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想定市場規模43兆円!? 電通『宇宙ラボ』が仕掛ける、宇宙ビジネスへのアプローチ

最近噂の電通「宇宙ラボ」。宇宙関連ビジネスは2030年には43兆円規模になると言われています。「電通が宇宙?何やんの?」というお話を谷澤正文氏に伺ってきました。
Interviewee:谷澤 正文電通デジタル イノベーションディレクター , 電通宇宙ラボメンバー

唐突ですが、宇宙って… いいですよね。 あのなんかロマンしかない感じ。

さて、今回のデジマラボはいつもの『先端Tech × マーケティング』な話題からちょっとだけ飛躍(というか拡大解釈?)

「宇宙って、巨大なマーケットだよね」とばかりに、2030年には43兆円規模になる() とも言われる宇宙関連ビジネスに飛び込んで、なんだか最近面白そうなことをしていると噂の電通『宇宙ラボ』さんへ突撃取材を敢行してみました。


お相手してくれたのはイノベーションディレクターの谷澤さん。

誰もが当たり前に思うであろう「電通が宇宙?何やんの?」という疑問に対し、色々エキサイティングなお話をしていただきました。


2016年6月に突如公開された電通宇宙ラボの公式サイト。正直これだけだと何がなんだかわからない。

そもそも電通『宇宙ラボ』とは?とてつもないサイズで創る”新規事業”戦略

―まずは電通『宇宙ラボ』って何なんでしょう?ワクワクはするんですが、実体として何をやろうとしているのか。教えていただけますか?

―谷澤
メンバーそれぞれが色々やっているのですが、私が担当しているのは『超小型高性能な国産人工衛星を大量に宇宙に打ち上げて地上のデータを取得・提供するAXELSPACEというベンチャー企業とプラットフォームを作ろうとしている』ということになりますね。

―谷澤
今年の後半からまずは3機。その後2022年には衛星軌道上に50機を打ち上げて全球毎日観測を開始。そこから得られる高精細で更新頻度の高い画像データを使って色々やろう。みたいな感じですね。

なんと。いきなり衝撃的な計画について語っていただいてしまいましたが、そんなことやろうとしてるんですね。電通デジタル。

つい先日の起ち上げから色々と面白そうな話は聞いてましたが、とびきりぶっ飛んだ計画ですねまた。

えーっと、まとめると・・・

  • 超小型高性能な国産衛星を50機打ち上げる
  • そこから得られる高精細な画像データなど各種情報を宇宙ラボが取得
  • このデータを提供するプラットフォームをつくって開放 ⇒ 事業化する

こんな感じでしょうか?

―谷澤
ですね。大体そんな感じで合ってます(笑)
基本は映像や写真などのデータになると思うんですが、それらに紐づく各種の情報をAPIなどで提供していく構想です。

まだまだはじまったばかりですが、一緒に取り組んでいるAXELSPACE社は宇宙ビジネスのAppleになろう!なんて言ってますよ。

まさに夢物語… のように感じてしまいますが、電通デジタルがやるといったらやるんでしょうね。多分。

冒頭からすでに相当胸躍る展開ですが、さらにもうちょっと詳細なとこまでツッコんで聞いてみましょう。

既存情報インフラの抱える課題とジャパンの技術力

―具体的に勝算とかってあったりするんですか?単純に「ものすごい金かかりそう」というイメージですが。

―谷澤
もちろん勝算はあります。
このプロジェクトで打ち上げる想定のAXELSPACE GRUSは、わずか小型冷蔵庫ほどのサイズで100kg足らず。製造コストも1機あたりわずか5億円程度…と、つまりかなり廉価なんです。

これまでコスト面などで不可能とされていた『全球毎日観測』が可能なんです。

5億…と言われると、そもそも「それって安いの?」と聞きたくもなってしまいますが、谷澤さん曰く ”相当なコストダウン”(これまでの約1/100くらい)なんだとか。

その上で今回のプロジェクトのキモとなる『全球毎日観測』。これが中々すごいことらしく

現状の衛星データプラットフォーム(GoogleEarthなど)の場合、情報の更新が半年~数年単位。これを考えると、確かに毎日更新というのはとてつもないスピードですね。

