生田昌弘の「Web担当者に喝!」

発注で“迷い”のあるWeb担当者に喝! いいWeb制作会社を選定するためのポイント

最適な制作会社の選定はWeb担当者の使命。発注内容やコストによって柔軟に選び分けられる力を身に付けよう

最適な制作会社を選定できないWeb担当者に喝!

「いい制作会社」ではなく「最適な制作会社」を考えること。

「適材適所」「最適なコスト」で発注することが、Web担当者の大きな力になる。

なんでも「制作会社が悪い」と言ってしまう考え方を見直すべし!

きたる4月13日に、筆者の生田氏が登壇する『生田昌弘の「Web担当者に喝!」』ライブセミナーの情報を記事末に記載しています。今回の記事のテーマに納得された方は、セミナーも役立つはずです。 (編集部)

最適な制作会社を選ぶことは、Web担当者の使命であり、身に付けなければならないスキルでもある。今回は、発注内容やコストによって柔軟に選び分けられるように、「候補10社を洗い出す3つの選定ポイント」と「3社に絞り込む5つの選定ポイント」を示しているので、ぜひ参考にしてほしい。

「いい制作会社を探してます」とWeb担当者は言うけれど

結論から言えば、どんなプロジェクトにも向いた、Web担当者の要求すべてに応えられる制作会社というのは存在しない。「なんでもできる制作会社」なんて、いままで聞いたことがない(私が知らないだけかもしれないが……)。

だからWeb担当者は、「いい制作会社」ではなく「最適な制作会社」を探すように頭を切り替えなければならない。

「なんでもできます」と制作会社の営業は言うかもしれない。

その制作会社が自社で制作せず、外注するのであれば、それも間違いではないだろう。また、広告業界なら、それは当たり前のことかもしれない。しかし、Webの場合はどうだろうか?

まだ成熟産業とはいえないし、何よりこの先も大きな変化が起こり得る。スマートフォンがこんなに利用されるようになるなんて、誰も予想できなかっただろう。

制作会社は、Webを取り巻く環境の変化に合わせて、制作手法も劇的に変えていかなければならない。そんな変化が日常的に起こるWeb業界では、自社で制作までしていないとしても、制作ノウハウや現状の動きを把握し、未来予測ができるような、現場の感覚をもった制作会社でなければならないことは言うまでもない。

どんな仕事でも、外部に発注することは難しい仕事だ。だからこそ、きちんと考えて発注しなければならない。

なぜなら、受発注のミスマッチは、お互いを不幸にするからだ。

制作会社は、自分が一番得意なことを明確にクライアントに伝えてほしいし、できないことは「できない」と答えることも必要だと認識すべきだろう。制作会社はクライアントの問いかけに、ただ「できます」と答えてはならないのだ。

自分たちなら「こうできる」「これはできない」「ここはできるがコストパフォーマンスが悪い」とクライアントにしっかり伝えることが、制作会社であるわれわれの仕事なのだから。

Web担当者の方から制作会社への不満を聞くたびに、「マリアージュ」という言葉を思い出す。

ご存知の方も多いだろうが、「マリア―ジュ」(フランス語で「結婚」の意味)とはワインと料理の最適解であり、お互いの力を最大限に発揮するという意味でワイン好きが使う言葉である。

高価なワインだからといって、どんな料理にも合うとは限らない。もしかすると、料理との相性なら、むしろ高価なワインの方が料理を選ぶかもしれない。これは制作会社も同じだ。

もっと技術力もデザイン力もある、いい制作会社を紹介してくださいよ。
Web担当者A
斬新な提案をしてくれる制作会社をご存知ないでしょうか?
Web担当者B
どうしてこんなに時間がかかるんですか?
もっとスピード感のある制作会社じゃないと厳しいなぁ。
Web担当者C

たくさんの不満があることは理解できる。でもそれは、制作会社だけの問題だろうか?

制作会社とのミスマッチなのかもしれないし、そもそも発注自体に問題があるのかもしれない。とにかく最適な制作会社を選択できれば、多くの不満は最小限にとどめられるはずだ。

なんでもできます!
なんでもやります!
制作会社A
お客さまのコストに合わせて対応します!
制作会社B
ツールを導入すれば、すべて解決です!
アプリケーションベンダー

本当にできるのだろうか?

