ネットショップ担当者フォーラム

中国EC大手2社で5兆円を売った「独身の日」2017年の振り返り&2018年の展望

7 years ago

ネット通販の買い物の祭典「独身の日」(W11、ダブルイレブン)が間もなく中国で始まる(厳密には、JD.comは11月1日からキャンペーンをスタート)。2017年は中国大手ECサイト2社の合計取扱高だけで2953億円(5兆201億円、1元17円換算)に達した。2018年11月11日の「独身の日」を前に、2017年の状況を振り返る。

【2017年】アリババは2.8兆円、JDは2.1兆円の取扱高

アリババグループが2017年11月11日に記録した取扱高は1682億元(日本円で約2兆8594億円、1元17円換算)。伸び率は39.3%。

アリババグループの「独身の日」における取扱高(流通総額)は、過去最高となる1682億元(日本円で約2兆8594億円、1元17円換算)
1682億元の取扱高を記録したアリババグループ(画像はアリババ運営のAlizilaからキャプチャ)

直販EC最大手であるJD.comの取扱高は1271億元(日本円で2兆1607億円)。2016年は401億元だったため、前年比約3倍と躍進した。

JD.comの「独身の日」キャンペーンの取扱高は1271億元(日本円で2兆1607億円)
1271億元の取扱高を記録したJD.com(画像はJD.com提供)

両社は「独身の日」キャンペーンを展開しているものの、セールの仕組みはそれぞれ異なる。アリババは11月11日の約1週間前から予約注文を開始し、「独身の日」当日に決済を行う仕組み。また、前日などに買い物カゴへ商品を入れておいたまま、「独身の日」に決済するという消費者も多いという。

その結果、11月11日の「独身の日」当日に決済が集中するため、スタート当初にアリババグループの取扱高は急拡大する。

一方のJD.comは11月1日~11日を「独身の日」キャンペーン期間と設定。その11日間に決済された金額が取扱高となる。

「独身の日」キャンペーンの取扱高、JD.comは1271億元(日本円で2兆1607億円)、アリババグループの取扱高(流通総額)は、過去最高となる1682億元
アリババグループと「JD.com」を運営する京東集団の「独身の日」における取扱高推移。JD.comの2015年以前の数値は不明。アリババグループの実績を円ベースに換算すると、2015年は1兆7328億円(1元19円換算)、2014年は9707億円(1元17円換算)、2013年は5600億円(1元16円換算)、2012年は2483億円(1元13円換算)、2011年は408億円(1元12円換算)、2010年は117億円(1元13円換算)、2009年は7億円(1元14円換算)。*レートは年平均の為替レートを採用(画像は公開資料、提供情報を元に編集部が作成)

2017年の国別取扱高は日本がトップ

ここからは、アリババグループの「独身の日」における実績を見ていきたい。

アリババの発表によると、国別の取扱高ランキングで日本は1位、2位はアメリカ、3位はオーストラリア。取扱高の上昇率ランキングでは1位がシンガポール(240%)、オーストラリアが2位(130%)、日本は3位で112%。

1)日本 2)アメリカ 3)オーストラリア
国別取扱高ランキング(アリババの発表を元に編集部で作成)
1)シンガポール 240% 2)オーストラリア 130% 3)日本 112%
取扱高上昇率ランキング(天下网商の発表を元に編集部で作成)

日本企業の取扱高ランキングは、1位が花王、2位はmoony(ユニチャーム)、3位は雅萌(ヤーマン)、4位はrefa(MTG)、5位はutena(ウテナ)。

◇◇◇

アプリ市場の調査などを手掛けるApp Annie(アップアニー)は、2018年の「独身の日」において、アリババグループの取扱高は320億ドル(約3兆6000億円、1ドル=113円換算)を突破するとの予測を公表している。

2018年で10回目を迎えるアリババグループの「独身の日」は、中国と世界各国から18万のブランドが参加。「天猫国際(Tmall Global)」には75か国・地域から3700種類の商品が販売されるという。

アリババグループで東南アジアの大手EC会社Lazadaは、シンガポール、マレーシア、タイ、インドネシア、フィリピン、ベトナムの6か国で初の「11.11ショッピングフェスティバル」を開催する。

App Annie(アップアニー)は11月8日、中国で毎年11月11日に開かれるECの大規模セール「独身の日」において、今年はアリババグループの取扱高が320億ドル(約3兆6000億円、1ドル=113円換算)を超えるとの予測を公表
「独身の日」におけるアリババグループの取扱高推移と予測

「JD.com」を運営する京東集団は、創立記念セール「京東618」で、6月1日~18日までの取引額は1592億元(約2.7兆円、前年比32.8%増)を記録た。2017年の「独身の日」では驚異の成長率を記録したJD.comがどれだけ取扱高を伸ばすことができるか。

11月11日の大規模セールは2日後に始まる。

瀧川 正実

ネットショップ担当者フォーラム編集部 編集長

通販・ECに関する業界新聞の編集記者、EC支援会社で新規事業の立ち上げなどに携わり、現在に至る。EC業界に関わること約13年。日々勉強中。

瀧川 正実

アリババ「独身の日」は3.6兆円を1日で売り上げると予測、アプリデータのApp Annie

7 years ago

アプリ市場の調査などを手掛けるApp Annie(アップアニー)は11月8日、中国で毎年11月11日に開かれるECの大規模セール「独身の日」において、今年はアリババグループの取扱高が320億ドル(約3兆6000億円、1ドル=113円換算)を超えるとの予測を公表した。

取引高の大部分はモバイル経由になると予想している。

App Annie(アップアニー)は11月8日、中国で毎年11月11日に開かれるECの大規模セール「独身の日」において、今年はアリババグループの取扱高が320億ドル(約3兆6000億円、1ドル=113円換算)を超えるとの予測を公表
「独身の日」におけるアリババグループの取扱高推移と予測

2017年の「独身の日」におけるアリババの取扱高は252億ドル(約2兆8000億円)だった。アップアニーの予測通りになれば、取扱高は前年の1.2倍以上に拡大することになる。

アリババが「独身の日」のセールを開始したのは2009年。初年度の取扱高は760万ドル(約8億円)だった。2017年までの8年間で約3600倍に急増している。

世界中でショッピングアプリのダウンロードが増加

アップアニーによると、2017年の「独身の日」に世界でダウンロードされたショッピングアプリは270万件を超え、1年で最も多かったという。

また、「独身の日」とその前後数日間におけるショッピングアプリの日次ダウンロード数は、中国、英国、米国をはじめ、全世界でほぼ1位か2位だったとしている。

こうしたトレンドについてアップアニーは、次のように指摘している。

注目すべきは、独身の日前後の期間に米国と英国でダウンロード数が急増しており、アリババの「独身の日」セールが世界に拡大していることです。

また、2017年の「独身の日」における、アリババが海外向けに展開しているBtoCマーケットプライスのショッピングアプリ「AliExpress」のダウンロード数は、米国におけるiOSとGoogle Playを合わせたショッピングアプリダウンロード数で同日2位のアプリを300%上回ったという。

渡部 和章

ライトプロ株式会社 代表取締役

渡部 和章(わたなべ・かずあき)

新聞社で約7年半、記者を務めた後、2015年に編集プロダクションのライトプロを設立して代表に就任。編集者兼ライターとしても活動中。

趣味は料理と漫画を読むこと。東京都在住。1983年生まれ。

渡部 和章

通販商品の当日、早朝・夜間受取りができる配送サービス、ディノス・セシールが都内23区でスタート

7 years ago

ディノス・セシールは11月6日、「ディノスオンラインショップ」において夜間や早朝の配送を東京23区で開始した。午前6時~9時と午後9時~深夜0時の間で、配送時間を1時間ごとに指定できる。午前4時までの注文は、当日午後9時以降に商品を届ける。

届け先の選択画面で「早朝・夜間便を利用する」にチェックを入れ、早朝や夜間の時間指定を行う。

ディノス・セシールは「ディノスオンラインショップ」において夜間や早朝の配送を東京23区で開始
ディノス・セシールが始めた配送サービス(画像は編集部がキャプチャ)

早朝・深夜配送の対象商品は以下の通り。

  • 1回の注文につき合計5万円以内
  • 小物配送・中物配送の一部商品
  • 常温で配送する商品

有料開梱設置サービス・有料組み立てサービス・大物商品無料引取サービスは対象外。

早朝や深夜の配送は、ソフトバンクグループのMagicalMove社の宅配サービス「Scatch!」を利用している。MagicalMoveによると、「ディノスオンラインショップ」で早朝・深夜の配送を指定した場合、配送開始後に「Scatch!」のマイページで配送車両の位置情報を、地図上でリアルタイムに確認できるという。

「Scatch!」はこれまで、靴やファッションのECサイト「LOCONDO.jp」、バイクのECサイト「Webike(ウェビック)ショッピング」、日用品ECサイト「LOHACO(ロハコ)」などに採用されている。

ディノス・セシールは「ディノスオンラインショップ」において夜間や早朝の配送を東京23区で開始。ソフトバンクグループのMagicalMove社の宅配サービス「Scatch!」を利用
「Scatch!」に会員登録すると、PCやスマホから配送状況確認などができる(画像は編集部がキャプチャ)

渡部 和章

ライトプロ株式会社 代表取締役

渡部 和章(わたなべ・かずあき)

新聞社で約7年半、記者を務めた後、2015年に編集プロダクションのライトプロを設立して代表に就任。編集者兼ライターとしても活動中。

趣味は料理と漫画を読むこと。東京都在住。1983年生まれ。

渡部 和章

ソフトバンクとストライプの合弁会社が「Yahoo!ショッピング」に出店

7 years ago

ストライプインターナショナルは11月7日、ソフトバンクと共同で立ち上げたファッションECサイト「STRIPE DEPARTMENT(ストライプデパートメント)」がYahoo!ショッピングに出店したと発表した。販売チャネルを拡大し、新規顧客の獲得をめざす。

「STRIPE DEPARTMENT(ストライプデパートメント)」は、ストライプインターナショナルとソフトバンクの合弁会社であるストライプデパートメント社が運営している。2018年2月にECサイトを開設。現在は「SONIA RYKIERL」や「NINA RICCI」など約800ブランドを取り扱っている。

スタイリストが顧客の要望に合わせて商品を提案する「パーソナルスタイリング」や、商品を自宅で試着後、気に入った商品だけを購入できる「試着サービス」などを提供している。

「STRIPE DEPARTMENT Yahoo!店」では約600ブランドを販売。Tポイントやソフトバンクのスマホユーザー特典も提供している。

ストライプインターナショナルは11月7日、ソフトバンクと共同で立ち上げたファッションECサイト「STRIPE DEPARTMENT(ストライプデパートメント)」がYahoo!ショッピングに出店
Yahoo!ショッピングに出店した「STRIPE DEPARTMENT(画像は編集部がキャプチャ)

ストライプインターナショナルによると、今後もソフトバンクグループとの連携を強化し、ソフトバンクのテクノロジーと顧客基盤、ヤフーのプラットフォームと集客力、ストライプデパートメントの品ぞろえとサービスによって、より多くの顧客に快適で豊かなショッピング体験を提供するとしている。

渡部 和章

ライトプロ株式会社 代表取締役

渡部 和章(わたなべ・かずあき)

新聞社で約7年半、記者を務めた後、2015年に編集プロダクションのライトプロを設立して代表に就任。編集者兼ライターとしても活動中。

趣味は料理と漫画を読むこと。東京都在住。1983年生まれ。

渡部 和章

日本生協連の個人向け宅配供給高は1兆2607億円、ネット受注は2920億円[2017年度]

7 years ago

日本生活協同組合連合会(日本生協連)はこのほど、全国の主要な地域生協による「個配」(個人宅への宅配事業)の2017年度の供給高は前年度比2.9%増の1兆2607億円だったと発表した。

「個配」の供給高は2015年度が1兆1873億円、2016年度が1兆2257億円。

2018年度も個配事業は引き続き好調だ。2018年4月以降、月ごとの個配供給高の前年同月比は2.5%増(4月度)、3.4%増(5月度)、1.8%増(6月度)、3.2%増(7月度)、4.7%増(8月度)と、すべての月で前年同月実績を上回っている。

2017年度の宅配事業全体の供給高は、同1.0%増の1兆7909億円だった。

ネット経由の注文は年間約3000億円規模

インターネット経由での注文獲得も強化している。

第67回通常総会議案書参考資料によると、2017年度の宅配事業におけるネット注文は前年比8.2%増の2920億円。登録組合員は338万人(同約5%増)、週ごとの利用人数は平均107万人(同約10%増)だった。

日本生活協同組合連合会(日本生協連)の宅配事業におけるネット注文売上の推移
宅配事業におけるネット供給金額推移(画像は『第67回通常総会議案書参考資料』から編集部がキャプチャ)

ネットスーパー事業は4会員生協の8店舗で行っており、2017年度の供給規模は約9億円だった。

日本生協連はインターネット経由の注文を増やすため、独自商品の企画や独自プロモーションの推進、スマホ活用などを続けているという。

渡部 和章

ライトプロ株式会社 代表取締役

渡部 和章(わたなべ・かずあき)

