Marketo・Eloqua・Pardot機能比較! 自社に最適なエンタープライズ向けMAツールはどれ?
MAツール導入前の5つのチェックポイントはわかった。でも、実際のMAツールはどう違うんだろう? 自社に向いているのMAツールがどれなのかは、どう判断すればいいのだろうか?
この記事では、エンタープライズ向けMAツールとして実績のあるツールを挙げて、それぞれの特徴的な機能を示し、記事の最後では機能比較からみたMA選定のポイントを解説します。
取り上げるツールは「Marketo」「Eloqua」「Pardot」の3つです。
エンタープライズ向け3大MAと各MAの機能比較
この記事では、エンタープライズ向け3大MAとして次の3製品を取り上げています。
この3製品を「3大MA」として取り上げたポイントは次の2点です。
MarketoとEloquaは、ガートナーが定期的に行っているMagic Quadrant(マジック・クアドラント)調査の「CRM Lead Management」分野2017年版でトップ2の製品であることから候補として採用
Pardotは、国内でMA導入時に前述の製品と比較される機会が多いため候補として採用
では、これら3つのMA製品それぞれについて、「特徴的な機能」「その製品をおすすめするユーザー」などをみていきましょう。
Marketo(マルケト)の特徴的な機能
Marketoは、2017年のGartner Magic Quadrant for CRM Lead Management部門でOracle Eloquaに並ぶ最も高い評価のLeaderを獲得した代表的なマーケティングオートメーションツールです。
Marketoには、Oracle EloquaやSalesforce Pardotにはない機能があります。それは収益サイクルモデラと育成プログラムを利用したリードナーチャリングのオートメーション(自動化)です。
Marketoの特徴的な機能は次のとおりです:
- 収益サイクルモデラを利用したリードのステージ管理
- 育成プログラムを利用したキャンペーンの自動化
- ライフサクルプログラムを利用したリードのステージ管理
- 成功パスアナライザを利用してPDCAサイクルをまわす
それぞれみていきましょう。
収益サイクルモデラを利用したリードのステージ管理
Marketoでは、リードを「収益ステージ」ごとに管理できます。リードの収益ステージの例として、次のような分類があげられます。
- MCL(マーケティング部門で集めたリード)
- MEL(マーケティング部門でアクションがあったリード)
- MQL(マーケティング部門で見込みありと認識したリード)
- SAL(セールス部門へ受け渡したリード)
- SQL(セールス部門がフォローするリード)
- Customer(受注顧客)
ビジネスモデルによっては収益ステージの名称やステージの分け方は異なると思いますが、基本的な考え方としてはリードを収益ステージごとに数字で可視化することに違いはありません。
「育成プログラム」を利用したキャンペーンのオートメーション
そして収益ステージごとに、「育成プログラム」によるリードナーチャリングを自動化できます。
育成プログラムとは、ステージごとに管理されたリードに対して事前に設計したシナリオに沿ってメールを配信するプログラムのことです。ステージに応じて、配信間隔、配信時間、曜日などを調整できます。
「ライフサイクルプログラム」を利用したリードのステージ管理
さらに「ライフサイクルプログラム」という収益ステージを管理する機能を利用すれば、リードの属性、行動(アクティビティ)、スコア変動をトリガーにして、各リードの収益ステージを変更していけます。
つまりMarketoには、次のような仕組みがフレームワークとして用意されているのです。
「各リードがどの段階にあるか」の枠組みを収益ステージとして作っておき
次の段階に進んでもらうためのシナリオを「育成プログラム」として設計してコミュニケーションしていき
そのコミュニケーションへの反応状況などに応じて「ライフサイクルプログラム」が各リードを次の段階に分類しなおしていく
まずはこのフレームワークに沿って設定することでスムーズに運用を始められるところが強みなのです。
「成功パスアナライザ」を利用してPDCAサイクルをまわす
さらに、こうしたフレームワークを活用してリードナーチャリングを進めていく動きを効率的にする機能として、Marketoには「成功パスアナライザ」があります。
成功パスアナライザとは、次のような情報を可視化できる機能です。
- 現時点で収益ステージごとに登録されているリードの件数
- 一定期間に次の収益ステージに遷移したリードの件数
- シナリオによって次の収益ステージに進んだコンバージョン率
さらにここから、次のようなことも逆算できます。
毎月の予算を達成するために、各収益ステージに何人のリード数が必要で、ステージ移行のコンバージョン率が何パーセント必要なのか
