創業来の連続増収から減収に、V字回復目指すリアルコマースが断行した戦略の転換
この記事は、姉妹サイトネットショップ担当者フォーラムで公開された記事をWeb担当者Forumに転載したものです。
ファッションECのリアルコマースは今期(14年9月期)、選択と集中を進め事業の立て直しを進めている。前期(13年9月期)は13億円の売上高を見込んでいたものの、サイトのリニューアル失敗などで売り上げは9億円程度にとどまった。昨年末に事業構造改革を断行し、今期は攻勢に転じる1年と位置付ける。リアルコマースがV字回復に向けて進める戦略の転換とは。
楽天では宝探し的なサイトがやっぱり売れる
リアルコマースは「楽天市場」のファッション分野で頭角を現している有力ファッションEC企業だ。08年6月に「楽天市場」へ出店し、11年12月に月商1億円を突破。12年9月期のEC売上高は約10億円を計上。楽天市場出店からわずか5年弱で年商10億円企業に成長した。
運営するECサイトは「NOWiSTYLE」(ナウアイスタイル)。20~40代の女性をターゲットにファッションを販売するのがビジネスモデルだ。短期間で急成長したのは、海外子会社を通じた仕入れ力にある。
ファッションビルや問屋市場が並ぶ東大門(トンデムン)に本拠地を置く韓国子会社を通じ、流行のファッション商材を輸入。ほかにも、欧州や米国から商材を仕入れている。海外から毎日のように商品を仕入れ、1カ月未満でその商材を売り切る。商品回転数は月1.7回転という高サイクルだ。「いま買わないと購入できない」(恩蔵優専務)。こんな消費者心理を作り出し、顧客をサイトに引き付ける。
これまで中心的に扱っていたのはファストファションで、商品の平均単価は2200円前後。3桁台のファッション商材も多い楽天市場では、決して安くはない単価設定。平均顧客単価は約4400円で、1人当たり2着を購入する計算だ。
こうした事業展開で急成長を遂げたリアルコマースは2013年、初めて大きな壁にぶち当たる。創業以来右肩上がりの成長を続けて急成長を遂げていたが、初めて減収に転じたのだ。大きな要因は「リニューアルの大失敗」(同)。
ファッション雑誌風のオシャレなサイトを作り、ワクワク感の提供を目指した。結果的に分かったのがキレイでオシャレなサイトでは売れないということ。宝探し的なサイトがやっぱり楽天市場では売れる。オシャレなサイトは敷居が高くなる。
リアルコマースは成長のための投資をここ数年続けてきた。13年9月期の売上高は15億円超を見込み、事業計画達成のためのスタッフ数は40人を超えていた。気が付くとスタッフの増員によって、作業は細かく分業化されていた。「例えば、1つの四角を作る作業に、4人が張り付いて仕事をするような状況になっていた」(同)。分業化による作業効率は上がっていたものの、1つのタスクに対する社員の責任感、注力度などが減退していることに気付いた。
組織をスリム化し仕事を明確化、ヤフーショッピング撤退で楽天に集中
そこでリアルコマースは事業構造の改変に着手。作業をシンプルにし、スタッフ1人1人が一つのタスクやミッションに対して注力できる状況作りを目指し、スタッフ数を13人までスリム化。少数精鋭の体制を敷き、「残ったメンバーの給料をアップした」(同)。残ったスタッフによるサイト運営で、14年1~3月度の月次売上高は予算を達成。バランスシート、売上高営業利益率の改善などにもつながっている。
スリム化に伴い、少数精鋭でも最大限力を発揮できる組織体制を目指し、事業の選択と集中を推進するための事業仕分けにも着手。ヤフーショッピングは撤退。「仕事をシンプルに、そして明確化した」(同)。従来は新作を10~20点ほどサイトにアップし続ける方法から、「毎日1個は必ずアップするけれども、その1つにきちんと作り、訴求するようにした」(同)。量より質への転換だ。
昨年までは自社サイトに集中していたが、力を注ぐ運営サイトは楽天店に一本化した。将来的な成長を考え自社サイトに投資していたが、業績立て直しを急務とする方針から一時方針を転換。得意としていた楽天店に経営資源を集中することにした。
こうした事業転換のほか、海外の有名ブランドとの関係性を構築し、マーチャンダイジングに活かす取り組みも並行して進めている。2013年12月、2000年に英国で設立されたバッグブランド「ポールズブティック」と総代理店契約を結び、ほぼ日本独占で販売できるようにした。「英国ではほぼ知らない人がいないというブランド」(同)で、V字回復に向けた攻勢材料の1つに掲げる。
こうしたブランド戦略が実を結びつつあり、「昔は安物を求めるバーゲンハンターが多かったが、今は優良な顧客が増えている」(同)。RMS(楽天の顧客管理システム)で顧客分析を行うと、最安値検索といった価格よりも、ブランド名で検索される傾向が高いという。
「今年は反撃の1年」と力を込める恩蔵専務。ファストファッション+αとしてファッションブランドサイトへの成長を進めようと試行錯誤を続ける。スタイリストやモデルへ自社の商材を認知してもらおうと、PR会社と手を組んで認知度向上の引き上げ策に取り組んでいる。徐々に、ファッション雑誌内でモデルが着用したりするケースが増え、PR活動も成果が出始めた。
価格からブランド重視、スリム化による選択と集中――。急激な成長に対する反動、価格競争などに悩むEC企業が多い中、迅速な経営判断でV字回復に向けて業績を立て直したリアルコマース。「崔瀚友社長と共にこれらの改革を推し進めていく」と恩蔵専務は巻き返しを誓う。
オリジナル記事はこちら:創業来の連続増収から減収に、V字回復目指すリアルコマースが断行した戦略の転換(2014/05/27)
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