内蔵フラッシュはNG! 手軽で簡単にできる撮影時の「ライティング」(第9回)
みなさんは「ライティング」という言葉を聞いたことがあると思います。
被写体に光をあてるということですが、「なんだか難しそう」だと考えていませんか?
第9回では、手軽で簡単にできる撮影時の「ライティング」について解説します。
<今回の撮影現場>
撮影場所:高松市郊外の生花店
営業時間:9:00~19:00
利用者層:社会人全般(やや女性が多い)
窓から差し込む「自然光」で、驚くほど美しく
写真を撮影する際は、必ず光が必要です。
ライティングという言葉を聞くと、さまざまな照明機材に囲まれた「ぎょうぎょうしい光景」を想像するかもしれません。確かに照明機材を使用することは確実で効率も上がりますが、室内灯や窓から差し込む自然光でも十分美しい写真が撮れます。
直射日光が入らない北側や、午前中の西側、午後の東側の窓は強い直射日光が入らないため光量が安定します。それでもなお光が強い、もしくは直射日光が入る窓を使用する場合は、窓際から離れるか、カーテンがある場合はレースのカーテンを閉める、窓にトレーシングペーパーを貼って光をやわらかくするなどの工夫をするといいでしょう。(映りこみが激しい鏡面仕上げのもの以外は、トレーシングペーパーの代わりに模造紙や障子紙などでも代用できます。)
色や形が正確に表現され、白すぎたり、黒くつぶれた部分はほとんどありません。
上半身と同等サイズのレフ板を写真左側に設置しました。
髪の毛にはハイライト(明るい光)がきれいに入りました。
向かって左側のほほやあごの下に暗い影も入らず、柔らかな光のなかで、生花店スタッフらしく、穏やかで優しい雰囲気の写真に仕上がりました。
男らしくコントラストの強い写真に仕上げる場合は、レフ板の使用せず、自然光だけで撮影します。
内蔵フラッシュは「NG」、レフ板を使用する
暗いところで明るい写真を撮るために、カメラにはフラッシュが内蔵されています。
撮影場所や仕上がり目標によっては有効なのですが、今回のような室内での商品撮影ではおすすめしません。
花びらは正確な色で表現できていますが、真後ろに黒い影が入ります。
フラッシュでの撮影とは違い、背景の壁の色、花びらの明るい光がきれいに表現されています。
光があたりづらい、花の中心にできていた影が弱まり、花の色が忠実に表現できました。
照明機材を使って、場所を選ばずに撮影する
窓の位置や方角、撮影時刻や季節によっては十分な光量を得られず、毎回、撮影条件が変わる可能性があります。一年中安定した光源を得て、効率化を図るために、プロは照明機材を使用します。
カメラから離れた照明は被写体の上側(上面)を照らし、アクセントとなる光を演出します。
カメラの右側から被写体の正面を照らす照明は、被写体全体の明るさを確保する目的で設置しました。
自然光ライティングとの比較
カメラから離れた(遠い)ライト=窓から差し込む光
カメラ側から照らすライト(手前)=レフ板
左の写真は強い光量で撮影したことにより、被写体はきれいに写っているのですが、周辺が真っ暗になってしまいました。右の写真は左の写真より、照明の光量よりを弱め、同時にシャッター速度を遅くしました。
特にシャッター速度を遅くすることで、室内照明の明るさが取り入れられ、写真全体の雰囲気が明るくなりました。
数の多い商品撮影は距離を固定して効率化する
三脚を使用するメリットの1つに、「撮影位置の固定」があります。
被写体との距離を一定に保ち撮影することで、花一輪の大きさがわかるように撮影しました。
カメラと被写体の距離を一定にする為に、撮影台に目印を付け、その上に被写体を置くと間隔を合わせやすくなります。(ズームレンズを使用しても、焦点距離を固定する必要があります。今回は70mmに固定)
このようにセッティングをすることで、商品のサイズがわかりやすくなり、写真特有の「個々の大きさがわからない」という問題も解消されます。
POINT:
食品撮影の場合はお箸やスプーン、屋外での建物や風景などは人物が入ると、被写体との比較対象となりわかりやすい写真になります。
左は空いたスペースに何も入れずシンプルに仕上げることで、視線が被写体に集中します。
右は左の撮影後、カメラからまっすぐ奥に被写体を動かし、写真左上の空いたスペースにキャンドルを入れました。加えてイメージ撮影の場合は、商品の背後や写真右上のスペースにも関連小物を置くと、被写体の価値がもっと上がります。
平面的な商品は立てることにより立体的に表現できます。店内でも象徴的な「キャンドル」で被写体を起こしました。
遠近感が出ることでボケ味のきれいな背景になりました。
部屋の撮影はアングルが大切
部屋を撮影するときには、柱や壁の垂直のラインがゆがまないように、カメラを地面から「水平に設置」することが大切です。撮影目的によっては、カメラを水平よりも下向きや、上向きに設置し撮影することもあります。(このような動きを「チルト」といいます。)
左に柱が入ると写真に圧迫感がでます。右へカメラを向け柱を消すことで店内が広く見えます。
少しの違いですが、地面の面積が増え雰囲気が変わりました。
このお店のように、並べられた花で柱が目立たない場合は、直線のひずみ(ゆがみ)があまり気にならないので効果的です。
高い位置から見下ろすことで部屋の広がりを感じる写真に仕上がります。
取捨選択できるように何パターンか撮影し、目的に合ったアングルを選べるようにすることが重要です。
部屋のライティングは、窓が暗いと印象も暗くなるので日中に撮影しましょう。日常生活では日中ルームライトをつけないかもしれませんが、部屋全体を明るく撮影するために全て点灯させましょう。
まとめ
今回は、照明機材がなくてもできる自然光ライティングを中心に解説しました。
被写体を設置した段階で、目でライティングを確認することが大切です。
- 被写体にどの角度から光があたっているか
- 光の強さや質はどうか
- 嫌な影は入っていないか
修正方法は次の通りです。
- 強い光があたりすぎている場合は、光を弱める工夫をする(窓から被写体を離す、窓を覆う)
- 暗い影が入っている時は、レフ板を使用し影を弱める
- 手ブレや光量不足を避けるため、三脚を使用しシャッター速度を遅くして撮影する
第1回:「写真撮影の予備知識」※「はじめてWEB」は
サービスを終了しましたにある道具は、室内での写真撮影には必要な道具ばかりです。
使い慣れると欠かせない強い見方になり、日ごろ頑張って働いている職場がスタジオに様変わりします。
一年を通じて窓から差し込む光やその角度がどのように変化しているのかを観察し、「光」と「影」を上手に使えば、自慢の商品やスタッフ、店内が美しく印象的な写真に仕上がるでしょう。
第10回は、屋外撮影での唯一の照明機材である「太陽」や、ライティングの角度に影響する「撮影時刻」などついて解説します。
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