新聞社で約7年半、記者を務めた後、2015年に編集プロダクションのライトプロを設立して代表に就任。編集者兼ライターとしても活動中。

趣味は料理と漫画を読むこと。東京都在住。1983年生まれ。

渡部 和章

米国ECのシェア5割を占めるAmazon。DtoCブランドがアマゾンと協業すべき理由 | 海外のEC事情・戦略・マーケティング情報ウォッチ

7 years ago

Amazon(アマゾン)は、競合他社を出し抜こうと学ぶ向上心の高いブランドに対して、非常に魅力的な広告プログラムを提供しています。DtoCブランドも例外ではありません。アマゾンが対応できていないユニークな商品を提供してくれるブランドならなおさらです。

新しいDtoC(Direct to Consumer)ブランドが、アマゾンとの取り組みを始めたくない理由は理解できます。巨大で、なんでも販売しているアマゾンは、ほとんどのスタートアップが提供する特別でパーソナルなブランド体験とはかなり趣が異なるでしょう。さらに、DtoCビジネスのスタートアップの多くが、アマゾンは競合になるのではないかと心配しています。

実際、アマゾンが独自の機会を提供するプラットフォームなったため、グーグルから離れて、アマゾンをより活用しようとする企業も増えています。しかし、DtoCブランドはチャンスを見逃しています。

アマゾンは小売事業者のチープなカスタマーエクスペリエンスとは異なるものを提供していますし、アマゾンの新しい広告メニューを利用すれば、目利きのメディアバイヤーがすばらしい結果を達成できるのです。

アイデアの盗用を心配するよりも儲ける方が賢明

多くの小売スタートアップ企業は、競争を心配していますが、アマゾンに関しては考え方を変える必要があります。アマゾンは、何百万もの商品を販売すると同時に、76ものプライベートブランドの商品も売っています。アマゾンは、大きな市場において収益の機会があるとわかれば、競争を仕掛けてきますが、とりあえずはアマゾンの動向に関係なく、アマゾン内で収益を上げる方が賢明なのです。

DtoCブランドを検索すると、アマゾンでは販売していないブランドをターゲットにしている小売事業者がたくさん出てきます。“Warby Parker”(編注:米国発のメガネブランド)と検索したら、10ドルのコピー商品から、競合他社のデザインまで表示されるでしょう。

アマゾンを無視することは、小売の重要な部分と広告機会を無視することと同じなのです。ゴールドマンサックスのレポートでは、オンライン通販利用者、特にミレニアル世代の男性にとって、アマゾンは最初に訪れるサイトで、どのカテゴリーでも、「最も好きな購入場所」にランキングされています。

そして、94%のオンライン通販利用者はアマゾンで買い物しています。これは米国全体のオンライン小売売上の49%にものぼります。速さと利便性を求める人が多く、DtoCブランドも同じような消費者層にリーチしたいのであれば、消費者が集まっているところに出向いていく必要があるのです。

全米の小売事業者のECシェア。米国全体のオンライン小売売上の49.1%をアマゾンが占める(編注:eMarketerの資料を編集部がキャプチャし追加) https://www.emarketer.com/Chart/Top-10-US-Companies-Ranked-by-Retail-Ecommerce-Sales-Share-2018-of-US-retail-ecommerce-sales/220521

ブランドはエクスペリエンスをコントロールできる

アマゾンのボロボロの箱で商品が届いたら、カスタマーエクスペリエンスが台無しになってしまうと考えるブランドもあるでしょう。また、アマゾンの無駄を省いたサイトデザインや「スポンサー広告」や「ディスプレイ商品広告」など、一般的な広告フォーマットでは、ブランドを表現したり、コントロールしたりできないのも事実です。

ブランディングされたアプリには及びませんが、アマゾンの「ストアフロント」などを利用して、ある程度デザインに自由度を持たせているブランドも多く存在します。アマゾンは、ブランドのウェブデザインや管理を改善するために、「ストアフロント」を売り込んでいます。

サムスンが良い例で、ホームページに加えて、カテゴリーが違う商品ごとに別セクションが設けられています。すべてのブランドが利用しているわけではありませんが、アマゾンもブランドの意見を取り入れ、ブランドがウェブ管理をできるように、新しい機能を追加しているのです。

amazon.comのサムスンのストアページ。カテゴリー別の商品ページが並ぶ(編注:編集部がサイトをキャプチャし追加)

賢いブランドはアマゾン広告の恩恵を受けている

小売事業者向けの広告プラットフォームとして、アマゾンは何百万もの熱心な顧客と、膨大な在庫を持っています。バラエティに富んだサービスがなければ、小売事業者は自分たちでアマゾン内の広告方法を考えなければいけません。

アマゾンはプロセスを整理し、混乱がなくなるよう、様々な広告を見直すと発表しました。しかしまだ、成功事例を公表したり、サービス担当のスタッフを増やしたりするまでには至っていません。ですから、賢いブランドにとっては、今が大きなチャンスなのです。

お金が儲かるという確信はあるのでしょうか? Flywheel社のように、元アマゾン社員が立ち上げたアマゾンに特化した代理店が沢山でてきました。グーグル検索やアドワーズが出はじめた頃に検索広告代理店ができましたが、今ではもうブームの業界になっています。それと同じ現象が起きているのです。

アマゾンは競合他社を出し抜こうと学ぶ、向上心が高いブランドに対して、非常に魅力的な広告プログラムを提供しています。DtoCブランドも例外ではありません。アマゾンが対応できていないユニークな商品を提供してくれるブランドならなおさらです。

事業を拡大のタイミングこそアマゾンの出番

Casper(寝具ブランド)やHarry's(ひげそりブランド)といったDtoCブランドが、小売業界を揺るがしています。ベンチャーから多額投資を受け、コストのかかるデザインを展開し、顧客中心のサービスを提供することで、見た目とメッセージ性の両方を訴求できていない古いブランドよりも先を行っています。

しかし、優位な立場にいることは、ときとして危険です。今まで多くのDtoCブランドと関わってきましたが、ビジネスの初期段階から広告や戦略にこだわりすぎると、殻を破らなければビジネスを拡大できないと後から気づくのです。

アマゾンで販売したり、広告を出したりすることで自尊心が傷つくこともあるでしょう。注目を浴びるスタートアップにとっては、まるで自分を裏切っている気分になるかもしれません。

しかし、グーグルとフェイスブックの独壇場に食い込み、アマゾンは成長し、変化し続けています。成長期には、アーリーアダプターになることによって、他にはない機会に恵まれたり、アマゾンの将来のサービスに影響を与えられるかもしれません。

フェイスブックやグーグルのように、アマゾンには数百万の顧客がいます。アマゾンを無視すれば、競合のためにわざわざ道を開けているようなものです。

Internet RETAILER

世界最大級のネット通販業界の専門誌「Internet Retailer」は、雑誌のほか、Web媒体、メールマガジンなどを運営。Vertical Web Media社が運営を手がけている。

Eコマースの戦略に関し、デイリーニュース、解説記事、研究記事、電子商取引におけるグローバルリーダーをランク付けする分析レポートなどを発行している。

Internet RETAILER

ECモールに取引条件の開示・明示を義務付ける? 検討会で規律導入を求める声も

7 years ago

ECモールやSNSなど「プラットフォーマー型ビジネス」が台頭する中、必要なルール整備を進めている政府の検討会は11月5日、現在の課題や必要な政策などをまとめた「中間論点整理(案)」を公表した。

デジタル・プラットフォーマーと利用者(事業者および消費者)を巡る取引実態が不透明で、不公正な取引慣行の温床になる可能性があると指摘。独占禁止法を補完する形で、重要な取引条件の開示・明示をプラットフォーマー側に義務付けるなど、規律の導入を検討すべきとする意見などが盛り込まれている。

「中間論点整理(案)」に対するパブリック・コメントを募集し、事業者に対するヒヤリングなども行った上で、具体的措置の実施に向けて検討を進める。

検討会の名称は「デジタル・プラットフォーマーを巡る取引環境整備に関する検討会」。経済産業省と総務省、公正取引委員会が合同で2018年7月に立ち上げた。有識者による検討会を、これまで計7回開催している。

「中間論点整理」における7つの論点

「中間論点整理(案)」では、検討会であがった意見を7つの論点にまとめている。各論点の主な内容は次の通り。

論点1 デジタル・プラットフォーマーの意義・特性

「デジタル・プラットフォーム」には、オンラインショッピングモール、アプリマーケット、検索サービス、SNSなどが存在する。デジタル・プラットフォームが存在することで事業者が市場にアクセスしやすくなり、消費者にとって便利である反面、プラットフォーマーの独占化・寡占化が進みやすいとされている。

論点2 デジタル・プラットフォーマーに対する法的評価の視点

これまで、国内ではデジタル・プラットフォーマーは「単なる場の提供者(媒介者)」であり、積極的な責任は負わないと理解する傾向が強かった。しかし、近年は欧米ではプラットフォーマーに一定の規律を設けようという動きがある。

プラットフォーマーの以下の3つの特徴を踏まえ、環境整備のあり方を検討していく必要があるのではないか。

  • デジタル・プラットフォーマーは、社会経済に不可欠な基盤を提供している
  • 多数の消費者(データ提供者)や事業者が参加する市場そのものを、設計・運営・管理している
  • アルゴリズムによるプロファイリングなどを通じて、市場の操作性や技術的不透明性が高い

論点3 イノベーションの担い手として負うべき責任の設計(業法の在り方等)

既存の法律は、プラットフォーム・ビジネスを営む上での障害となっている可能性がある。同時に、プラットフォーム・ビジネスに対して適切にコントロールできていない可能性もある。以下の観点から、関連業法の見直しが必要ではないか。

  • 既存の業法が、守るべき社会的利益・価値の観点から、適切な規制を及ぼしているか。
  • デジタル・プラットフォーマーを一定のコントロール・ポイントとすることで、効果的な消費者保護や安全確保を図れるのではないか。
  • 既存事業者と新規事業者、国内事業者と海外事業者の間で、競争条件の同等性が確保されているか。
  • 信頼確保のため認証や監査等の手法を効果的に活用する制度設計の余地はないか。
  • 柔軟な共同規制の方法も取り入れることを検討してはどうか。

論点4 公正性確保のための透明性の実現

デジタル・プラットフォーマーと利用者(事業者および消費者)をめぐる取引実態が不透明であり、不公正な取引慣行の温床となる可能性がある。議論の出発点として大規模な調査を行い、継続性の専門組織を作ることも必要。

独禁法を補完するものとして、重要な取引条件の開示・明示をプラットフォーマーに義務付けるなど、取引慣行における規律の導入を検討する必要があるのではないか。

論点5 公正かつ自由な競争の再定義

デジタル市場における「公正かつ自由な競争」の再定義・再構築の必要性を検討すべきではないか。たとえば以下の論点にどう対応するか。

  • ネットワーク効果やデータ集積などが競争へ及ぼす影響をどのように評価するか。
  •  デジタル・プラットフォーマーが潜在的な競争相手の芽を摘むような形の企業結合について、どのように考えるか。
  •  経済的価値を有していると考えられるデータを提供し続けている消費者との関係で、優越的地位の濫用規制を適用することを考える必要もあるのではないか。
  • 違反行為の抑止のための適切なエンフォースメントについて、たとえば課徴金などの制度の在り方を検討していくことも必要ではないか。

論点6 データの移転・開放ルールの検討

データポータビリティやAPI開放といったデータの移転・開放に関するルールの要否や、その内容を検討していくべきではないか。欧米では個人が一定のパーソナル・データにアクセスできる仕組みある。

論点7 国際の観点

デジタル・プラットフォーマーの規律の在り方について国際的な協力が必要ではないか。 海外事業者に対して法令の実効性を持たせるなど、執行の仕組みについて検討を進める必要があるのではないか。

「未来投資戦略2018」の閣議決定受け検討会発足

デジタル・プラットフォーマーを巡る取引環境整備に関する検討会」は、政府が2018年6月に閣議決定した「未来投資戦略2018」おいて、プラットフォーマー型ビジネスの台頭に対応したルール整備を進める方針が定められたことを受けて今年7月に設置された。

検討会の委員は、大学教授や弁護士など15人。事業者は含まれていない。

経済産業省は、デジタル・プラットフォーマーをめぐるビジネスの実態把握などを目的に、オンラインプラットフォームを利用している事業者(個人を含む)に対するアンケートを実施。11月5日に結果を公表している。

渡部 和章

ライトプロ株式会社 代表取締役

渡部 和章(わたなべ・かずあき)

新聞社で約7年半、記者を務めた後、2015年に編集プロダクションのライトプロを設立して代表に就任。編集者兼ライターとしても活動中。

趣味は料理と漫画を読むこと。東京都在住。1983年生まれ。

渡部 和章

ECビジネスはこの4年半でどう変わった? 激動のEC業界4.5年分を振り返る

7 years ago

「忙しくてニュースなんていちいちチェックしていられないよ!!」という方のために、EC業界に関連するほぼ1週間分の記事をサクッとまとめてお届けしている「ネットショップ担当者が知っておくべきニュースのまとめ」。連載200回を超えたことを記念して、筆者の森野誠之氏と本誌編集長・瀧川による飲み会……いや、特別対談が行われました。テーマは「EC業界のこの4年半を振り返る & これからどうなる?」。

4年半前というと、つい最近みたいな感じがしませんか? 家族が成長したとか自分が老けたといった変化こそあれ、多くの方が今と同じような仕事で同じように暮らしていたように感じると思いますが、話しているうちに「いやいや、なんだかスゴいな、この4年!」となりました。何がスゴいのか、まあお読みください。

ところで森野さんってどんな人?

