屋外での写真撮影では太陽を味方にするべし――太陽光線と写真の関係(第10回)
みなさんは屋外で写真撮影をするとき、太陽の位置を確認して撮影していますか?
屋外では唯一の光源である「太陽」の動きを考え撮影すると、同じ被写体を撮影してもまったく違う雰囲気の写真に仕上がります。
第10回では、太陽光線と写真の関係について解説します。
太陽を味方にしよう
みなさんは屋外で撮影をするときに、太陽の位置を確認して撮影をしていますか?
風景や建物、人物はなんとなく正面からの光になるように撮影したり、記念撮影では風景(背景)を優先しすぎて、人物にひどい影が入ってしまうという経験をしたことがあるかもしれません。
屋外での写真撮影では、太陽光線を無視しては写真撮影ができません。太陽の動きや光線の状態を理解し、お店や会社の外観をいかに美しく撮るかを実際の写真で見てみましょう。
<建物の撮影現場>
撮影場所:高松市内のスポーツクラブ(南向き)
撮影時刻:11:00と14:00
撮影の方角:南東と南西の方角から撮影
天気:曇り時々晴れ
建物の向き:南向き
建物の撮影は方角を確認
建物の撮影の場合、被写体は「商品撮影」や「人物撮影」とは違い撮影者の都合では動かせません。被写体が美しく見えるアングルを考え、撮影者が動く必要があると同時に、被写体を照らす太陽光線の角度を考えます。
建物の外観を撮影する場合、注意点は以下の通りです。
- 建物を、どのアングルから撮影すると美しいかを考える
- 構図が決まれば、太陽光があたる角度(時刻)を考える
- 引き(被写体までの距離)がなく全体を撮れない場合は、入口を中心に撮影する
- 水平垂直を確認し、垂直である被写体が傾かないように注意する
上下の写真とも11:00頃に撮影しました。太陽の位置は写真の右側から照らしています。
撮影時、背景はとてもよく晴れていましたが、建物の位置には雲がかかり、影の目立たないコントラストの低い仕上がりになりました。(曇天撮影)
上の写真は、太陽が一瞬顔を出した13:30に撮影しました。晴天での撮影はコントラストが高くなり、ひさしの影や道路にうつる電柱の陰が濃くなります。この建物のように凹凸が少ない被写体は、影が目立ちませんが、被写体の形によっては影が薄い曇天時に撮影をした方がよい場合があるので、仕上がりを比較したうえで掲載しましょう。
※POINT
屋外での撮影は、天気次第で撮影結果が変わります。
晴天の日に雲が太陽にかかるのを待つ(雲待ち)、曇天の日に雲の切れ間から太陽が顔を出すときを待つ(晴れ待ち)ような場合もあります。
曇天の日に撮影し、背景を青空に加工するという選択肢も考えて撮影しておくと、待ち時間のロスも少なく、きれいな外観写真を掲載することができます。
下から見上げて撮影すると、被写体は大きく見えるかわりにひずみ(ゆがみ)ます。
大きめの脚立に登るなどして、少しでもカメラを水平に近づけると、ひずみが弱くなります。
被写体に接近して撮影すると、その場には不必要なものが目立ってきます。見えないところに移動させましょう。
垂直に立っているものが傾いていると、利用者が違和感を覚えます。
再撮影できない場合は、写真を回転し、トリミングをして掲載しましょう。
人物撮影は太陽光にあわせて向きを変える
建物とは違い、人物や商品など移動できる被写体は、太陽の位置に合わせライティングを決めることができます。太陽光線のあたり方の違いをみてみましょう。
顔の正面に太陽光線があたる場合、被写体は目を開けづらく表情もこわばってしまいます。
この写真のように、顔にかかる背景に木の幹が写るのも良い写真とは言えません。
正面からの光とは違い、目も普通に開け表情にゆとりができました。
顔の凹凸によっても違うのですが、向かって左側の頬にかする様な光があたっています。
横からの光とは違い、頬にかするような光がなくなりました。
斜め後ろからの光の場合は顔全体が均等に暗くなるので、露出補正やレフ板を使い、顔が暗くならないように注意しましょう。(第4回:「被写体が生きる明るさのコントロール」※「はじめてWEB」は
サービスを終了しました参照)
光量の弱い曇天や日陰での撮影の場合、白よりも銀色のレフ板を使用するとより強い光で被写体を照らします。違和感が出ないように注意して比べてみてください。
