GA4最前線コラム

GA4のユーザーエクスプローラーでN1分析! ユーザーインサイトを深く知る活用術

特定の1人のユーザーを深く掘り下げ、本質的なニーズや行動を把握する「N1分析」の実践方法を解説。1人のユーザー行動を詳細に分析することで、ユーザー心理が見えてきます。

【この連載について】

この連載では、「1週間でGoogleアナリティクス4の基礎が学べる本」を執筆されているウェブ解析士のみなさん(GA4アベンジャーズ)を中心に、初心者が引っかかりがちな疑問・トラブル解決の基礎知識から、知っておきたい役立ちノウハウ、解析の設定事例、個々の機能解説、最新のホットな話題までをお届けします。

今回は、フリーコンサルタント「デジタルドクター」としても活動する島田敬子さんによる解説です。

【今回のポイント】

  1. N1分析とGA4のユーザーエクスプローラーを組み合わせることで、ユーザー理解を深められる
  2. ユーザーエクスプローラーページでは、初回検知、データ元、イベント数、購入による収益などの情報を一覧できる
  3. 分析対象のユーザーの絞り込み、時系列でのユーザーの行動分析、特定イベントを行ったユーザーの行動分析などが可能になる
島田

「Webサイト全体の数値が改善されたことは分かった。でも、ユーザーが本当に何を考えているのか分からない」。こんな悩みを抱えているWeb担当者は意外と多くいます。「N1分析(ミクロ解析)」を採り入れることで、集計データでは見えないユーザーの動きが具体的に把握可能に。インサイトを導き仮説を立て改善に繋げましょう。

N1分析、そしてGA4のユーザーエクスプローラーとは

「N1分析」とは、特定の「1人」の顧客(ユーザー)を徹底的に深掘りし、その行動や心理から本質的なニーズを抽出する分析手法です。大量のデータから平均的なユーザー像を導き出すのではなく、“たった一人のリアルな行動”に焦点を当てることで、これまでの分析では見過ごされてきたような、生々しいインサイトを得ることができます。

一方「ユーザーエクスプローラー」は、GA4「探索データ」レポートの1つで、Webサイトを訪れた個々のユーザーの行動を時系列で詳細に確認できる機能です。ユーザーの一人1人が、どのページをどのような順番で閲覧し、どんな操作を行ったのかなど具体的な行動を把握できます。

全体の集計レポートでは見えてこない、個々のユーザーの具体的な行動から、これまで気付かなかったサイトの課題や改善のヒントを発見する手がかりになります。そのため、N1分析とGA4のユーザーエクスプローラーは非常に相性が良く、組み合わせることで、データに基づいた具体的なユーザー理解を深めることが可能となります。

ユーザーエクスプローラーの見方

ユーザーエクスプローラーページの主だった指標などの見方を説明します。メイン画面(1)には、ユーザーIDとイベント数などの一覧が表示されています。

左サイドバーには、設定(2)と変数(今回の表には掲載していません)があります。

ユーザーIDとは、複数のデバイスやブラウザを横断して同一ユーザーを識別するための番号です。ユーザーIDをクリックすると別タグに詳細のユーザーアクティビティが表示されます。GA4での行動はイベントとして計測されるので、イベントログが並んでいます。イベントをクリックすると詳細が確認できます。

(3)はユーザーID、初回検知(初回訪問日)、データ元(データの取得先)、ID(ストリーム名)です。またユーザープロパティ(顧客の属性や会員ランクなど)を取得している場合はその情報が表示されます。

(4)は「上位イベント」は発生した上位5つのイベントです。アイコンはそれぞれ「スクリーンビュー」「コンバージョン」「エラー」「その他」でそれぞれのイベント数を表します。

(5)はイベント数・購入による収益・トランザクション・ユーザーエンゲージメント・各コンバージョンの発生回数の期間総数です。ここを見れば全体感を掴めます。

(6)では計測されたイベントと発生時間がわかります。見たいイベントをクリックすると、右側でさらなる詳細を確認できます。

(7)イベントをクリックすると、その詳細が表示されます。

  • デバイスカテゴリ
  • プラットフォーム
  • モバイルモデル名
  • 訪問回数(ga_session_number)※1
  • ページロケーション(page_location)※2
  • ページタイトル(page_title)※3
  • どのページから来たのか(page_referrer)※4