単に、どこか別の制作会社に外注するだけじゃないのか?(しかも制作費をたたいて)。

しかし、それでまともな制作ができるのだろうか?

こんな営業トークを聞いて発注しても、失敗するだけだ。

そんなにうまい話なんて、世の中にはないのだから。

制作会社選定のためにチェックすべき3つのポイント

これまでお話してきたように「発注」は難しい。だから、ここでは少しでも発注業務を円滑にする方法を紹介する。

まず見積もりなどを依頼する前に、そのプロジェクトに最適な制作会社を洗い出してほしい。

と言われても、ほとんどのWeb担当者の方にとっては、どうすればよいかわからないだろう。制作会社を5社以上知っている人は、そんなにいないはずだ。ましてや新任のWeb担当者であれば、制作会社なんて知るわけがない。

まずは「人に聞く」「自分で調べる」の選択肢しかない。しかし、やみくもに聞いたり調べたりするから、ミスマッチが起こる。ミスマッチを防ぐために、聞くにしても、調べるにしても、最初に以下の3つのポイントを確認してほしい。

最適なWeb制作会社の候補
10社を洗い出す3つの選定ポイント
  1. 会社の規模

    単に資本金などの情報だけでは、計りきれない部分がある。できれば、制作者の数や人月などを確認できればよいだろう。

    一般的に、規模の大きい会社は、人月も高額になる。小規模で運営している制作会社のほうが、スピード感やコストの調整がフレキシブルなはずだ。

    発注したいプロジェクトが大規模でページ数も多いのであれば、ある程度の規模の会社に発注したほうがよい。逆に、数ページだけの制作を大規模な会社に頼むと、あなたが期待するような対応をしてくれない場合があるかもしれない。

    ページ数も金額もまだ決まっていない場合は、概算でかまわないので想定してみてほしい。

    なお、規模の大きい会社というのは、制作者が50名を超える、もしくは社員数100名を超える制作会社を想定している。

    • 小規模: 10人未満
    • 中規模: 10~50人未満
    • 大規模: 50人以上

    また、発注したいプロジェクトの規模は次のとおりだ。

    • 小規模: 100ページ未満
    • 中規模: 100~500ページ未満
    • 大規模: 500ページ以上
  2. 得意分野

    発注したいプロジェクトの内容にマッチしているかを確認する。

    運用の仕事は、運用を専門にしている会社であれば365日24時間の対応は問題ないと思うが、普通の制作会社では対応が難しい場合が多い。デザインを得意とする会社にシステムの話をしても、対応は可能だと思うが、ミスマッチが起きる可能性も高くなる。

    また、強みを明確に打ち出している会社と出会うことは、別の発注時に、有効な資産になる。

  3. 実績

    発注したいプロジェクトと似たような仕事をしているかを確認する。

    ロゴデザイン、動画制作、CMSシステム構築などなど、実績を確認して選定すればよいだろう。実績に実際の社名やタスク内容が明記してある会社は、より信頼に足る可能性が高い

    クライアントの社名や実施内容を実績として公開することは、制作会社にとって敷居の高いものだ。それができているということは、クライアントとレベルの高いコミュニケーションが取れている証だ。

具体的には、「人に聞く」「自分で調べる」際に、3つのポイントを基準に選定してほしい。わからなければ、直接その会社に聞いても構わない。「できるか、できないか」だと「できる」と答えられてしまうかもしれないが、定量的な質問なら、選定に必要な情報はもらえるだろう。

これをよりどころにすれば、あなたの求めていた制作会社とかけ離れた会社が選定されることはないはずだ。

3つのポイントを明確にして、たとえば次のように、そのプロジェクトに最適な選択ポイントを基準に調べてみると探しやすいはずだ。また、自分で調べるときも、検索のキーワードになる。

  1. 会社の規模=小規模なプロジェクトなので「親身になってスピード感のある小規模な制作会社」
  2. 得意分野=デザインが得意
  3. 実績=アパレル系で、実績のある会社

