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新型コロナで、心理と需要はどう変化したか?

新型コロナによって人々の関心がどのように変化したのか。第3回では、心理・需要の動きを検索需要から読み解きます。【第3回】
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新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に関する分析 -心理・需要の変化-Part 2

1 行動の変化」では、新型コロナウイルス症候群(COVID-19、以下"コロナ"と呼称)による行動の変化を取り上げました。では、その背景にある個人の心理・需要には、どのような変化が起きているのでしょうか。

心理の変化は、「からだ」への影響、「こころ」への影響、「くらし」への影響に分けて考えることができます。

「からだ」への影響としては、コロナ対策や、運動・フィットネスの需要が増加しています。

「こころ」への影響では、コロナへの不安、在宅、家族関係などに起因したストレスが増加。そうした不安からの「コロナ差別」も発生しています。

「くらし」への影響については、家計・経営資金、失業・休業などの検索も増加し、実体経済の悪化が懸念されます。また支出を「生活必需品」「健康関係」「子供の教育」に絞り、その他の支出を切り詰めたいという傾向を示しています。

次に、需要の変化ですが、在宅時間の増加に伴い、「在宅で利用でき、他人との接触が不要な商品・サービス」の需要が増加する一方で、「外出・接触が必要な商品・サービス」の需要が減少しています。コロナの影響(需要の増減や、特徴的な検索傾向など)は、業界・テーマごとに異なるので、1つずつ丁寧に見てみる必要があります。

本稿では、上記の各項目について詳細を解説いたします。

※リンク先のサイト名は角括弧[ ]で表示しています。サイト名表示がないものは、すべてGoogle トレンドへのリンクです。

目次

2.1 心理の変化

本節では、需要の具体例を説明するために「Google トレンド」を活用します。その読み解き方の説明も兼ねて、まずは「ボランティア」の検索需要(直近2年分)を確認してみましょう。以下のようなグラフが表示されるはずです。

読み解き方の解説を見たい方は、以下のボタンを押してください。

読み解き方の解説

読み解くにあたっては、以下の2点が重要です。

①対前年比(同期間)

分析対象とする期間と、その1年前の同期間を比較します。今回は、コロナの検索行動への影響が深刻になった2020年4月1日から4月17日と、その前年を比較します(「0 『コロナへの関心』の変化」参照)。

今期の検索需要は、前期と比較して明らかに減少しています。では、この原因は何でしょうか?

②対前年比(年間)

年周期での検索需要の変動傾向を見ると、季節性の影響や、そのトピック自体の需要の変動が把握できます。

「ボランティア」というキーワードの検索需要量は、波線グラフより下の、山の面積で表せます。前期・今期を比較すると、全体的な量には極端な変化は見られません。これによって、「2020年1月以降のボランティア需要減少は、"ボランティア"という言葉自体が時代遅れになっているからではない」ということがわかります。

参考までに、1年周期で需要が極端に違う例も載せておきます。

また、波の形から需要の周期性を読むこともできます。

「ボランティア」の検索需要は、2018年7月8日~14日週と、2019年10月13日~19日週に急増。明確な季節性は見られません。増加している期間はいずれも大災害(平成30年7月豪雨[総務省消防庁]と令和元年東日本台風)[総務省消防庁]の直後。「他の人が困っているときだからこそ、ボランティアとして立ち上がろう」という利他の機運が、需要に強く反映されることがわかります。

(※執筆時には正確さを期して5年間でも確認していますが、記事内では理解しやすさのために対前年分だけを掲載しています)

対前年での年間比較・同時期比較から、「ボランティア」という検索需要の季節性は弱く、特定の危機が発生したときに急増することがわかります。

しかし、今回の「コロナ」という危機に対しては、検索需要は低下しています。これは皆さんもご想像のとおり、外出自粛要請や、感染すること・させてしまうことへの危惧が原因と見られます。

しかし、「ボランティア」に代表されるような利他の精神が弱ったわけではありません。例えば、せめて「寄付」で何かの役に立てないか、「在宅 ボランティア」で何かできないか、という需要は増加しています。

