企業ホームページ運営の心得

長い文章は読まないという嘘。コンテンツを読ませるちょっとしたコツ

Web 2.0時代のド素人Web担当者におくる 企業ホームページ運営の心得

コンテンツは現場にあふれている。会議室で話し合うより職人を呼べ。営業マンと話をさせろ。Web 2.0だ、CGMだ、Ajaxだと騒いでいるのは「インターネット業界」だけ。中小企業の「商売用」ホームページにはそれ以前にもっともっと大切なものがある。企業ホームページの最初の一歩がわからずにボタンを掛け違えているWeb担当者に心得を授ける実践現場主義コラム。

宮脇 睦(有限会社アズモード)

心得其の四十五

ホームページでもっとも必要な力

近頃は動画共有サイトにセカンドライフのような仮想CG空間と「映像系」が花盛りです。ちょっと前までポッドキャストが「次世代」と呼ばれ喧伝されていました。ITとゲーム業界の「次世代型」や「新世代」は、世界陸上を中継する織田裕二さんの「この後すぐ」位の信頼性です。

動画共有サイトは、映画会社や制作会社のように「映像」をすでにもっている会社にとってはあらたな「チャネル」として魅力的ですが、いわゆる普通の会社の「商売用」としてはオススメできません。家庭用ハンディカメラの性能が上がっても、きれいな画像と「作品」は別物だからです。音声も同じです。

商売用ホームページに必要な力に優先順位をつけるなら、それは「文章力」です。映像や音楽は二の次です。

とても基本的なことですがホームページ制作の解説書で欠けているのが不思議です。

長い文章を読まない人の正体

制作業者でも平然と語る「長い文章は読まない」というのは大嘘です。正しくは「読まない層がある」です。

長い文章を読まないという人を取材してみると「長文を見た時点で嫌になる」といいます。そして読書について尋ねると「書籍」はほとんど読まず、マンガを除けばスポーツ紙やファッション誌程度と答えます。続けて電化製品などの取扱説明書も「読まない」と即答です。

長い文章を否定するのは、そもそも「文章が苦手な人」という可能性が高いのです。老眼で小さい文字が読みづらいという方を除けば、私の取材では単純に「文章読むことが嫌いな人」と見事に重なりました。

以前「電話サポート」をされている方の覆面座談会の記事に「クレーマーほど取扱説明書を読んでいない」とありましたが、文章読解力との関連を想起してしまいます。もっとも取扱説明書ほど難解な文章もありませんが。

中身という長短とは別の問題

短い文章が「読みやすい」のは単純に字数が少ないという理由もあります。

「長いのと短いのどっちがいい」と尋ねられた際に、短い方が全体を評価をしやすいことから「読みやすい」に答えが偏るということです。

それに評論家や編集者、それに学校の先生でもない限り文章の評価を下せる人は多くないのです。

ホームページには多くの人が「検索」して訪れます。何かを知りたくて、探してやってきます。そこには煩わしい歩合販売員もいなければ、背後をとるハウスマヌカン(死語?)もいないのですから気兼ねなく滞在していきます。

自分の望む情報があれば、文章が長くてもじっくり読んでいきます。決して長短で判断しません。わざわざ探して来てくれる人は長短ではなく「中身」で評価を下すものです。

グイグイ読ませるささやかな技術

中身が肝心とはいえ、見せる工夫が必要ないとはいいません。ここで長文に引き込ませるテクニックを紹介します。

  1. 見出しに答えを書く
  2. ダイジェストを用意する
  3. 3~4行で改行

ささやかすぎて技術と呼ぶには恥ずかしいのですが、この3点で読み進められる確率が高くなります。

ようやく辿り着いた訪問者には「答え」を示して知的満足を満たしてあげます。文章の醍醐味でもある「論を重ねる」は後回しです。

見出しを読み興味をもった方用には「ダイジェスト」を用意します。答えと前後の抜粋でokです。

こまめな改行はネット文章の基本中の基本ですが、本コラムの表題である「ど素人」向けに明示しておきます。

5W1Hの楽ちんな使い方

報告書を書く際の基本と教わったのが5W1Hです。「Who(誰が)、What(何を)、When(いつ)、Where(何処で)、Why(どうして)」に、「How(どのように)」を加えることで説明しやすい文章になるというものです。

実際に意識して書ける人は希で、「チェックの時に使う」と楽ちんに活用できます。

思いつくままに文章を綴り、その後に5W1Hが入っているかをチェックしするのです。「誰が」が足りなければキャラクターを明示し、「いつ」が足りなければ時間を特定します。5W1Hで具体性が増し、それにより信憑性があがります。

思いこみの強くなる「体験談」で使うと「客観性の担保」を作り出すことができます。

聞け! セールスマンの愚痴を

文章の為の「ネタ」に困れば営業マンに日頃の活動を尋ねてください。コンテンツは現場にあります。

日頃「リアル」の客と接している営業は、客の要望、不満、クレームを知っています。ホームページの訪問者も客です。営業の体験や愚痴を使うだけで「提案」や「FAQ」のできあがりです。

私の営業時代の体験から1例を紹介します。

セット商品の一部はいらないから値引きしろという客がいました。「できません」と返答するのは簡単ですが、芸のない話です。そこで笑顔と共に次のように提案しました。

これからマクドナルドに一緒に行きましょう。そこでセットメニューを注文してポテトはいらないから値引きしろと交渉してみてください。値引きしてくれたら私も値引きします

これで納得しました。客には色んな人がいます。色んな人と応対する「ネタ」を営業マンはもっているのです。

身内チェッカーの活用

どれだけ言葉を費やしても完璧なものはできません。

しかし、近づける作業は必要です。そこで役立つのが「身内チェッカー」です。

コンテンツができたら近親者に見せてください。恋人でも友人でも兄弟でも両親でも結構です。身内に読み聞かせます。すると……これはやってみるとわかるのですが、「文面にないフォロー」をしてしまう自分に気がつくでしょう。句読点ごとに、専門用語について、誤字を見つけるたびに。

社内の人間には「阿吽」で伝わることが部外者には伝わらないことを思い出させてくれます。

仕事に関係のない人なら誰でもいいのですが、「わからない顔をしていることがわかる身内」によって、よりチェックがしやすくなり、コンテンツをより良いものにできるのです。

文章は地味な基礎体力、そして優先順位の一番上です。

♪今回のポイント

文章の長短が障害となることはない。

5W1Hと身内の活用でホームページの基礎体力を大幅アップ。

※Web担編集部よりお知らせ
ミックの通販支援ブログで6月に「ビリーズブートキャンプに見る本当の伝え方」を連載し、上半期の人気上位4位を独占した宮脇氏が11月14日にまたまた連載を開始します。

今回は、「知らないあなたは損している。ネットビジネス表の話、裏の話(仮)」(現在予告編を公開中)と題し、全8回の連載を予定。現場でしか見えてこない現実と商売のギャップ、裏話など、現場に在り続ける宮脇氏ならではのリアルな内容から商売のヒントが見えてきます。

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