新規セッション率が低いサイトは悪いサイト? Google AnalyticsでSEO
具体的な事例とツールの解析ワザを中心としたGoogle Analytics活用の実践Tips集
もちろんSEO/SEMも織り交ぜながら解説していきます。
前回は連載の最初の記事だったので、Google Analyticsの本音と建前を通じて、Google Analyticsの設定に関する基本的な数字に触れてみた。いよいよ今回からは実践的な話題について解説していくことにしたい。まずはSEOの話題に絡めて「新規ユーザー」と「リピーター」について注目していこう。
SEOを実施するのは、サイトに新しい訪問者を増やしたいからだ。新しい訪問者が次々に入ってきて、さらにその人たちの何割かが繰り返し来てくれるリピーターになる、そんな流れができればサイトは右肩上がりに訪問者数が増えていくはずである。
新規ユーザーを認識する仕組み
各ページにあらかじめ埋め込んだimgタグやJavaScriptなどから解析用のサーバーに情報を送るタイプ。詳しい解説やその他のデータ取得法との違いなどはこちら
Google Analyticsは、訪問者を「新規ユーザー」と「リピーター」で区別できるので、解析する際にはとても便利だ。これは何もGoogle Analytics特有の機能ではない。多くのアクセス解析ツールにこの機能はある。Google Analyticsは、ページにJavaScriptを貼りつけるウェブビーコン型※だが、このスクリプトによって、そのページの訪問者に「印」をつけることができる。この「印」がクッキーと呼ばれるものだ。
たとえば、あなたが僕のブログを訪れると、あなたのパソコンのディスクのどこかに僕のブログ用のGoogle Anayticsのクッキーが保存されることになる。このクッキーを持っていない人がブログを訪れると、Google Analyticsは新しい人だと判断するわけだ。
このクッキーの有効期限は、初期設定では2年後にセットされている。たとえば、今日(※記事掲載時点)あなたが僕のサイトに訪れると、クッキーの期限は2011年の今日に設定される。でも、この期限はあなたが次に訪問した時には、さらに2年間延長される。2年以内に訪問してくれれば期限切れにはならない、そういうクッキーだ。この仕組みを使いながら、「あなたが何回目の訪問か」「前の訪問から何日たったのか」などもわかるようになっている。訪問者が意識的にクッキーを消さなければ、かなり正確に測れる仕組みだ。
「新規ユーザー」の数字は本当は新規セッション数
ここでセッション(訪問)とユーザーの違いにも触れておこう。
Google Analyticsの場合、ユーザーとは、クッキーを保持しているあなた※のことを指す。
サイトというデパートに初めて入店すると、店員が「いらっしゃいませ」と笑顔を向けながら、気付かないうちに、あなたの背中にぺたっと紙(※クッキー)を貼る。そこにはデパートの名前とあなたの番号が書かれている。あなたがその紙をはがさない限り、そいつはずっと貼ってある。
では、セッションはどうだろう?
セッション数は、デパートの訪問回数だ。僕がデパートに買い物に訪れるたびに、入口の店員は背中の張り紙に、「正の字」と日時を書いていく。その「正の字」の本数がセッション数だ。反対に、1度デパートを訪れて張り紙を貼られても、2年間そのデパートに行かなければ自然に張り紙は背中から消えてなくなる。
ここで注意したいのは、新規ユーザーとリピーターの区別は、あくまでセッション単位だということである。Google Analyticsのメニューで「新規ユーザーとリピーター」となっているが、厳密に言えば「新規セッションとリピートセッション」つまり期間内の「訪問」がはじめてかどうかという記録になる。「ユーザー」だと思っていると、ちょっと混乱する。もう少し詳しく説明しよう。
Google Analyticsでは期間を指定した解析ができるが、たとえば、1月1日から1月31日までの期間を表示したときの「新規ユーザー」は、その期間の訪問者の中で、張り紙が貼られていないユーザーの数が記録されている。去年の12月や10月にデパートに来た人には、張り紙がしてあるから、1月に来ても、新規ユーザーにはならない。これは納得できる。
逆に、1月3日にはじめてデパートに来て張り紙を貼られたばかりの人が、1月5日に来たらリピーターになる。このときは、1月3日と5日の両方の訪問が記録されている。5日にもう一度来たからと言って、1月3日の「新規ユーザー」の記録は消さずに、そのまま残す。その上で、1月5日の訪問は、別にリピーターとして数えられている。あくまでも「新規ユーザー」は、初めてそのサイトに訪れた人が1番始めに訪問したときの記録のみを指しているのだ。すると、同じ人なのに「新規ユーザー」と「リピーター」とまるで2人いるかのように表示され、セッション数は実際のユーザー数よりも多くなる。