こうした利他精神が発露しているのは、日本だけではありません。Google によるアメリカでの検索動向調査では、以下の検索が増加しています。

  • 「〇〇に感謝する方法」:医療従事者・バスの運転手・警察官・消防士などのエッセンシャルワーカー[Yahoo!ニュース](社会維持に必須の業務に従事される方々)
  • 「〇〇を支援する方法」:医療従事者・中小企業・ローカルビジネス(地元の企業や店舗)

「こんなときだからこそ、誰かのために、できる範囲で何か貢献できないか?」という利他精神が活性化しているのを見ると、人間はすてきだな......と思えます。

しかし、このようにうれしい話ばかりではありません。以下の先行調査2点は、「日本在住者の、コロナによる心理の変化」を浮き彫りにしています。

これらの調査からは、「からだ」「こころ」「くらし」の3点に関する不安の増加をうかがい知ることができます。そして、検索行動の変化もそれを裏付けています。

出所:「新型コロナウイルス感染拡大が日本人の消費行動に及ぼす影響」「日本人の日常生活に関する調査」[NRI(野村総合研究所)]

2.1.1 「からだ」への影響

NRIの調査は「自身、家族の健康」に対する関心が、コロナ以前よりも増加していることを示しています。検索需要もそれを反映して、「コロナ対策」に関する検索が大幅に増加しています。

分類検索例(リンク先はすべてGoogle トレンド)
商品マスク布マスクフェイスシールドなど
対処法手洗い消毒液 作り方コロナ 予防マスク 作り方など
基礎知識コロナ 症状新型コロナウイルスCOVID-19など

「対処法キーワードでの検索需要が、YouTubeでも伸びている」ことには注意が必要です(例:「マスク 作り方」のYoutube検索需要)。こうした対処法の検索需要は「漂白剤・コカインの服用が有効」[CBS News]、「5Gがコロナの感染を媒介」[WHO]などというフェイクニュースの対象になりがちです。情報の発信者が正しい情報を伝えようとする場合、YouTube/Twitterなどでの発信を行わないと、正しい情報が伝わらないことがあります。

また、健康に対する意識が高まり、「運動・フィットネス」系の需要も増加しています。3密を避け、健康にも良いイメージのある「自転車自転車通勤」や、個人でのトレーニングが可能な「体操トレーニング筋トレダンベル縄跳びヨガマット」などの需要が増加。「ビリーズブートキャンプ」「ぶら下がり健康器」などの懐かしい健康法も需要が伸びています。

2.1.2 「こころ」への影響

NRIの調査からは「ストレス・家族関係」に対する関心が、コロナ以前よりも増加していることも読み取れます。

コロナへの漠然とした不安在宅へのストレス家族との接触機会が増加することによるストレスなどが発生し、カウンセリング頭痛薬などの対処法にも需要増加が見られます。

また、特定の民族・企業・グループなどに対する「コロナ差別」[法務省]も発生しています。

こうした動きも、コロナによる不安・ストレスの原因をわかりやすい誰かに押し付けて安心したい、という心理がもたらす誤りです。特にコロナのように、原因も不明なら、これまでに経験したこともない「不可視の危機」は正確な判断力を奪い、不安を助長します(参考:Wagner, Klaus「可視化しやすい「洪水」と、しにくい「地すべり」に対する反応差」[Wiley Online Library])。

2.1.3 「くらし」への影響

家計への不安も増加しています。NRI調査では収入減少・失業・就職難・増税などについての不安が増加。今後の支出は「生活必需品」「健康関係」「子供の教育」を重視し、その他の支出を切り詰めたいという傾向を示しています。

消費動向調査でも、消費者の「暮らし向き」「収入の増え方」「雇用環境」「耐久消費財の買い時判断」「資産価値」の5項目すべての見通しが悪化しています。

こうした不安が、検索需要にも強く反映されています。2020年2月ごろから「支援金」「都 支援」「融資」などの外部資金調達や、「ファクタリング」「給料 ファクタリング」のような手持ち債券の現金化で当座をしのごうとする需要が増加。