これまでの撮影とは違い、顔全体に強い光や影が入りません。
モデルは目も開けやすく、表情も自然になり。
斜め後ろからの光と同様に、顔全体が影になるので暗くならないように注意しましょう。
※ワンポイント
レフ板を使う目的は、被写体を照らすだけではありません。
人物撮影の場合は、目の中に白い光が写りこみ、生き生きとした表情に変化します。
レフ板のサイズの目安は、90cm角前後の発泡スチロールの板や厚紙、画用紙で大丈夫です。
光がどうしても強すぎて撮影が難しい場合は、日陰の中で撮影する手法もあります。
今回は木陰で撮影しました。
日陰の場合は肌の色に注意し、日陰特有の青白い色にならないようホワイトバランス設定を工夫しましょう。(第5回:「色にこだわってイメージアップ」※「はじめてWEB」は
サービスを終了しました参照)
季節を考える
人物撮影は、「スタッフ紹介」で使用することが多いですが、季節によって利用者に与える印象が変わります。ユニフォームがある場合は大丈夫ですが、冬に撮影する場合は色が濃く、重たい印象の衣装になりがちです。
背景にも注意が必要です。紅葉や冬枯れのような少ない色の背景になるとおとなしい印象となり、せっかくの良い表情もトーンダウンしてしまいます。雰囲気が明るく爽やかな写真になるように、背景が色鮮やかな春や初夏に撮影することをお勧めします。
今回は常緑樹をバックに、背景をしっかりぼかして撮影しました。
(第6回:「今まで使ったことのない撮影モードにチャレンジ」※「はじめてWEB」は
サービスを終了しました参照)
撮影向きの天気は、晴れの日?
ここまでは、コントラストの強い晴れと、コントラストが弱くなる曇りの撮影について説明しました。
被写体が女性の場合は、優しい光の中で撮影すると、より女性らしい印象に仕上がります。
屋外撮影の場合は、刻々と変わる天候に対して注意が必要です。
以下の写真は、快晴に恵まれた撮影日に、人工的に曇りのライティングを作ってみました。
この作業はディフューザーの替わりに、白いシーツでも代用できます。
明るいところと暗いところの差が少なく、コントラストの低いライティングになりました。
アングルを工夫しよう
人物を撮影する時は撮影者がカメラを構える位置で、被写体の写り方が変わります。
建物の撮影と同じようにカメラを水平に構えるのが基本ですが、場合によっては上から見下ろす、下から見上ることでイメージに合った写真に仕上げましょう。
左の写真は少し見下ろすことで、上半身が大きく、足が短く見えます。上半身や胸から上の写真として使用する場合は大丈夫ですが、全身写真には不向きです。
右の写真は少し見上げることで足が長く顔が小さく写ります。全身写真の場合はスタイルが良く見えるので効果的です。
まとめ
今回は屋外での撮影では欠かすことの出来ない、「太陽光と撮影の関わり」について解説しました。
被写体にはどのような光があたると、雰囲気が良く写るのかを考えましょう。
- 動かない建物は、何時に撮影するのが適正か考える
- 人物撮影は、太陽にあわせて向きを決める
- ライティングは晴天が良いか、曇天が良いかを判断する
事前打ち合わせをして撮影スケジュールを立てる時は、必ず週間天気予報を確認することが重要です。
撮影場所を事前に下見し、撮影時刻を決めておくと当日スムーズに作業が進みます。(この作業をロケーションハンティング、略して「ロケハン」といいます。)撮影予定日にどうしても天候が悪く、天気待ちの場合でもロケハンと事前打ち合わせができていれば、急に天気が回復してもすぐに対応できます。
念のため、撮影スタッフに「晴れ男」を加える、「てるてる坊主」を作るなどをすると効果的かもしれませんのでお試しください。
第11回は、撮影後に写真を補正する「RAW現像」について解説します。
このコーナーのコンテンツは、KDDI提供の情報サイト「はじめてWEB」掲載の「エキスパート(専門家)コラム」の情報を、許諾を得てWeb担の読者向けにお届けしているものです。
※「はじめてWEB」のオリジナル版は掲載を終了しました
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