「越境EC市場への参入を検討しており、日本企業の成功事例を知って参考にしたい」「越境ECで成功するための要因が知りたい」。世界的な越境EC市場の拡大を受けて、越境EC市場への参入を検討している方もいるのではないでしょうか。本記事では「日本企業の越境EC成功事例14選」と「越境ECにおける人気商品ランキング」を中心に解説します。越境EC市場参入に向けての判断に役立つ内容のため、ぜひ最後までご覧ください。
越境ECとは?
越境ECとは、国境を越えて行われる電子商取引のことです。たとえば、ECサイトを通じて「日本企業が海外の消費者に向けて商品を販売する」「日本の消費者が海外から商品を購入する」といった取引が越境ECに該当します。
越境ECを始める前に知っておくべきこと
近年、越境ECは非常に多くの企業が乗り出し始めています。日本国内だけでのEC事業に比べて、単純に市場が大きくなるため「売り上げを高めやすいのではないか」と感じている方も多いことでしょう。
しかし実際は、国内ECと同じ感覚で越境ECに臨み、失敗してしまう企業が多いのも事実です。日本企業の成功事例を紹介する前に「事前に知っておくべきこと」を紹介します。
現地での知名度が必要になる
越境ECで商品を売るためには、現地での認知度が重要です。事前に越境先の国での認知度を高める施策が必要です。
そのために「SNSなどを通じてインフルエンサーマーケティングを行う」「現地のプロモーション企業とパートナー契約を結び活動する」などの工夫が必要になります。
なお、SNSは現地でのアクティブユーザーが多いアプリケーションを選ぶ必要があります。中国であれば「WeChat」や「Weibo」となります。韓国であれば「カカオトーク」などです。
越境先の国を正しく選ぶ必要がある
越境ECを行うにあたり、中国や東南アジアなどの人気の国をターゲットにする方も多いと思います。
しかし、進出する国を選ぶ際は、まずは現状のデータを確認して「どの国のユーザーが流入しているか」を確認しましょう。そのうえでロジカルに決める必要があります。
越境先の国の商習慣を把握しておく
越境ECを始める前には、必ず実際に現地に行きましょう。そこで「本当に自社商品が使われるか」を確認することをおすすめします。またプロモーション担当の企業とコンタクトを取ることもおすすめです。
消費者の習慣は国によって大きく変わります。これにより、意外な理由で顧客のニーズから外れてしまうケースは多々あります。
たとえば、ある化粧品会社は国内で販売していたシャンプーをヨーロッパで販売することになりました。しかし現地の人にモニターとして使ってもらうと「水質の違いによって泡立ちが悪くなり使われない」ということに気付きました。
こうした「現地だから体感できること」を知っておくべきですので、事前に現地に行って確認をしてみましょう。
また、特に越境ECで盲点になりがちなのが「商標登録」に関する問題です。商標が既に登録されている場合、本家であっても商標を使用できないという事態に陥る可能性があります。この場合、日本での販売実績があれば、手続き・裁判を経て認められるケースもあります。
「日本品質」を過信しない
特にアパレル分野などでは「日本品質の商品であれば売れる」という考えは過去のものになりつつあります。現在は海外製品の品質も大幅に向上しています。日本製の強みに頼った販売戦略は危険です。
先述したシャンプーの例でわかるように、商品の特性が地域にマッチするかどうかを調査することも重要です。たとえばシャンプーの場合「現地の水質と相性の良いシャンプー」を作る必要があります。
世界の越境EC市場規模
令和4年度の経済産業省の報告書によると、2021年の世界の越境EC市場規模は7850億USドルと推計されています。2030年には7兆9380億USドルまで拡大すると予測されており、越境ECの市場規模はますます大きくなる見込みです。(参考:経済産業省「令和4年度 電子商取引に関する市場調査報告書」)
日本とアメリカ・中国間の越境EC市場規模
世界のなかで、BtoC-ECの市場規模が大きい中国・アメリカと日本の越境EC取引額を紹介します。
世界でトップシェアを誇る中国消費者が日本事業者から購入した額は、2兆2569億円となっています。前年と比べると、5.6%増加しています。
また、アメリカ消費者が日本事業者から購入した額は1兆3056億円です。前年比6.8%増で、こちらも増加した結果となりました。
日・米・中のいずれの国家間でも取引額が増加しており、日本を取り巻くEC市場が拡大していることがわかります。
