Webクリエーション・アウォード 今年のWeb人大賞はダレだ? Web広告研究会 森下氏インタビュー
Web広告研究会が主催する「Webクリエーション・アウォード」は、今年で第6回を迎えるアワードイベントだ。
すでに受賞者リストが発表され、9月16日に開かれる贈賞式で各賞が発表される、この「Webクリエーション・アウォード」について、プロジェクトを率いる森下 尚子 氏に伺った。
●編集部 そもそも、Webクリエーション・アウォードとは、どんなイベントなのでしょうか?
●森下 尚子 氏(以下「森下」) Webクリエーション・アウォードは、ウェブにおける各分野の活躍によりウェブ広告やマーケティングの発展に寄与された方を「Web人」として称える賞です。Web広告研究会が主催していて、第1回を2003年に開催してから毎年行われており、今年が第6回の開催となります。
変化し続け多様化するウェブの世界で、さまざまな分野でウェブに携わる方の活躍を称えることで、インターネット、ウェブの世界が発展することに寄与したいという趣旨で実施しています。
●編集部 アウォードはどういった流れで開催・審査されているのでしょうか?
●森下 よりよい方法にするため、開催年により多少異なりますが、まずWebクリエーション・アウォードのウェブサイト上で、広く一般の方から自薦・他薦を問わず、推薦をしていただきます。この時点では「○○を作った人」という候補者が特定できない推薦もあります。同時に、推薦された候補に、一般の方からの応援コメントを投稿していただきます。
その後、一次審査として、推薦された候補者を、推薦時の推薦文や応援コメント、わかっている場合は参画したプロジェクト・実績などを参考に、審査委員会で審査し、10名程度をノミネート者として発表します。その後ノミネートされた方に取材を行い、プロジェクトへの関わり方・実績、それによるウェブ業界への影響度などを調査します。「○○を作った人」という、候補者が特定できない推薦だった場合も、この取材の過程で贈賞すべき人を特定していきます。その結果を材料として、Web広告研究会の会員企業(約290社600名)による投票を実施し、得票数がもっとも多かった候補者に「Web人大賞」が贈られます。「Web人大賞」以外の賞については、二次審査委員会で贈賞者を決定します。
ちなみに、二次審査の結果をうけて贈賞者名を発表するのですが、その時点では、だれがどの賞を受賞したのかは明らかにしません。毎年秋に開催される式まで内緒なんです(笑)。
●編集部 なぜ「サイト」「サービス」ではなく「人」にフォーカスしたアウォードにしたのでしょうか?
- 坂和 敏氏(アジャイルメディア・ネットワーク株式会社 代表取締役)
- Webの魔術師、バスキュールの人たち氏
- 佐々木 英彦氏(トヨタ自動車株式会社 e-TOYOTA部 インターネット企画室 サイト企画グループ)
- 篠原 稔和氏(ソシオメディア株式会社 代表取締役)
- 出馬 弘昭氏(大阪ガス株式会社 技術戦略部長)
- 不破 泰氏(信州大学 大学院工学系研究科 教授)
- 和田 一也氏(ニフティ株式会社 代表取締役社長)
- 猪子 寿之氏(チームラボ株式会社 代表取締役社長)
- 皆川 卓也氏(ジェイマジック株式会社 ラボ兼技術開発部 シニアマネージャー)
●森下 「人」にフォーカスしたのは、“インターネットの中心はあくまでも人間である”という思いからです。
成功したプロジェクトには、必ず創造の源泉となったり、運営の機動力となった「人」がいるはずです。それが、広告を見たり、サイトにアクセスしたり、サービスを利用したりといった利用者の立場では、どんな人がどんな思いを込めて作ったのかまでは見えてきません。そこで、その見えてこない部分を浮き彫りにすることで、実際にウェブ業界へ影響を与え、発展に貢献した人物(Web人、ウェブじん)を浮き彫りにしようと考えたのです。
最も大きな影響を与えた人には「Web人大賞」をお贈りしていますが、ほかにもグループに対する賞の「Web人ユニット賞」もありますし、将来の活躍を予感させる、いわば未来のWeb人となる方に贈る「Web人学生賞」もあります。
また、こういった活動によって、ウェブの各分野での人材の発掘や育成につながることも期待しています。
●編集部 どういった分野で活動した人が受賞の対象となるのでしょうか?
●森下 主にウェブマーケティングの関連分野なのですが、広告に限っているわけではありません。第6回では、ウェブマーケティングの活用分野を「広告」「公共・行政」「サービス」「メディア」「CGM」「学術・研究」「広報・企業活動」の7分野に分類し、それぞれの分野におけるマーケティングやコミュニケーションのアクティビティのなかから「Web人」を掘り起こしました。時間とともに活用分野も変わっていく場合もありますので、分野は毎回見直しをしています。
●編集部 これまで、どういった方が受賞されてきているのでしょうか。第1回の2003年からの5年間で、ウェブの世界はブログ、SNS、ケータイ、Web 2.0など大きな動きがありましたが、Web人のノミネートや受賞者に関してもやはり変化(流れ)があったのでしょうか?
