オフラインでの施策はデジタルとの連携・融合でもっと魅力的に! 博報堂アイ・スタジオのデジタルマーケ発想法
Web担当者としてデジタルマーケティングもやっているけど、このごろマンネリ気味で施策に手詰まり感が出てきた。
何か新しいことをしてみたいのだが……。
(もちろん効果があること前提で)
Web担当者やデジタルマーケティング担当者で、こんな思いを抱いている方はいないだろうか。
もちろん、社内での役割としてデジタル中心になるのは当然だ。しかし、マス媒体やリアル(オフライン)まで広げて発想すると、もっとビジネスゴールに近づきやすくならないだろうか。
たとえばカスタマージャーニーを考えたとき、デジタルだけで顧客のタッチポイントすべてをカバーすることはできない。顧客のインサイトをしっかり把握しようとすると、マスやリアルといったデジタル以外の領域にも目を向ける必要がある。垣根を越えた施策のアイデアは、これからのマーケティングに欠かせないものだ。
「デジタル」「マス」「リアル」を組み合わせた統合的なデジタルマーケティング施策のプロデュースを行う株式会社博報堂アイ・スタジオ。その同社が、デジタルマーケティング施策の効果を最大化させるための戦略と戦術をテーマにした「統合デジタルマーケティングセミナー」を2015年12月2日に開催した。「デジタルとリアルの融合」についても語られた同セミナーのレポートをお届けする。
もっとも重要なのは生活者のインサイトをとらえること
デジタルとオフラインを融合したアイ・スタジオの施策例
デジタルソリューション2部 シニアプロデューサーの久樂英範氏は、「オフラインの体験にデジタルが加わる可能性。」と題したセッションに登壇。「デジタルマーケティングの課題に対する取り組みの事例」をテーマに、博報堂アイ・スタジオが手掛けたデジタルマーケティングの事例から、デジタル施策とオフライン施策がどう融合し、相乗効果を生み出したかについて語った。
何らかの商品やサービスを検討している生活者にとって、「知る」「興味をもつ」「比較検討する」「買う」「評価する」「シェアする」といった一連の行動のなかで、もっとも重要なものはそのときの「インサイト」であると久樂氏は説く。
「インサイトとは、生活者を知り、生活者に対して共感すること。インサイトを得るには、カスタマージャーニーにおける生活者の本心を理解することが欠かせない
」(久樂氏)
同社がどのように生活者のインサイトを得ているか、実際に手がけたクリエイティブの事例から見ていこう。
オリジナルのランニングマシンでシューズの試し履きをエンターテイメント化
“履けば違いがわかる”商品の体験をデジタルで拡張
1つ目の事例は、アディダスのデジタル体験施策だ。新素材ソールを搭載したランニングシューズに関するマーケティング施策について、「ランニングブーム」という市場環境と、「14歳から25歳までの男女」というメインターゲット層、店頭での生活者インサイトから「試し履きをデジタルでエンターテイメントする」というコアアイデアを思いついた。
そこから生まれたのが、デジタル技術を駆使して開発したオリジナルのランニングマシンだ。
このランニングマシンは、ユーザーがシューズを履いて乗ると、感圧センサーと連動した前方モニターに、Googleストリートビューと連動した「世界の名所」が映し出される。映像はセンサーとも連動し、ユーザーがランニングマシン上を走ると、あたかも世界中の名所をランニングしているかのような体験が得られるという仕掛けだ。
「『ランニングシューズは、走って試す機会がなかなかない』というユーザーのインサイトと、『体験すれば今までにない履き心地は一目瞭然』というファクトを組み合わせた施策だ
」(久樂氏)
博報堂アイ・スタジオではその他にも、ビーコン端末を使った広告メディア施策や、マンガコンテンツのイベント施策、音楽サービスのPRプロモーション、交通広告を使ったゲームコンテンツ施策など、オフラインでのさまざまな取り組みにチャレンジしていると久樂氏。こういった情報は、企業サイトやフェイスブック、セミナーなどで定期的に情報発信しているそうだ。
久樂氏は、「デジタルは万能ではないし、過剰な期待は禁物
」としながらも、「企画の発想をデジタルだけで完結させず、オフラインとの連動・融合に目を向けると面白い施策ができて、デジタルをもっと活用できる
」とし、その実現に向けて次のようなことに取り組んでほしいと語った。
- 屋外や店頭などのオフラインのタッチポイントでも、デジタルを積極的に使う
- ターゲットとなる生活者のインサイトを確実にとらえ、生活者のカスタマージャーニーを描く
- デジタル部門とマーケティング部門など、積極的に情報をシェアしていく
最後に、次の言葉でセッションを締めくくった。
「ツールと環境がそろってきた今だからこそ、デジタルの新しい可能性にチャレンジしたり、新しいクリエイティブを発想したりするには絶好のタイミングだ。博報堂アイ・スタジオでは、ワークショップや提案、実証実験、テストマーケティングなどを通じてお客さまのマーケティングの課題解決をお手伝いしていく