─森野さんは「運営堂」として名古屋を拠点に企業のWeb運用支援をされていて、デジタルマーケティング関連のニュースをまとめたメルマガを発行し続けていています。それを見ていたうちの編集統括が「EC業界編もやってもらったらいいんじゃない?」ということでご相談したんですよね。でも当時は「僕はECのことわかんないです」っておっしゃっていましたよね。

森野 : わかんないです。メルマガは自分のお客さんから何か聞かれたときのための情報収集も兼ねて続けているんですが、2014年当時はECのカテゴリは情報収集していなかったんですよね。でも今はECの人とのつながりが増えました。

瀧川 : フリーになる前はどんなお仕事をしていたんですか?

森野 : フリーになる直前はWeb制作会社の営業で、怒られてばっかりでした。作って効果が出なかったらクライアントから怒られて、デザイナーからも怒られ、上からも「売り上げを作ってこい」って怒られ、不満を抱えた人が山のようにいる状態でした。12〜3年前、Googleアナリティクスが出始めた頃に僕もGAをいじり始めて、まだ詳しい人もそんなにいませんでしたけど、サイトを改善して、ちょっと効果が出て、ちょっと評価されて……みたいな感じてやってましたね。

でも、どんなにアクセス解析をやっても、広告や制作の人が動いてくれなかったらWebって良くならないですよね。言ってるだけの仕事になっちゃうんです。施策を実行するために、「もっと上の人と直接話ができるようになりたい」と思ってやっていたらこんな感じになりました。

森野誠之氏(左)と本誌編集長 瀧川正実(右)
森野誠之氏(左)と本誌編集長 瀧川正実(右)

瀧川: どうやって情報収集してるんですか?

森野 : 連載を始めた2014年頃はECの情報って新聞系や関連団体系くらいで。有名どころのショップのブログもなかったから、最初は死ぬ思いでやってましたね。本当に話題がなくて。続けてきたら慣れてきて、自分でも媒体を見つけられるようになりました。

─森野さんの情報収集については、上の記事をお読みいただくとして、担当編集者の思惑としては、初期は色んな情報を少しずつ大量に出すっていうことをやったんですが、途中から、タイトルを見てクリックして来た人が、何らかの情報なり知識なりを得られるように、何度かマイナーチェンジしてるんですよね。

森野 : そうですね。ECの人ってWebマーケの人と業務量が違うんだと思うんですが、明らかに勉強する時間がなさそうだということが途中から分かってきましたね。

─大学で非常勤講師もされているそうですが。

森野 : 前期だけですけど「総合マルチメディア論」っていう授業をやってます。平たく言うと「パソコン使ってなんかやる」っていう授業です。本業とメデイアの仕事と教える仕事の3つがあって面白いですね。

瀧川 : 学生はインターネットの何に興味があるんですか?

森野 : 毎年何がやりたいかアンケートを取るんですけど、今年は動画を作りたいとか、Vチューバー(バーチャルユーチューバー)について教えてほしいっていうのが多かったですね。それで実際にユーチューバーの人を呼んで、「ぜんぜん儲からないよ」って話を生徒にしてもらいました。いまどんなにPVがあっても儲からないし、Vチューバーだって制作費で多分赤字なんじゃないかとか(笑)

瀧川 : ネット通販が話題になることないですか?

森野 : 学生はお金がないですからね。「ゲームやってる?」って聞いてもあんまり。「お金がないから課金しない」とか。

─女の子はおしゃれに興味があるだろうからEC使うんじゃないですか?

森野 : あ、「airCloset(エアークローゼット)」は半分くらいが知ってて、やってる学生もいました。

運営堂 森野誠之氏
4年半に渡って毎週原稿を送り続けてくれる森野氏(当ネッ担の創刊は2014年7月29日ですが、同年3月から創刊準備期間として運営しておりまして、本連載は3月24日にスタートしているのです)。ネッ担最古にして最長の連載の筆者です。

EC業界この4年半のまとめ

─ここからやっと本題に入りますが、この4年半で変わったことは、ざっくりまとめるとこんな感じです。

2014年から変わったこと一覧
  1. モールはますます成長。MA、Web接客、カゴ落ち対策など各種ツールが続々登場
  2. デバイスはPCからスマホに変化。スマートスピーカーも登場
  3. Twitter、LINE、InstagramなどSNSからショッピングの導線が確立
  4. ECと実店舗で使える決済サービスが続々登場
  5. メルカリやラクマなど、フリマアプリが大ブーム
  6. 宅急便の再配達問題が顕在化。料金値上げへ
  7. 物流分野へのロボットドローン導入の話題が出てきた。中国はすでにスゴいことに

1. モールとツールが進化。ECはより複雑に

─2014年から2017年9月までの、ネッ担の年間アクセスランキングトップ100を色分けして並べてみました。2016年〜2017はアマゾンの話題がわーっと増えたのでオレンジが多いでしょ。グレーは調査統計に関する記事です。赤は楽天に関する記事です。

拡大しても何が何だかわからないとは思いますが、「全体的になんとなく赤(楽天関連)が多いんだな」とか、「2016年、17年はオレンジ(アマゾン関連)が多かったんだな」などと感じていただければ幸いです……。

瀧川売上トップ100企業のうち、半分以上は楽天市場に出店してますからね。

─それってモールでしか買い物しない人を取りに行きたいってことですよね。

瀧川 : そうですね。森野さんもアマゾンでしか買わないって言ってましたよね。

森野 : そうです。アマゾンでしか買いません。

─会員登録とか面倒ですからね。

瀧川 : ITに精通している人は、IDとパスワードはあちこちで使いたくないかなと。

森野 : そうなんですね。あと僕はポイントとかいらないから商品がすぐ欲しいんですよね。でも楽天が好きな人は楽天の全部のサービスを使ってますけどね。

─私の周りでもせっせとお買い物マラソンしてる人、結構います。

森野 : そういえば、連載を始めた頃はツールもそんなになかったんですが、コンバージョンレートを上げるためのツールもたくさん出てきましたよね。MA入れてWeb接客ツール入れてカゴ落ち対策やって……って、みなさんがんばってますよね。疲れると思いますよ、競争が激しくて。モールも増えるし、アプリとかオムニチャネルとか言われるし、決済手段も増えるし。

瀧川 : 疲れますよね……。MAで自動化させても、シナリオ設定して検証してって、マーケティングは自動化されてもある業務は増えるわけですもんね。

森野 : 大変ですよね。しかも、やってもちょっとしか伸びなくて、かといってやめたら落ちるっていう状況なんじゃないでしょうか。

─私は洋服とかを買うときにあえてカート離脱してみたりしますよ。

森野 : クーポンとか来るんですよね、あれはどうかと思うんですけど。

─さっさと決済してくれた人より優遇することになりますもんね。でも見てると面白いですよ。「カゴに商品があります」に始まって「カゴの中の商品が値下がりしました」とか「カートに入っている商品のコーディネイトを紹介します」とか、コンバージョンにつなげるための施策がすごいんですよね。

2. ECの主戦場がPCからスマホへ。音声ショッピングも登場

瀧川 : 森野さん自身はこの4年でどんな変化を感じていますか?

森野一番変化を感じるのは買い方ですかね。以前はパソコンの前に座ってカートに入れてカード番号入れて……ってやっていたのが、スマホのアプリでって変わりましたよね。

─PCで買い物するっていうのは、その頃はまだちょっと特別なことでしたよね。

瀧川 : ユーザーももう「ネットで買ってる」っていう意識がないかもしれませんね。

森野 : 連載を始めた頃はPC比率の方が高かったですよね。

  • 実はスマホ経由の購入単価はPCより高い? クリテオの調査で判明したモバイルECの実態 | ネットショップ担当者フォーラム
    https://netshop.impress.co.jp/node/4080

─スピーカーに向かって話しかけて買い物するなんてことも、2014年には思い付きませんでした。

  • 「Amazon Echo」で音声ショッピングを試してみた【買い物時間は声だけで約20秒】 | ネットショップ担当者フォーラム
    https://netshop.impress.co.jp/node/4995

3. SNSアプリがショッピングやマーケティング、決済のツールへ

─2014年当時、LINEは単なるコミュニケーション手段でした。

森野 : いまはLINE@、LINEショッピング、LINE Pay……いろいろありますよね。Instagramも今ほど普及していませんでした。ソーシャルから売れるっていう流れがなかったんじゃないですか? Twitter広告も当時はなかったし。

瀧川 : Twitterは若者にとっては検索ツールみたいですね。

森野 : 学生に聞くと普通に複数アカウントを作って、使い分けているみたいです。

4. オンラインでもオフラインでも使える決済サービスが続々登場

瀧川 : 僕は決済が一番変わったと思いますね。消費者にとっては便利になりましたよね。

森野 : 決済を握ると物の流れがわかりますもんね。

瀧川 : 「物流と決済を制する者はECを制す」という格言もあります(笑)。

5. フリマアプリはECにとって朗報か悲報か

森野 : CtoCはまだせいぜいヤフオクが中心でしたよね。フリマアプリはずいぶん盛り上がりました。

瀧川 : CtoCもECの人にとってはメリットがあるって言われているんですよ。

─どういう意味ですか?

瀧川 : 消費者の家の「棚が空く」っていうことで。アパレルだったらいらない服を売れば、棚が空いて新しい服を買う意欲がわきますよね。

─メルカリの調査でも「売ることを前提に買い物するようになった」とあるように、消費行動が変わってきているらしいですね。

森野 : ファストファッションの服とかも売れてるんですよね。

─限定コラボとか人気の色とかあるんですよね。でも不自然な物を感じることもあります。いわゆる転売屋ですかね。

森野 : 転売と言えばチケット……。

─あれはひどいですよね!

森野 : そりゃチケット手に入らんわと思いますね。

瀧川 : そういえば、フリマアプリとかで問題になっているのは、ツーステップマーケティングの無料サンプルを、まとめてフリマサイトで転売するっていう手口。

森野 : そんなことやられたらツーステップは終わりじゃないですか。フリマアプリで定期購入されちゃあ……。

メルカリ
9月某日のメルカリ。某社のサンプルセットが良い値段で数多く出品されていた。SOLD OUTも多い(編集部でキャプチャ)

瀧川 : これは業界全体で取り組まないといけない問題ですよね。ツーステップマーケティング自体が問題視されちゃう可能性もありますから……。

6. 物流クライシス発生。再配達削減をみんなで考える時代に

─創刊当時は物流についてあまり問題視されていませんでしたけど、今は相当状況が変わりましたよね。

瀧川 : 配送キャリアから荷物を受け取ってもらえないところもあるみたいですからね。

森野 : 「OKIPPA」って良いと思うんですけど。

─あれは戸建てに広まるといいですね。集合住宅は無理だけど。

瀧川 : 大きなマンションに配達する配達員の人って、大変だなぁって思うんですよね。

森野 : マンションで荷物を預かってくれる所が1か所あれば良いんですけどね、昔は管理人さんだったけど、今いないですもんね。

─集合住宅を認可するときに、小さなマンションでも戸数に合わせた数の宅配ボックスの設置を義務付ければいいと思うんですけど。

瀧川宅配ボックスって、学校から帰ってきた子どもがランドセルを入れて遊びに行っちゃうこともあるようで、埋まってるところがあるらしいですよ(笑)。

─まあ、私が子どもだったらやりますね。

瀧川 : 子どもの気持ちも分かるけど、荷物入れられないのは困りますよね。モラルの問題。

森野 : 宅配ボックスじゃあ解決しないんですね…。昔はよく玄関先に置いてありましたけどね。

─勝手に隣にあずけられたりね。嫌ですよね。食べ物だったらおすそ分けしないわけにもいかないし。

森野 : 配送所が近ければ止めてもらうのがいいんじゃないですか? コンビニに雑誌を配本している業者は仕事が減ったって言ってるらしいですけど。雑誌以外を運ぶっていう発送があってもいいと思うんですけどね。

7. 実現するのか? ドローン&ロボット配送

森野 : 「ドローン」って言葉はありましたっけ?

─「ラジコン」しかなかったんじゃないですかね。

瀧川 : 限界集落みたいなところに、ドローンで配送する計画はあがってますよね。ドローンで山奥にも配達できたら良いですよね。

─いやー、買い物ってあれこれ商品を見ている間に、買おうと思っていたもの以外も買っちゃうじゃないですか。選ぶのが楽しいんですよね。だから単に配達してくれるだけじゃなくて、私は移動販売車みたいなのがいいなあ。

瀧川 : デジタルサイネージを積んだ移動販売車で解決するかもしれないですよ。

森野 : ロボット配送はどうですか?

─あの件ですね?

  • 宅配ロボットの実証実験[動画レポート] & 世界のデリバリーロボット事情まとめ | ネットショップ担当者フォーラム
    https://netshop.impress.co.jp/node/5315

─ロボットは公道を走れないので実用化にはいろいろ条件が必要ですけど、これも楽しみですよね。

森野誠之氏(左)と本誌編集長 瀧川正実(右)
ちなみにこの日の会場は神保町魚金 弐 すずらん通り店です。写ってませんけどイカ墨チャーハンが美味しかったです。

地方はWebより新聞が効く?

─森野さんの奥さんは通販で買い物されますか?

