ニューバランスの鈴木氏が教える、すべてのWeb担当者が作るべきマーケティングプランとは?
あなたはマーケティングプランを作っていますか? そして、あなたのマーケティングプランは、上記の質問が簡潔にまとまっていますか? マーケティングプランは、誰が見ても理解できる内容で、上記の質問が1枚の書面にまとまっていなければ意味がありません。そこでこの記事では、社内外のマーケティング担当者と意思疎通が取れるマーケティングプランを立てる方法を5つのステップに分けて解説します。
記事末では、もっと詳しくデジタルマーケティングについて学びたい方のために本記事を執筆したニューバランスジャパン鈴木氏のセミナー情報も掲載しています。
マーケティングプランは「簡潔な指示書」でなければならない!
ここで指す「マーケティングプラン」とは、マネージャークラスが書く大きな戦略プランという意味ではありません。自身が担当している業務のWebやデジタル分野において、骨組みとなる「ブリーフ(簡潔な指示書)」を指しています。
では、なぜブリーフを作る必要があるのでしょうか。それは、マーケティングプランは壮大なものではなく、可能な限りシンプルであるべきだからです。むしろ他人が見てわかりにくいプランは決して良い物ではありません。
マーケティングプランとは、他のマーケティング担当者とも意志疎通ができて、コンセンサスがとれるものであると同時に、そのプランが社外の人にとって「要件定義」として訳せるものでないと意味がありません。
だからこそ、マーケティングプランは特別なものではなく、むしろ、わかりやすく要点がまとまっている必要があります。一言でいえばそれは「ブリーフ(簡潔な指示書)」であるべきなのです。
ブリーフを作るにあたって、まずは以下の5ステップを見てください。
ステップ1: 4Pで自社のビジネスを理解する
ステップ2: 顧客を理解する
ステップ3: 競争環境を把握する
ステップ4: マーケティング課題(Why)を設定する
ステップ5: 課題をもとに要件を整理し、マーケティングブリーフを書く
ここで示す5ステップは、それぞれよく見かけるマーケティングの要素に過ぎないので、もちろんやり方次第によっては、この順番を守る必要はないでしょう。どこから始めてもかまいませんが、それぞれの要素は結びついているので、それぞれのステップはプランを作りながら、行ったり来たりするべきものです。
ここでは、ステップ1から順に説明していきます。
ステップ14Pで自社のビジネスを理解する
4Pとは、自社のビジネスがまわる仕組みを4つの簡潔な要素に分解したもので、Product(製品)、Place(流通)、Price(価格)、Promotion(販促)の4つの頭文字を取った略です。マーケティングに関わる人々なら一度は聞いたことがある言葉でしょう。
4Pは、マーケティングの「パイプライン」としても考えることができ、ステップ2で出てくる顧客に対して、企業が提供している価値がどのように貢献しているか、といったことを体系的に示すことができます。この体系的に示すことをバリューチェーン(価値連鎖)と呼びます。
また、4Pの「Product」は「製品」と訳していますが、製造業に限らず、流通やサービス業において、価値を生み出すものがProductです。流通業においてはブランドや品揃え、店舗コンセプトなどが「製品」に当たり、サービス業においては、そこで提供される体験価値が「製品」に当たります。
もし、あなたが新しい事業のマーケティングプランを作成するとしても、まずは自社全体の4P分析から始めることをおすすめします。なぜならば、これまで行ってきた自社のマーケティングの特長を理解するうえでも4Pの視点でみることは、仮に、自分でわかったつもりになっていたとしても、再認識することが有益だからです。
もしうまく理解できない場合は、社内の人に聞くのもいいでしょう。ここでしっかり情報を整理しておくと後の作業がスムーズになります。
ステップ2顧客を理解する
次は「顧客を理解する」です。これはとても重要且つ、最も難しいことです。
4Pには必ずしも「顧客」が出てきていません。しかしながら、4Pはすべて「顧客」を中心に構成されていることに気がつくでしょう。製造業にとっての顧客は、ビジネス上の取引先の場合もありますが、ここで指す顧客は、自社の製品を購入するだけでなく、実際に使用する人(エンドユーザー)をイメージしたほうがいいでしょう。
