本気でマーケティングをやりたい、でも高価なツールを使う予算はない。そんな中小企業が前に進むには?
中小企業や小さな制作会社で、こんな悩みを抱えている方はいないだろうか。
本気でマーケティングをするために、CRMやマーケティングオートメーションといったツールを導入したい。顧客管理情報とサイト上の行動情報や請求書、見積書を連動させて社内の誰もがその情報を簡単に使えるようにしたい。
でも、それには高価なツールを導入しなくてはならないが、予算に余裕がない。
また、そういったツールを使いこなすITリテラシーにも自信が無い。
これらの課題がたった30ドル(約4000円)/月で解決できるクラウド型の業務アプリ「Zoho One(ゾーホー・ワン)」が7月にリリースされた。具体的にどんなことができるのか、ゾーホージャパンの中沢さんに聞いてみた。
サイトやリアルの情報を連携させて、本気でマーケティングがしたい
Zoho Oneで何ができるかを知る前に、中小企業や小規模な制作会社でよくある悩みを列挙してみる。
- Googleアナリティクスは入っているが、それらの情報を営業に生かせていない
- マーケティングをきちんとやりたいが、人を雇えないし、どうしたらいいのかわからない
- メルマガを送っているが、セグメントやステップメールまで対応できていない
- Microsoft Officeやメルマガの配信ツールなどの業務効率化ツールがいくつも入っていて、ライセンス料が高くコストがかさんでいる
- 会計ソフトはあるけど、その情報が顧客管理とひも付いていない
今の時代、新しく取引を開始しようとしている企業の担当者(顧客)が、御社のサイトも見ずに問い合わせをしてくるということは、まずないだろう。つまり、サイトには契約につながる何らかのヒントが隠されているわけだ。
当然、それをうまく活用したいと思い、Googleアナリティクスなどのツールを導入していることだろう。しかし中小企業の場合、そもそもマーケティング部門がないことも多い。仮にあったとしても、営業のためにサイト上の行動データをまとめてくれるなんてことは少ないだろう。
結局、データがあったとしても、そのデータを使うべき人が使いたいタイミングで利用できなければ意味がないのだ。しかし、顧客管理情報を簡単に確認できるシステムがあり、これから営業が訪問しようとしている見込み顧客の行動データ、メルマガの開封率などがひも付いて簡単に見られたらどうだろう。さらに、見積書の提出履歴なども確認できたら、それらの情報が武器となり、成約率が上がるかもしれない。
また、ウェブ制作会社やデザイン事務所、システム開発会社などで、技術力を売りにしている企業でも、見積書や請求書は書かなければならない。小さな会社では、Excelで管理・発行しているケースも多いだろう。しかし、スプレッドシートで毎回同じようなことを書くのは無駄だし、取引先ごとに整理するなどの管理も面倒だ。
メールマガジンの発行はしているが、その成果がよくわからないというのも、課題として挙がる。もちろん、メールマーケティングやマーケティングオートメーションのツールはあるが、高価であるとか、導入が難しいとか、ある程度ITリテラシーがないとツールを使いこなせないなど、中小企業にはハードルが高い。
また、Microsoft Officeは、ビジネスには欠かせないツールだが、スタッフの数が増えると、ライセンス料が決して安いとは言えない。
これらの課題を一挙解決するのが、ゾーホージャパンが提供する「Zoho One(ゾーホー・ワン)」だ。そもそもゾーホージャパンはビジネスアプリをクラウド型サービスとして提供している企業で、これまでは各ツールや特定の分野を4つにまとめた「Suite(スイート)」の形でサービスを提供していた。
7月にリリースされたZoho Oneには、メールホスティング、ドキュメント管理、会計管理、CRMなど、今まで提供されてきた35のアプリケーションが含まれる。企業の運営に必要な機能をオールインワンで提供するようになったのだ。
画期的なのは価格体系で、1ユーザー1日当たり1ドル、1か月で30ドル(約4000円)。これで、メールアカウントからドキュメントアプリ、会計、人事、マーケティングオートメーションまで利用できる。
ただし、全社員数のライセンス契約が条件だ。最も適しているのはスタートアップ企業だが、すべての機能がシングルサインオンで利用できて、バックエンドでデータが連携できるなど、システム管理者を置けない中小企業にもメリットがある。パッとみて操作ができるようなインターフェイスで、使う人間を選ばず利用できるのも魅力的だ。
格安マーケティングオートメーション
実はZohoは、CRMを得意としてサービス開発してきた米国のベンダーだ(日本法人もあり、サービスの日本語化も進んでいる)。元々はCRMをベースにビジネスを展開していたが、最近はそれ以外にも拡張してマーケティングオートメーションに使えるサービスを増やしている。
「Zoho キャンペーン」は、メールマガジンなどのメール配信アプリケーションである。
- メール作成(デザインエディタがある)
- CRMのリード顧客に対してメールを送信
- メールの開封率やリンクのクリック率が見られる
- ヒートマップでどこが一番クリックされたか、誰がクリックしたかわかる
