これからのマーケティングは「形がないもの」にどう価値を持たせるか

これからのマーケティングは「形がないもの」にどう価値を持たせるかに注目していると語ったのは、「標-しるべ-」に登壇した村上氏と植山氏だ。各氏はマーケティングについての過去・現在・未来について、さらに自身のキャリアについても語った。
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これまでのマーケティングと、これからのマーケティングはどう違うのか? 今の若手マーケターはどうやって成長し、キャリア形成すべきなのか。

2月27日にオンラインで行われた、「セールス&マーケターの力を養う1日」がコンセプトの「標-しるべ-」に、『Webマーケッター瞳』の監修でお馴染みのシナプスエン・ジャパンの村上佳代氏、SATORIの植山浩介氏が登壇。

20年間のマーケティングを振り返り、これからのマーケティングがどうなっていくか、どんなものに価値が生まれるのか、自身のキャリアや今後若手マーケターがキャリアを積むためのコツについて語った。

「過去」「現在」――マーケティングが20年前と変わったこと

植山氏: マーケティングの過去・現在・未来を考え、何かインスピレーションを得たいと思うのですが、たとえば20年前と比較すると何が変わったと思いますか?

村上氏: 20年前の2000年は、インターネットの商用化後数年経ち、いよいよ大企業がネットを活用し始めたころでした。1999年に登場したDocomoのiモードは、それまで通話だけだった携帯電話でテキスト(メール)の送付や、ちょっとした番組が見られたり、着メロなどのコンテンツが購入できるようになったりしたのが画期的でした。今では常時接続が当たり前のインターネットも、当時はようやくダイヤルアップからADSLになり、ヤフーが町中でルーターを配っていたのもブローバンド元年と呼ばれた2001年ですね。

しかし、当時最新だったものも、今は当たり前どころか古いものになり、中にはすでに消えてしまったものもあります。つまり、現在最新だと思っているものも、20年後、もしかしたら5年後には陳腐化したり、コモディティ化したりすることを前提にして物事を考えていかなければならないと思います。

エン・ジャパン株式会社 社外取締役
株式会社シナプス フェローコンサルタント
村上佳代氏

植山氏: これからは回線も5Gになり、パソコンも高性能になり、ハードの面でも差別化することが難しくなりますよね。

村上氏: 技術はどんどん進化して、AIに仕事を奪われるという話もありますが、「自分が何をできるか」を考えなければならない時代なのだと思います。

植山氏: これはマーケティングでも同じですよね。たとえば、「このメッセージを打つとCVが上がる」「この画像はクリック率が高い」という情報が広まると、みんな同じ手法を真似します。しかし、これからは機械が勝手にチューニングするので、それで結果が出る時代は終わるでしょう。

既存のテクニックやノウハウだけでなく、自分のオリジナルコンテンツなど、いかに人間らしいものを作れるかどうかが、勝負になってくると考えています。

植山氏: この20年間、村上さんはどのようにして自分を作ってきましたか?

村上氏: 「インプット×アウトプット」をどれだけ回せるかを常に考えていました。良いインプットがないと、良いアウトプットに繋がりません。新しい知識を仕入れていかなければ、古い知識はすぐに陳腐化してしまいます。常に勉強し続けないと、良質なアウトプットをすることが難しくなってしまうのです。

植山氏: 「中間管理職が負債化している」という記事を読んだことがあります。それは中間管理職の方が知識をアップデートできていないということなのですね。

村上氏: 古い知識は不良債権化すると思います。これからは、知識と知識を組み合わせて、どう新しいものを作っていくかが重要になると思います。

「未来」――これから注目していること

SATORI 代表取締役 植山浩介氏

植山氏: ここまでは、現在までの20年間を振り返ってみました。次は未来の話です。村上さんがこれから注目していることを教えてください。

村上氏: 「最新のものが当たり前になっていく」という話をしました。たとえばAIや、車がどう進化していくのか。何が当たり前になっていくのかを見極めて、どのようにサバイブしていったらいいのかを考えています。

20年前は当たり前ではなかったことが、今当たり前になっている状況を目の当たりにしているので、これから当たり前になっていくことに対しては注目しているというより、アダプトすることに注力しています。

植山氏: 少しポイントがずれてしまうかもしれませんが、私は2つのトレンドを考えています。1つ目は「リアルなもの」より「形のないもの」の方がお金も人も集まるということです。たとえば、本やおもちゃなどリアルなものより、SNSやゲーム、GAFAなど実体が見えづらいものが価値を生みだす状況になりました。

2つ目は、機能や価格だけではなく、ブランドや世界観を買う人が増えてきたように思います。今後は、ますますブランドや世界観が大事になるのではないでしょうか。

村上氏: 「形がないもの」にどのように価値を持たせるかが、さらに重要になってくるということですね。その一方で、GoogleがPCを作り始め、ハードウェアに手を出したという動きにも注目しています。今まで物体のなかったものを提供していたGoogleがPCやスマホなどの販売を始めたという逆流もこれから増えていくのではないでしょうか。

マーケティングとは?