日本企業における越境ECの成功事例14選
世界のEC市場が拡大するなか、日本企業でも越境ECの成功事例が生まれています。ここからは、日本企業の越境ECの成功事例を紹介します。
ヤーマン
「ヤーマン」は、美容家電を中心に展開しているヤーマンが運営する越境ECです。中国の大手ECモール「天猫国際(Tmall Global)」が開催する「独身の日」のセールにおいて、電子美容機器の美容機器部門の販売実績5年連続1位を獲得しています。
中国の若い女性をターゲットにライブコマースを配信し、商品の魅力を伝えているのが特徴です。また、コロナ禍で在宅時間が長くなったことから、ヤーマンが扱う「美容健康機器」のカテゴリの人気が高まり、売り上げに直結しています。
BENTO&CO
「BENTO&CO」はベルトランが運営しており、実店舗もある越境ECです。弁当、箸、風呂敷、調理器具などの商品を取り扱っています。
ECサイト上のブログを通じて、商品の魅力を伝えて認知度アップにつなげています。また、リーマンショック後の世界情勢に「日本のお弁当箱」が受け入れられたことも追い風となって成功した事例です。
Tokyo Otaku Mode
「Tokyo Otaku Mode」は、アニメ・マンガの関連グッズを販売する越境ECサイトです。日本の強みであるアニメをはじめとするポップカルチャーに特化しているため、一貫性があるECサイトとなっています。
150ドルを超えるほとんどの商品に関しては「船便の送料無料」「EMS航空便は半額」といった、海外ユーザーが気軽に購入できるような工夫をしています。
北海道お土産探検隊
「北海道お土産探検隊」は、北海道に拠点を置く、山と小笠原商店が運営する越境ECです。「白い恋人」や「六花亭」をはじめとする北海道で定番のお土産品を販売しています。
翻訳機能を活用して海外からの問い合わせに対応し、外国語が堪能な人材が海外販売を担当するなどの取り組みにより、越境ECを成功させています。
SAMURAI STORE
「SAMURAI STORE」は、甲冑、兜、模造刀を販売する越境ECサイトです。サムライストアが運営しており、2002年に越境ECを開始してから多くの海外ファンが利用しています。主力商品がすぐわかるデザインのほか、目当ての商品にたどり着きやすいように「甲冑」「兜」「その他の商品」といったわかりやすいカテゴリ分けをしています。
また、世界で多く利用されているオンライン決済サービス「PayPal」の導入も海外ユーザーの利便性を高めています。発送に関しても、海外ほぼすべての国に対応している越境ECです。
トラスト企画
「トラスト企画」はトラスト企画が運営する越境ECです。「ニッサン・スカイラインGT-R」をはじめとした、国産車のパーツを販売しています。
海外に愛好家が多い車種の部品を販売し「日本の純正部品を購入したい海外ユーザー」のニーズに応えているのが特徴です。
Fake Food Japan
「Fake Food Japan」は、食品サンプルを製造・販売するJDクリエーションズが運営する越境ECです。本物の料理・食材のように精巧に作られたサンプルは、レプリカや小物類に加工して販売されています。
食品サンプルは、お土産として来日観光客からの人気が高く、越境ECでの販売も成功した事例です。
多慶屋
「多慶屋」は、東京都の御徒町に店舗があるディスカウントショップです。2015年時点で訪日外国人が年間約43万人訪れており、リピート買い促進のために越境ECに取り組んでいました。
実店舗に来店した訪日客に対し、ECサイトのURL・QRコードを記載したチラシを配付しています。その結果、気軽にリピート購入できる導線作りに役立ちました。また、中国の決済システム「Alipay(アリペイ)」を日本でいち早く導入し、中国ユーザーが購入しやすい環境を整えています。
GLOKEN
「GLOKEN」は、一般社団法人グローバルけん玉ネットワークが運営する越境ECです。けん玉の開発から製造まで行い、オリジナルなけん玉を多く扱っているのが特徴です。けん玉の販売だけでなく、情報発信も積極的に行っています。
けん玉の世界大会である「けん玉ワールドカップ」を開催しており、2023年には17の国と地域のプレイヤーが参加しています。オンラインでの参加も可能で、世界中のユーザーが楽しめるイベントを実施しています。販売から啓蒙活動まで行う越境ECサイトです。
Kakimori
「Kakimori」は、東京都台東区にある、ほたかが運営する越境ECです。高品質な文具を取り扱っており、越境ECを始める前から実店舗には海外のファンが訪れていました。実店舗1店とECサイトのみの運営に専念することで、ブランド価値をさらに高めることに成功しています。
