コンテンツは現場にあふれている。会議室で話し合うより職人を呼べ。営業マンと話をさせろ。Web 2.0だ、CGMだ、Ajaxだと騒いでいるのは「インターネット業界」だけ。中小企業の「商売用」ホームページにはそれ以前にもっともっと大切なものがある。企業ホームページの最初の一歩がわからずにボタンを掛け違えているWeb担当者に心得を授ける実践現場主義コラム。
宮脇 睦(有限会社アズモード)
心得其の弐十九
ホームページの更新は宿命
情報には太陽が東から昇るという普遍的なものから、鮮度が命のものや、状況で変化していくものがあります。たとえば「ウィンドウズ95徹底解剖」を最新コンテンツとするのは痛いですし、「SEOはグーグル対策でOK」は今では使えません。また、20世紀末に席巻した「フレーム構造」も今や昔のことですし、サイトのデザインもディスプレイの大型化に足並みを揃えます。
商売用ホームページは(比率は考え方次第ですが)情報とデザインで1つのコンテンツで、常に時代とともに「更新」しなければなりません。ちなみに、スタンダードなデザインで普遍的な情報だけのサイトが人を集めるのは不可能に近く、商売用としては論外です。
とはいっても「ビジネスブログの不都合な真実」で指摘したように更新し続けるのは簡単ではなく、工務店の「社長日記」だったはずが、数週間で「育児日記」になるなど、迷宮に迷い込むこともあります。
そこで今回は迷宮を避け、更新を習慣化するコツと、習慣化の先に待っている「旨味」のお話しです。
BtoBの更新は取りこぼしの防止策
物販のないBtoBサイトの場合、更新が疎かにされることが少なくありません。
典型的なBtoBビジネスの物流の「ライフサポート・エガワ」はコンビニ物流で高いシェアを誇っています。昨年来、定期的なサイト更新を始めてから、商談の席で自社サイトが話題に上がるようになったと社長の江川哲生氏は語ります。
実は取引先は、新たな取引拡大を狙って受発注先のサイトをチェックしているものなのです。
いつまでも更新されていなければ、わざわざお越し頂いている「見込み客」の足が遠のき、取りこぼしてしまうかも知れません。この取りこぼしを防ぐためにもBtoBサイトでも「更新」が必要なのです。
LOHASの持続可能を拡大拝借
「LOHAS(Lifestyles of Health and Sustainability)」は、「健康と環境、持続可能な社会生活を心がける生活スタイル(NPOローハスクラブのホームページより)」ということだったのですが、最近では拡大解釈され、環境への取り組み自体を「続けられる」と用いられることが増えています。無理して環境問題と向き合うのではなく、自分ができる範囲からやっていきましょうという解釈です。
環境問題は1回のお祭りより毎日の習慣が大切だということでしょう。「更新の習慣」もこの拡大解釈を拝借します。
更新も続けられる方法で取り組みましょう。毎回企画会議を開いて更新するのではなく、「持続」できることから始めてみるのです。
社内報で持続可能な更新習慣を
習慣づけするには余計な手間を省きます。写真が足りない、原稿が揃わないという手間は更新をサボる「言い訳」の格好の材料となるからです。
そこで、社内報を「公開」します。最近の社内報はワープロソフトなどで作られていることが多いので、デジタルデータのホームページへの転用は簡単で手間が省けます。月刊、季刊など発行頻度はそれぞれでしょうが、「持続可能」な更新に最適です。
社内報が「コンテンツ」になるというと驚かれるのですが、社内運動会なら「結束力のアピール」となりますし、部内のボーリング大会でも「楽しい職場」として求人コンテンツとなります。
社内向けのものでも外部の「誰かに」焦点を合わせると生まれ変わります。これを「切り口」と呼びます。
切り口を覚える練習材料としても「社内報」は重宝します。
迷宮入りを防ぐための日々の活動
社内報がなければ営業日報や週報でも日々の雑感でもOKです。社外秘の営業成績などは「●●」と伏せ字でOKですし、手書きの営業日報でもワープロ打ちするだけで済みます。
社内報で更新しましょうというのも種を明かせば「なぁんだ」なのですが、そもそも社員の活動はすべて「利益追求」のためにあり、社内の行動は利益を生むものなのです。これは経理でも総務でも切り口次第です。
前述の「ライフサポート・エガワ」の更新情報は、社内のクラブ活動から社会貢献までさまざまです。そして、商談で話題となりコミュニケーションを潤滑にしています。非合法活動をしている会社でなければ、日々の活動はすべてコンテンツになります。
社内報や営業日報といった日々の活動に沿うことで「迷宮入り」を避けることができます。
迷子になるのは「ネタ切れ」が理由ですが、異動、昇進、新製品、新規取引などなど日々の業務にネタ切れはないのです。もし、「ネタ切れ」していたとしたら……ホームページの更新をしている場合ではありません。
コンテンツはリサイクルの優等生
更新を続ければ必ず「反応」があります。取引先から見てるよと言われたり、お会計の際に「ホームページ見たわよ」とおばちゃんに話しかけられたりと「ネット以外」が多いのも商売用の特徴です。
その頃になると自社のサイトが雑多なコンテンツの集まりに感じることがあります。ここからが「旨味」です。雑多なコンテンツは整理すると、密度の濃いコンテンツに「リサイクル」できます。
デジタルデータは磨り減りません。最新情報は時が経てば「歴史」というコンテンツにリサイクルできます。Windows95も、98、Me、XP、ビスタと続けていればOS史ですし、同時にトラブル対策日記を更新していれば、一級の資料としてリサイクルできるのです。
社内報の「社内安全表彰」をまとめれば「信頼の証」というコンテンツに、営業日報のトラブル対策だけを集めて「トラブル対策Webセミナー」とすればセミナービジネスに参入するきっかけになるかもしれません。
更新の習慣化に成功した人は、情報がリサイクルの優等生だという「旨味」を知っています。だからホームページ関係で商売をしている人は「更新しなきゃ」というのです。
本末転倒のようですが更新の旨味は「習慣化」を身に付けるのが最短距離です。
♪今回のポイント
情報はもっともリサイクルしやすい資源。
習慣化しないとわからない旨味。続けたから味わえる味。
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