外出自粛傾向が強まった2020年3月末からは「失業給付」「失業保険」「休業補償」「民事再生」などの検索が増加しており、実体経済の悪化が懸念されます。

「給料 ファクタリング」「失業給付」の検索需要[Google トレンド]

2.2 需要の変化

2.2.1 「在宅化」の影響

在宅時間の増加に伴い、需要も大きく変化しています。全般的な傾向として、「在宅で利用でき、他人との接触が不要な商品・サービス」の需要が増加し、「外出・接触が必要な商品・サービス」の需要が減少しています。需要が増加したものは、以下のように分類できます。

分類検索キーワード例(リンク先はすべてGoogle トレンド)
「オンラインでのイベント」オンライン会議ウェビナーオンライン飲み会など
「デリバリー・テイクアウト」宅配出前テイクアウトなど
「在宅勤務」関連ブロードバンドオフィスチェアヘッドセットなど
「在宅学習」関連勉強机学習支援算数などの授業動画(YouTube)など
「住環境の改善」関連ホットプレートカーテンガーデニングなど
「在宅での娯楽」関連ゲーム機動画配信電子書籍など

2.2.2 業界・テーマ別の影響

検索需要調査を、業界やテーマに関わる主要キーワード全般に対して行うことで、業界別の需要動向をうかがい知ることができます。以下は、アルバイト関係でコロナによる需要が伸びたキーワードの一例です。「家でできるバイト」「デリバリー需要の増加で求人が増える、宅配系のバイト」「人手不足が報道されることが多い、小売店でのバイト」などの検索需要が増加しています。

(データの出所はGoogle トレンド)

一方で、外出・対面が前提となる職種の検索需要は大きく低下。

(データの出所はGoogle トレンド)

医療系バイトの検索需要には、これらの心理がともに現れています。人手不足が報道されることが多い「医療」の需要が増加。しかし密接な対面が必要な病院・看護系では伸びが見られず、密接を避けられる「薬局」では伸び率が高い、という具合に感染への不安も見受けられます。

(データの出所はGoogle トレンド)

以下はテーマ別の検索需要動向です。(随時追加)

テーマ検索需要動向
旅行
  • 全般的に検索需要が低下。特にアジア圏への海外旅行需要の低下が大きい。
  • 国内、特に温泉地の検索需要は低下幅が小さい。しかし、営業自粛している温泉地が多く、直近での成約にはつながらない。
  • 「国内、特に温泉地は比較的安心」という意識が見られる。
パート・アルバイト
  • 「求人需要が多そうな職種・業種」への検索需要が増加。配達系・小売・医療系など。
  • 「対面・外出が前提の職種・業種」への検索需要は低下。飲食店を初めとしたサービス業への影響が大きい。
ジム・フィットネス
  • 「エリア名×ジム」などの、店舗検索需要は低下。他者との接触機会忌避が原因と見られる。
  • 一方で「家でできる運動」の需要は増加。
ダイエット
  • ダイエット食品やダイエット方法など、全般的に検索需要が増加。在宅での運動不足が原因と見られる。
ファッション
  • 全般的に減少。外出減少や、支出意識の変化が原因と見られる。
  • 一方で「ルームウェア」の検索需要は増加。

こうした変化に対処する際には、どのような点に注意すればよいでしょうか。次回のPart 3では「情報を発信するとき」「情報を受信するとき」の対処法を解説します。

この記事を書いた人

株式会社電通デジタル
SEOチーフリサーチャー
広岡謙

SEOコンサルタントとして、主に大規模サイト・メディアサイト・企業公式サイトなどに対し、テクニカル面と評価向上面の双方でのコンサルティングを行う。「Google品質評価ガイドライン(Google General Guidelines)」解説など、SEOの知見を活かしたイベント登壇や記事執筆なども実施。

オリジナルの記事はこちら:新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に関する分析 -心理・需要の変化-(2020/05/21)

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