こういったシナリオ設定を評価するような機能を備えていることはMarketo独自の強みです。外部ツールに依存することなくMAのみでシナリオの構築と運用でPDCAをまわせるからです。
Eloqua(エロクア)の特徴的な機能
Oracle Eloquaも、同じく2017年のGartner Magic Quadrant for CRM Lead Management部門で最も高い評価のLeaderを獲得したMAツールです。
特徴的なのは、MarketoとPardotと比較すると、データ参照範囲や機能制限の権限設定をユーザーごとに細く設定できる点です。
MAを複数の事業部で利用する場合やグローバルで展開する場合には、権限設定が重要になってきます。
権限設定に関する課題は、MAの導入時ではなく、導入してしばらくしてから出てくることが多いもので、たとえば、次のようなことがあります。
- 別の事業部には、自分達の獲得したリード情報を利用させたくない
- 作成したフォームやLPを、他部門のユーザーに編集させたくない
- メール作成の機能しか利用しないので、他の機能を利用して間違ってデータを消さないように機能を制限したい
- 部下にはメール配信実行の権限を与えたくない。上長の自分が承認したメールだけを配信したい
こうした課題を解決するために、きめ細やかに「利用の統制」を実現する権限設定ができることがEloquaの特徴で、次のような機能を備えています。
- コンタクトセキュリティラベル
- セキュリティグループ
コンタクトセキュリティラベル
「コンタクトセキュリティラベル」とは、各リードの情報を参照できる運用者を制限できる機能です。
たとえばリードデータの閲覧制限の例で考えると、次のような機能です。
リードAに対して、事業部Aのコンタクトセキュリティラベルを付与すると、事業部BはリードAのデータを参照できなくなる。これにより、「リードAのデータを参照できるのは事業部Aのみ」という制限を適用できる。
この機能は、実際にどんな場面で活躍するのでしょうか。
たとえば、リードAという顧客に事業部Aと事業部Bのコンタクトセキュリティラベルが付与されている場合は、事業部Aと事業部Bのどちらも、リードAに対してイベント・展示会・キャンペーンなどのメールを送ることになります。
そうなると結果として、リードAに届くメールの数が各事業部の想定より多くなってしまい、大量に届くメールが嫌になったリードAがメール配信を停止してしまうというリスクがあります。
こういったことが起こるリスクがある場合には、リードAに対してどちらかの事業部のコンタクトセキュリティラベルだけを付与します。そうすることで、リードAの受け取るメールが多くなりすぎるという問題を避けられるようになるのです。
ただし、注意点があります。リードA(やほかの多数のリード)に対して、事業部Aのコンタクトセキュリティラベルを付与するのか、それとも事業部Bのコンタクトセキュリティラベルを付与するのかです。こうしたルールは事業部間で事前に調整して決めておく必要があります。
またコンタクトセキュリティラベルは、スコアリングにおいても活用できます。
「スコアリング」とは、各リードの属性や行動に応じてスコア(点数)を付けていくことで、スコアによってリードの状況を判断するのに使うものです。たとえば「事例ページを見た」「資料をダウンロードした」「事例セミナーに参加した」といった行動に高いスコアを付けるような形です。
しかし、せっかく各リードをスコアリングしていても、複数の事業部で好き勝手にスコアを調整してしまうと正しいスコア判定ができなくなってしまいます。こうしたこともコンタクトセキュリティラベルで防げます。
Eloquaのコンタクトセキュリティラベルは、グローバルでMAを利用する場合に間違いなく重要な機能となります。なぜならコンタクトセキュリティラベルを利用しない場合は個人情報がグローバル全体で丸見えになるからです。
MAのデータベースや設定はグローバルで1つのままで、国や地域単位で閲覧できる情報を制限する、そうした機能を標準で備えていることは、Eloquaの大きな特徴です。
セキュリティグループ
Eloquaでは、組織内の各Eloquaユーザー(運用者)がどの情報にどうアクセスして何をできるのかを、細かく制御できます。その管理に使うのが「セキュリティグループ」という機能です。
セキュリティグループでは、アセット、機能、インターフェイスなどに対してユーザーがアクセスするレベルを管理者が制御できます。標準でいくつかのセキュリティグループが設定されていますが、必要に応じて独自のセキュリティグループを作成できます。
セキュリティグループで設定できる権限には、次のようなものがあります。
ライセンス ―― ライセンスとは、ユーザーにログイン権限を与えることです。利用するユーザーにはまずライセンスが必要になります。ライセンス許可は、特定のユーザーまたはセキュリティグループ全体に一括で付与できます。
インターフェイスアクセス ―― インターフェイスアクセスでは、ユーザーがアクセスできる特定の機能の画面を制限できます。インターフェイスアクセス権限がないと、利用を制限された機能はメニュー自体が表示されません。