また顧客は、1つのセグメントに納まらない場合もあります。なるべく多くの顧客セグメントを想定しましょう。そしてその顧客をなるべく正確に、「人」として思い描くことをおすすめします。年齢や性別、職業、住んでいる場所などのプロフィールはもちろんですが、次のようなことも含めて描いていくといいでしょう。
- 顧客はどんなことを考え、何を望んでいるのか
- 顧客に見えているもの、まず気にしているものは何か
顧客の描き方や分類は、製品やサービスによってさまざまです。もし顧客のことをよく知らなかったら、社内のマーケティング顧客調査データがあればそれを読んでみるなり、カスタマーサービスや営業、店舗のスタッフのように直接顧客に接している人々に聞いてみましょう。
ステップ3競争環境を把握する
次は競争環境についてです。もっとも思い浮かびやすいのは、同じ業界に属している競合他社でしょう。すべてを調べるわけにはいきませんが、特に重要だと思われる競合他社について、ステップ1とステップ2にあった4Pと顧客分析を行ってみてください。
そして、その分析を自社のものと比較してみましょう。自社と比べると他社競合のデータや分析は集まりにくいので、外部パートナーとなる代理店や協力会社がある場合は、この作業を依頼するのも1つの手です。
ただその際は「競合分析を実施してほしい」と依頼するのではなく、自社の分析をベースに、同じフォーマットや項目で情報を整理してもらうようにすると、彼らからのインプットも含めて有意義です。
このあたりの作業を熱心に付き合ってもらえるかどうかによって、あなたの会社が、良い外部パートナーと仕事をしているかどうかの1つの基準にもなるでしょう。
ステップ4マーケティング課題(Why)を設定する
このあたりからいよいよブリーフを作成するための本題に入ってきます。これまで説明してきたステップは、自社のマーケティング課題を設定するための下準備でした。
そのため、あなたの手元には自社、顧客、競合の情報が集まっているので、さまざまな気づきが生まれているはずです。マーケティングプランを作成するためには、まずは身の回りの情報を整理して、自分自身が把握できる「地図」を作ることが大事です。
実は、いままでのこのステップはいわゆる3C分析といわれるものです。Company(自社)、Customer(顧客)、Competitor(競合)です。これを作成している間に、それぞれのギャップやずれが見えてくるはずです。
たとえば、自社と顧客のギャップや自社と競合のギャップ、競合と顧客のギャップなどです。おそらくそれらが、マーケティングプランにおける「解決すべき課題」になるでしょう。そしてこの課題を発見し、これを解決することが、マーケティングプラン作成において、もっとも重要な「核」となります。
それは一言でいえば、「なぜあなたがこの仕事をするのか」(Why)と同じです。これから実際のプランを外部のパートナーとともに作成していき、具体的なアイデアを検討する際にも、このWhyが金科玉条の判断基準であることを忘れないでください。
ステップ5課題をもとに要件を整理し、マーケティングブリーフを書く
最後にこれまでの作業をもとにプランの骨子を「簡潔にまとめ」ますが、これは思っているより簡単ではありません。よくありがちなことは、今までのステップごとの分析結果を全部資料にして添付してしまうことです。しかし、それは書き手にとっては楽でも、読み手にとっては時間がかかり過ぎて結局意味がないものになってしまう可能性があります。
ブリーフは、以下の4点をシンプルな文章(箇条書きではない)にして、いわゆる5W1Hを明確にした情報を「一枚の紙」にまとめるように努力しましょう。
マーケティング課題(Why): なぜこの計画が必要なのか。その理由と目的。必要であれば、課題の前に「背景」として、ステップ1~3の内容を簡潔に説明してもいいでしょう。
想定する顧客(Who): 課題を解決するために重要なターゲット顧客について。必ずしも現在の自社の顧客である必要はありません。先ほどのギャップを理解したうえで設定し、また明確にどんな人たちかを描写しましょう。またこれを読む人が現実的に議論できる情報を十分に持っていることが望ましいです。ありもしないターゲット像は想定しないこと。