「ECサイトとInstagramを活用したアメリカ・ヨーロッパの消費者に対するPR」や「ECサイトのコラムでの商品製作ストーリーの発信」「SNSでのコミュニケーション」などの取り組みにより、越境ECが成功した事例です。
CD Japan
「CD Japan」は、ネオ・ウィングが運営する越境ECです。CDや本といったカルチャー関連の商品を扱っており、20年以上もの歴史があるサイトです。
購入者に対し、ポスター、マウスパッド、写真などの限定の特典を付与し、「CD Japan」で購入する付加価値を付けています。また、英語・フランス語・スペイン語のカスタマーサポートを実施しており、幅広い海外ユーザーからの問合せに対応できる体制を整えています。
タビオ
「タビオ」は、全世界のマーケットをターゲットに展開している靴下専門のブランドです。運営するタビオは1968年に創業し、2021年10月から越境ECを開始しました。サイトのトップページでは上質なブランドを意識したデザインで、「日本製ならではの品質の高さ」や「細部までこだわる職人技」などのポイントを前面に押し出しています。
レトロアジア
「レトロアジア」は、日本の中古ゲーム機、ゲームソフトを販売する越境ECです。海外では入手するのが困難な、日本の中古ゲームに特化しています。
日本在住のフランス人男性が運営しており「海外ユーザーのニーズに合ったカテゴリ選定」や「刺さる商品の見せ方」などは、日本企業が越境ECに取り組むうえで参考になる事例です。
サクラマート
「サクラマート」は、ライズネクストが運営する越境ECです。日本で人気の高い食品や菓子類、化粧品、ホビーなどを中心に販売しています。2024年3月時点でアメリカや台湾、オーストラリアをはじめとした19か国への配送に対応しています。
「ポップなサイトデザインを採用している」「トップページでカテゴリ別に商品を表示している」といった点から、ブランディング・ビジュアル戦略が優れているのが特徴です。また海外ユーザーに商品が届くまでの期間が短く、丁寧に梱包されているのも人気の理由の1つです。
日本企業が越境ECを展開する方法
日本企業が越境ECに成功している事例からわかるとおり、越境ECの展開によって「販路拡大」や「売上向上」につながる可能性が期待できます。
日本企業が越境ECを展開する方法は、次の2つです。
自社ECサイトで始める
日本国内でECサイトを構築して、越境ECを始める方法です。既にECサイトを運営している場合は必要な機能を実装すれば、越境ECとして運営できます。
自社で越境ECを運営する場合、ターゲットとする国・地域に応じて、デザインや言語、決済方法、サポート体制などをローカライズする必要があります。サイト上で「自社の世界観が演出できる」「顧客情報が取得できる」などのメリットがある一方で、集客が難しい側面もあります。
越境EC用の現地モールに出店する
越境ECを始める際、現地のECモールに出店する方法もあります。たとえば、中国であれば「天猫国際(TmallGlobal)」や「京東国際(JD.hk)」、アメリカであれば「Amazon」や「eBay」などがあります。
「ECサイトの構築」や「多言語対応」などが不要なため、始めやすいのが特徴です。一方で出店する条件に「一定以上の売上を出している」という条件があるケースがあります。
さらに、保証金やソフトウェアサービス費、販売金額に応じた手数料、高額な初期費用がかかるモールもあるため、事業規模によっては出店そのものが難しい可能性があります。
日本企業が越境ECに取り組む3つのメリット
日本企業が越境ECに取り組むメリットは、次の3つです。
- 販路が拡大できる
- 実店舗より出店しやすい
- 実店舗の集客効果が生まれる
販路が拡大できる
日本国内だけでなく海外にも展開することで、新規ユーザーを獲得し、販路を拡大できます。また、日本製品の需要が高い国に進出することで、安定的に利益を生み出す可能性が高まります。
実店舗より出店しやすい
海外に実店舗を出店する場合、土地や倉庫の用意、店舗の建築、人件費などに莫大なコストがかかります。また、人材採用・育成や店舗の運営ルール策定などに手間がかかるため、コスト以外に時間も費やす必要があります。
一方、越境ECの場合はネット上で店舗を運営するため、実店舗と比べてコスト・手間が少なく済みます。インターネット環境さえあれば、どの国・地域であっても進出できるため、実店舗よりも出店しやすいのが特徴です。