森野 : 嫁さんはカタログをよく見ますね。カタログも見るし、新聞の折り込みもすごくよく見てる。地元の話題は新聞が強いですからね。僕が知らない地元の話題をよく知ってます。

瀧川ユニクロさんがそのへんをよく考えていて、折り込みチラシもよくやってるじゃないですか。あえてわかりやすいスーパーみたいなデザインで。あれで購買意欲をかき立てている。一方Webはすっきりした真逆のデザインで、ターゲット層に応じた消費意欲の喚起とブランディングを両立していますよね。

ユニクロの「今週の折り込みチラシ」
今週の折り込みチラシ」のページに毎週チラシのPDFがアップされ、「印刷する」ボタンが設置されている(編集部でキャプチャ)
ユニクロ公式サイト
ユニクロ公式サイト(編集部でキャプチャ)

森野 : 東海地方は中日新聞が強いんですけど、中日新聞って異常にチラシが多いんです。新聞よりも分厚いチラシが入っていることもあるんですよね。あれが見たくて中日新聞にするっていう人もいるくらい。

─私も実家が中日新聞とってますけど、両親も好きですよ、広告ずっと見てますもん。

瀧川チラシを見たいっていう人が……いる?

森野 : そうですよ。一時期、違う新聞を購読してみたらチラシとか広告がぺらっぺらで。

瀧川地方紙は単品通販系のレスポンスも良いらしいです。全国紙と地方紙でやってみて、良い方を回していくんだけど、行き着くのは地方紙だそうです。

森野 : わかります。地方の人は新聞とってますしね。

瀧川Webは競争が激しいけど、意外とチラシとかラジオとかやりようによっては伸びしろがありそうです。

森野 : ラジオも良いし、CATVとかもいいと思いますね。

オムニチャネルは当たり前になってきたけれど……

─オムニチャネル初期の頃、店舗の人はECで売れると売上も在庫もECに持って行かれちゃって面白くない……というような話がありましたが、いまはどうなんですか?

瀧川 : 結局、トップの決断、スタッフの評価を含めた組織の話にまでおよぶから難しいんですよね。

─ECと実店舗と言えば、先日ポータブルテレビを買いまして、価格を比較して結局アマゾンで買ったんですが、ケーブルが足らなかったんで最寄りの某家電量販店に買いに行ったんですよ。「テレビ自体をこの店で買ってないから、良い接客されちゃったら申し訳ないなぁ」なんて思いながら。そしたら「あ、これっすね」って1000円のアンテナケーブルをフンって出されて、10秒で接客終了。私、提案してくれればいろいろ買う気満々だったんですけど。

森野 : ダメですね(笑)

─でも同じ店で素晴らしい接客をしてもらったこともあるんですよ。台所の蛍光灯を買いに行った時なんですけど、店頭にLEDの1500円のしか出てなくて、レジのおばちゃんに「蛍光灯って高いのね、 私、賃貸なんだけど」ってつい言っちゃったんですよ。そしたら「じゃあ、こっちで良いわよ」って奥から500円のを出してくれたんです。すごいでしょ?

森野 :人間味がある(笑)

運営堂 森野誠之氏
神保町魚金の名物「鶏の半身揚げ」と格闘する森野氏。森野氏はFacebookにラーメンや唐揚げなど、茶色い食べ物をアップし続ける、ブランディングならぬ「ブラウンディング」を継続中。ブラウンディングの成果は「気軽に誘ってもらいやすくなったこと」とのこと。

「どうしたらECで儲かりますか?」の答えは

─2人とも、「どうしたらECで儲かりますか」とかって聞かれたりしませんか?

瀧川 :ありますよ。僕は商材を聞いて、向いていないようだったら「やめた方がいい」って言います。

森野 : 僕も同じことを言いますね。特に仕入れが発生するものは難しいですよ。

瀧川 : そもそも仕入れ商材だとか、「他が売れてるからうちもやるぞ!」みたいなことを言う人がいますが、「なぜレッドオーシャンに飛び込む?」って思いますね。

森野 : あとお客さんって「売上倍にして」なんて言うんですけど、「倍になったら現場は回るんですか?」っていうと「ダメ」って言うんです。注文がこれだけ増えたら出荷が回るのか考えてない人って結構いるんですよね。それを気にせず売上伸ばしちゃうと現場が爆発しちゃう。そういうことがわかってる所は伸びるんですけどね。

─他にお客さんから言われるのってどんなことですか?

森野 : 「今まで良かったのに売れなくなった」っていうのが。

瀧川 : 最近多いですね。

森野 : 単に流れに乗ってなんとなく上手く行ってたっていう所がだめになってきてる気がします。結局、新しいツールが次々と出て、入れた瞬間は儲かるんだけど、すぐに似たものが出てきて、同じようなツールをみんな入れだして、売れなくなって「次ないの?」……っていう繰り返しなんですよね。だから新しい情報をキャッチアップしていないと置いて行かれちゃうと思うんです。

─そこで我々のようなメディアの存在意義があるわけですね!

森野誠之氏(左)と本誌編集長 瀧川正実(右)

ネッ担はネッ担で良いのか?

瀧川 : 「2020年のオリンピック期間中は通販を控えるように」という話もありますが。

森野 : それって東京だけの話で自分には関係ないと思ってます。地方の人はみんな思ってると思いますけど。サマータイムなんか導入したら指定配送とかどうなっちゃうんでしょうか。絶対やっちゃダメなやつでしょ。

─4年でこれだけ変わったんだから、2020年にはどうなっているんでしょうね。

瀧川 : 媒体はどうなっているのか……。

─編集長は媒体名が気になってるんですよね。

瀧川 : 僕は当時から「ネットショップ」て聞くとパパママ系のイメージでした。ビジネスで言うと「EC」とか「ネット通販」「ネット販売」っていうイメージで。みんなどう思っているんだろう……。聞く限りでは情報収集の際、「EC」「通販」っていうキーワードを使っている人が多いかなという印象です

─媒体名を付けたのは多分編集統括ですけど、単に「EC担当者フォーラム」だと座りが悪いとか、多分そんな理由だったんじゃないかと思いますが。

森野 : じゃあ「電子商取引担当者フォーラム」にしましょう。

─硬いなあ。

瀧川 : 僕はターゲットは「担当者」じゃなくてEC事業の意志決定者と思ってるんです。結局、PLに直結するビジネスなので、意志決定者を僕はイメージしています。

─「EC責任者フォーラム」ですか? なんか重いですね。ターゲットを取りましょう「電子商取引フォーラム」。

森野 :通産省のイベントか何かみたい……。

─「ECフォーラム」にします? なんかすでにありそうですけど、ビッグサイトあたりでやってるイベントで。あ、検索したらトランスコスモスさんが「ECフォーラム」ってイベントやってますね。あ、ネッ担も検索結果の2番目に出てる。

森野 :ネッ担を始めた頃と比べて買い物の形態が大きく変わりましたからね、もうECだけの話じゃないんですよね。

瀧川 : うーん……。

─ということで、「ネッ担はネッ担で良いのか?」という問題に結論は出ませんが、このへんで締めたいと思います。本日はありがとうございました。

内山美枝子

内山 美枝子

ネットショップ担当者フォーラム編集部
内山 美枝子

「健康食品の広告、お医者さんに登場してもらいたい!」 そんなときの注意点 | 健康・美容業界の今を知る!

7 years ago

医師を広告に登場させるだけで、効能効果への期待感や安心感を与えることができます。その一方で、使い方によってはリスクがあるので注意が必要です。また、医師や学者の談話や学説などを引用や掲載は、その内容によって可否が判断されます。

医師や学者の談話、学説等を引用することにより、その内容が直接・間接を問わず、また事実であったとしても、医薬品的な効能効果を暗示する内容であれば使用できません

もちろんそういった「薬事的配慮」をすれば良いということでなく、事実でなければ虚偽ということになります。医師の談話そのものが捏造だったりする場合には景品表示法や健康増進法に抵触することになります。

実際の医師の談話であることを前提に、NG例とOK例を見てみましょう。

NG例:

医学博士 ○○先生談

△△という成分には、体内の毒素を排出し、若い細胞への生まれ変わりを促進させる効果があることが近年の研究で証明されました。この商品××(健康食品名)には△△が豊富に含まれておりますので、毎日の健康が気になる方に大変おすすめです。

述べている内容が、「体内の毒素を排出し、若い細胞への生まれ変わりを促進させる」という医薬品的な効能効果を暗示していますので、これはNGです。

OK例:

医学博士 ○○先生談

ダイエットのために食事制限をしている人は、何かと栄養バランスが崩れがちです。この商品××には、不足しがちなビタミンやたんぱく質といった栄養がバランス良く含まれておりますので、ダイエット時の栄養補給にご利用いただけるでしょう。

上の例はOKです。少なくとも薬機法に抵触しません。なぜなら、

  • 栄養補給
  • 健康維持
  • 美容
  • 生体を構成する栄養素について、構成成分であることを示す (あくまでも「身体」という大枠のみ。「肌」「関節」など特定の部位を指すのは不可)

上記の範囲であれば医薬品等の効能効果とは見なされず、健康食品として表現可能だからです。また、例えば「規則正しい生活」「栄養バランスのとれた食事」「適度な運動」というように、「美容や健康維持のため何が大切なのか」についての言及に留めるのであれば、こちらも問題ありません

ほかには景品表示法と健康増進法の面から見て「栄養がバランス良く含まれていること」や 「(本当に)栄養補給になること」が事実であれば使えると判断できます。

◇◇◇

医師や学者を広告に起用する場合、その性質上、医薬品的な効能効果を述べる内容になりがちです。訴求力の高い手法ではありますが、昨今では事実かどうかの確認が厳しく求められますので、その分、足をすくわれる可能性も高くなります。十分に気をつけていきましょう。

稲留 万希子

薬事法広告研究所 代表

東京理科大学卒業後、大手医薬品卸会社にて医療従事者向けポータルサイトの企画運営に従事。東洋医学に興味を抱いたことをきっかけに、中医学専門学校にて3年間薬膳料理や漢方について学ぶ。その間、ヘルスケア分野でのビジネス展開には薬事法を避けて通れない事から、薬事法と広告についても並行して学び、その後、国際中医専門員、漢方薬膳療術師、反射療法士、薬事法管理者、コスメ薬事法管理者の資格を取得し独立。2008年3月、薬事法広告研究所の設立に参画、副代表を経て代表へ就任。現在、一般社団法人 通販エキスパート協会 代表理事を兼任。

稲留 万希子

8期連続増収増益の優良企業「ワークマン」が実践する「データ経営」「デジタルシフト」とは

7 years ago

8期連続の増収増益で作業着の小売りでシェアNo.1のワークマン。2018年3月期の売上高は797億円、当期純利益は78億円、自己資本比率は80%を超える優良企業だ。

そのワークマンがある市場に進出したことが話題になっている。メインターゲットのガテン系向け商材ではなく、カジュアルウェアの専門店を出店したからだ。その専門店「ワークマンプラス」は9月のオープンからわずか約2か月後には、「日経トレンディ2019年ヒット予測100」の第1位にも選ばれている。

今回、ワークマンが成長を続ける理由、新市場に打って出る挑戦の一部を紹介する。キーワードは「データ経営」と「デジタルシフト」だ。

ワークマン、成長の秘訣は徹底した「データ経営」

全国展開しているワークマンの店舗数は2018年9月末時点で826店舗。その多くを支えるのがフランチャイズ・ストアで、同時期で692店、業務委託店舗は105店、直営のトレーニング・ストアは24店舗。このお店に足を運ぶのは年間3071万人(2018年3月期)にのぼる。

ワークマンの会社概要
ワークマンの会社概要

店舗の特徴は全国に同じ100坪標準店舗を同じ品ぞろえで展開していること。作業着を求める消費者がどの店舗へ足を運んでも、同じ売場に同じ商品が陳列されているようにしている。

全国の店舗を22の地域に分け、地域限定商品も展開するが、その比率は売り上げの5%以下。こうした標準化が店舗運営コストの大幅な削減につながり、競合との圧倒的な差別化として、消費者からは「『低価格』でかつ『高品質(耐久性が高いなど)』」と評価される。

この標準化を支えるのが「データ経営」である。その1つの例として、8つの予測アルゴリズムを駆使している「需要予測」を紹介しよう。

① 移動平均
② 移動平均+季節性プロファイル
③ 指数平滑
④ 指数平滑+季節性プロファイル
⑤ ホルト・ウィンタース(加算型)
⑥ ホルト・ウィンタース(乗算型)
⑦ ARIMA
⑧ 自動選択

この8つのアルゴリズムを駆使した需要予測機能は、ワークマンが開発した受発注システムに組み込まれている。ワークマンの本部は需要予測に基づいて自動発注し、ベンダーは自主的に納品。本部から各加盟店に商品が納入される仕組み。

ワークマンの需要予測ロジック
予測プロセス
①学習 時系列データから過去の傾向を読み取る
トレンドはあるか
周期性はあるか
トレンド×周期性
シーズン商品間欠商品
②予測 統計モデル(時系列アルゴリズム)を用いて将来を予測する
トレンド型モデル例…移動平均法/指数平均法/ボルト法
周期性型モデル例 ホルト・ウィンターズ法 ARIMA法
季節性プロファイル(曜日、季節など)
間欠型モデル例
クロストン周期
コーザル対応
価格弾力性
気候補正
ワークマンの需要予測ロジック

加盟店をサポートする担当者としてSV(スーパーバイザー)を配置しており、そのSVが稼働店舗のパフォーマンスチェックと予測ロジックを調整。店舗在庫などの最適化を図る役割を担う。

