企業ホームページ運営の心得

スカスカおせちのうまれた背景。フラッシュマーケティング活用法(前編)

フラッシュマーケティングを販促として利用する場合の注意点やコツのを2回にわたりお届けします
Web 2.0時代のド素人Web担当者におくる 企業ホームページ運営の心得

コンテンツは現場にあふれている。会議室で話し合うより職人を呼べ。営業マンと話をさせろ。Web 2.0だ、CGMだ、Ajaxだと騒いでいるのは「インターネット業界」だけ。中小企業の「商売用」ホームページにはそれ以前にもっともっと大切なものがある。企業ホームページの最初の一歩がわからずにボタンを掛け違えているWeb担当者に心得を授ける実践現場主義コラム。

宮脇 睦(有限会社アズモード)

心得其の弐百弐

契約違反じゃないか

2011年冒頭、世間を騒がせたネットニュースは「フェイスブック」ではなく「スカスカおせち」。飲食店経営の「外食文化研究所」がグルーポンで通販した「謹製おせち」が、サイトに掲載していた写真と似てもにつかず、消費者庁が事情聴取に乗り出す騒動へと発展しました。麻木久仁子さんの不倫暴露で「ツイッター」を知った人が多いように、「グルーポン」の知名度向上には役立ったかもしれません。

大幅な値引きや、お得な条件を提示して短期間に利用者、購入者を集める仕組みをフラッシュマーケティングと呼び「グルーポン」はその1つです。商材によっては、薄利でも多くの客が購入すれば利益が望めますし、設定した人数に達しなければ販売中止もできます。また、申込時に「クーポン(券)」を購入する形で前払いするので、店側としては「とりっぱぐれ」がないのも魅力の1つとされています。

「スカスカおせち」については、後に述べますが、販促として利用する場合の注意点やコツを2回にわたりお届けします。

見切りと販促の違い

「フラッシュマーケティング」と聞いて「怪しい」と疑うのがWeb担当者のネットリテラシーです。それらしい言葉をもてあそぶことで小金をせしめる、業界人の影を疑うということです。「フラッシュマーケティング」とは「共同購入」に過ぎません。多くの客を集めることで安価に商品やサービスを入手できる「共同購入」とは、楽天市場においては古典的な販促方法で、リアルに目を向ければ各種「生協」の仕組みそのものです。そこに「新しい名前」という「レッテル」を貼りつけることで、革新的な何かと錯覚させるのはWeb業界人の営業手段です。

単純に商売用の「チャネル」が増えたと向き合うのが正解です。そこで、まず考えるべきは「見切り品」か「販促」かです。

ウサギを追うには

余った商品、余った時間をわずかでも現金化できればいい、というのが「見切り品」です。原価で販売しても、倉庫管理費と廃棄費用をカットし、資金回転率の低下を避けるのが目的ならサクサクと売り切ってください。ただし、最後に触れますが、グルーポンでの見切り販売は赤字を拡大させることもあります。

多くの企業がフラッシュマーケティングに取り組むのは「販促」としてでしょう。販促を成功させるにはストーリーが必要で、ここから小洒落た「イタリアンカフェ」を仮の舞台に話を進めます。

ちなみに、最悪なチョイスがあります。

見切りと販促の「両方」をとる

安いものに反応する客は自分の利益に敏感で、売れ残りを使って客を集めようという目論見は見透かされます。ことわざにすると「二兎を追う者は一兎をも得ず」。いくら今年の干支が「ウサギ」とはいえ、欲張りすぎは厳禁です。

もし、イタリアンカフェのマネージャーだったら

アイドルタイム(ランチとディナーの合間の暇な時間など)に格安メニューを提供して、店を知ってもらい、次回の来店を期待する……というのは皮算用であり妄想です。アイドルタイムに飲食できる会社員は、時間の融通がきく職場や職種が多く、日頃からランチタイムの混雑を避ける習性が身についています。また、安さにだけ釣られてアイドルタイムを選んで来店する客は、別の日には格安クーポンが使える別の店へ行くので、結果的に「割高なランチ」に足を運ぶことはありません。

グルーポンを使う以上、後者のような客の来店を排除することはできませんし、する必要もありません。自分の利益に敏感な客も「枯れ木も山の賑わい」というように、1つの舞台装置として割り切り、時間の融通が利く前者を「欲しい客」と見立てたストーリーを用意するのです。

混雑を嫌い、いつも遅めのランチを食べていた私。店も空いてていいわと思っていたけれど、こんな美味しいパスタランチがあったなんて。いままで知らずにいたけど……明日はきっとランチに来る

するとクーポンの施策はこうなります。

ランチタイム(11時30分~13時30分)限定コースを、14時から17時に試食できるクーポンを提供

常連客の気持ちを考えたならば

クーポン利用者限定で、ランチタイムメニューをアイドルタイムに提供します。各種クーポンサービスを見渡すと通常のメニューを単純に半額にしているものを見受けますが、販促として愚の骨頂です。単なる値引きですし、同じサービスを受けて「定価」を払っている「常連」がこのことを知れば、決して気持ちの良いものではありません。最悪、客離れをおこすでしょう。販促というのはきっかけに過ぎず、次の売り上げにどうつなげるかが重要で、あらかじめその「次」を考えるのが「ストーリー」というわけです。これについては、次回さらに掘り下げます。

そして最も大切なことが「予算」です。ストーリー展開から見込める利益を逆算して、販促費として投じられる金額を設定します。仮に10万円の利益が見込めるとして、いくらまでクーポンとして提供できるかを計算しないと「スカスカおせち」が生まれます。

スカスカおせちの真相

台所事情はわかりませんが、「スカスカおせち」提供企業による説明では、おせちのつめこみに時間がかかりすぎたとありましたが、「予算」には人件費も含まれております。10セットや20セットといった単位で「テスト」をした時間を、目標個数で割り算し、ギリギリが予想されるなら、増員して対応しなければなりません。もちろん、具材や調理人、調理器具の有無も「予算」から逆算します。一説によるとクーポンを発行するための一般的な手数料は「50%」です。すると定価1万円の商品を50%オフで提供すると、クーポン発行会社の取り分は定価の25%となり、店に落ちるお金は2,500円です。単純に考えると、ここから材料費を除いた残りが「予算」ということです。

予算がみえると前述の「見切り」の注意点が浮かび上がってきます。つまり「原価」での販売は、原価の半分を手数料として徴収されるので、その分が赤字になるということです。

次週、さらに踏み込みます。

今回のポイント

フラッシュマーケティングで成功する鉄則は「予算管理」。

そして販促は入り口に過ぎない。

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