- 第1回 小川雅章氏(ネットでFIRE)
- 第2回 高橋理氏(nike.jp)
- 第3回 近藤淳也氏(はてな)
- 第4回 大西啓介氏(NAVITIME)
- 第5回 畑村匡章氏(モバゲータウン)
Web人大賞以外の賞の過去の受賞者はアワードのサイトを参照。
●森下 第1回、2回は広告主、第3回は知的データベースを活用したサービス、第4回、5回はモバイルサービスが大賞を受賞しました。このあたりを見ていきますと、 Webの変化がよくわかると思います。第1回は、幅広くバランスよく、第2回はブログが少しずつ出て、第3回は知的インフラとSNSが本格的になってきました。第4回はモバイル、そして広告主がブログを利用するというのが特徴的でした。第5回は、半分くらいはブログ・バイラルマーケティングなどCGM関係、既存メディアの方がお二人いて、既存メディアのインターネット対応も盛んになってきたのだと思います。
●編集部 推薦は広く一般の方から募っていますが、審査にあたってはどのような方針があるのでしょうか。これまでのWeb人賞の受賞者をみると、大企業の大規模なプロモーションに携わった方もいらっしゃれば、小規模だがおもしろいサービスをやっている方など、幅広い方がいらっしゃいます。
●森下 Web広告研究会のイメージに合う人、新規性、先進性、社会性、有用性、健全性などなどがありますが、留意しているのが、だれもが知っている「やっぱり」と、目から鱗のような「びっくり」の両方を掘りこすことです。「びっくり」というのは、「え、こういう人がいたの」ということ、「やっぱり」は、「やっぱり、あの人がとったの」ということです。
そのためにも、大きな成果をあげた活動、クリエイティビティに富む活動、あるいは小さいけれどもユニークな活動などをされた方々を発見し、推薦していただいたうえで、審査にあたっては、このようなスタンスで審査していただくようにお願いしています
●編集部 候補者の推薦や投票などのやり方は、毎回少しずつ変わってきているようですが、どういった工夫をされてきたのでしょうか?
●森下 ご存知の通り、ウェブの世界はまたたくまに拡大、多様化してきています。それにともなって、推薦数も増えてきましたし、何より推薦されるプロジェクトの領域がどんどん広くなってきています。簡単に言えば、審査するのが難しくなってきているわけです。これをいかに公平に、かつWeb広告研究会の活動とリンクした形で審査・表彰できるかという観点で、毎年改良を加えている、という感じですね。
●編集部 2007年には実施されていた一般の方による二次審査への投票は、なぜ今回は行われなかったのでしょうか。一般のネットユーザーの意見が入るほうがウェブ的だと思われるのですが、今後は、またできるようにする予定はあるのでしょうか?
●森下 一般投票も、先ほどの「改良」の試みの1つでした。おっしゃるとおり、一般のユーザーの意見が入るほうがウェブ的だ、という意見が運営側にもありましたし、推薦、応援も一般から受け付けているわけですから、投票も一般から、というのは自然な考えだと思います。ただ、昨年も一般投票を、審査を直接左右する材料とは位置づけていませんでした。というのも、初めての試みだったので、どれだけの票が集まるのか未知数でしたし、1票にどの程度の「重み」を持たせるのが適切なのかも難しいところでした。
今年はまずアウォードを運営しているわたしたちWeb広告研究会の研究活動とより関連性を高めることを重視しました。研究会の中で実際に活動しているワーキンググループからの推薦を受け付ける、というのも関連した試みです。
今後どうしていくかは、検討課題だと思っています。
●編集部 この賞の業界内外における位置付けはどのようなものになっているのでしょうか? また、Web広告研究会としては、どのようなものであってほしいという思いでアウォードを実施されているのでしょうか?
●森下 今年で6回目になりますので、賞の知名度も年々向上してきていると自負しています。変化と言う点では、受賞を機に各メディアからの取材依頼が来るようになった、という話はよくあるようです。また、Web広告研究会主催のセミナーでも大賞やWeb人 of the yearの受賞者に講演依頼をさせていただくこともあります。
今後もより賞自体の知名度を上げていって、業界全体から貢献している人材を表彰していきたいと思っています。
●編集部 Web広告研究会では、毎年のテーマを掲げていますよね。たとえば2008年は「ネット活用多様化新時代」と位置づけています。そのテーマとWeb人に選ばれる人は関係しているのでしょうか?
●森下 はい、毎年2月のフォーラムで、「Web研宣言」を発表しています。アウォードの審査でも、その年の「宣言」を意識してはいますが、あくまでの一般からの推薦ありきですので、審査の「条件」になるほどではありません。ただ、結果的に贈賞者のバランスは、その年の宣言と乖離しないような結果になっていますね。
●編集部 すでに2008年の推薦・投票は終わって受賞者が発表され、あとは授賞式で各賞が発表されるのを待つ状態ですが、2009年(または今後)のWebクリエーション・アウォードにはどのような変化や動きがあると思われますか?
●森下 ウェブの世界はまだまだ発展していくでしょうし、激しい変化も続くと思われます。
審査方法や審査基準といった運営方法は、その時々の時流に合ったものに変化していくと思いますが、「人」にフォーカスするという本質は変わらないと思います。
常に謙虚によりウェブの発展に貢献できる賞をめざして努力していきたいと思います。
●編集部 最後になりますが、Webクリエーション・アウォードを主催しているWeb広告研究会について、改めてご紹介いただけますでしょうか。
●森下 Webクリエーション・アウォードを主催しているWeb広告研究会は、1999年4月に当時の日本広告主協会(現在の名称は「日本アドバタイザーズ協会」)のディジタルメディア委員会内の研究会を母体として発足した団体です。「インターネット広告に関わるすべての関係者の情報交流の場」として、インターネット上の広告展開におけるさまざまな課題について、広告主と関連企業・団体(広告会社、メディアレップ、媒体社、調査会社、システム提供会社など)が共通の場で研究活動を行うことにより、インターネット上の広告の健全な発展を促進することを目的としています。
いわば、業界の枠を超えて、ウェブ広告・マーケティングに取り組むすべてのプレイヤーによる研究活動を行う実践の場です。実際には、活動の対象となるテーマはウェブ広告に限られておらず、たとえば「Webプロデューサー育成講座」や「企業ホームページ運営状況調査」のような、ウェブ一般のテーマに関する活動も行っています。
●編集部 ありがとうございます。
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