簡単に解説したが、ロジスティックなどさまざまな業務にデータ経営を用いているワークマン。こうしたデータ活用に基づいた業務の標準化が、ワークマンの成長を支える。

作業着からアウトドア用品に参入したワケ

右肩成長のワークマンだが、「AmazonやEC専業の台頭」「あと数年で作業着市場シェアを取り切ってしまう」という危機感がある。

そこでスタートしたのが新業態と新フォーマットの開発だ。それが、「アウトドア・スポーツの新業態店」「ネット販売・法人用のPB作業服の開発」である。

ワークマンは2016年から一般消費者向けの①アウトドアウェア「FieldCore」②スポーツウェア「Find-Out」③レインスーツの「AEGIS(イージス)」――という3つの自社ブランド製品を全国の実店舗で販売をスタート。売上高は2017年3月期の30億円から2018年3月期には60億円に拡大している。

店舗では全体の2割が一般顧客に達するなど、一定の支持を得たと判断し3ブランドを一般顧客に販売する新業態「WORKMAN Plus」の出店を始めた。

「WORKMAN Plus」のホームページ
「WORKMAN Plus」のホームページ

ワークマンによると、カジュアルウェア市場は内外の製造小売業者の普及品が大きなシェアを取っているという。一方、高機能ウェアの低価格帯市場(4000億円の潜在市場)は手薄。ワークマンは作業着で培った「低価格」「高品質」を武器に高機能ウェアの低価格帯市場へ参入。業態店と既存店を合わせて25%の市場シェア獲得をめざしている。

もちろん、この自社ブランド製品はECサイトでも展開。「ネットに定価で絶対負けないPB」(ワークマン)として、実店舗とECサイトで新市場を攻める方針だ。

高価格 普及価格 機能性 デザイン
アウトドアで狙う市場
海外スポーツブランド
国内スポーツブランド
アウトドアブランド
海外ブランド
セレクトショップ
国内ブランド
海外製造小売
国内製造小売
激戦区
作業でも使うので10万着を生産。スポーツメーカーの価格の3分の1以下、アウトドアメーカーの2分の1以下に
ワークマン
4000億円の空白市場
目標はシェア25%で1000億円
ワークマンが狙う新市場のマトリックス

ワークマンの事例を中心に「データ経営」のプロ3人が解説

「ネットショップ担当者フォーラム 2018秋」では、ワークマンの土屋哲雄常務取締役、デジタルシフトウェーブの鈴木康弘社長、オムニチャネルコンサルタントで千趣会・執行役員の逸見光次郎氏が登壇。ワークマンの「データ経営」「デジタルシフト」の事例を中心に、小売業やEC企業に必要な経営、組織、意識改革の要諦を解説する。

「データ経営」「デジタルシフト」の詳細をもっと知りたい方は、当日のセッションにぜひ参加いただきたい。

左からワークマンの土屋常務、デジタルシフトウェーブの鈴木氏、千趣会の逸見氏
左からワークマンの土屋常務、デジタルシフトウェーブの鈴木氏、千趣会の逸見氏

瀧川 正実

ネットショップ担当者フォーラム編集部 編集長

通販・ECに関する業界新聞の編集記者、EC支援会社で新規事業の立ち上げなどに携わり、現在に至る。EC業界に関わること約13年。日々勉強中。

瀧川 正実

再配達の削減対策はどこまで進んだ? EC事業者・宅配会社・行政が課題と解決策を取りまとめ

7 years ago

経済産業省と国土交通省は11月2日、宅配荷物の再配達削減などを目的として今年5月から開催している「宅配事業とEC事業の生産性向上連絡会」の報告書を公表した。

再配達削減に向けた3つの主な取り組みを上げ、現状と課題を整理。連絡会での議論を踏まえ、行政とEC事業者、宅配会社が連携して再配達削減に取り組む。

取り組み① 宅配事業者とEC事業者のデータ連携

宅配事業者とEC事業者は、メールやアプリなどを活用して配達予定日時を消費者に通知しているほか、 配達状況の確認や再配達の受付、受取日時の変更などをオンラインで行えるサービスも提供している。

連絡会では、多様化した消費者のニーズに対応しながら再配達削減を進めるには、宅配事業者とEC事業者がそれぞれ独自に保有しているデータを共有・利活用し、消費者とのコミュニケーションを強化することが有効との指摘があった。

一方で、個人情報保護の観点からの懸念、「企業の競争上の情報」と「再配達削減のために連携すべき情報」の切り分けが不明確との指摘もあがったという。

今後、事業者団体の協力を得て、データ連携を行う際の課題となるユースケースを年内をめどにまとめる。2019年以降、個人情報保護の観点などからも検討を行い、課題を整理する。

「宅配事業とEC事業の生産性向上連絡会」のこれまでの議論のとりまとめ
今後、対応を進めていく事項(画像は経産省と国交省の発表資料からキャプチャ)

取り組み② 再配達の実態の分析

政府は2017年に再配達問題に関する世論調査を実施。 また、国交省は再配達率調査を年2回実施し、定点観測を行っている。調査によると、2018年4月度の再配達率は15.0%で、6か月前の前回調査(2017年10月度)と比べて0.5ポイント下がった。

連絡会では、再配達削減策を検討するためには、消費者の属性などに関するより詳細なデータを取得し、再配達の実態について詳しく把握・分析を行った上で、より具体的な課題を抽出することが有効との指摘があがった。

消費者属性などの取得や分析の方法については、宅配事業者やEC事業者の協力を得ながら、関係省庁で対応策の検討を進めるとしている。

取り組み③ 多様な受取方法の推進

宅配ボックスを駅やコンビニ、マンションなどへ設置する動きが広がっているほか、オープン型宅配ボックスの利活用推進のための国による支援が実施されている。また、コンビニ店頭受取や置き配などのサービスも提供されている。

連絡会では、宅配ボックスや置き配といった受取方法を選択できるようにすることや、配達先情報(宅配ボックスの空き情報、サイズなど)と荷物情報(荷姿・梱包など)を組み合わせるための環境整備が必要との指摘があがった。

また、宅配ボックスなどから自宅まで、消費者が商品を持ち帰る前提で梱包を見直すことも有効との声もあった。

再配達削減へ通販業界と宅配業界が連携

EC市場の拡大に伴い、宅配便の取扱個数が年間40億個以上に増加する中、宅配事業者のドライバー不足などの課題を解決するために、経産省と国交相が合同で連絡会を発足させた。

「宅配事業とEC事業の生産性向上連絡会」の設置
宅配需要が増加している事象(画像は経産省と国交省の発表資料からキャプチャ)
「宅配事業とEC事業の生産性向上連絡会」の設置背景 トラックドライバーが不足
ドライバー不足も顕著となっている(画像は経産省と国交省の発表資料からキャプチャ)

連絡会は2018年5月に第1回を開催し、これまで4回開催。民間企業の委員として、アスクル、アマゾンジャパン、オルビス、佐川急便、千趣会、ZOZO、日本郵便、ファンケル、丸和運輸機関、ヤフー、ヤマト運輸、楽天、リンベルが参加している。

今後、報告書にまとめた項目の検討状況や、各社の最新の取り組みなどを共有する場として、連絡会を継続的に開催する。

渡部 和章

ライトプロ株式会社 代表取締役

渡部 和章(わたなべ・かずあき)

新聞社で約7年半、記者を務めた後、2015年に編集プロダクションのライトプロを設立して代表に就任。編集者兼ライターとしても活動中。

趣味は料理と漫画を読むこと。東京都在住。1983年生まれ。

渡部 和章

今年もあと2か月。ネットショップ担当者が2019年に向けてやることって?【ネッ担まとめ】 | ネットショップ担当者が 知っておくべきニュースのまとめ

7 years ago

来年2019年は「元年消費」「大型連休」「消費増税対策」。今から情報収集をして準備しておきましょう。ヒット商品の発表はどんどん早くなっていますね。ハロウィンが終わればクリスマス一色になるので、その間をねらっているということかもしれません。

2018年は何が流行った? 2019年は何が来る?

日経トレンディが18年ヒット商品ベスト30を発表! | 日経トレンディネット
https://trendy.nikkeibp.co.jp/atcl/pickup/15/1008498/110101544/

楽天年間ランキング2018|楽天市場
https://event.rakuten.co.jp/rankingyearly/banduke/

生活者が選ぶ “2019年 ヒット予想” &“2018年 ヒット商品”ランキングを発表 | 博報堂生活総合研究所
https://www.hakuhodo.co.jp/archives/newsrelease/50863

まとめると、

  • 日経トレンディが選ぶ2018年のヒット商品1位は「安室奈美恵」。経済効果は500億円超とも
  • 楽天の2018年ではスポーツ特需とキャッシュレス特需
  • 2019年は元年消費、連休消費が確定でドローンなども引きつづき人気

「2019年は、増税、元号が変わる、大型連休や臨時の連休があるなど、実は分かってることが多い年」という佐藤編集長が1位として挙げたのは「デカトロン&ワークマンプラス」。デカトロンはフランスのブランドで、ワークマンプラスは作業服専門店で知られる「ワークマン」のカジュアルブランド。どちらもコストパフォーマンスの高い機能性ウェアが魅力だ。低価格&高機能ウェアの市場はまだ未開拓であり、4000億円市場になるともいわれている。

日経トレンディが18年ヒット商品ベスト30を発表!

元号が変わって連休になれば、お祝い気分で消費が増えるのは予想できますよね。そして、その先には消費税アップが待っています。日経トレンディ編集長おすすめの「デカトロン&ワークマンプラス」は、派生商品で乗っかれないかを考えておくと良いですね。

セールが常態化して店舗は疲弊……

もはや多すぎ!?激増する楽天セールイベント 傾向と対策をまとめます | コマースデザイン
https://www.commerce-design.net/blog-staff/181029-increased-saleevent/

まとめると、

  • この数年で楽天のイベント販促の頻度が増加。月の半分がセールという状態も
  • セールの特別感が薄れて買い急がないユーザーも増えたため、セール2日目と終日前日の「5と0の付く日」だけに売れるという流れに
  • 「お客さんが動く、ここぞのタイミング」に絞って注力し、業務負荷を減らしながら売上も確保するなどの対応が必要

冷静に考えれば、セール参加を増やした分だけ青天井に売上がのび、リピーターも増え…なんてことはそうありません。セールが連れてきてくれるのは、価格やポイントなど、お得感に引き寄せられるお客さんが中心。その場限りの一見さんも多く、必ずしも、お店の売上のベース作りになるとは限らないはずです。ですから、ベースアップ対応は別途、意識的に続けていかねばなりません。

つまり、ガムシャラにセールイベントに乗り続けてさえいれば、いつか状況が好転する…とはなかなかならないわけです。

セールしか売れない問題はリアルの世界でも昔からある話ですよね。しかし、月の半分がセールとなると話が別です。資本力があれば流れに乗り続けることができても、多くのショップはそうもいかないので、タイミングを見極めてここぞという時に注力していかないといけないですね。関連記事もショップ店長さんの記事なので読んでみてください。

関連記事

「チャネルシフト」は思っている以上に重要なキーワード

データを活用した「接客」の進化を目指すパルコが6年間で考えたこと、変えたこと:AI、IoT、ロボットの導入で小売業はどう変わる? | @IT
http://www.atmarkit.co.jp/ait/articles/1810/30/news012.html

まとめると、

  • 従来の「オンライン小売事業者」が「オフライン」へ、実店舗を持つ事業者が「オンライン」へと、それぞれにチャネルを拡大する「チャネルシフト」が起こっている
  • パルコでは、スマホアプリ「POCKET PARCO」で「個客が来店前にどんなブログを見て、どんな商品に関心を持ったか」などを把握できるようになった
  • 購入後にはポイント付与のほか、商品や接客の満足度についてユーザーが評価する機能を実装している

最近実装した機能のうち効果が高かったものとして「PARCO WALKING COIN」が挙げられるという。これはユーザーが店舗へ来店した際にチェックインを行いスマートフォンの歩数計機能と連携させるもの。店内を歩いた「歩数」によってコインを獲得できる仕組みだ。

「店内回遊が増加することで、WALKING COINに参加するユーザーは、参加していないユーザーと比較して、買い回り店舗数が約2倍、客単価が約1.2~1.3倍高くなる効果が出ている」

「チャネルシフト」はすでに起こっていることですよね。複数のチャネルを持っているところはここの奪い合いになっています。オンラインにしか接点がなくても「WALKING COIN」に似たことはできますので、知恵を出してみましょう。ないチャネルのことを嘆いても始まりません。

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EC全般

【2018年改正】古物営業改正で追加!5つの本人確認方法 | 古物商許可を取ろう!
https://kobutu.office-matsuba.com/index/kaisei2018-2

「インターネットなどを利用した非対面取引での本人確認方法の選択肢が増えました」。といってもメール送信はダメ。

千趣会が「過度なECシフトの見直し」「カタログ起点のアナログ・デジタル連携」進める | ネットショップ担当者フォーラム
https://netshop.impress.co.jp/node/5898

徐々に切り替えるのは難しいとはいえ、やり過ぎるとこうした反動が出ちゃいますよね。

「増税分をすべて価格転嫁する」企業は約5割、消費増税の「準備をしている」は3割弱 | ネットショップ担当者フォーラム
https://netshop.impress.co.jp/node/5906

