ここに注目! Web 2.0ケーススタディ

Web 2.0ケーススタディ/YouTube

YouTube(ユーチューブ)

世界中のおもしろ動画が集まる最強の動画サイト

URL: http://youtube.com/
提供元:米YouTube社
Web2.0度:★★★☆☆

林 信行
ITジャーナリスト

サービスの概要/特徴

  • 動画共有サービス
  • 「毎日、世界中から600万のユーザーがアクセスし7000万の動画を再生」、「1日2億ページビュー」(YouTube公表)
  • 日本からのアクセスは212万人(2006年3月、ネットレイティングス発表)
  • 1日のべ330億ユーザーがアクセス(Alexa調べ)
  • 1ユーザーあたりの閲覧ページ:約10ページ(Alexa調べ)
図1 YouTubeの画面インターフェイスの解説

次から次へとおもしろ動画が見つかる仕組み

YouTubeは、今もっとも人気のある動画サイトだ。日本語化されていない、英語だけのサービスとしては異例だが、日本でも驚くほどの人気を誇っている。

同様の動画ホスティングサービスは、これまでにもいくつもあった。そうした中で、YouTubeの人気だけが際立って高いのは、まさにWeb 2.0的サービスだという理由からだ。

同サービスを使ってみてまず驚かされるのが「おもしろい動画が見つけやすい」ことである。ちょっと使っているうちに、次から次へとおもしろい動画を見つけてしまって、ついついやめられなくなる。

作品をサムネール画像(映像中の1コマを切り取った静止画)で紹介することまでは、他のサービスでもやっている。だがYouTubeでは、このサムネールをひと回り小さくし、その分、1画面により多くの項目を表示するようにしている(図1)。これは、ページを切り替えずに、「好みに合いそうな」動画と出会えるチャンスを増やす効果がある。

「Video」というタブをクリックすると、さらにすごい。「Most Recent」(最近追加されたもの)、「Most Viewed」(視聴回数が多いもの)、「Top Rated」(評価が高いもの)、「Worst Rated」(評価が悪いもの)など、8種類のカテゴリーで動画が表示される。

YouTubeを頻繁に利用する中毒ユーザーは、「Most Recent」で誰よりも先に新着動画をチェックしている。

おもしろい動画はブログや掲示板でも話題になり視聴数が増える。「Most Viewed」をクリックすれば、どの動画が注目されているかが一目瞭然だ。ただし、単純に視聴数だけだと中身のない一発芸的動画や色っぽいサムネールのコンテンツがランクインしやすい。そこで本当に質の高い動画を探している人は、ユーザーから高い評価を得ている「Top Rated」を探すと効率がいい。逆に評価の低い動画にも、それはそれで別の面白さがある。

それぞれのカテゴリーについて、さらに期間を限定できる点も使い勝手を高めている。同じ「Most Viewed」でも、今日1日で一番アクセスが多かったコンテンツ、過去1週間、過去1か月、スタート以来と対象期間が選べるようになっている。1週間程度だと、まだ一発芸的なコンテンツが上位に残るが、1か月以上アクセスが多いコンテンツには、それなりの中身があることが多い。

ユーザーが増えれば増えるほど便利になる仕組み

ユーザー投稿型のウェブサイトは、一度、軌道に乗るとどんどんコンテンツが集まり始める。重要なのはそこからだ。

集まる情報量がある程度以上になったとき、視聴ユーザーが「いかにおもしろい情報に出会えるか」で、サービスへの愛着が大きく変わってくる。そこで重要なのが、出会うための道筋を多く用意することだ。コンテンツ投稿者が提供するタイトルや説明書きが何よりも重要なのはもちろんだが、それに負けず劣らず重要なのが、それらを見た視聴者の反応だ。

視聴者の数や1ユーザーあたりの視聴頻度、他のサイトからのリンク数、視聴者による評価、コメントの数の多さなど、こうした反応のすべてがコンテンツの善し悪しを判断するための重要な客観的統計データだといえる(図2)。これらをいかにわかりやすく、コンテンツに誘導する道筋として活用するかが、サービス設計者の腕の見せ所となる。

図2 コンテンツ選択後に現れる再生画面。同じ画面内には、作者や追加日、関連している他の動画、ユーザーの評価やコメントなど、情報が満載だ。

すぐれたインターフェイスと常に改善を続ける姿勢

YouTubeの画面は、一見するとごちゃごちゃしているようにも見えるが、画面の上から検索方法、検索対象、期間選定と、ユーザーが目的の情報を見つけ出すまでの流れを道筋に立ててシンプルにレイアウトしており、初めて使うユーザーでも直感的に操作できるようになっている(図3)。さらに、動画を扱っているにもかかわらず、操作時のストレスの少ない点や簡潔なインターフェイスも魅力の1つだ(図4)。また、動画を簡単にブログに貼り付けられるのもYouTubeの人気を高めた理由の1つ。動画とともに表示されるタグを貼り付けるだけで、自分のブログで動画コンテンツを公開できる(図5)。

動画サイトとしては不動の地位をまたたく間に確立したともいえるYouTubeだが、今後も有望であるように思える。なぜなら、YouTubeの運営者自身が、ユーザーの利用状況や動向、意見に耳を傾け、飽きることなく常に改良を続けているからだ。2006年の春には、積極的に質の高いオリジナルコンテンツを提供している人に「Director」(監督)として、ロゴマークなどを登録できるプログラムを開始した。これによって、見る側は「Director」マークの付いた作品に対して、ある程度の品質を期待できるようになった。

止まらず改良を続け、永遠に仕様が落ち着くことがない、というのもWeb 2.0的サービスの重要な特徴の1つである(Web 2.0用語で「永遠のベータ」などと呼ぶ)。

図3 「steve jobs」で検索した結果。コンテンツが膨大だと検索機能が重要になる。タイトルや説明文はもちろん、視聴者が付けたタグでも検索できる。
図4 YouTubeはアップロードもシンプルだ。要求される入力項目はたったの2画面分しかなく、すぐに動画をアップロードできる。
図5 YouTubeの動画は、ファイルをコピーしなくてもブログなど他のウェブページで簡単に引用できる仕組みになっている。ブロガーはブログのネタとして引用できて、YouTubeはトラフィックを自身のサイトに誘導できる。

※この記事は、『Web担当者 現場のノウハウ vol.1』掲載の記事です。

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