その顧客体験、トレンドに乗れていますか?

調査方法としては、「当たり前に普及したサービスをひもとくことで、それに慣れた人々は、こういった要素がないと不便に感じるようになっているのではないか」という仮説のもと、普及が進んで暮らしに入り込んだデジタルサービス(※対象サービスリストは後述)がもたらした行動を分解し、グルーピングしていくことで、潮流と傾向を抽出しました。

まず、今回の記事では12の傾向のうち、賢くスマートに行動し失敗を回避できる体験に慣れた結果、確実性やスマートさを求めるようになった、という1つ目の潮流に含まれる4つの傾向を紹介していきたいと思います。

各傾向についてチェックリストを設けていますので、ぜひ自社のサービスや顧客体験と照らし合わせてみてください。

連載INDEX

[潮流#1]デジタル行動の浸透がもたらした12のユーザー体験傾向とは?(本記事)

[潮流#2]あいまいさの補正、記憶のアウトソース…デジタルにサポートされるのに慣れた生活者

[潮流#3]「絵文字がないと、感情が伝えにくい…」適度なライトさが体験設計の鍵に

1.ネット上の意見や口コミ・評価を参考に判断する

実際の店舗で商品を選ぶときや、行くレストランを決めるとき、オンラインで評価や口コミをチェックしないと不安に感じてしまうことはありませんか? 
 
もしくは、何か商品やサービスに意見があるのに、それをフィードバックするフローが用意されておらず、もやもやすることはありませんか? 

 

オンラインショッピングやSNSサービスに慣れ親しんだことで、何かを判断する際に、ネット上の他人の意見や評価するという体験が当たり前になりました。その結果、評価を見ずに判断することや、意見を言う窓口がないことをストレスに感じるようになってきていると考えられます。 

チェック

☑ 何かを判断する場面で、第三者の評価が見えるようにされているか?

☑ 評価をフィードバックする先や仕組みがきちんとあるか?

例えば、以下のようなサービスはこの潮流にうまく乗れている体験といえます。

【潮流を表すケーススタディ】 

(右)Amazon公式サイトより

‐Uber:タクシー運転手と乗客のお互いの評価を見える化することで体験価値を向上。 
 
‐ NewsPicks:ニュース自体ではなく、ニュースに対するコメントを軸としたサービス。 
 
‐ Amazon4Star:Amazonで4つ星以上の商品のみ集めたリアル店舗。 
 
その他、昨今のリファレンス採用重視もこのトレンドの影響があるかもしれません。

 

2.流れゆく大量の情報からザッピングする

SNSのタイムラインを流し見したり、検索結果の一覧画面から目当てのものを探したり、オンラインショッピングで多くの商品画像をスクロールしながらショッピングしたり…。デジタルサービスによって多くの情報やコンテンツの中から選び取る行動が増えました。 

 

新着情報がないか、ついついスマートフォンの通知をチェックする、画面を下にスワイプ&リフレッシュして更新情報を得るといった動作がクセになっている方もいるのではないでしょうか? 
 
私たちは、大量の情報やコンテンツをザッピングする体験が当たり前になった結果、情報や選択肢が少ない、新着がない状態をストレスに感じるようになっていると考えられます。 

 

チェック

☑ コンテンツや情報量は十分か?

☑ 鮮度の高いコンテンツを提供できているか?

(左)NETFLIX公式サイトより/(右)メルカリアプリ

【潮流を表すケーススタディ】

‐ NETFLIX:大量のコンテンツから自分の見たい作品を探せるサービス 
 
‐メルカリ:スマートフォンに特化したフロー型のUI 

3.賢くスマートに行動し、失敗を回避する

「え? これってネットで事前予約できたら、よくない?」「きちんと比較検討しにくいから損してる気分になる...」といった類いのストレスを感じることが増えていませんか?

乗換案内を検索してから移動する、ネットで事前予約してから映画館に行く、といった行動や、レストランや美容院を選ぶ際にネットで比較検討をする、といった行動が当たり前になった結果、非効率な動きをさせられたり、比較検討がしにくいシーンに対してストレスを感じるようになっていると考えられます。

チェック

☑ 体験者に非効率な動きをさせるシーンはないか?

☑ 何かを判断する場面で比較検討がしやすくなっているか?

