ネットショップ乱立時代の人材育成
この記事は、姉妹サイトネットショップ担当者フォーラムで公開された記事をWeb担当者Forumに転載したものです。
あなたのネットショップは十分な人材が確保できていますか?
EC市場が大きく成長し続けるなか、小売業全体の大きな課題の1つとして、EC化に対応した人材育成の遅れが挙げられるのではないでしょうか。
急速な市場環境の変化に対応できるEC人材をどのように育てれば良いのでしょうか。人材育成に必要なポイントを3つの視点で解説していきます。
① ネットショップはITではなく小売業
「Webで商品を販売する」ということから、当然、サーバー設定やHTML、Webプログラミングなど、技術的なスキルがある程度必要です。また、Web制作会社やショップ構築ツール提供者、システム開発依頼時のベンダー選定、各種コンテンツ制作に関するやり取りにも、EC特有の知識が必要です。
しかし、ECの最終的な目的を見失わないようにしないといけません。つまり、お客さまに対して商品を販売するという、小売業としてのリテラシーを徹底して教える必要があるということです。
- 小売業の基本を理解する
- リアルの小売業とネットの小売業の違いを理解する
- EC業界のトレンドを理解する
という3つの育成プロセスが重要になります。
リアルであってもネットであっても、業務を担当するスタッフは小売業としての業務プロセスを理解し、お客さまに対するホスピタリティを考え、ネット特有の業界動向や専門知識を習得することが不可欠なのです。
② 必要なスキルを可視化してOJTを機能させる
ネットショップに関わる人材を育成する場合には、小売業界として最低限必要な基本スキルをベースにし、ネットショップ構築や運営に関するトレンド、そして、自社ショップの運営に必要となるスキルを収集・習得し続ける「習慣づけ・環境」が大切です。
- 自社の戦略を実現させるために必要な、ビジネス、制作、運営の3分野からなる「人材のスキルセット」を明確にする
- 新規に採用するスタッフ、社内の既存スタッフのスキルを診断・把握する
- 足りないスキルを教育で補完する
など、OJT(On the Job Training)を通して、組織全体のレベルアップを図ることがポイントです。そして、外部講師によるスタッフ研修を実施したり、各種セミナー・同業者の交流会などに参加したりするなど、常に改善・向上を目指す環境づくりが必要です。
③ スタッフ人材育成の取り組みをショップのブランディングにつなげる
昨年10月のYahoo!の「eコマース革命宣言」の影響を受け、Yahoo!ショッピングのストア数が7万8千店を突破するなど、ネットショップの事業者数が大幅に増えています。
初めて出店する方も多数いらっしゃいますから、初心者特有のトラブルが増えることも大いに予想されます。 消費者視点で考えれば、トラブルがないショップで購入したしたいと思うのは当然です、つまり、スタッフ教育がしっかり行われている質の高いショップだと証明できれば、非常に有利だと言えるでしょう。
スタッフの質はショップの質
「個人消費動向に関する市場規模調査」(株式会社MM総研/2014年1月29日発表)によると、2013年度の国内消費市場全体に占めるECの市場規模は15.9兆円と算出されています。これは2013年度の国内最終消費の市場規模283.7兆円全体の5.6%を占めることになります。特に、EC市場の中でスマートフォンの市場規模は2.6兆円となっており、利用比率は16.3%まで上昇してきました。
スマートフォンの保有率が高まったことに伴い、消費者の消費行動も大きく変化してきました。あわせて、小売事業者の新しい取り組み(O2Oやオム二チャネル、リアルの店舗のショールーミング化など)も加速してきています。
本リレーコラムで、天井秀和さんも「変化の激しいECという業態において、先人の作った常識が今日や明日も通用するのか評価はできない。評価が終わる頃には雌雄を決してしまっていることが少なくない」と指摘なさっていますが、トレンドの変化が激しいEC業界では常に変化への対応を求められます。
運営スタッフの質がショップの評価要素に加わる時代になってきています。今後ますますネットショップが増え続けると予想される中、ネットショップ運営における基礎を身につけたうえで市場の変化にも対応できる。そのために学び続けられる環境作りこそが急務なのです。
私が事務局長を務める一般財団法人ネットショップ能力認定機構では、「Eコマース業界での実務能力を証明する資格」として位置づけている「ネットショップ実務士」の資格取得者に、運営ショップのページや名刺などへネットショップ実務士のロゴマークを掲載していただき、ショップ運営者のスキル保有の可視化・ショップの信頼性向上などに活用していただいています。また、近々、新たな取り組みとして、運営スタッフの人材育成に力を入れているネットショップの認定も行う予定です。
オリジナル記事はこちら:ネットショップ乱立時代の人材育成(2014/05/26)
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