【小説】CMS導入奮闘記――吉祥寺和男の挑戦

高機能な製品を選べばうまくいくとは限らない

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コラムCMSの選び方

高機能な製品を選べばうまくいくとは限らない

CMSの選定は、Web担当者にとって最も悩ましく、かつ最も楽しい行為である。それは、新しい車やマンションを購入する時の感覚に似ている。しかしそれゆえに、「高機能」で「予算枠いっぱい」のCMSを選んでしまうケースが少なくない。これは完全な誤りである。その選択は、導入プロジェクトが失敗に終わるか、導入に成功しても運用が苦しくなるか、あるいは継続してCMSを使用することが極めて困難になるか、そのいずれかの結果を招くだろう。

CMSの導入を成功させるには、自社の組織やウェブサイトに最適なCMSを選ばなければならない。では、そういったCMSを見極めるには、どうすればいいのだろうか。

たとえば、オープンソースのCMSは、機能が豊富でライセンス費用が安いが、多くの場合、インターフェイスが整理されておらず、企業組織のヒエラルキーに合った形になっていないことが多い。また、永続的なサポートを受けることは難しく、運営には高い技術を持った人材の確保が必要である。

また、ブログからスタートしたCMSは、わかりやすいインターフェイスと身軽なシステム、柔軟性、安価なライセンスを提供してくれる。一方で、やはり企業のヒエラルキーやコンプライアンスなどはそれほど意識されていない。

エンタープライズCMSは、組織のヒエラルキーや他のシステムとの連携、数万から数十万ページのウェブサイトの動作、他言語での運用などを約束してくれる。しかし、それを導入するには高いコストを費やさなければならず、運用にも高いリテラシーが求められる。

Googleで「CMS」と検索すれば、100以上のCMSを見つけることができるだろう。残念ながら、この中の8割から9割は、導入候補に入れる価値のない製品である。以下に、CMS選定のポイントを挙げる。

導入実績があるCMSを選ぶ

導入実績はCMS選定で最も重要なポイントである。たとえば、PCのアプリケーションにはバグがつきものだが、そのバグは、アプリケーションを世界中の数千万の人々が長い間利用し、問題点が明らかになることによって、徐々に駆逐されていくものだ。CMSは、コンシューマー向けのアプリケーションではなくBtoBのシステムであり、1つの製品の導入実績は、多くの場合100社に満たない。これは、ユーザーの人数に換算すれば、数十人程度しか利用していないことを意味する。したがって、バグが修正される機会は非常に少ない。仮に、製品のスペックとして「実現している」ことになっている機能があっても、それが裏切られるケースがしばしばある。

目安として、そのCMSの導入に成功し、運用をしている企業が100社以上ある製品を選ぶことをお勧めする。とりわけ、業界内での実績のあるものを選ぶがいいだろう。たとえば、ECから派生したCMSは、金融業界のウェブサイトには不向きである。

制作パートナーは豊富にいるか

制作パートナーが豊富にいないCMSはお勧めできない。1つの企業が、数十年にわたって同じ制作会社とつき合うケースはまれで、ある時期に制作会社を選択し直さなければならないことが多い。その際に、そのCMSを運用できるパートナーが少なければ、それだけ選択の幅が狭まることになる。

オープンソースCMSで成功できるのは限られた企業

オープンソースCMSは、ライセンス費用が実質無料で機能が豊富なのは魅力的だが、導入に成功するのは企業側に一定の条件が揃っている場合のみと考えるべきだ。また、前述のように企業組織内での利用を前提として開発されているシステムではないことに注意したい。プロダクトのサポートは必ずしも保証されていないし、IR情報、人事情報、セミナーの情報などの企業サイトに必須といえる機能についても、考慮されていないことがほとんどだ。

企業組織に適合させるための機能をプラグインで実現できるケースも多いが、個々に開発されたプラグインを同時に利用する際の動作保証は一切ない。また、そのCMSを生み出したコミュニティの解散によって、開発が完全にストップするケースも多い。その場合の責任は、誰にも求めようがない。

もし、オープンソースCMSを導入するのなら、企業の導入担当者や運用担当者すべてに高いリテラシーが求められる。その教育コストやマニュアルコストを考えれば、ライセンス無料のCMSは、実際には非常に高い買い物となる。

CMS導入の発注先を選ぶには

ところで、CMSの導入はどこに発注するのがベストなのだろうか。CMSベンダー、制作会社、システム会社、広告会社、営業代理店など、考えられる選択肢はいくつかあるが、やはり重要なのは実績である。

複数のCMSの活用や導入の経験があり、公平な立場で最適なCMSを推薦してくれる制作会社は、少ないが存在する。一方、実際にCMSを導入した経験がないのに、「選定はお任せください」と言い張る会社もある。あるいは、広告会社や営業代理店、商社などのように、自らCMS導入を行うわけではなく、CMS導入を行う制作パートナーを「見つける」コンサルティングを仕事としている会社も多い。なかには、RFP作成や見積書の精査などを請け負う企業もある。

CMSベンダーを直接選定するなら、その実績をしっかり確認することが大切であり、そのベンダーの制作パートナーの実績をチェックすることも必須だ。

いずれにしても、Web担当者は、CMSセミナーに出席したり、関連するウェブサイトをチェックしたり、CMSベンダーの営業マンと会ったり、デモを見せてもらったりして、自ら詳細かつ広範に情報を収集しなければならない。その労を惜しんでは、決して最適なCMSを選定することはできないだろう。

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