企業ホームページ運営の心得

選挙の本質とソーシャルメディアの理解度が鍵。ネット選挙に備えるWeb担の心得 後編

ネット選挙ではネット・ソーシャルメディアの理解度が重要となります
Web 2.0時代のド素人Web担当者におくる 企業ホームページ運営の心得

コンテンツは現場にあふれている。会議室で話し合うより職人を呼べ。営業マンと話をさせろ。Web 2.0だ、CGMだ、Ajaxだと騒いでいるのは「インターネット業界」だけ。中小企業の「商売用」ホームページにはそれ以前にもっともっと大切なものがある。企業ホームページの最初の一歩がわからずにボタンを掛け違えているWeb担当者に心得を授ける実践現場主義コラム。

宮脇 睦(有限会社アズモード)

心得其の311

ネット選挙をリードする

東京幕張で開催された「ニコニコ超会議2」。

4月27日~28日の両日、述べ10万人を越える人々が集まったイベントで「自民党」が話題をさらいます。宣伝カー(街宣車)を会場に持ち込み、一般来場者による「街頭演説体験」や、自民党総裁室を再現した「総裁のイス」に座っての記念撮影などを実施したのです。インスタントコーヒーを隠し味とする、石破幹事長お手製の「石破カレー」も販売されました。

対する野党は、民主党、日本維新の会、日本共産党が出展していましたが、政治家とのディスカッションや、党首の等身大パネルの掲示など、新味がない……というより、ネットを理解していません。現時点での「ネット選挙」においては、自民党の圧勝です。

自民党が一頭地を抜くのは「ソーシャルメディアへ」の理解です。というわけで、今回は前回から引き続きネット選挙について。

先送りされてきた理由

ネット選挙解禁に際して、ある誤解について指摘をしておきます。「自民党がネット選挙を先送りしてきた」というもの。この誤解に立つと先の人気は理解できません。

確かに、長老と呼ばれるベテランのなかに懸念する声があったのは事実ですが、官邸による「メルマガ」を発行したのは小泉純一郎政権時代で、2001年6月14日にはじまります。初代編集長は安倍晋三首相(当時は内閣官房副長官)。12年を経て首相官邸がFacebookを活用する姿は、むしろ自然と言えます。また、いわゆる「郵政解散」では、ネット対策のための「チーム世耕(世耕弘成参院議員が主導したネット対策チーム)」が動き出しており、後に「自民党ネットサポーターズクラブ」へと発展します。

いよいよネット選挙解禁かと騒がれたのが2010年の参院選挙で、この時は、私も新聞各社の取材を受けたものです。また、先の内閣メールマガジンは、民主党の鳩山内閣にも受け継がれましたが、終止符を打ったのはネット選挙を先送りした菅政権です。自民党陰謀説に立つと「ネット選挙」の現状を見誤ります。

ソーシャルメディアを理解する自民党

無観客試合とまでネットで揶揄された「ニコニコ超会議」における民主党の不人気と対照的に、自民党ブースの盛況ぶりは「アベノミクス」によるものではありません。ソーシャルメディアへの理解です。

TwitterやFacebookに代表されるソーシャルメディアは、「人と人のつながり」を切り出し可視化します。街宣カーからみた景色、総裁のイスに座る写真、石破カレーをアップロードしたときには「いいね!」とクリックされ、リツイートされることは容易に想像できます。ゴールデンウィークに政治家のディスカッションを「tsudaる(Twitterで中継)」しても、タイムラインに熱視線をおくるフォロワーは余程の暇人です。つまりソーシャルメディアへの理解が、動員力の差になったということです。

ただし、これは話題作りといった「空中戦」に相当するもので、「地上戦」においては、各党に顕著な開きはまだ見えてきません。

地域業者を選ぶ理由

ここでようやく前回からの引き続きです。ネット選挙が解禁されたいま、素人だけでサイトを運営するのは日に日に難しくなります。日進月歩どころか、秒進分歩のネットの最新情報をキャッチアップするには、プロに依頼する方が高い経済効率を得られるからです。そして業者は、「一定水準以上の技術を兼ね備えているという前提において選挙区内から選ぶ」としたのは、前回示した理由から。

ただし、技術的な実力を正当に評価できるのは、より高い実力を持つ制作業者やコンサルタントしかないという矛盾もあります。そこで次の3点から、ネット選挙をフォローするに適した業者かをチェックします。余程の理由がなければ、すべてを満たす業者を選んでください。

3つの業者選定ポイント
  1. 会社組織かどうか

    ビジネスにおいては、法人化した方が信用度や節税などのメリットがあり、事業継続性を測る目安となります。株式か有限かは関係ありません(2006年5月1日以降は「有限会社」は設立できなくなっています)。

  2. 営業年数のながさ

    一般論として起業から3年以内に9割が廃業するといわれています。ネット選挙解禁によって継続的な取引が必要と考えるなら、これも要チェックです。大事な選挙戦の最中に「夜逃げ」されないための目安です。

  3. ソーシャルメディアの利用状況

    代表者や担当者、会社のTwitter、Facebookをチェックします。これを公開していないようでは「ネット選挙」において、期待する提案や助言は得られないでしょう。匿名でネットを利用するものと、実名で戦う選挙では、発言のコントロール方法などで大きな違いがあるからです。

地元とソーシャルメディアのつながり

地元業者を薦める理由のもう1つは、自民党と重なるソーシャルメディアの普及です。選挙区内の業者は「地の利」をもっており、端的に言えば、地元の経済界、商店街、法人会や商工会などに「人脈」があり、高い確率で、ソーシャルメディアでつながっています。そしてネット選挙の解禁を受け、有権者による選挙運動と落選運動も解禁されました。運動の強制はできませんが、

オラが先生

を応援してくれれば、地元経済界への波及効果を期待できるということです。

ひとまず、今回の「ネット選挙」については前後編にて筆を置きますが、自民党がネット選挙で先行するのは「盆踊り」です。日本維新の会共同代表の橋下徹氏は、政治家が盆踊りに行く様を揶揄しましたが、多くの有権者は「会ったことがある」程度の理由で投票先を決定します。その「盆踊り」を再現するのがソーシャルメディアです。換言すれば「接点」です。

政権交代、改革ブームという「風」に頼った選挙しかしていない野党と、盆踊りで握手を繰り返し、接点をつくってきた地力の違いが、ソーシャルメディアによって顕在化しています。

今回のポイント

ソーシャルメディアとは人のつながり

つまり、ネット選挙を制すのは「どぶ板」

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