「何が売れているんですか?」「これからどうなりますか?」――。「母の日」「父の日」、お中元、初夏のECモールセールなどがあった2025年の上半期を終えて、こうした質問が数多くありました。それと同じくらい寄せられた質問が「これからのSEOはどうなりますか?」「AIでSEOは終わりますか?」でした。この連載でも何度か書きましたが、結論から言えば「これまでと変わりません」。進化と変化はしていくでしょう。それは消費行動、市場、SEOもすべて同じだと思います。自分たちが何者なのか、どんな人に向けて何を販売し、そのために何が提供できて、何を発信しているのか。AIが進化してもSEOが変化しても、やるべき基本原則は不変なのではないでしょうか。
施策を積み重ねることで成功につながる
“不調”の声が多いEC業界で、あなたのお店の業績は伸びていますか? 売り上げを伸ばすために誰もが共通して取り組むべき施策【ネッ担まとめ】 | ネットショップ担当者フォーラム
https://netshop.impress.co.jp/node/14558
中林さんが担当した前回の「ネッ担まとめ」記事で紹介されていることと同じことを感じています。
2025年前半のEC業界動向を振り返って、今後の運営方針を考える | コマースデザイン
https://www.commerce-design.net/blog/archives/7137
この状況でも好調を維持している事業者さまには、いくつかの共通点があります。
弊社支援先の中での傾向ではありますが、
- 本店(独自ドメイン店)が強い:前述のとおり、利益貢献度で「本店があるから利益を維持できている」との声が多い
- 独自性の強い商品:ニッチ市場で上位を堅持、法規制のある商品、単純注文ではないカスタマイズ型の商品
- メディア露出力:取材されやすい/バズりやすい、尖った商品やサービスがある
コマースデザインの坂本さんとはしばしば情報交換を行うのですが、互いに「ですよね」ということが多く、やはり自社の強み、独自性を磨いて尖らすことができている店舗は元気な印象です。
これは同じく、石田さんの「ネッ担まとめ」記事とも共通しており、「ヒットは奇跡ではない」ということに尽きます。
ヒットは「奇跡」ではない! 1年で月商1000万円を突破した渋谷の居酒屋「雲隠レ」に学ぶ、小さな改善の積み重ね【ネッ担まとめ】 | ネットショップ担当者フォーラム
https://netshop.impress.co.jp/node/14619
堅調な売り上げやヒットは、奇跡でもまぐれでも偶然でもなく、たゆまぬ努力の積み重ねによって必然的に手繰り寄せられたものだと感じる店舗さんが多いなぁと。「2人の記事を見逃していた」という人は、読んでいただけるとうれしいです。
私のクライアントとも、「自分たちの当たり前はお客さんの当たり前じゃない」「『今さら』という考えを捨てて、常に自分たちの商材の“いろは”を伝えることを忘れない」「専門用語や業界用語を使う時は、平易な表現も併記する」など、常に「普通のことこそ手を抜かず、丁寧に説明する」ということを念頭に置いて、コンテンツ作りに取り組んでいます。
基本は不変、それを強く確信するような話が多かったこのひと月。夏季休暇を挟んで心機一転、秋から冬の商戦に向けて仕込みを始める、ECに携わる皆さんに伝えたい記事をまとめました。
要チェック記事
SEO関連
【Google公式】SEOは死んでない!Search Central Live 2025参加レポート | SEOならミエルカチャンネル
https://www.youtube.com/watch?v=vi74vOTn03E
7月23日~25日にかけて、タイ・バンコクで開催されたGoogleのイベント「Search Central Live Deep Dive Asia Pacific 2025」。Googleのゲイリー・イリェーシュ氏が語った「SEO is not dead.(SEOは死んではいない)」という言葉には、多くのSEO担当者が勇気をもらったのではないでしょうか。イベントの様子を詳細にまとめている動画は必見です。
検索における AI : クエリ数が増加しクリックの質が向上 | Google Japan Blog
https://blog.google/intl/ja-jp/products/ai/
Google検索部門の責任者であるエリザベス・リード氏による発表文。「『AI Overview(AIによる概要・AIO)』によって、総トラフィックが大幅に減少した」と示唆するレポートとは対照的な内容になっています。アクセスの質が向上している点に注目です。
アクセス数は大きな数字になり、EC事業者にとって癒やしの数字ともいえますが、店舗にとって最も重要なのは売り上げ、コンバージョンです。アクセス数の増減に一喜一憂せず、AIからのリファラーや、CVRの変化などを新たなKPIに設定していくことも、事業者側が変化・進化していくポイントですね。
Googleの「AI モード」が日本を含む、180以上の国・地域で提供開始。新たに「エージェント機能」も実装 | Web担当者Forum
https://webtan.impress.co.jp/n/2025/08/22/49938
2025年3月の「AI モード」発表から約半年、ようやく日本を含む多くの国・地域に拡大されました。Google関係者は口をそろえて「大切なのは従来のSEO、AI最適化は必要ない」と主張することが増えてきたなかでの、世界規模の導入。「AI モード」がもたらす検索の近未来の姿がどうなるのか、注視していきたいですね。
マーケティング関連