処理権限 ―― 特定の機能画面にアクセスしている状態でユーザーが実行できる機能を制限します。同じ機能のなかでも「閲覧のみ」「編集も可能」というように処理権限を分けて管理できます。
アセット作成の権限 ―― ユーザーが作成できるアセット(コンテンツ)の作成権限を制限できます。「メールは作れるが、フォームは作れない」といった細かい管理が可能です。
デフォルトのアセット権限 ―― ユーザーがアセットを作成するときに適用されるデフォルト権限を設定できます。アセット作成権限で設定されていない場合、こちらのデフォルトアセット権限が自動で適用されます。
ビジネスユニットメンバーシップ ―― ビジネスユニット(部署)ごとにコンタクトセキュリティグループを分類して、そのビジネスユニット内のすべてのアセットとデータへのアクセス権限を設定できます。
このように、かゆいところに手が届く詳細な権限を設定できることが、Eloqua最大の特徴です。グローバルでビジネスを展開する企業にとってはMAの選択肢の1つとして考えられるのではないでしょうか。
Pardot(パードット)の特徴的な機能
Pardotは、2017年のGartner Magic Quadrant for CRM Lead Management部門でEloquaとMarketoに次ぐ高い評価のChallengerを獲得したエンタープライズ向けB2B用MAツールです。
Pardotを選定するポイントは、シンプルに「CRMがSalesforceである」の1点に集約されます。
CRMがSalesforceである
これがPardotの強みのすべてだといえます。逆に言うと、CRMとしてSalesforceを利用しているのでなければ、PardotにはMarketoやEloquaのような独自の強みはないと考えてよいでしょう。そのためPardotを導入する際には、CRMもSalesforce製品をセットで導入することを推奨します。
CRMがSalesforceだと、なぜPardotが優れているのでしょうか。一言で言うと「1プラットフォーム」になるからです。この「1プラットフォーム」がPardotの強みだと考えてください。
PardotはSalesforce社のMAであり、Salesforce社はその他にもCRM(Sales Cloud)やBI(Einstein Analytics)といった製品をもっており、シングル・サインオン(1回ログインすればいいだけ)ですべてのサービスにアクセスできます。これは他のMAにはない特徴です。
この特徴は、実際にツールの画面でもわかりやすく現れています。次の図は、SalesforceのCRMツールにログインした画面です。ある企業の情報を参照すると、同じ画面からCRM・MA・BIどの情報にもスムーズにアクセスできるようになっています。特にCRMとMA(Pardot)の情報に1画面で同時にアクセスできるのは、実務を進めるスタッフにとって大きなメリットです。
「1つのプラットフォームであること」「シングル・サインオンで利用できること」は、MAツール自体の特徴ではないように思われるかもしれません。しかし、実際に運用する担当者にとっての使い勝手としては、非常にありがたいものなのです。
また、こうした特徴が最も役立つシーンとして、MAとCRMを活用する文化を組織内に浸透させていく段階があります。
どれだけMAやCRMのツールが高機能であっても、マーケティングや営業の各スタッフが業務において積極的にツールを使っていかなければ、何の意味もありません(実際に、MAツールを導入してもただの高価なメール配信ツールとしてしか使えていないというケースは、残念なことに本当に多いのです)。
その点Pardotは、1つのツールにさえログインすればすべての機能にスムーズにアクセスできるので、ツールの利用を習慣化しやすくなります。導入前にはなかなかイメージしづらい点だとは思いますが、実際に運用フェーズに入ると、この点が有効に働くというのは、知っておいて損はないでしょう。
さらに、マーケティング担当者にとっての直接のメリットではないかもしれませんが、Pardotにはもう1つ特徴があります。それは、1つのプラットフォームでCRM・MA・BI機能が実装されていることにより、意思決定までのスピードが早くなる傾向があるという点です。
機能比較からみたMA選定表
ここまででは各ツールの特徴を述べてきました。最後に、各ツールが得意な部分とそうではない部分を比較して、選定表にまとめました。
Marketo | Eloqua | Pardot | |
---|---|---|---|
リード登録件数 | ◯ | ◎ | ◯ |
ユーザー権限管理 | ◯ | ◎ | △ |
メール作成 | ◯ | ◯ | ◯ |
フォーム作成 | ◯ | ◯ | ◯ |
LP作成 | ◯ | ◯ | ◯ |
スコアリング | ◯ | ◯ | ◯ |
シナリオ設計 | ◎ | ◯ | ◯ |
Webトラッキング | ○ | ○ | ○ |
カスタムオブジェクト | ◯ | ◎ | △ |