―谷澤
実際、軍事衛星や気象観測衛星なんかではそのくらいの更新頻度のものもある(らしい)んですが、民間企業のものとしては破格のスピードといえるでしょうね。

日本の技術力が、コストダウンと省力軽量化を実現できたからこそ。なんですよ。

おお。。

かつて日本のお家芸と言われた『小型・量産化』技術で製造と打ち上げの低コスト化を実現。不可能を可能にしたってことなんですね。これは胸熱。

しかし確かに、これだけの規模(50機で大体人間の活動域の95%はカバーするそう)と頻度でデータが取得できるなら、マーケティングツールとして情報流通を握ることも可能そうですね。

すでに構想が進んでいる?具体的な事業としての可能性

―ではもう少し具体的に『どんな形で情報プラットフォームを活かしていくのか?』など聞いてみたいのですが。既にプランがあったりするんですか?

―谷澤
ええ。例えば交通一つとってもグローバル展開検討時の交通量・舗装状況調査に流通ルート検証、駐車場の状態など『リアルタイムな情報が欲しいけどどこにも無い!』なんてニーズは、実はたくさんあるんです。

他にも大規模プランター農業における作物監視や、漁業なら密漁の監視などなど。可能性は相当に大きいと踏んでいます。

―谷澤
せっかく地球規模での(ほぼ)リアルタイムな情報取得が可能になるんですし、可能なら様々な業種・業態の企業を巻き込んで、社会的な課題を解決できる座組をつくっていかないとですね。

うーむ。確かに。まさに「今までに無かった視点」そのものなわけですし、ビジネスとはいええ『1社による固まったビジネスモデル』…というよりも『もっと大きな枠組み』で考えるべきなのかもですね。

確かに様々な「わからない」を解決するためのプラットフォーム構想なんですが、既にその先を見据えているんですね。さすが。

夢を追う開発事業ではなく、あくまでリアルなビジネスとして

―谷澤
実際、単純な『衛星から取得した情報を活かす事業モデル』という意味では既に実用段階だったりするんです。
米国ではもうずいぶん前から農作物の作付け具合を情報として取得することで市場予測データに利用していますし、日本でもウェザーニュースが同じAXELSPACEの衛星を使って局地気象予測データを活用したりしています。

日本政府も宇宙は未来の成長産業としてとらえていて、今年の5月には宇宙産業ビジョン案というものが検討されています。

政府系金融機関による資金調達・支援などで民間企業の参入を後押しする環境が整ってきているんですよ。

なんと、完全に知らなかったです。そうだったんですね。

もう宇宙開発、というより『宇宙産業』って時代が来てるんですね。ほんとすぐそこまで。

―谷澤
ですね。なので日本でも、衛星を使った事業展開や取り組みをやってうまくいけば、そのモデルをそのまま海外に輸出できるかも?なんて考えは持っています。

世界に誇れる宇宙産業のビジネスモデルを日本から世界に。なんて、ワクワクするじゃないですか。

それに、超小型衛星データはいわゆるビッグデータ(宇宙ビッグデータなんて呼んでいますが)。つまり『IoT×AI』の分野で、世界最先端のデータサイエンティストが集まっている領域でもあるんです。

そういう方々と新しいイノベーションを考えていきたいですね。

と、なんとも楽しそうに語る谷澤さん。

デジマラボ取材陣も完全に熱にあてられてしまい、もう夢中になって質問しまくってしまいました。


テンションあがりすぎてものすごい近距離で会話をはじめる谷澤さんと取材陣

実際これだけ書いても書ききれないほど色々お話を伺っているんですが、そのへんはまた次の機会……年末の第一弾衛星打ち上げについての詳細情報が出揃った頃に改めて。ですかね?

打ち上げ場所は種子島なのか?それともロシア(ソユーズ)なのか?

できれば国内で、そして日本のロケットで打ち上がって欲しいところですが、続報届き次第即時レポートさせていただければと思います。

谷澤さん、お忙しい中長々とありがとうございました!

中村 健太 by 中村 健太
数多くのメディアコンサルとコンテンツクリエイティブに関わってきた経験を持つ株式会社ビットエーのCMO。KaizenPlatformのグロースコンサルとしても知られ、2014年より一般社団法人日本ディレクション協会の会長を務める。主な著書に「Webディレクターの教科書」「Webディレクション最新常識」など。

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