確実にやって来ることなので準備しておきましょう。特に増税のタイミングが売上のピークと重なるところは、今から動いても遅くないです。

商品や飲食店のレビュー投稿でコイン付与 LINEが独自ブロックチェーンで5つの新サービス | ITmedia NEWS
http://www.itmedia.co.jp/news/articles/1809/27/news128.html

LINEは経済圏を拡大中。LINK Pointも、もうちょっと使い勝手が良くなればなあ……。

【楽天とKDDIの提携】楽天の配送インフラを「Wowma!」出店者に提供するその内容は? | ネットショップ担当者フォーラム
https://netshop.impress.co.jp/node/5914

「Wowma!」で扱う商品を、楽天の物流網で配送。楽天はKDDIから通信網を借り受ける。

クチコミを見る目的は「買ったことのない商品を購入するとき」が68% | ネットショップ担当者フォーラム
https://netshop.impress.co.jp/node/5908

年代が上がるほど「他者に自分の体験を伝えるために使っている」。これは興味深いデータ。

お急ぎ便を使わなければポイント付与、Amazonのプライム会員向けキャンペーンが話題に | INTERNET Watch
https://internet.watch.impress.co.jp/docs/yajiuma/1150261.html

この記事が出る時点ではキャンペーンが終わっていますが、今回のデータを見てどうするか決めるんでしょうね。

月額6800円で画像加工が無制限、トポロジが画像切り抜きツール発売 | 通販通信
https://www.tsuhannews.jp/58259

月額8000円の1か月契約がありますので、まずはこれで試してみるのもあり。

消費者庁 アイケアでまた処分、言歩木に措置命令、課徴金1800万円 | 通販新聞
http://www.tsuhanshinbun.com/archive/2018/11/1800.html

「また処分」……。

今週の名言

これまではメガネ店の付加価値そのものを無料で提供していたということ。こんなバカな話はない。『うちは安いですよ』というだけのビジネスなら、小売りに人はいらない。自動販売機で十分」

──メガネスーパー 代表取締役社長 星崎尚彦氏

V字回復メガネスーパーが「大手リラクゼーション店」になる日 | 日経クロストレンド
https://trend.nikkeibp.co.jp/atcl/contents/18/00062/00008/

まさにその通りですよね。安いだけなら無人店舗に変わっていくだけなので、人がいる理由を考えないといけません。今週のトップに取り上げた記事も参考に。

森野 誠之

運営堂

運営堂代表。Web制作の営業など数社を経て2006年に独立後、名古屋を中心に地方のWeb運用を支援する業務に取り組む。現在はGoogleアナリティクスなどのアクセス解析を活用したサイト・広告改善支援を中心にWeb制作会社と提携し、分析から制作まで一貫してのサービスも開始。豊富な社会・業務経験と、独立系コンサルタントのポジションを活かしてWeb制作や広告にこだわらず、柔軟で客観的な改善提案を行っている。理系思考&辛口の姿勢とは裏腹に皿洗いを趣味にする二児のパパ。

森野 誠之

イーベイ傘下のECモール「Qoo10」、テレビCMなど流通額5000億円に向けた6つの施策 | 大手ECモールの業績&取り組み&戦略まとめ

7 years ago

“eBay Inc.(イーベイ)傘下”のECモールとして2022年12月期までに流通総額5000億円(現在比で数倍)という目標を掲げる「Qoo10」。運営元のeBay Japanは、楽しく・安価で・賢く購入できる「コスパモール」というキャッチコピーを打ち出し、流通総額拡大に向けた6つの新施策を公表した。「Qoo10」の事業拡大を実現するための6施策とは?

テレビCM、“コスパ”施策、クーポン施策など今後の強化点

eBay Japanが運営する「Qoo10」拡大のために強化を進める6つの施策
eBay Japanが強化を進める6つの施策

認知度アップ&ユーザー拡大に向けたテレビCM

eBay Japanがイーベイ傘下に入った後に実施した消費者調査によると、「『Qoo10』の認知度は20~25%」(マーケティング本部のグ・ジャヒョン本部長)だったという。

課題は認知度。「2人に1人は知ってもらいたい」(同)との狙いから、11月後半から初のテレビCMを放映する。

放映地域は巻頭、関西、中部の3地域。第1弾は11月17日から25日、第2弾は12月1日から9日。

これも消費者調査だが、「Qoo10」を利用する理由で最も多いのが「価格」。“コスパ”を求める20~30代女性が多いことから、「コスパ」「賢く楽しく買えるモール」を訴求する内容にするという。

なお、同時にWeb広告での露出も増やす。テレビCMの半分程度の投資にとどめる方針だが、普段運用しているWeb広告の2倍程度を投じるという。

eBay Japanのマーケティング本部 グ・ジャヒョン本部長
マーケティング本部のグ・ジャヒョン本部長

コスパを打ち出す新サービス、新コーナー

プライスは重要。ウォルマートの「エブリデーロープライス」(毎日が安売り)は、消費者が買い物をする楽しさを感じる企画だ。価格競争力を維持しながら、プロモーションの中身、つまり面白さを提供していきたい。(グ・ジャヒョン本部長)

こうした“コスパ”を訴求していく「Qoo10」の方針を実現するため、10月1日に始めたのが「ネット最安値」保証キャンペーン。「Qoo10」の商品が競合サイトよりも高く販売されていた場合、その差額の2倍にあたるポイントを購入者にバックするもので、保証対象となる商品は20商品程度に絞り、一週間ごとに切り替えていくもの。

「Amazon」「楽天市場」「Yahoo!ショッピング」「Wowma!」「カカクコム」よりも保証対象商品が高かった場合、差額の2倍のポイント(1ポイント1円)を購入者へ3日以内にバック。eBay Japanがポイントを負担する仕組みだ。

「Qoo10」がコスパを打ち出す新サービス、新コーナー
「Qoo10」が始める新サービス、新コーナー

テレビCMの放映に合わせ、「タイムセール」の商品は最安値保証と送料無料を行う企画を11月12日からスタート。新コーナーとして、新着ファッションだけを集めて、購入金額の5~30%をポイントバックする「新着スタイル」を新たに設ける。新着ファッションを安く購入できるようにする。

「Qoo10」のタイムセール
「タイムセール」は「Qoo10」が支持されているプロモーションの1つ

また、韓国のファッションやコスメを集めた「Kスタイル」も11月中に開設する予定。

クーポン施策は「イーベイの日本市場に対するコミットメント」

前身のジオシス時代から、「Qoo10」では自社負担のクーポン施策には力を入れていた。今後、さらにクーポン施策には注力する方針。「クーポンはマーケットシェアを広げるためのマーケティング手法。先行投資は、イーベイの日本市場に対するコミットメントだ」(同)。

クーポンに関連した施策として、新規顧客や休眠顧客に向けて「ウエルカム割」を展開する。「1000円のものを100円で提供する」(同)といったイメージの施策を行うという。

カテゴリではなくサービスで見せるサイトにリニューアル

「Qoo10」はごちゃごちゃ感があって使いにくい、といった意見もあり、なんとか改善しないといけないという意識があった。(グ・ジャヒョン本部長)

そこで10月31日、モバイルサイトとアプリを刷新。従来、商品カテゴリを全面的に打ち出してきたが、リニューアル後は、「タイムセール」「ランキング」といったサービス面を訴求する。

「Qoo10」はモバイルサイト、アプリをリニューアル
画像左がリニューアル前、右がリニューアル後

勉強会の本格展開

グ・ジャヒョン本部長によると、「『Qoo10』の販売管理ツール『QSM』の操作は難しい」ということから、「QSM」の操作方法などを説明するための勉強会を強化する方針。10月に関東で2回実施。11月は関西地域で開く予定。今後は地方でも勉強会を開いていくという。

パートナー企業との連携

一元管理システム「TEMPOSTAR」のNHN SAVAWAY、「まとまるEC店長」のブランジスタ、「ネクストエンジン」のHamee、「助ネコ」のアクアリーフ、運営代行のスタイリストの5社と提携。

パートナー経由での新規出店キャンペーンを展開していくという。

イーベイ傘下の「Qoo10」とは

eBay Inc.が2018年、旧ジオシスから日本のECモール事業「Qoo10」を買収した、イーベイ傘下の総合ECモール。

  • 国内登録会員:約1,000万人
  • 月間PV数:約3.4億
  • 出店社数:約1万1000社
  • 出品点数:約1,200万点
    ※国内登録会員数及び出品点数は2018年5月現在

「Qoo10」会員は女性が多く、20~30代の割合が高い。カテゴリー別取扱比率はファッションがTOP。

「Qoo10」会員の男女比率
「Qoo10」会員の男女比率
「Qoo10」会員の年代比率(2018年5月時点)
「Qoo10」会員の年代比率(2018年5月時点)
「Qoo10」のカテゴリー別取扱比率(2018年5月時点)
「Qoo10」のカテゴリー別取扱比率(2018年5月時点)

瀧川 正実

ネットショップ担当者フォーラム編集部 編集長

通販・ECに関する業界新聞の編集記者、EC支援会社で新規事業の立ち上げなどに携わり、現在に至る。EC業界に関わること約13年。日々勉強中。

瀧川 正実

世界から見た日本EC市場――市場規模はグローバル3位、越境EC購入率は低い

7 years ago

日本貿易振興機構(JETRO)がまとめた「ジェトロ世界貿易投資報告 2018年版」によると、2017年の国別のEC市場規模は中国が4489億ドル(1ドル110円換算で約49兆4000億円)で最も多く、2位の米国が3660億ドル(約40兆3000億円)、3位の日本は788億ドル(約8兆7000億円)だった。

日本は2020年に1012億ドル(約11兆1000億円)に拡大すると予想されている。

市場規模はインターネット上で行われたBtoCの消費財(輸送機器を除く)の取り引きが対象。食料品や雑貨などの宅配サービス、店舗支払い・受取による取引は含まない。

2017年の4位以下は英国(約8兆1000億円)、ドイツ(約5兆4000億円)、フランス(約4兆4000億円)、インド(約3兆3000億円)、ブラジル(約2兆円)、ロシア(約1兆9000億円)と続いた。

2020年には中国が約75兆円、米国は約56兆8000億円、日本は約11兆1000億円、英国は約9兆9000億円、ドイツは約7兆円に拡大する見通し。

日本貿易振興機構(JETRO)がまとめた「ジェトロ世界貿易投資報告 2018年版」によると、2017年の国別のEC市場規模は中国が4489億ドル(1ドル110円換算で約49兆4000億円)で最も多く、2位の米国が3660億ドル(約40兆3000億円)、3位の日本は788億ドル(約8兆7000億円)
主要国におけるBtoCのEC取引額(画像はJETRO発表資料からキャプチャ)

経済産業省が発表した「平成29年度我が国におけるデータ駆動型社会に係る基盤整備(電子商取引に関する市場調査)」では、2017年の日本国内の消費者向けEC市場は前年比9.1%増の16兆5054億円。

物販系ECに限ると同7.5%増の8兆6008億円、EC化率(物販系分野が対象)は5.79%(同0.36ポイント増)だった。

BtoC-EC市場規模および各分野の構成比率
BtoC-EC市場規模および各分野の構成比率(経産省の資料から編集部がキャプチャ)

日本人の越境EC購入額の世界シェアは1.1%

「ジェトロ世界貿易投資報告 2018年版」では、各国の消費者の越境EC利用状況もまとめている。

2015年の財輸入上位10か国の越境EC購入額をみると、米国や中国、英国、カナダは財輸入の世界シェアに対して越境EC購入の世界シェアが高い。

一方、日本は財輸入の世界シェア(3.9%)よりも越境EC購入額の世界シェアは低い(1.1%)。

主要国の越境EC購入額(BtoC)と財輸入額の世界シェアの比較
主要国の越境EC購入額(BtoC)と財輸入額の世界シェアの比較(2015年)(画像はJETRO発表資料からキャプチャ)

報告書ではPayPalの報告書を引用し、2016年時点で日本のオンライン購入者に占める越境購入者の割合は5%にとどまると指摘している。

 オンライン購入者に占める越境購入者の割合(2016年)
 オンライン購入者に占める越境購入者の割合(2016年)(画像はJETRO発表資料からキャプチャ)

日本のECサイトで買い物をする海外ユーザーは増えている。経済産業省の調査によると、2017年に日本から米国と中国向けに販売した越境ECの市場規模は、2か国の合計で2兆106億円だった。

米国が7128億円、中国は1兆2978億円。2020年には中国と米国の合計で推計3兆4727億円に拡大する見通し。

越境ECポテンシャル推計値(2017年時算出)経済産業省の調査
越境ECポテンシャル推計値(2017年時算出)

渡部 和章

ライトプロ株式会社 代表取締役

渡部 和章(わたなべ・かずあき)

新聞社で約7年半、記者を務めた後、2015年に編集プロダクションのライトプロを設立して代表に就任。編集者兼ライターとしても活動中。

趣味は料理と漫画を読むこと。東京都在住。1983年生まれ。

渡部 和章

【2019ヒット商品予測】「宅配ボックス」「フリマアプリ」「音声アシスタント」が上位に

7 years ago

博報堂はこのほど、生活者が2019年にヒットすると予想した商品のラインキング「2019年ヒット予想」を発表した。

通販・ECに関連する商品やサービスでは「宅配ボックス」「フリマアプリ」「音声アシスタント」「SNSショッピング」「スマホ事前注文」が上位に入っている。

首都圏と京阪神圏の生活者1004人(15~69歳、男女それぞれ504人)に対し、「2019年以降、話題になりそう/人々の生活に普及・浸透していそう」と思うものを選択式で聞いた。