CRM連携 | ◯ | ◎ | ◯(Salesforceメイン) |
外部システム連携 | ◎ | ◯ | ◯ |
ツールごとに特徴がある機能に関して、以下に補足を記載しておきます。
リード登録件数
数百万件~1千万件規模のリードを登録して一括でメールを配信する場合は、大量のトランザクションに対応しているツールを選ぶ必要があります。この点では、Eloquaがスケーラビリティに優れています。
ユーザー権限管理
細かい権限管理に関しては、Eloquaが最も優れています。特にMAをグローバルで利用する場合には、国や地域ごとにリードへのアクセス権を設定できる機能が役立ちます。
カスタムオブジェクト
「カスタムオブジェクト」とは、組織独自の情報を保管できるカスタムデータベーステーブルのことです。
もともと用意されている標準オブジェクトは、顧客情報や企業情報などを保管するデータベーステーブルの項目が「氏名」「メールアドレス」「電話番号」「企業名」など、事前に準備されています。しかし、カスタムオブジェクトを使えば、たとえば「市場シェア」「過去12か月間の取引額」「担当者の学閥」といった情報も登録しておけます。
カスタムオブジェクトの自由度に関しては、Eloquaが最も優れています。Eloquaで作成したフォームからカスタムオブジェクトへ直接データを書き込むことも可能です。
外部システム連携
MarketoにはWebhookという外部システム連携機能があり、Marketoと外部システムの双方向でデータ連携することが可能です。
たとえばSlackのようなコミュニケーションツールとの連携や、既存のCMSツールとの連携なども、Webhookを使えば実現できます。
ただし、CRMツールとしてSalesforce製品を利用している場合は、やはりPardotが最も使い勝手が良くなるでしょう。
こんな期待・要望がある場合にはこう選ぶ
あなたの組織では、おそらくMAツールを導入する目的や要望がすでにあることでしょう。そうした「よくある要望とそれに対する選定のポイント」を、いくつか紹介しておきます。
細かい権限管理が必須
細かい権限設定が必要な場合は、Eloqua以外に選択肢はありません。
一斉メール送信数が100万件以上を超える
一斉メール配信数が100万件以上ある場合も、Eloquaが最も有力な選択肢です。
ただし、Pardotも100万件以上の配信は可能です。とはいえPardotではサービス提供レベルとして「1時間あたり36万件の配信」までしか保証していないため、配信完了まで多少時間がかかっても問題ないのであれば、Pardotも検討対象に入ります。
マルチチャネルでコミュニケーション進めていきたい
マルチチャネルコミュニケーションを行いたい場合、今回のツール群ではMarketo以外に選択肢はありません。
ただし今回は紹介していませんが、国産MAツールでマルチチャネル利用できるものとして「SATORI」があります。検討候補に含める価値があるでしょう。
フレームワーク化されたシナリオ機能とレポート機能を利用したい
リードの段階分けやステージごとのシナリオをフレームワークとして提供してほしいというニーズがある場合は、Marketoが最適です。PDCAをまわしやすくするレポート機能も魅力です。
他のシステムも含めて1つのプラットフォームで導入したい
すでにSalesforceのSales Cloudを利用している場合など、1プラットフォームで利用・導入したい場合は、Pardotが選定対象になるでしょう。別々にログインすることなく、マーケティングチームと営業チームで同じ情報をシームレスに管理して参照でき、リードの管理やレポート共有もスムーズにできます。
ただし、アドビ システムズがMarketoを買収したことにより、今後はアドビのサービス製品群にMarketoの機能が統合されている可能性があります。その場合、「デジタル広告」「ソーシャルメディア」「WebサイトCMS」などとの連携に関してはMarketoが抜きん出る可能性があります。
比較表をご覧になって、MAツールを「機能」だけで比較しようとしても意外と差が付かないことに気づいた方も多いのではないでしょうか。
確かに各ツールで細かい仕様の違いはあります。ただしそれは表層的な違いであることが多く、本質的には同じ機能を備えている場合が多いのです。
実際にさまざまなツールの導入を支援してきた経験からみても、細かい機能の違い自体がMA導入の成否に影響したケースは本当に少ないものです。実際のところ、「MAを導入したものの、活用しきれていない」という企業の大多数が抱えている課題はMAの機能以外にあることが多いのです。
そのため次の第3部では、「MAツールを導入するべきか、そうでないか」「MAを導入する場合、自社がどこまで活用できるかをどう見極めるか」といった観点で、MAの導入を解説していきます。「どのMAツールを導入するか」の比較ではないことがポイントです。お楽しみに。→第3部を読む
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