上記のような機能があり、ステップメールにも対応している。たとえば、「リンクAをクリックした人にはaのストーリーのメルマガを、リンクBをクリックした人にはbのストーリーのメルマガを送る」といったことが可能で、そのデータはCRMツールの「Zoho CRM」(後述)にも反映される。
「Zoho セールスIQ」は、ウェブトラッキングの機能を提供する。自社サイトの各ページにトラッキングコードを埋め込んでおくと、サイト内の行動履歴が見られる。この情報を「Zoho CRM」のデータにひも付け、個人を特定してどのページを見たか、資料ダウンロードをしたかなどの情報や、滞在時間などを蓄積できる。この機能は、ウェブ制作会社が、クライアント先に納品後、そのサイトの稼働状況を確認するために使い、メンテナンスなどに役立てている事例もあるという。
また、行動に点数をつけてスコアリングすることも可能だ。たとえば、トップページを見たら100点、価格リストを見たら200点、資料をダウンロードしたら300点のように設定し、閾値を超えたら「Zoho キャンペーン」のメールでアプローチするなどの使い方ができる。
中核となるのがCRMツールの「Zoho CRM」だ。ここには、顧客情報管理の内容としてZohoのさまざまなアプリの情報を取り込むことができる。たとえば、次のようなマーケティングデータやビジネスプロセスの情報を顧客管理のページ上で確認できる。
- 「Zoho キャンペーン」からは、どのメールを開封したか、どのリンクをクリックしたかなどの情報
- 「Zoho セールスIQ」からは、自社サイトのどのページを閲覧したか、資料ダウンロード済みかなどの情報
- 見積書・請求書発行アプリの「Zoho インボイス」からは、見積もりや請求金額
- 会計システムの「Zoho ブックス」からは、売上額
このように、ZohoではCRMにさまざまな情報が統合される。そのため営業やインサイドセールスが顧客にアプローチする際に、その顧客は過去に、どのメールを見たか、どのページを見たか、などが「Zoho CRM」を見ればあらかじめわかる。
さらに、どのメルマガを見た人が受注に至ったかを見ることもできる。つまり、「このメールは良かったのか」の指標が、「開封された」や「クリックされた」ではなく、「商談化した」「受注した」になるわけだ。
マーケティングとは少し離れるが、小さな制作会社などで便利なのが見積書・請求書作成のアプリケーション「Zoho インボイス」だ。Excelを使った面倒な管理から解放される。もちろん、この情報も「Zoho CRM」に統合できる。
企業規模によって組み合わせ自由なサービス
実は、マーケティングに特化したスイートの「CRM Plus」も引き続き提供している。CRMやキャンペーン、セールスIQの他、レポーティングやプロジェクト管理など、マーケティング部門で使うアプリケーションをセットにしたものだ。価格体系としては一人あたり月額50ドルと「Zoho One」よりも高いが、こちらは使う人(マーケティング担当者)だけの契約になるので、ある程度の規模の企業ならこちらがお得かもしれない。
スイートとしては他に会計系の「Finance Plus」、文書やメールなどのオフィス系の「Workplace」がある。スタートアップや少人数の会社なら「Zoho One」が向いているし、中堅でもいろいろそろえたい場合は「Zoho One」がいいだろう。
一方、オフィス系や会計系などはすでに他社ツールのライセンスがあるので、マーケティング関係のサービスだけが欲しいという企業はスイート製品がいい。さらに、大企業で社内システムがすでにあり、特定のアプリケーションだけを使いたいという場合には、個別のサービス単位でも利用できる。
「中小企業のビジネスを支えたい」Zohoの思い
Zohoは、主に中堅・中小企業やスタートアップ企業を対象に安価なクラウドサービスとして10年以上提供してきた。Zohoの最大のメリットは、1つのアカウントですべてのサービスを利用できて、データもまとまっている点だ。1つの環境でさまざまなサービスが使えるため、複数のアカウントでさまざまなツールにログインしたり、契約を管理したりする必要がない。データの連係もAPIやETLなどを使う必要がない。これによって、「ビジネスに集中できる環境」を提供する。
Zohoではここ数年「Operating System for Business(ビジネスのOS)」というメッセージを出していて、「ビジネス自体を推進するためのインフラ基盤を提供すること」がミッションだと、ゾーホージャパン Zoho事業部 営業グループリーダーの中沢 仁氏は語る。また、現状では35のアプリケーションだが、必要があればどんどん追加し、「たくさん作って、Zohoだけでビジネスの運用がすべてできるようにする」という。
- ゾーホージャパン
http://www.zoho.co.jp/ - Zoho One
https://blogs.zoho.jp/link/zohoonerelease/ - Zohoサービスサイト
https://www.zoho.jp
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