植山氏: 村上さんにとって、マーケティングとは何でしょうか?

村上氏: 「選ばれること」と「選ばれ続けること」です。「選ばれること」は、初めて商品を買ってもらったり、1回目の評価をしてもらったりすること。つまり、認知してもらい使ってもらうことです。しかし、1度きりで終わってしまうとマーケティングではなくなってしまいます。「選ばれる=新規の獲得」であり、「選ばれ続ける=顧客の維持、CRM・LTVの最大化」です。

私にとってマーケティングとは、「選ばれて、選ばれる続ける仕組み」を作るための考え方や、戦略、施策の全てです。

植山氏: つまり、マーケターは売り上げや顧客満足のすべてに取り組まなければならないということですね。

2人のキャリア

植山氏: このセミナーのターゲットである30歳前後の方が、マーケティング業界で生き残っていくために何かアドバイスを聞いていきたいと思いますが、その前に、村上さんのキャリアを教えてください。

村上氏: 現在は、3つの仕事をしています。経営・マーケティングコンサルタントとデジタルマーケティング人材コンサルタント、講師の3つです。

キャリアのスタートは、大学卒業後、すぐに就職せず海外に行っていました。帰国後、デジタル系のイベントプロデューサーを務め、1996年にデジタルコンテンツの制作会社を起業。数年後、ネットイヤーグループで大手企業の大規模サイトの構築やコンサルティングを担当しました。

「企業を成長させること」が楽しくなり、自分の会社と事業を成長させたいと、事業会社への転職を決め、カルチュア・コンビニエンス・クラブに転職。ツタヤオンライン事業のマーケティングを担当しました。その後、楽天に転職してマーケターとして働きながら、思うところがありMBA(Master of Business Administration 経営学修士のこと)を取得しました。

「現場で働くうえでMBAは不要論」も言われることがありますが、キャリアを積み重ねてくると、経営層と接する機会も増えます。そこで予算の獲得も含め、経営層がどのような考え方をしているのか、経営とは何かを知るには、経営学の学びが必要だと気づいたのです。経営学や会計、ファイナンスを学んだことが今の自分の自信にも繋がっているので、取って良かったと思っています。

村上氏: 植山さんは工学系の修士課程を修了されていますよね?

植山氏: 学生時代にインターネット業界と出会い、大学卒業後にR&D専門企業を創業したのですが、軌道に乗せられず、しばらくは自信を無くしていました。

しかし、31歳で縁あってご支援した企業が上場し、それを間近で見た体験に背中を押されて、改めてSATORIを立ち上げました。

若手マーケターがマーケティング業界で生き残っていくためには「軸足を決める」

植山氏: 若手と呼ばれる人材が、マーケティング業界で生き残っていくために村上さんは何が必要だと思いますか?

村上氏: 「自分が何をしたいのか」という軸足を決めることが大切だと思います。そして、1本軸足を決めたら横に広げていくことです。いわゆる、T字型のキャリアです。たとえばMBAをとるとか、会計やファイナンスの知識を得るとか。マーケティングだけでは、限界があるので、知識を増やすのも有効です。ただし、芯(軸足)になるものをしっかり持っておくことが大事です。

植山氏: 30歳前後だと転職に興味をもっている人も多いと思います。村上さんも何度か転職を経験されていますが、どのような理由で転職を決めていますか?

村上氏: 自分の中で納得できることが基準でした。収入や仕事の内容、扱う商品なども重要ですが、「情熱を持って関われるか」というのが必須条件です。たとえば、万人が素晴らしいと認めているものでも、「それに私が情熱を持てるのか?」「心身ともに厳しい状態になっても関わり続けたいと思えるのか?」それを満たせるかどうかが条件です。

業界、業種、ポジションなど転職するたびに変化してきましたが、マーケティング、デジタル、ITという自分の軸足だけは絶対にずらしませんでした。

植山氏: まだ自分の軸足を見つけられていない人もいると思うのですが、アドバイスはありますか?

村上氏: 「軸足を決めろ」という言葉とは矛盾してしまいますが、自分の可能性を狭めないことも大切だと思います。たとえば、興味がないことでも関わってみるとおもしろいと思えたり、自分の才能に気づいたり、自分に向いていたりすることもあります。軸足を決めるのは大切ですが、あまり頑なになりすぎずに視野を広げてみることも必要です。

和やかな雰囲気で行われたセミナー

最後に、マーケティング関わる方へのおすすめ書籍として、村上氏が『NETFLIX コンテンツ帝国の野望』を、植山氏は『Webマーケッター瞳』と、『至高の営業』を紹介。各氏は30代の皆様にはなんでも挑戦してみて欲しいとして、セミナーを締めくくった。

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