越境EC・実店舗の集客効果が生まれる
越境ECと実店舗の両方を運営している場合、越境ECを通じて購入したユーザーが訪日した際、実店舗に訪れてくれるケースがあります。一方、訪日観光客が実店舗で買い物して帰国したのちに、越境ECでリピート買いしてくれるケースもあります。
このように越境ECは、相乗効果を生み出して「顧客のロイヤリティ向上」を実現させることが可能です。
日本企業が越境ECに取り組む際の3つの注意点
日本が越境ECに取り組むメリットがある一方で、以下のような注意点もあります。
- 輸送に多くのコストがかかる
- 現地の法律・規制への対応が必要
- 現地の言語への対応が必要
輸送に多くのコストがかかる
海外に自社倉庫がない場合、日本国内から商品を発送します。送付先の国・地域によっては、配送料以外に関税もかかるため、商品を届けるために多くのコストがかかる点を認識しておきましょう。
購入者に関税の支払い義務が生じる場合、支払額が高額となって受け取りを拒否されるケースがあります。そのため関税に関する情報を明記し、購入者にも事前に認識してもらうようにしましょう。
また、輸送に多くの時間・プロセスが必要な分、紛失・破損などのリスクも高まります。そのため「保証金額が高い配送会社を選ぶ」「丁寧に商品を梱包する」といった対応も必要です。
現地の法律・規制への対応が必要
国・地域ごとに異なる法律・規制が定められているため、現地のルールに則った対応が必要です。
たとえば、EU加盟国では「GDPR(一般データ保護規則)」が定められています。EUに居住する個人のデータの収集・保存および使用にあたって、事業者が従うべき規制が定められています。違反した場合「最大2000万ユーロ」または「全世界年間売上の4%まで」のいずれか高い方が課されます。
このように国・地域によって、さまざまな法律・規制が定められています。越境ECに取り組む際は、進出先のルールを確認したうえで、必要な対策を講じましょう。
現地の言語への対応が必要
顧客に安心して購入してもらうために「ECサイト上の言語翻訳」や「現地言語に対応できるカスタマーサポートセンターの設置」が必要です。特に、購入者からの問い合わせに対応できなければ、キャンセルや返品に対応できずに信頼を失う可能性があります。そのため越境ECにおいて、現地の言語に対応できる体制構築が必須であることを認識しておきましょう。
越境ECの人気商品ランキング
現在、日本ではインバウンドの回復とともに、越境ECの規模拡大が期待されています。しかし、越境ECへの参入を検討する際「自社商品が越境ECで売れるのかどうか」が気になる場合もあります。
BEENOSの発表によると、2023年に越境ECで多く購入された商品カテゴリは、以下の表のとおりです。(参考:BEENOS「BEENOSが「越境ECヒットランキング2023」を発表 ~「世界総オタク化消費」で、日本の越境EC市場が拡大~」)
カテゴリ別ランキング2023
1位おもちゃ・ホビー・グッズ
2位音楽
3位フアッション
4位トレーディングカード
5位フィギア
6位ゲーム
7位自動車・オートバイ
8位コミック / アニメグッズ
9位スポーツ・レジャー
10位アクセサリー / 時計
訪日客が日本の商品・コンテンツに触れて購入する機会が増えており、帰国後の接点として越境ECを活用する流れが拡大しています。越境EC市場への参入検討時には、上記のランキングを参考資料としてお役立てください。
まとめ
越境EC市場では、多くの日本企業が成功を収めています。日本だけでなく、世界の市場規模もさらなる拡大が予測されており、越境ECを始めることで「販路拡大」や「実店舗への集客効果」などの成果が期待できます。
しかし一方で、難易度が高いことも事実です。「現地での知名度を高めておく」など、事前にきちんと準備をしなければ成功できません。きちんと準備をして慎重に進めましょう。
本記事で紹介した日本企業の成功事例を参考に、越境ECに取り組むかどうかを検討してみましょう。
※このコンテンツはWebサイト「ネットショップ担当者フォーラム - 通販・ECの業界最新ニュースと実務に役立つ実践的な解説」で公開されている記事のフィードに含まれているものです。
オリジナル記事:越境ECのメリットや課題点とは? 日本企業の成功事例14選に学ぶ成功のポイント | E-Commerce Magazine Powered by futureshop
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