」(久樂氏)
デジタル技術によって企業もユーザーも環境が大きく変化
「デジタル」「マス」「リアル」を統合したマーケティングが必要
統合デジタルマーケティングセンター プロデューサーの古市倫大氏は、「アイ・スタジオの統合デジタルマーケティングとは?」と題したセッションに登壇。昨今のユーザー環境の変化や、デジタル領域以外の顧客の購買行動(カスタマージャーニー)を踏まえた、統合的な視点でのマーケティング立案と実行が欠かせないことを訴えた。
冒頭、古市氏はデジタルマーケティングを推進するうえでの「課題あるある」として、以下のような悩みがないか会場に問いかけた。
マーケティング手法をキャッチアップできない
貯まった顧客データの活用法がわからない
どのツールがベストかわからない
部署が縦割りでプロジェクトの進行がうまくいかない
マーケティングにかかわっているWeb担当者なら、ここで挙げた例のどれか1つくらいは心当たりがあるのではないだろうか。
同社のもとには、実際に「テレビCMの効果をデジタルで最大化させたい」「顧客データを活かして、より精緻なターゲティングをしたい」「施策のROIを最大化させたい」といった問い合わせが多く寄せられるという。
「デジタルマーケティングは、とにかく拡散させる、PVを上げる、といった施策ありきの話になりがちで、本当に効果につながっているか、費用対効果がわからないという声もよく聞かれる
」(古市氏)
こうした悩みの背景には、環境の変化がある。
企業が扱うユーザーに関するデータは、広告配信データに加え、WebのアクセスログやPOSデータ、会員データ、そして位置情報など多岐にわたる。また、広告やマーケティングに関するテクノロジーは急速に進化し、数多くのプレーヤーがひしめき合っている。
一方、ユーザーの環境も変化している。
メディア環境研究所による「2015年メディア定点調査」の「メディア総接触時間の時系列推移:東京」では、2006年から2015年の10年で、4大マスメディアといわれるテレビ、新聞、ラジオ、雑誌の接触時間は減少傾向にある一方、ネットの接触時間は101分も増加している。なかでもスマホは11分から80分に急増している。
また、閲覧するデバイスも増えており、多くのユーザーは、テレビを視聴しながらモバイルでネットに視聴するように、メディアへの接触方法も多様化している。
こうした環境変化に対応するため、どのようなコミュニケーション設計が必要か。古市氏は、「マス」「デジタル」「リアル」(オフライン)の3領域を統合的に組み合わせることが大切だと語った。
「以前のデジタルマーケティングは、デジタル領域の最適化だけを行えばよかったが、現在はテレビCMとオウンドメディアの連動や、オウンドメディアからリアル店舗への誘導(O2O)など、3領域の顧客の流れ(カスタマージャーニー)を把握し、企画する必要がある
」(古市氏)
同社では、こうした課題や環境変化に対応するため、「統合デジタルマーケティング」として、博報堂DYグループが持つ多様なデータを活用し、オウンドメディアを中核としたタッチポイント施策やインターネット広告の出稿プランの立案などのデジタル施策を「ビジネスゴールから逆算して」プロデュースしている。
次回のセミナーは2月24日開催、最新の動画マーケティングに焦点をあて、企業の課題解決に繫がるデジタルマーケティングの戦略と戦術を紹介する。
【2/24(水)開催】統合デジタルマーケティングセミナー
第2回「最新動画マーケティングセミナー ~今すぐ始められる、成果重視型の動画活用法~」
生活者のネット動画視聴の増加に伴い、動画メディアは多様化し、テクノロジーは急速に進化しています。動画を通じてどのように生活者にアプローチするのか?統合型のデジタルマーケティング手法の一つとしての動画広告について、市場概況からプラニング・KPI設計のツボ、そして最新の配信手法やクリエイティブ制作のヒントまでを、分かりやすくご紹介して参ります。
開催概要
- イベント名称: 統合デジタルマーケティングセミナー
第2回「最新動画マーケティングセミナー ~今すぐ始められる、成果重視型の動画活用法~」- 【第1部】動画を成果に繫げる統合デジタルマーケティングの考え方
- 【第2部】顧客接点の多様化に対応する動画マーケティング
- 【第3部】テクノロジーの進化による動画マーケティングソリューション(仮)
- 日時: 2016年2月24日(水)
- 場所: 博報堂アイ・スタジオ 有楽町オフィス
東京都千代田区有楽町1-10-1 有楽町ビルヂング 5F - 定員: 40名(抽選)
- 参加費: 無料(事前登録制)
- 主催: 株式会社博報堂アイ・スタジオ
なお、「統合デジタルマーケティング」については以下の記事で詳しく解説しているので、参考にしてほしい。
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