを下げパネルの市場代表性を高めることが期待できることなど、世の中の縮図として持続可能性が高く機能しうる点に魅力を感じたという。
一方、博報堂の井手氏は、クライアントの新規事業開発や既存事業のマーケティング活動を支援するためのプランニングを担当しており、その際に調査会社とリサーチを行うことが多いという。
井手氏も星野氏同様に、LINEリサーチの持つパネルの代表性を高く評価していた。プランニングにおけるリサーチにおいても、調査会社のパネルは若年層の回答が集まりづらい傾向があるが、LINEリサーチは若年層に強く、スマホネイティブ世代を対象にした調査がしやすいという。
LINEの浜田氏は、LINEリサーチのいくつかの特性の中でも特に、アンケート調査に慣れすぎていないユーザーに回答を依頼できることを挙げる。
LINEリサーチのモニターの約65%が、これまで他の調査会社のモニターに登録した経験のない人達。従来の調査会社のモニターは毎日のアンケートや、50問以上の質問も苦にしないような“アンケート好き”が多い傾向がありますが、LINEリサーチはその層とは違う人が幅広く集まっています。そのためそれぞれの調査への回答が目新しく、フレッシュな声を集められるのが特長です(浜田氏)
調査をしたい企業にとっては、パネルの選択肢が増えたと捉えることもできると井手氏は話す。従来の調査パネルを使うのか、若年層の声を聴くのか、調査慣れしていないフレッシュさのあるパネルを使うのか、どちらを選べば事業課題を解決するヒントや、求める顧客インサイトを得られやすいか、リサーチの課題からよりマッチしたパネルを選択できるようになる。
スマホネイティブのリアルな声を集めやすいメッセンジャーでの調査
LINEリサーチとセールスパートナー提携をするにあたって評価した2つ目は、メッセンジャー調査ならではのリアリティさだ。
従来のアンケート調査では、PCをベースとしたアンケート設計が多く、設問構成が長大で複雑になりがちだ。それに対応して回答してくれるモニター登録者にはある程度の習熟がみられる。結果、何が起こったか。
所属部署で年間百件を超える調査を実施するという井手氏によれば、事業会社の中には、調査をしなくても回答傾向が予測できるほど、すでにさまざまな角度から調査を実施していて、調査から意外性のある事実がなかなか引き出せず、頭を抱える事業会社も少なくないという。
それゆえに、より深く顧客理解をするために、デプスインタビュー、グループインタビューなど、時間をかけてユーザーの生の声を聞く手法に回帰する傾向もある。しかし、これらの調査は設計から調査結果が得られるまでに工数がかかり、得られるサンプル数も少ないという悩みも多い。
顧客理解の重要性を知っている企業の多くが、顧客のリアルな声をどうすれば、時間と工数をかけずに、定量的に集められるかを模索しています。LINEリサーチはスマホのコミュニケーションアプリ上のサービスなので、日常会話に近いスタンスでアンケートを収集できます。
新サービスや新商品を考える事業会社にとって、ふとした生活者の一言が突破口になることがよくありますが、アンケートへの構えがない人の回答は素なので意外な回答もあり、そのリアルさが参考になります。
ちなみにLINEリサーチは、フリーアンサーで『特になし』と回答する率が他の調査に比べて少ない印象ですが、その辺りにフレッシュな方がたまに参加するときの熱心さが表れているのかなと思います(井手氏)
スマホでリアリティのある声を集めるには、調査票の設計をスマホベースに最適化していく必要がある。従来行われていた調査の多くは、PCに最適化されており、設問や選択肢が長かったり、マトリクスでの設問で複雑だったりする。PCでは問題がないが、スマホの場合は表示範囲が限られるため、一問一答の簡潔でわかりやすい設問を用意し、アンケート回答者が判断しやすい選択肢を用意するといった工夫が必要だ。
井手氏は、「今が調査のインタフェースがバージョンアップするタイミング」と表現し、タップのしやすさ、スクロールの回数、フリーアンサーの数など、アンケート回答者が気持ち良く調査に参加できる、生活者と対話する手法の一つとして調査設計についても、さらに3社で検証を重ねていく予定だ。
高速PDCAに対応するための調査のパッケージ化も検討中
井手氏は、LINEリサーチのメリットとして、スピード感という点も挙げている。LINEリサーチの調査メニューの一つであるセルフ型で行うライトコースは、最大母数1,000人の調査を最短6時間で行うこともできる。もちろんパネルは代表性のあるLINEリサーチのパネルを利用できる。
我々自身も、クライアントへ提案する際の参考データの収集や、ECサイトやWebサイト、CMなどのA/Bテストでユーザーの反応を知るためにライトコースを利用します。1回目の調査を元に、2回目、3回目とさらに深掘りしていくような使い方もしやすいと思います。
事業会社でもちょっとした調査を行うときに自身で活用できるでしょう。また調査の経験がなくてもTableau(タブロー)でデータセットした状態で集計ができますし、調査開始前にはLINEの審査が入り、誰でも回答しやすくなっているかという視点で確認がなされるので、法人として考えた時も安心して使えると思います。これまでリサーチを行ってこなかった企業でも挑戦しやすいので、今後は調査市場自体の間口が広がっていくと思います(井手氏)