課題を解決するアイデア(What): ここは最もおもしろい箇所です。あなたの職務責任において、実施可能なアイデアを「例」として書いてください。もし他部署の協力、外部パートナーとの連携が必要な場合は、あなたのアイデアを話したうえで議論しましょう。またこの部分を具体的に実施計画としてパートナーに出させるのもいいでしょう。
実施のために満たすべき条件(How & When & Where): 実際にあなたが上司から指示されることが多いのが、この4番目の「条件」です。これだけをただ指示されると、ほとんど創造的なアイデアは生まれないでしょう。だからこそ、この点はブリーフの最後に示します。実施範囲、納期、予算など職務責任における条件を明記すること。
以上がマーケティングプランとなる「ブリーフ」を書くステップです。ブリーフは担当者にとって大事な「アウトプット」です。このブリーフを作成せずに、いきなり代理店を呼んで話しをする人もいますが、少なくともステップ1~4を自分で分析し、わかっていることを上記の4つに沿った形でまとめることが大事です。
マーケティングブリーフとはどんなものかイメージがつきやすいように、「企業Web担当者 初級講座」を例にサンプルを作成しました。
ブリーフに考えていることをすべて書く必要はありません。ブリーフは、誰が見ても論理的で筋が通っている1つのストーリーになっている必要があります。その意味で「一人歩きする」書面なのです。このあたりの実際のやり方やブリーフを書いて活用するための方法は詳しくは、6月の「企業Web担当者 初級講座」で説明したいと思います。
Web担当者がマーケティングをきちんと理解すべき理由
ここまで、ブリーフの作成の説明をしてきました。なぜ、Web担当者がマーケティングをきちんと理解すべきなのか、最後に触れておきたいと思います。そもそもWeb担当者あるいは、デジタルマーケティング担当者という人々とは、マーケティング部署のなかでは得てして「新参者」、あるいは文字通り「新しい(若い)人」なのではないでしょうか。
- ITリテラシーが高い
- 「スキル」という点でIT部門から異動になった
- 新入社員のほうが向いていそうだ
- 他社のデジタルスキルの高い会社から転職してきた
- 新しくデジタル部門が組織で立ち上がった
などさまざまな理由が考えられます。デジタルのマーケティングそのものの歴史が浅いためもありますが、これまで特にトラディショナルなマーケティング組織をもつ企業においては、とにかく扱いが難しいと思われます。
その理由の1つには、良くも悪くもデジタルマーケティングは、IT(情報技術)を基盤にしているため、技術的な話がメインだと思われていることです。
これは言い方を変えると、デジタルマーケティングにおいて、「What(何を)」と「How(どうするか)」という点に注目されすぎているということでもあります。
しかしマーケティング全体で考えれば、それは1つのアプローチや方法でしかないので、本来考えるべき「Why(なぜ)」から「What(何を)」「Who(誰に)」という問いが疎かになってしまうことでもあります。
技術の進化は早いので、あまりその瞬間の「How」ばかりに気を取られていると本質的な変化を見失ってしまいます。まずは自社を含めたビジネスやマーケティングの大きな視野からスタートすることをおすすめしたいと思います。
本記事の筆者ニューバランスジャパンの鈴木氏が具体的な例を示しながらさらに詳しく解説するセミナーが開催されます。
Web担当者が身に付けておくべきWebマーケティングの基礎を2日間で学ぶ! 企業Web担当者 初級講座
Web担当者の学校「企業Web担当者 初級講座」は、企業Web担当者として身につけておくべき、ウェブ・マーケティング・業務・プロジェクト管理・Web戦略などに関する基本的な知識とスキルを身につけるための講座です。また、講師の話を聞く座学だけでなく、講師から出されたお題や自社の例に対して、受講者が自分で考え、手を動かして学べます。
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