このやり方で、まずは10社程度を洗い出そう。

とりあえず、会いに行ってみよう

3つの選択ポイントで、プロジェクトに適応できそうな会社を10社程度洗い出したとする。

ここでいきなりコンペを行ってもいいが、10社からの提案はバラバラになるはずだから、金額で選定するしかなくなってしまう。これでは、またミスマッチが起こる可能性がある。

ここでは、候補の10社を3社程度にまで絞り込むための5つの選定ポイントを紹介しよう。

10社選んだ候補のWeb制作会社を
3社に絞り込む5つの選定ポイント
  1. 一次情報を発信しているか?
  2. 制作者と営業の数が7:3程度か?(制作者が多い分には問題ない)
  3. 問い合わせた段階で、明確なアドバイスをもらえるか?
  4. 自社でできる作業範囲を明確に提案してもらえるか?
  5. コストや納期の問題を指摘してもらえるか?

1に関しては、Webサイトを見るだけで確認できるはずだ。

25は、電話やメールで問い合わせることができる。もし時間が許すのならば、ぜひ制作会社を訪問して、社内を見学させてもらえれば、なお良いだろう。

社内見学では、設備や環境のよさなどを確認するのではなく、実際に作業を進めている人がどのくらいいるかを確認してほしい。これは、2の確認にもなる。

35に関しては、営業ではなく、実際のプロジェクト担当者に質問してほしい。その会社のレベルの一端が垣間見えるはずだ。

上記を確認したうえで、3~4社に絞り込んでコンペを行えば、ミスマッチは最小限に抑えられる。

もちろん、コンペには明確なRFPを用意しよう。内容はできる範囲でかまわないし、候補の制作会社に手助けをお願いすることもありだと思う。

本日のまとめ

プロジェクトの内容によって、最適な制作会社を選定すること。

これはWeb担当者の大きな支えになるはずだ。

制作会社のスキルを、Webサイトの成果のために有効活用しよう。

すべては、お客さまの問題解決のために!

『生田昌弘の「Web担当者に喝!」』ライブセミナー開催!

【4月13日(木)開催】(参加締切 4/4(火) 17:00
リアル Web担当者に喝! Vol.2
~Webマスターへの道~有能なWeb担当者なくして、企業Webサイトの成功なし!

本セミナーは、キノトロープ 代表取締役 社長の生田昌弘氏によるWeb担当者Forumの連載「生田昌弘の『Web担当者に喝!』」のライブ版。Web業界の頑固オヤジこと生田氏が、連載のコンセプトそのままにライブで叱咤激励メッセージを届ける。

今回のメインテーマはズバリ「Web担当者」。「Web担当者はプロジェクトマネージャーでありエバンジェリストであれ!」という生田氏の講演ほか、長年Web担当者向け各種セミナーの講師を務めてきたベネッセコーポレーション情報サービス開発部の松本圭介氏がゲスト講演する。

また、前回も好評だったパネルディスカッション「お悩み解決!本当のライブ喝!」では、生田氏とベネッセコーポレーションの松本氏が参加者から寄せられた質問に回答する。モデレーターはWeb担当者Forum編集長の安田が務める。

開催概要

  • 日時: 4月13日(木)14:30~17:30(受付開始 14:00)
  • 会場: ソラシティ カンファレンスセンター 2F Sola City Hall【WEST】(東京都千代田区神田駿河台4-6)
  • 対象: Webサイト運営にかかわる企業担当者、責任者
  • 定員: 150名
  • 参加費: 無料(※抽選制)
  • 応募締切: 2017年4月4日(火)17:00まで
  • 抽選結果発表: 2017年4月6日(木)18:00ごろから順次メールにて発表予定
  • 主催: 株式会社キノトロープ
  • 協力: Web担当者Forum編集部(株式会社インプレス)
「リアル Web担当者に喝!Vol.2 ~Webマスターへの道~ 有能なWeb担当者なくして、企業Webサイトの成功なし!」セミナーに参加申し込みする(参加無料)
※主催のキノトロープのセミナー情報ページに移動します
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