【潮流を表すケーススタディ】

東京ディズニーリゾート 公式アプリ

‐東京ディズニーリゾート:アプリで待ち時間を表示するなど非効率な動きの軽減

‐ユニバーサル・スタジオ・ジャパン:ダイナミックプライシングサービス(AIによる繁忙期と閑散期を加味した値付け) 
 
Amazonが、家電のような比較がされやすい商品の場合、類似商品の比較表を自動表示させているのも、この傾向にあてはまる動きだと思います。

 

4.リッチな情報で理解・体感する

動画コンテンツの普及によって、やり方や手順を伝えるハウツー動画やサービスやイベントを紹介する動画を目にすることが増えました。また、グーグルストリートビューといった立体的かつ操作できるようなUIも日常的に利用するようになっています。結果、画像やテキストのみといった、体感できるようなリッチな情報がない状況を、ストレスに感じはじめているのではないでしょうか? 

例えば、「説明書だと分かりにくいな。動画ないかな?」「動画がないと、雰囲気がつかめないな~。」といった場合に、動画や3D情報などより立体的に理解できるような体験を求めるようになってきているのではと予想しています。 

チェック

☑ テキスト・画像だけでは伝わりにくい部分はないか?  

☑ その場にいない人にも体感できるような工夫ができているか?

【潮流を表すケーススタディ】 
まさに、画像とテキストでは伝わらないので、参考事例は動画を貼っておきます。

 

‐ DELISH KITCHEN:レシピ動画サービス。

- LUSH店舗:ARカメラを商品にかざすと動画視聴。(入浴剤専門店でARカメラをかざすと泡の広がり方が見られる) 

その他、不動産会社が物件の紹介に、ドローン撮影の映像を使っているのも、このトレンドの事例だと思います。

※Skimmingは情報を「すくい取る」の意。

 

4つの傾向、いかがでしたでしょうか? 
自社の顧客体験で不足している部分はないか? 新サービスや新店舗などの検討時に考慮できているか? など、体験向上の参考になれば幸いです。

【続きをチェック!】次の潮流の4傾向が読みたい方はこちら。 

最後にチェックリストのみをまとめたものを掲載しておきます。 

【確実性/スマート】のチェックリスト

☑ 何かを判断する場面で、第三者の評価が見えるようにされているか?

☑ 評価をフィードバックする先や仕組みがきちんとあるか?

☑ コンテンツや情報量は十分か?

☑ 鮮度の高いコンテンツを提供できているか?

☑ 体験者に非効率な動きをさせるシーンはないか?

☑ 何かを判断する場面で比較検討しやすくなっているか?

☑ テキスト・画像だけでは伝わりにくい部分はないか?  

☑ その場にいない人にも体感できるような工夫ができているか?

次回の記事では2つ目の潮流である「効率性・スームズさ」を求める潮流から4つの傾向をご紹介したいと思います。

連載INDEX

[潮流#1]デジタル行動の浸透がもたらした12のユーザー体験傾向とは?(本記事)

[潮流#2]あいまいさの補正、記憶のアウトソース…デジタルにサポートされるのに慣れた生活者

[潮流#3]「絵文字がないと、感情が伝えにくい…」適度なライトさが体験設計の鍵に

 

◆エクスぺリエンス潮流調査レポートとは? 

サイトやアプリ単体ではなく、体験全体を設計・改善していく際の指針づくりを目的に、IMJニンゲンラボにて調査。

普及したデジタルサービス(利用率4割以上、普及スタートより5年以上経過したものを目安に10個ピックアップ)を分解・再分類することで、当たり前化した行動の特徴をあぶり出し、今求められているであろう体験の傾向を導きました。

【調査対象サービスはこちら】
1.スマートフォン 2.検索サービス 3.Twitter 4.Facebook 5.グーグルマップ 6.LINE(チャットツール) 7.オンラインショッピング(※ネット予約含む) 8.Suica 9.QRコード 10.YouTube

 

ニンゲンラボとは?

デジタルの力でニンゲンの生活がどんどん進化していく。変わっていく行動様式と、変わらない人間の根源的欲求。多様化していくライフスタイルと、多層化していくコミュニケーション。
企業に、顧客視点=ニンゲン視点がより一層求められる中、生活者の姿はだんだんと見えにくくなっています。
デジタルを通じて、ユーザーエクスペリエンスを作り続けてきたアイ・エム・ジェイだからこそ、デジタルを通じて変革・進化するニンゲンの「今」と「未来」を研究していきます。