「2019年ヒット予想」のベスト3は「ドライブレコーダー」、「ドローン」、「ワイヤレスイヤホン」。

通販・EC関連では4位に「宅配ボックス」、6位に「フリマアプリ」、9位に「音声アシスタント」、23位に「SNSショッピング」、28位に「スマホ事前注文」が入っている。

博報堂が発表した2019年 ヒット予想ランキング
2019年 ヒット予想ランキング

博報堂は「2019年ヒット予想」 のキーワードは「ソーシャル・プラス」と指摘。元号の変更や消費税増税といった時代の変化を控えていることもあり、 世の中の基盤を未来に向けてアップデートしてくれる商品・サービスに関心が集まっていると分析している。

また、自由回答では「社会や他者にプラスになること」に対して言及する声が多くあがったという。

女性は「フリマアプリ」のヒットを予想

「2019年ヒット予想」の結果を年齢層別・性別で見ると、「フリマアプリ」に対する支持は女性の方が高い。

「フリマアプリ」の順位は女性の15~19歳では2位、20~29歳では1位、30~39歳では3位、40~49歳では4位、50~59歳では3位、60~69歳では10位となっている。

男性で「フリマアプリ」がランクインしたのは15~19歳(5位)、20~29歳(6位)、60~69歳(8位)だった。

博報堂が発表した2019年 ヒット予想ランキング(性別ごと)
男女による2019年ヒット予想ランキング

「宅配ボックス」への関心も高い

「宅配ボックス」は全体で4位、年齢層別・性別では女性の15~19歳を除くすべての年齢層・性別でベスト10に入った。

昨今、配送業界の人手不足や労働環境悪化がニュースなどで頻繁に取り上げられたこともあり、再配達削減につながる「宅配ボックス」への関心が高まっていると見られる。

「SNSショッピング」は女性の15~19歳(3位)と30~39歳(5位)でベスト10に入った。

2018年のヒット1位は「インスタ映え」

博報堂は2018年のヒット商品もまとめた。1位は「インスタ映え」、2位は「ドライブレコーダー」、3位は「フリマアプリ」。「宅配ボックス」は13位だった。

博報堂が発表した2018年 ヒット商品ランキング
2018年のヒット商品ランキング

調査概要

「2019年 ヒット予想」は、世の中で注目されたと思われる商品やサービス、コンテンツなどを生活者に提示し、「2019年以降、話題になりそう/人々の生活に普及・浸透していそう」と思うかを調査したもの。「そう思う」「ややそう思う」といった予想の強弱を反映するよう、結果をポイント化してランキングを作った。

  • 調査概要:新聞・雑誌・Webなどから、2018年、生活者が関心を示した、世の中で注目されたと思われる商品やサービス、 コンテンツ、出来事など約350事例を収集し、うち80項目について調査
  • 調査地域:首都圏、京阪神圏
  • 調査手法:インターネット調査
  • 調査対象:15~69歳の男女1008人(有効回収数) 調査時期 2018年9月28日~10月2日
  • 企画分析:博報堂生活総合研究所
  • 実査集計:株式会社 H.M.マーケティングリサーチ

渡部 和章

ライトプロ株式会社 代表取締役

渡部 和章(わたなべ・かずあき)

新聞社で約7年半、記者を務めた後、2015年に編集プロダクションのライトプロを設立して代表に就任。編集者兼ライターとしても活動中。

趣味は料理と漫画を読むこと。東京都在住。1983年生まれ。

渡部 和章

ヤフーのショッピング取扱高(中間期)は3487億円、伸び率は24.3%増

7 years ago

ヤフーの2018年4~9月期(中間期)における「ショッピング事業」の取扱高は、前年同期比24.3%増の3487億円だった。四半期ごとの取扱高は、4~6月期(第1四半期)が同25.3%増の1752億円、7~9月期(第2四半期)は同23.3%増の1735億円。

ヤフーの2018年4~9月期(中間期)における「ショッピング事業」の取扱高は、前年同期比24.3%増の3487億円
ヤフーの物販系ECの取扱高ベース(2Qベース、画像は決算説明会資料からキャプチャ)

ショッピング事業は「Yahoo!ショッピング」とアスクルの日用品通販「LOHACO」、ペット用品ECを手がけるチャームの取扱高を合計したもの。

「Yahoo!ショッピング」は取扱高が伸びているものの、ショッピング広告売上収益とショッピング決済利益を含む事業収益は2018年4~9月期時点では赤字。

eコマース取扱高は10.7%増の9317億円

2018年4~9月期(中間期)における「eコマース取扱高(物販)」は、同10.7%増の9317億円だった。

「eコマース取扱高(物販)」は「ヤフオク!」「ショッピング事業」「アスクルBtoB」「その他」の取扱高の合計値。カテゴリー別では「ショッピング事業」の成長率が高い。

ヤフーが展開するショッピング広告の売上収益も伸びている。2018年7~9月期のショッピング広告売上収益は、同約28%増の71億円だった。

ショッピング広告売上収益とは、ヤフー単体におけるショッピング広告売上収益と、「Yahoo!ショッピング」出店ストアに販売している「ストアマッチ」などの売上収益、 「Yahoo!ショッピング」出店ストアが出稿している検索連動型広告、YDNなどの売上収益の合計値。

実店舗向けスマホ決済「PayPay」を開始

ヤフーは10月5日、実店舗向けのスマホ決済サービス「PayPay」の提供を開始した。ヤフーとソフトバンクの合弁会社PayPayが運営している。

「PayPay」のサービス開始に伴い、ヤフーのモバイルペイメント事業の主体はPayPayに移行した。

ヤフーは10月5日、実店舗向けのスマホ決済サービス「PayPay」の提供を開始
スマホ決済サービスの競合比較(画像は決算説明会資料からキャプチャ)

「PayPay」は現在、コンビニの「ファミリーマート」や「ミニストップ」、家電量販店の「ヤマダ」や「エディオン」、牛丼チェーンの「松屋」、居酒屋の「白木屋」や「笑笑」、ドラッグストアの「セイムス」などで利用できる。

ヤフーは10月5日、実店舗向けのスマホ決済サービス「PayPay」の提供を開始
スマホ決済の投入でリアル進出を加速していくという(画像は決算説明会資料からキャプチャ)

渡部 和章

ライトプロ株式会社 代表取締役

渡部 和章(わたなべ・かずあき)

新聞社で約7年半、記者を務めた後、2015年に編集プロダクションのライトプロを設立して代表に就任。編集者兼ライターとしても活動中。

趣味は料理と漫画を読むこと。東京都在住。1983年生まれ。

渡部 和章

InstagramをECビジネスの売上UPにつなげたい人は押さえるべき利用者のインサイト

7 years ago

全世界での月間アクティブアカウント数が10億に達したInstagram(インスタグラム)。日本国内では「インスタブーム」の火付け役は若年層だが、現在は30~40代など幅広い層に利用者が広がっている。2018年6月にはフィード投稿から商品が購入できる「ショッピング機能」を国内で導入。ベイクルーズやZOZOなどが利用し、実績を上げつつある。9月には、投稿内容が24時間で消える「ストーリーズ」にもショッピング機能を拡大した。Instagramをビジネス活用する上で必要な最新情報と、EC事業拡大における活用のヒントを探る。

Instagramはどんな人が、どのように使っているの?

月間アクティブアカウント数が10億を超えたInstagramのデイリーアクティブアカウント数は5億、全体の80%は米国以外で利用されている。

国内では2018年11月1日の発表時点でアクティブアカウントは2900万。2017年10月の発表では2000万だったので、1年で900万も増えたことになる。

Instagramのデイリーアクティブアカウント数は5億、全体の80%は米国以外で利用
デイリーアクティブアカウント数は5億、全体の80%は米国以外で利用されている

ちなみにこの2900万という数字だが、12歳から65歳の日本の人口を考えると約4人に1人ということになる。若年女性以外にも、かなり裾野が広がっている。(鈴木大海執行役員本部長)

フェイスブックジャパン 執行役員 本部長 鈴木大海氏
フェイスブックジャパン
執行役員 本部長 鈴木大海氏

男女比は女性が57%、男性が43%。5人に1人が朝起きてすぐInstagramをチェックしているという。毎日Instagramで検索機能を利用する人も20%、そのうち、検索した後、何らかのアクションを起こす人は42%となっている

何らかのアクションというのは、たとえばWebサイトで詳しい情報を調べたり、友達に話したりすることなどを指している。それくらい、Instagramは国内利用者にとって情報を得たり、そこから行動を起こしたりするきっかけになっている。(鈴木執行役員)

Instagramユーザーは、5人に1人が、朝起きてすぐInstagramでフィードなどを確認する
5人に1人が、朝起きてすぐInstagramでフィードなどを確認する

日本特有のInstagram活用がある。ハッシュタグ検索、日本は世界の3倍

国内における特徴的な利用方法として、ハッシュタグ(#)の利用があげられる。ハッシュタグとは投稿に関連するキーワードを付けることで、検索を容易にするもの。人気のハッシュタグをデータでみると、グローバルでは「#love」「#photography」など単語が上位に出てくる一方、日本では「#写真好きな人と繋がりたい」など、文章のようなハッシュタグが人気を集めるという独特の傾向が見られるという。また、日本の利用者がハッシュタグで検索する回数はグローバルと比較すると3倍以上となっている。

旅行、スポーツ、ペットなど利用者が見るコンテンツが多様化

Instagramでよく見るコンテンツのカテゴリーを利用者に聞いた2017年の調査では、2015年の結果と比較し、旅行、動物・ペット、スポーツ、料理などのコンテンツが50%以上増加していた。写真やアート・デザインのコンテンツは引き続き人気はあるものの、増減でいうとマイナスとなっている。利用者が好むコンテンツが多様化しつつあるといえる。

Instagramで利用者がよく見るコンテンツの種類
Instagramで利用者がよく見るコンテンツの種類

利用者の80%は何らかのビジネスアカウントをフォロー

企業がInstagramを活用する事例も増えている。フェイスブックジャパンの調査によると、Instagram利用者の80%が何らかのビジネスをフォローInstagramで新しい商品やサービスを知った人は60%、そのうち75%の人は何らかの行動を起こしている

Instagram利用者の80%が何らかのビジネスをフォローしている
Instagram利用者の80%が何らかのビジネスをフォローしている

たとえば、スポーツに興味がある利用者のうち、Instagramでお気に入りのチームやプレーヤーの最新情報を入手している人は54%、自動車に関心がある人のうち、自動車の購入時にInstagramの影響を受けた人は59%などとなっている。

Instagramでは、スポーツに興味がある利用者のうち、Instagramでお気に入りのチームやプレーヤーの最新情報を入手している人は54%、自動車に関心がある人のうち、自動車の購入時にInstagramの影響を受けた人は59%
ビジネスと利用者のつながりについて

ストーリーズ投稿全体の50%以上が動画

Instagramを使って広告を配信することも可能。フィード広告では、写真や動画、カルーセルなどのフォーマットを揃えており、認知向上やアプリのインストールまで、さまざまな目的のキャンペーンを出稿できる。

Instagramには投稿した写真や動画が24時間で消えるストーリーズという機能もあり、ストーリーズへの広告出稿も可能。ストーリーズ広告ではフルスクリーンの縦型フォーマットを利用し、没入感のある広告を表示することができる。

1つの広告に最大で3点の異なる写真、動画、リンクを組み合わせて出稿できるカルーセルや、画面のスワイプ・タップ操作によりインタラクティブな方法でブランドのストーリーを伝えることできるインスタントエクスペリエンスなど、フォーマットも多様。もともと、ストーリーズに投稿されるコンテンツ(オーガニック投稿 )の半数以上が動画ということもあり、動画クリエイティブが映えるのもストーリーズ広告の特徴と言える。

Instagramでは、ストーリーズ広告は動画活用が進んでいる
ストーリーズ広告は動画活用が進んでいる
Instagram広告はブランディング、ダイレクトレスポンスのどちらでも活用可能
Instagram広告はブランディング、ダイレクトレスポンスのどちらでも活用可能

Instagram広告はフェイスブック広告と同様の仕組みなので、出稿媒体や時期、ターゲットなどついては、「基本的にプラットフォーム側のアルゴリズム、そして搭載しているAIにお任せいただいて自動配信した方が、結果的にはより合理的に安価に配信できるという特徴がある」(鈴木執行役員)。そして、鈴木執行役員は次のように続ける。

ターゲットの範囲を狭く設定していくほど、CPM(1000回表示あたりの広告コスト)の値段が上がっていく傾向がある。合理的に広告枠などをバイイングできる自動配信を活用し、費用対効果を高めることをオススメする。(鈴木執行役員)

Instagramは、キャンペーンの目的を問わず、すでに多くのビジネスに貢献している
キャンペーンの目的を問わず、すでに多くのビジネスに貢献しているという

広告のクリエイティブについては、「モバイルはコンテンツの消費速度が速いので、思わず親指を止めたくなるようなクリエイティブを意識してほしい。また、リフト調査などを使って広告効果を検証することも意識してほしい」(鈴木執行役員)としている。