とあるサイトへのアクセス状況を、1月1日から1月31日までの期間で設定しみていくことにします。Google Analyticsで測定を開始したのは前年の12月1日からでした。
ユーザーAは、11月20日に初めて対象のサイトにアクセスし、その後12月6日と1月6日に再度アクセスしています。ユーザーBは1月10日にアクセスしてからそのサイトには訪れていません。ユーザーCは、1月10日に初めてそのサイトにアクセスし、その後1月15日と20日に再度アクセスしています。
Google Analyticsでの結果は下記のようになります。
- ユニークユーザー数
ユーザーA、ユーザーB、ユーザーCはともにユニークユーザーとしてカウントされます。しかし、ユーザーCの1月15日以降の訪問(1月15日と20日)はカウントされません。
→結果:3ユニークユーザー - セッション数
ユーザーAの1月6日の訪問は、“リピーター”による訪問としてカウントされます。ユーザーBによる1月10日の訪問は“新規ユーザー”、ユーザーCによる1月10日のアクセスも“新規ユーザー”ですが、ユーザーCの1月15日以降のアクセスはすべて“リピーター”による訪問としてカウントされます。
→結果:新規ユーザー2セッション、リピーター3セッション
新規セッション率がわかる
Google Analyticsでは、左側のナビゲーションの「ユーザー」メニューから「新規ユーザーとリピーター」を選ぶと、円グラフで新規とリピーターの割合を確認することができる。全体のセッションに占める新規セッションの比率が「新規セッション率」だ。また、「新規ユーザー」の項目をクリックすると、新規ユーザーだけの動きを見ることができる。
「ユーザー」だけでなく、「トラフィック」メニューの中にある参照サイトやキーワードごとにも新規セッション率が表示されている。「参照サイト」「検索エンジン」「全ての参照元」「キーワード」「AdWords」など「トラフィック」メニュー内の多くの項目で、訪問者の「新規セッション率」が一目で確認できる。
あなたがもしSEOをやっているなら、「検索エンジン」内の「yahoo」と「google」に関して、それぞれの検索エンジンが十分な数の新規ユーザーを連れてきているのかという点と、「キーワード」ごとにどの検索ワードが新規セッションを運んできているのかという点に注目してほしい。
新規セッションは高いほどいいの?
じゃあ、新規セッション率は高ければ高いほどいいのだろうか?
SEOが成功していれば新規ユーザーが増えるはずだから、一般的には新規セッション率が高い方がいいはずである。しかし、僕が手伝っているショッピングサイトは新規セッション率が低く、リピーター率がとても高い。でも売上は伸びている。その理由は、長く運営していてファンが多く、しかも定着率が高いサイトだからだ。
ショッピングサイトなどの場合、良いサイトほどSEOをいくらやってもリピーター率が高い場合がある。新規ユーザーを招いても、すぐにその人たちがリピーターになるからだ。先ほど例に挙げたショッピングサイトでは、新規ユーザーは絶対数としては常に獲得できているのだが、割合でいえばいつもリピーターが7割を超えている。
反対に、ずいぶん長く運用しているのにいまだに新規セッションが7割もあるサイトは、定着率が悪いダメなサイトなのだろうか?……実は、これも違う。
1回の訪問で納得できるわかりやすいサイトで、その後はリアルのお店に足を運んだり、営業の人と話が進んだりするサービスなら、新規セッション率が高くてもちっとも不思議はない。たとえば、レストランのサイトは一度インターネットで場所を知って来店し、しかもおいしければ、その後はサイトを見る必要はない。他人に教えたくなるような店なら、余計に新規セッション率は高くなる。
本当の意味での新規ユーザーとリピーターの価値は、Google Anayticsの数字だけでは測れないのだ。新規セッションという数字ひとつとっても、サイトやサービスによって価値は変わってくる。ここから先をどのように検証していくかがアクセス解析の醍醐味だ。
ただし、サイトを開設した直後なのにリピーターの比率が高いのは、あなた自身が何度も自分のサイトを訪れているから、それが本当の理由かもしれない。
次回は、SEOの観点から新規セッションの見方と改善方法に触れてみたい。
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