鍛冶職人によるDX!能登から世界へ届ける「ふくべ鍛冶」のサービス開発と集客 | コマースピック
https://www.commercepick.com/archives/70940
「原点はお客様の喜ぶ顔、そんな事業を続けるためにEC参入へ」
お客さんが人である以上、この気持ちに立ち返れば「AI対策」ではなく、ユーザーの悩み事、困りごとにフォーカスしたコンテンツを作り続ければSEOになるはずですよね。
「今は、売上でいうとECが3~4割、店舗が1割で、あとは卸という感じです。」
ECモールでは突然のアカウント停止などのリスクもゼロではない以上、一極集中の売り上げではなく、OMOも含め、こうしたバランス感覚は非常に大切だなと感じます。
「サントリー天然水」スリム化が“奏功” 前年比売上165%につながった“課題”とは | 大人んサー
https://otonanswer.jp/post/290894/
「『一人でたくさん飲みたい人向けの“パーソナル大容量”』という考え方に発想を転換し、2024年の売上が、前年比165%増加しました。」
近所のリカーショップでは2Lボトルが108円ほどで売られているのに、1Lは158円でした。マクドナルドの「チーズバーガー2個のほうがダブルチーズバーガー1個よりも安い」と似たプライシングかと思うのですが、大事な視点ですね。
私のクライアントの食品ECにおいて、ユーザーレビューをAIでマイニングしてみたところ、「添付のソースが余る」「余るが他のレシピに使える」といった声が散見されました。そのため、添付のソースを小型化し、それまでなかったソース単品商品を売り出すと意外と好評だったことがあります。
原材料の高騰化、少子化、核家族化といったこともあると思うのですが、かつて5食パックだった即席麺が3食セットにリニューアルされている例もありますね。SKUの少ない店舗では、サイズやセットを見直して商品構成を増やすことで、検索にヒットしやすいお店作りにつながるかもしれません。
大ヒット家電「ゴリラのひとつかみ」は失敗から生まれた?シリーズ累計100万台突破。担当者が明かす開発背景 | HUFFPOST
https://www.huffingtonpost.jp/entry/story_jp_689c2401e4b03bdc474fe293
「商品開発の会議では『もっとおもしろくできないの?』という会話がよく交わされます。ある意味、口コミを生み出しやすい商品を出していると言えるかもしれないです」
2024年にヒットして話題になった、ふくらはぎに特化した健康家電「ゴリラのひとつかみ」。ネーミングセンスには脱帽ですが、単にウケ狙いや奇をてらうのではなく、しっかりした市場調査から始まっていることが根底にありました。
特価よりも特化。まだ見ぬお客さんの「こういうのが欲しかった」を探すことで、少し踊り場感を感じるEC市場も切り拓けるかもしれませんね。
今、みなさんにお伝えしたいこと
“I have not failed. I've just found 10,000 ways that won't work.”「私は失敗したことはない。うまくいかないやり方を1万通り見つけただけだ。」 | Thomas Alva Edison(トーマス・エジソン):アメリカの発明家
https://www.toshin.com/proverb/story-p.php?id=68(参考情報として大学受験の予備校・塾 東進「Proverb(ことわざ)・格言(名言)」のURLを記載しています)
毎年8月~9月に経済産業省が発表する「デジタル取引環境整備事業(電子商取引に関する市場調査)」。間もなく令和6年度の取りまとめが出るかと思いますが、冒頭で言及した通り、EC市場の成長は続くものの鈍化はしていると想定されます。
そんななかでも、元気な企業は発想の転換や市場調査のやり直しなどで打開策を見出しています。先日会った経営者も、発明王エジソンの言葉を借りて「失敗したなんて思ったことはありません。うまく行かなかった方法が多く見つかれば、それだけ成功に近づいている証拠だ」と笑いながら話していました。
ECやSEOを主業にしていると好事例を取り上げてもらえることも多く、まるで私たちが“魔法の杖”を持っているかのように期待する人も少なくありません、しかし、事業の成功もヒット商品の誕生も、うまくいかない方法をたくさん見つけられたチャレンジの数に比例していくのではないでしょうか。
仕事の相談を受けた際、はじめに、簡単に成功できる方法や事例ではなく、そこにつながった、うまくいかなかった方法も含めて話をします。うまく行かなかったSEO施策や、売れなかった商品を出してみるというチャレンジをどれだけ行えたか、それも含めてどれだけ自分たちの言葉で経験を語れているか。大切なのはそこではないかと思います。
その積み重ねこそが、Googleが掲げる検索で大切な「E-E-A-T」や「労力、独自性、正確性、才能や技術」に違いないのではないでしょうか。どうか、みなさんもうまく行かない方法をたくさん見つけてみてください。
それではまた次回! 酒匂(さこっち)の「ネッ担ニュースまとめ」をよろしくお願いいたします。
※このコンテンツはWebサイト「ネットショップ担当者フォーラム - 通販・ECの業界最新ニュースと実務に役立つ実践的な解説」で公開されている記事のフィードに含まれているものです。
オリジナル記事:SEOに一撃必殺も奇跡もない。すべては「“うまく行かない方法”をどれだけ見つけられたか」という積み重ねの上にある【ネッ担まとめ】 | 新・ネットショップ担当者が知っておくべきニュースのまとめ
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