Instagram広告の効果を高めるための基本
Instagram広告の効果を高めるための基本

Instagramにショッピング機能を導入

2018年6月、Instagramのショッピング機能を日本でもローンチした。EC事業者、特にアパレルや化粧品、雑貨などの小売企業に注目してもらいたい機能という。投稿画像に写っている商品に、商品名や価格の入ったタグ(吹き出しのようなアイコン)を付けることができ、そのタグをタップすると、さらに細かい商品の詳細をアプリ内で表示できる。

商品タグは、1つの画像につき5つまで設定可能。商品の詳細ページに飛んだあと、興味がある利用者は「ウェブサイトで見る」ボタンをタップすることで、ECサイトの商品ページに直接飛ばすという仕組み。国内企業では、すでにベイクルーズやZOZOなどが利用している。

Instagramの世界観やUIはそのままに、利用者を商品購入までスムーズに誘導することができる。購入リンクからの遷移率も非常に良い評価をいただいている。(鈴木執行役員)

Instagramのショッピング機能「Shop Now」は、フィード投稿からシームレスにショッピングできるのが特徴
フィード投稿からシームレスにショッピングできるのが特徴

米国ではショッピング機能導入の結果、トラフィックは25%、収益は8%増加した事例もある。さらに、着こなしのアイデア投稿により、1200件以上の注文と10万セッション以上のトラフィックを獲得した例もある。

ストーリーズにショッピング機能

9月18日から、24時間で投稿内容が消えるストーリーズもショッピング機能に対応した。ストーリーズは通常のフィードとは別に、ホーム画面上部に表示される。フォローしているアカウントが写真や動画を投稿すると、アカウントのアイコンに虹色のリングが付く。

「ストーリーズが人気を集めているのは、24時間で消えるため気軽に投稿できること。見る側からすれば24時間で消えるので、すぐチェックしたくなるのが特徴」(鈴木執行役員)としており、機能を導入してから2年足らずの2018年6月時点で、世界で毎日4億アカウントが利用するほどの人気を集めている。

ホーム画面のファーストビューに表示されるため、「ストーリーズ」のコンテンツは利用者から閲覧されやすいという
ホーム画面のファーストビューに表示されるため、「ストーリーズ」のコンテンツは利用者から閲覧されやすいという

石居 岳

石居 岳(いしい・がく)

フリーライター、ジャーナリスト。

石居 岳

イオンが進める「デジタルシフト」のいま、絶好調のワークマンに学ぶ「データ経営」 ―― ネッ担フォーラム2018秋の見所

7 years ago

ネットショップ担当者フォーラムは、年次の大型セミナーイベント「ネットショップ担当者フォーラム2018」を11月13日(火)と14日(水)の2日間にわたり開催します(事前登録制、参加費無料)。

セミナーは主に2つの内容で構成されています。

  • 主催者セッション:編集部がその時々の業界動向にあわせて企画
  • スポンサーセッション:事業者さんやソリューション企業さんによる講演

全50セッション予定(同時開催イベント含む)と、小売企業の事例、業界動向やソリューションなどの最新情報が集うイベントですが、盛りだくさんすぎて何を聞けばいいのか悩んでしまう……。そんな方のために、編集部おすすめのセッションを紹介します。

全部……は紹介しきれないため、この記事では編集部企画の基調講演やパネルセッションを中心にお届けします(全講演の詳細はイベントページで確認ください)。

デジタルシフト戦略を掲げた「イオン」の最新動向

ポイント!
  • 大手小売のデジタル改革の最新状況を初公開
  • デジタルを活用した売上向上のヒントが得られる

イオンは2017年12月、2020年に向けた中期経営計画において「デジタルシフト」の加速をグループ戦略の1つとして掲げ、そのなかで従来の店舗中心の投資から、IT・デジタル・物流への投資シフトを打ち出しています。

グループ売上高のうち、デジタルの比率は2016年時点で0.7%でしたが、2020年に12%まで伸ばすという目標も計画されています。

2018年4月には、デジタルシフトの一環として「デジタル事業担当」部門を新設。基調講演では、執行役 デジタル事業担当の齊藤岳彦氏がイオンとして初めて、「デジタルシフト」をテーマに戦略を語ります。

大手小売のイオンがどのように改革を進めてきたのか、その戦略を知るチャンスです。

達人たちが語る物流顧客体験トークセッション

ポイント!
  • 業界トッププレイヤーたちが考える物流の現状と未来を知る
  • トークセッションならでは、ホンネが聞けるのはここだけ
  • 自社の物流は今のままでいいのか将来のヒントが得られる

本トークセッションでは、ココカラファインのEC責任者などを歴任した郡司氏、丸井のオムニチャネル事業本部長などを歴任した臼井氏(現在は丸井グループのムービング)、総合物流業の東京システム運輸HDの森谷氏の3名が登壇。

EC、小売り、物流を熟知している3人が、庫内作業、採用・人件費の課題、機械化の現状と未来、店舗在庫EC(ネットスーパー)ビジネスなど、さまざまななテーマについて本気のトークを繰り広げます。

みなさんは、日頃から物流を意識していますか? ある海外の調査では、「配送が通販サイト利用の決め手になる」との回答が5割を超えています。

EC・小売業に欠かせない物流の最新事情、現場のホンネを知りたい方は要チェックのセッションです。

カジュアル・アウトドアウェア市場へ進出! 「ワークマン」のデータ経営

ポイント!
  • 業界注目の市場参入を支えるデータ経営・変革とは
  • 小売・経営・ECのスペシャリストが経営を語りつくす

作業服市場で圧倒的なシェアを誇るワークマンは、2018年からカジュアルブランド強化の一環として、新業態「WORKMAN Plus(ワークマンプラス)」の出店を進めています。

ワークマンプラスは、日経トレンディの「2019年ヒット予測ランキング30」で1位に輝き、若い女性客も多く訪れるなど、業界内で注目を集めています。「ワークマン=作業服」のイメージはもう古いのです。

個人向け作業服市場で『完勝』したので、次は低価格アウトドア市場に参入し25%のシェアをめざす」(ワークマン 常務取締役 土屋哲雄氏)という同社のデータ経営を、デジタルシフトウェーブ 鈴木康弘氏、オムニチャネルコンサルタント 逸見光次郎氏とともに、トークセッションで明らかにします。

日本独自の取り組みで成長! 日本トイザらスのEC×店舗融合

ポイント!
  • 全国約160店舗とオンラインをつなぐオムニチャネル戦略がわかる
  • 実店舗とオンラインチームが協業するための秘訣とは

2日間のイベントを締めくくるのは、日本独自の取り組みで成長を続ける日本トイザらスの基調講演です。

日本トイザらスでは、店舗にいながらオンラインストアで注文できる「ストア・オーダー・システム」をはじめ、消費者がタッチポイントを意識することなく買い物ができる「シームレス・リテーリング」(オムニチャネル)を推進。

「いつでも」「どこでも」「どのようにでも」買い物を楽しめるシームレスな体験を提供し、玩具・ベビー用品のリーディングカンパニーとして顧客の信頼を得ています。

店舗とオンラインの融合を果たし、優れた顧客体験を実現する日本トイザらスの取り組みは、オムニチャネル時代の指針となることでしょう。

◇◇◇

駆け足で紹介しましたが、ここの載せたのはほんの一部です。

うちはSMBなので大手企業の話はあまり参考にならなさそう。
毎日の業務が忙しくて参加する暇がない。

という事業者の方もいると思いますが、同業者(競合)の取り組み、最新ソリューションやツールの情報を知ることは、“今すぐ”は使えなくても、後々の武器になります。多くの引き出しを持っておくことは、これからの経営や事業計画を練るうえで必ず役立つはずです。

すでに満席に近いセッションもありますので、気になる講演を見つけたら、早めにお申し込みください。

どういった会場の雰囲気なのか事前に知りたい方は、2017年度のレポート記事もおすすめです。

ネットショップ担当者フォーラム編集部

KDDIグループ、ECモール「Wowma!」でふるさと納税を開始

7 years ago

KDDIコマースフォワードは10月31日、総合ショッピングモール「Wowma!」内に、「ふるさと納税」の返礼品を集めた専用ページ「Wowma! ふるさと納税」を開設した。

返礼品の選定から寄附の申し込み、寄附金の支払いまでサイト内で行える。自治体と共同開発した独自の特産品も提供する。

現在、100以上の自治体が登録しており、今後、登録数を拡大する予定。

KDDIコマースフォワードは、総合ショッピングモール「Wowma!」内に、「ふるさと納税」の返礼品を集めた専用ページ「Wowma! ふるさと納税」を開設
「Wowma! ふるさと納税」を開設

「Wowma! ふるさと納税」では、確定申告の手続きなしで控除を受けられる「ワンストップ特例制度」を利用できる。

また、「auかんたん決済」に対応しており、auの通信料金と合算して寄付金を支払うことが可能。

寄附時には「WALLETポイント」「Wow!スーパーポイント」などのポイントも利用できる。

KDDIが地方自治体と共同開発した、独自の特産品も返礼品として提供する。たとえば、兵庫県豊岡市と共同開発した、無農薬で育てたコメ「コウノトリ育むお米」を返礼品として提供している。

「Wowma! ふるさと納税」では「ブランド牛特集」「うなぎ特集」「海鮮特集」といった特集ページを開設。「新着の返礼品」のカテゴリーページもある。

渡部 和章

ライトプロ株式会社 代表取締役

渡部 和章(わたなべ・かずあき)

新聞社で約7年半、記者を務めた後、2015年に編集プロダクションのライトプロを設立して代表に就任。編集者兼ライターとしても活動中。

趣味は料理と漫画を読むこと。東京都在住。1983年生まれ。

渡部 和章

【楽天とKDDIの提携】楽天の配送インフラを「Wowma!」出店者に提供するその内容は?

7 years ago

楽天とKDDI、沖縄セルラー電話は11月1日、決済や物流、通信分野で事業連携すると発表した。

今回の連携は、携帯電話事業を円滑に始めたい楽天と、ECモールや決済分野を伸ばしたいKDDIの意向が合致したもの。物流面の連携では、KDDIグループのECモール「Wowma!」の出店者に、楽天の物流サービスを提供していく。

楽天とKDDI、沖縄セルラー電話は11月1日、決済や物流、通信分野で事業連携すると発表
楽天とKDDIの連携内容

たとえば、自社で配送網を持たないKDDIグループのECモール「Wowma!」にとり、先行する「楽天市場」「Amazon」といった競合モールを追いかけるには、配送サービスの拡充が欠かせない。

一方、自前の通信網を持たない楽天にとって、基地局などの設備をゼロから構築するには多大なコストや時間が必要になる。楽天はスタート時点までにすべての通信網を自前で整備するのは難しいと判断。KDDIから通信網を借り受けることにより、スタート当初から全国で第4世代(4G)高速通信を提供できる体制を整える。

料金などの詳細は今後詰めていくとのこと

物流サービス分野における提携について、3社はプレスリリースで次のように説明した。

楽天は、KDDIが運営する総合ショッピングモール「Wowma!(ワウマ)」に対して、楽天の物流サービスを2019年4月より順次提供します。両社は、楽天が推進する「ワンデリバリー」構想を共に進めていくことで、物流業界における社会課題に対して、効率的な物流・配送サービスを実現し、国内EC市場の健全な持続的発展を目指します。

今回の連携策は、KDDIコマースフォワードが運営する総合ECモール「Wowma!」で扱う商品を、楽天の物流網で配送するというもの。

具体的には、楽天グループのRakutenDirectが販売している生活用品や日用品のほか、「楽天ブックス」や一部出店者の商品を配送する楽天独自の配送サービス「Rakuten EXPRESS」、「楽天市場」の出店者向けの物流サービス「楽天スーパーロジスティクス」といった配送や物流網を活用し、「Wowma!」で売れた商品を消費者に届ける体制作りを進めるという。

楽天は現在、購買データに加え、配送データも自社管理することで商品の注文から配送までの仕組みを整備し、受け取りの利便性向上、再配達削減、配送状況の可視化などの実現をめざす「ワンデリバリー」構想を進めている。

ユーザー:ほしい時にほしい物を一度で受け取り
店舗様:注文からお届けまで一気通貫に 楽天:外部企業とも協力し、物流を一元管理
「楽天EXPO2018」で公表された「ワンデリバリー」構想

この構想下では、「基本的には楽天が全店舗の全荷物を預かりすべて配送」「将来的には楽天市場で扱う商品以外も配送する」「楽天市場以外の荷物を預かる場合、同一のタリフで提供する」――といったオープンプラットフォームの実現に向けた方針も掲げる。

楽天は将来的なオープン化に向け、まずは「Wowma!」出店者へ配送インフラを提供する。物流面でのシステム連携、物流・配送回りの利用料金に関しては今後詰めていくという。

楽天スーパーロジスティクス新料金表(税別、2018年9月1日から)
楽天スーパーロジスティクス新料金表(税別、2018年9月1日から)

楽天にとって今回の連携は、物量の増加が見込めるため、スケールメリット(規模拡大効果)が見込める。KDDIグループは楽天の物流・配送インフラを活用することで、スピード配送といった配送サービスのメニューを出店者に提供できるようになる。

「楽天EXPO2018」で公表された「ワンデリバリー」構想に関するイメージ動画

瀧川 正実

ネットショップ担当者フォーラム編集部 編集長

通販・ECに関する業界新聞の編集記者、EC支援会社で新規事業の立ち上げなどに携わり、現在に至る。EC業界に関わること約13年。日々勉強中。

瀧川 正実
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3 分 52 秒 ago
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