一方、サポートコースは、調査の専門スタッフが課題の整理、調査の設計、調査画面の作成、実査、集計、分析、報告までをトータルにサポートするコース。博報堂ではグループ内に専門のチーム体制を作り、LINEリサーチならではの特性を生かした調査の支援や結果分析・レポーティングを行い、従来のリサーチ品質を超える成果を目指して提供していきたいと考えているという。
なお、高速PDCAを実現するために、いくつかの調査については標準化を行い、パッケージとして提供することも検討中だ。たとえば、キャンペーンの調査、ECサイト来訪者、アプリダウンロード者のアクティブ化など、定期的に実施するような調査については、ある程度定型化しておき、意味ある情報を、工数をかけずクイックに実施できるようにしていきたいと井手氏は語る。
博報堂DYグループの持つデータと組み合わせた提案型ソリューション
さらに3社が展望として描いているのは、博報堂DYグループが持つさまざまなデータとリサーチを組み合わせた提案型ソリューションだ。
博報堂DYグループが持つ「生活者DMP」は、DACが保有する国内最大規模のデータマネジメントプラットフォームであるAudienceOneを基盤に、購買データやテレビの視聴ログデータなど、幅広いデータを保有している。また、世の中のデジタル化の流れを受け、今後もデータアセットは拡張されていくだろうと語る。
既存のデータアセットだけではなく、オフラインも含めて今後さらに世の中がデータ化されていく中で、そのようなデータをリサーチと組み合わせることでどんなパッケージングができるか、議論をしている最中です。データとリサーチで定量と定性を行き来することで顧客理解をさらに、また新しい視点で深めることができると考えています。
また今回提携をしたことで、このデータとリサーチのコラボレーションを思考していくにあたって、両者の視点をより融合させ、より市場インパクトの高い開発ができると考えています。
また最近は、商品を顧客に直接販売するD2Cのビジネスモデルの企業も成長してきています。これはこれまで流通や小売に任せていた業務をメーカーが直接実行することで、顧客のニーズを最前線で受け止め商品開発にまで反映させる仕組みをビジネスモデルに埋め込んだものと捉えています。
一方で顧客との直接接点が不透明化しやすい企業ではこのような新しいビジネスモデルの企業に対抗していく為にも、LINEリサーチなど世の中のニーズを引き出す顧客理解プラットフォームの需要がさらに高まるのではないかと考えています。わたしたちが考えているのは、そこにデータの視点を加えることで、より解釈や切り口を増強できるのではないかということです(星野氏)
井手氏は、同様にLINEリサーチの調査データを提供するようなビジネスの可能性も視野に入れている。
調査をするには時間、費用がかかるので、若年層のアプリの利用方法、ミレニアル世代の意識調査など、ニーズが多いテーマを調査しておき、必要な企業に提供するようなサービスも考えています。若年層を中心とした生活者の実態をデータとして持っていれば、企業はそのための調査をショートカットできるかもしれません(井手氏)
LINEならではのまったく新しいスタイルの調査も視野に
将来的な展望として描いているのは、「無意識を探る」ような全く新しい調査によって、イノベーションにつなげる取り組みだ。
現在は、生活者のニーズに応えるようなデマンドサイドのサービス開発よりも、生活者の深層心理にあるペインポイントを発見し、それを解決するようなイノベーションが求められている。生活者自身も気づいていないような、言語化できない無意識を発見するために、これまでとは異なる調査の可能性について検討している。
8,000万人以上が日常的に使うLINEのメッセンジャーを調査のインターフェースとすることにより回答の敷居が下がるので、たとえば、普通なら調査に参加しないような方に、日々の生活を写真撮影してもらったり、日々の行動を日記式で書いてもらうことで、探索的な調査ができるのではないかと思います。要するに調査に答えるというモチベーションを発生させない記録的な回答を集めたデータベースがあってもいいのではないか、ということです。
日記、ログ、写真などいろいろな角度からデータを集めて分析することで、調査をやり尽くした企業であっても、新たな顧客インサイトを得られれば、機会創出にもつながるのではないかと思います。生活に根付いているLINEだからこそできる新しい調査手法になり得る可能性があります(井手氏)
LINEリサーチを活用して顧客理解を深めよう
博報堂、博報堂DYメディアパートナーズとLINEの提携により、LINEリサーチは今後さらに活用の場が広がりそうだ。まずは、次のような取り組みを強化していく予定だ。
- LINEリサーチの調査設計の最適化
- 高速PDCAのための調査の標準化
- 高付加価値な調査結果データの提供
- データ×リサーチのソリューション開発
- 事業機会探索のための新調査手法の検討
顧客理解を深めたいという企業は、まずは相談してみてほしい。調査のプロが集結して、一緒に課題整理からリサーチをサポートしてくれる。
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