悩めるメルマガ担当者に捧ぐ! 見込み客に愛され、読まれるメルマガ担当者になるには?/前編
企業がメルマガを発信する理由は、見込み客を顧客に自社の「ファン」になってもらうこと。メルマガ担当者120人に実施したアンケートから「読まれるメルマガとはどういうものか?」で悩んでいることがわかった。そこでメルマガコンサルタントの平野友朗氏に、「読まれるメルマガ」の極意を伺った。前編では、メルマガ担当者が意識したいメルマガの運用目的と件名の付け方などをお届けする(聞き手:ゾーホージャパンの橋爪氏)。
「送信すること」が目的のメルマガ運用ではダメ
橋爪祐佳氏(以下:橋爪): 今回、ゾーホージャパンのお客さまにメルマガに関する悩みをアンケート調査しました。それが上図です。「読まれる」「効果」「開封率」が上位を占め、誰もがそれらの向上が「良いメルマガだ」とイメージされているようです。
私がゾーホージャパンのメルマガ担当者になって丸2年が経ちます。ゾーホージャパンは中小企業向けにCRMなどのクラウドサービスを提供していますが、メルマガの主な内容は、ブログなどのコンテンツの紹介や、弊社が主催するセミナーへの集客です。
2年前、上司から「取りあえず週1回の配信をしてみようか」と言われたときは、毎週、メルマガを作成することに追われて無我夢中でした。1年前、平野さんの講演を聴いて、自分なりに「読まれるメルマガ」を意識しはじめたのですが、考えれば考えるほどどうすればいいのかがわからなくなります。
平野友朗氏(以下、平野): 担当者としていちばん大変な点は何ですか?
橋爪: 担当当初は、慣れていないので「メルマガに何を書くのか」、「どう書くのか」、それだけでも時間がかかり、大変でした。常に「今週中に配信しなきゃ」が頭から離れず、他の業務と兼務しているので時間に追われてそのまま金曜の夜になり、もう誰も読まない時間だろうなあと思いつつ「こんばんは」と文頭に付けて19時過ぎに送ることもたびたびありました。
平野: BtoBのメルマガは読者が会社で読むことが前提ですから、送信のタイミングは月曜から金曜です。朝に送れば、その日に読まれ、夕方以降に送れば翌日読んでもらえる。しかし、金曜の夕方以降に送っても、月曜朝の他のメールに埋没してなかなか読まれません。その1回分はムダになる可能性が高いですね。
でも同じことをしているメルマガの担当者が多いのが実情です。上司に言われたから、前任者から引き継いだから「週に1回」「月に1回」の送信がまずルールとしてある。そこに縛られて、体裁だけを整えたメルマガを何とか作って送信。「よし、送ったぞ」と安心してしまう。
「送信する」ことが目的のほとんどになり、今度はその効率化をするようになる。つまり、楽をしたくなる。結果、リンクの書き換えを忘れる、導入部や編集後記の文章がまるごと以前のコピペ、ということが起きる。でも、メルマガの目的は「送信する」ことではないはずです。
週1回、月1回といったメルマガ送信が目的ではない、顧客と関係性を築くツール。
平野: 前出のアンケート結果で多くの担当者が課題だと回答した開封率やクリック率、さらにはコンバージョン数などを目的にしたメルマガ発行には危険が潜んでいます。そうした数値を上げるメルマガのテクニックはいろいろあります。煽るような件名を付けたり、配信回数を増やしたりするのも手。1日5回も配信すれば、御社の製品を必要としている人の背中を押して、短期的には全体の売り上げは伸びるでしょう。
橋爪: でもさすがに多くの人からは嫌がられそうですね。将来、関連製品が必要になったときに、あのメルマガがうるさい会社だけはやめておこうと思う人もいそうです。
平野: メルマガの原則は「必要としている人に、必要だと思われる情報を届ける」ことです。相手のためを思った発信が読者に好意を持たせ、自社に目を向けてくれるようにする。そのため、見込み客を顧客にする、ナーチャリングのツールとして活用されるケースもあります。しかし、それは不特定多数の読者に対し長期的な変化を期待して行う必要があります。
そして、ナーチャリングという視点は、ときに配信側都合になりがちです。ですから、私は企業のメルマガ担当者には、「顧客と信頼関係を構築し、維持するためのツールがメルマガですよ」と話しています。決して、上司と約束した「週1回」を守るために配信するものではない、と。
メルマガの開封率やクリック率、CV率だけにこだわらず、必要な情報を必要な人へ届ける気持ちで運用する。
メルマガの件名は「ほう・れん・そう」を意識しよう
橋爪: 読者との関係性の構築が目的だとすると、やはり、開封率を高めないと、そもそもの関係が始まらないのでは?
平野: たとえば私のメルマガは、受信者全員が毎回は読んではいないと思います。でも、悪い印象にならないような配信を心がけています。メールボックスにメルマガが届き、私の名前を見る。「お。平野さん、今日もメルマガを送ってきている。毎日、頑張るなあ」と意識してくれるだけでも、たとえ開封されなくても関係性の構築につながっていると思っています。
橋爪: おー! 確かに自分でも件名や送信者だけで「開く」「開かない」の判断をしていますが、「誰」から「何」が来ているかの認識がそこにはありますね。その時点ですでにメルマガと読者の関係が発生しているのは目からウロコ、という感じです。
たとえ開封されなくても、メルマガの件名で「誰」から「何」が来ているのか認識してもらうだけで、顧客との関係性の構築につながる。
平野: 「今日は読めないけどゴメンネ」と思ってもらうのも関係構築の一歩です。でも、このときにポイントが2つあります。
- 誰から来ているのかが認識できる。
- どんな内容を伝えたいのかが件名から読み取れる。
この2つがセットになってメールボックスに表示されていれば、開封されなくてもいいんですよ。そこで無理矢理開封させようと、件名で煽ったりするのは逆効果。「限定3名様!」とかね。何度もやれば「本当に3名か?」と不信感を持たせてしまうだけです。
橋爪: 何だか胸が痛みます……。たとえば弊社の場合、セミナーの募集が多いのですが、どんな件名を心がけたらいいのでしょうか?
平野: 毎回「募集」の案内だけだと、「ここ、また募集しているなあ」と思われるだけです。次のように、募集から受付終了までの流れを連絡するかたちをとると一方的な印象がなく、それでも告知はできるし関係構築にもつながります。
1通目 募集開始します。
2通目 残席が10となりました。お急ぎください。
3通目 満席になりました。ありがとうございます。
これは、いわゆる「ほう(報告)・れん(連絡)・そう(相談)」と同じ、状況を共有するコミュケーションなんです。
橋爪: なるほど! これなら今回は参加しなくても、セミナーの人気や熱気を感じて、受信のたびに件名だけでも意識してもらえますね。
配信先のセグメントは細かすぎてもダメ
平野: ここで1つ注意したいのは、見込み客とはメールの件名だけでも関係構築ができますが、一歩近づいた顧客には別の配慮が必要です。すでにセミナーに申し込んだ人に、満席になるまで募集の案内が届いたら、「ああ、また来ている」という思いがやがてネガティブな感情になり、「行くのどうしようかなあ」と思うかもしれません。
一方で、開封して詳細ページまでクリックしたけど申し込んでいない人には、どんどんアプローチしたほうがいい。そのときに読者から見て「自分の状況に合っている」メールがしっくりくるし、刺さります。ここで意識したいのがセグメントです。
橋爪: セグメントの「レベル」感と言いますか、どれくらいがメルマガにはちょうどいのでしょうか? 細かくすればするほど個々の「状況」に刺さって反応が良くなる一方、手間を考えたら大きな枠のほうがいいですし。
平野: あまり細かくし過ぎると、今度は読者に「気持ち悪ッ」とひかれるかもしれませんね(笑)。何か、細かくデータを取られているんじゃないかと。私の会社では、2つ、3つくらいが多いです。さっきのセミナーの告知で言えば、次の2つで十分でしょう。
- 申し込みをしている人。
- 申し込みをしていない人。
ただ、「申し込みをしていない人」への文面には工夫が必要です。「多くの方に興味を持っていただいておりますが、まだ、申し込みを検討中の方もたくさんいらっしゃると思います」と書かれていれば、読者は自分のことを「わかってくれている」と感じ、応募を再検討するきっかけになるでしょう。
セグメントは2、3つ程度が望ましく、文面も配慮が必要。
担当者の顔が見えるメルマガに「ファン」が生まれる
橋爪: メルマガ担当者には、読者との関係性の構築を意識した細かな配慮が求められるのですね。毎回、そこまで考えて文章を書いていたか、ちょっと自信がないです。メルマガ担当者には、どのような心得が必要でしょうか?
平野: たとえば弊社だとメルマガ担当者は私自身です。会社の規模もありますが、次のような視点がメルマガ担当者には必要だからです。
- Webマーケティングを理解している。
- 広報的な視点で会社のことと顧客のことを理解、把握している。
橋爪: 責任の重さを感じますね。同時に、経営者の方が書けばそれなりに読みがいのある内容も期待できそうですが、一社員のメルマガ担当者が何かのノウハウを書いても説得力がないのでは、と不安になります。
平野: メルマガ担当者として等身大でお客さまのために書けることで十分なんですよ。ダイレクトメールではないメルマガの魅力は、書き手である担当者からメールが届く点にあります。十数年前、私の母親は自分宛の手紙などがあまり来ないため、プロバイダーのメルマガをいつも楽しみにしていました。その本質は、今も変わらないと思います。
読者は、メルマガ担当者が書くメールのファンになる。その人の会社のセミナーに行ってみたいと思う。そのためのメルマガの工夫はいろいろあるし、それを会社の業務の中で試せる。メルマガ担当者は、やりがいもおもしろみもある仕事だと思いますよ。
メルマガ担当者が顧客のために書ける内容で十分。その積み重ねが、担当者のファン、会社のファンにつながる。
橋爪: そう言っていただけると、担当者としてもっといいメルマガをつくらなければとあらためて思います。では、次回は、実際に私が担当している弊社のメルマガを例に、「読まれるメルマガ、読まれないメルマガ」について詳しくお聞きしたいと思います。
■アンケート概要
実施時期:3/30、4/3
調査方法:ゾーホージャパンのメルマガ会員へのメール
回答方法:Webアンケート
有効回答数:120
平野友朗氏プロフィール
株式会社アイ・コミュニケーション 代表取締役
一般社団法人日本ビジネスメール協会 代表理事
筑波大学人間学類(認知心理学)卒業。広告代理店勤務を経て2003年、メルマガ専門コンサルタントとして独立。起業当初から発行しているメルマガ「平野友朗の思考・実践メルマガ【毎日0.1%の成長】」(旧:メルマガ成功法)では1,800回以上のコラムを配信。現在は平日日刊。メディア掲載のべ1,000回以上。著書24冊。
http://www.sc-p.jp/
橋爪祐佳氏プロフィール
ゾーホージャパン Zoho事業部 マーケティング担当
前職は看板屋。素敵なご縁で2015年にゾーホージャパンに入社。英語もITも苦手。でも使いこなせるZohoの虜に。Zohoサービスの魅力をメルマガでお届けすることがミッション。
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