※1~4の情報はデフォルトでは設定されていません。そのため、このデータを表示するには「イベントパラメータ」をカスタムディメンションとして登録する必要があります。

「イベントパラメータ」とは、計測したイベントが発生した際に、取得するイベントに紐付く二次情報のことです。カスタムディメンションは独自のデータ属性を追加設定し計測できるようにする機能です。

計測されたケースだと、「iPhoneからGoogle検索でhttps://dijital-doctor.com/に流入した訪問は7回目」といったことがわかります。

さらに、下記のイベントパラメータをカスタムディメンションに登録すると、ユーザーエクスプローラー詳細で確認できるようになります。

  • ページURL:page_location
  • ページタイトル :page_title
  • 参照元ページ:page_referrer
  • セッション回数:ga_session_number

ユーザーエクスプローラーを使った具体的なN1分析例

ユーザーエクスプローラーではセグメントと組み合わせることで、より効果的な分析が可能になります。具体的な活用例を見ていきましょう。

コンバージョンユーザーの行動分析

分析対象のユーザーを絞り込む

コンバージョンしたユーザーの行動に焦点を当てるため、セグメント機能を使ってユーザーを絞り込みます。

  1. (2)の「セグメント」の「+」をクリックし、「ユーザーセグメント」を選択します。
  2.  条件には「イベント」を選択し、パラメータに対象となる「キーイベント」を選択します。
  3. 作成したセグメントを適用すると、コンバージョンしたユーザーのリストが表示されます。

個々のユーザーの行動を時系列で分析する

たとえば、お問い合わせ完了をコンバージョンにしたウェブサイトのケース。
あるユーザーのユーザーエクスプローラーをわかりやすい形で時系列に並べました。

各イベントの詳細を確認し、以下の点に注目しましょう。

  • 流入経路: どのチャンネルから流入したのか? 広告からサイトにたどり着いたのか?
  • 閲覧ページの順番と滞在時間: どのページタイトルやページURLに興味を持ち、どれくらい滞在したのか?
  • キーイベント(コンバージョン)に至るまでの行動: 購入や問い合わせの直前に、どのページを見ていたのか?

これらの情報を詳細に追うことで具体的なストーリーが見えてきます。

この例では、「Google検索からトップページに流入したユーザーが、サービスページを見た後に導入事例ページをしっかり確認。その後は、料金ページで価格を確認し、FAQで不安を解消して問い合わせに至った」というストーリーが考えられます。

インサイトから仮説を立てる

複数のコンバージョンユーザーの行動を分析し、共通するパターンや特徴的な行動を見つけ出すことでユーザーインサイトを捉えた仮説を立てることができます。

この例では、以下の仮説をもとに、具体的なサイト改善の施策を検討し実行していきます。

  • 導入事例で4分以上滞在→具体的な成果に強く関心を示すユーザーが多いのでは?
  • FAQを最後に確認→導入への不安を解消してからアクションするユーザーが多いなら料金ページとFAQの連携を強化すれば不安解消につながるのではないか?

特定イベントを行ったユーザーの行動分析

ECサイトでカートに追加したが購入しなかったユーザー行動を詳細に分析すると、離脱ポイントが見えることがあります。行動を追うことでその理由を掴み、改善することで成約率を向上させることが可能となります。

異常行動の分析

不自然に短時間で多くのページを閲覧したり、エントリーフォームの入力時間が異常に短かったり、入力を繰り返すなどの異常行動は、不正使用の可能性があります。昨今、広告等では広告収入の不正取得を目的としたアドフラウドも多くなっています。データで違和感を抱いた際にユーザーエクスプローラーで個々の行動を確認することで、不正なトラフィックの兆候を掴み、対策を講じることができた分析例などもあります。

ユーザーエクスプローラーの難点

ユーザーエクスプローラーでは、詳細を見るのに1つずつイベントを確認しないといけないため、非常に手間がかかります。そのせいかユニバーサルアナリティクス(UA)のときには多くの方が使っていたユーザーエクスプローラーがGA4になって重宝されなくなった印象があるのは残念です。

まとめ

今回は「GA4のユーザーエクスプローラーでN1分析!ユーザーインサイトを深く知る活用術」についてご紹介しました。

GA4のユーザーエクスプローラーは、単なるアクセス解析ツールにとどまりません。適切な事前設定を行い、法律や規約を遵守した上でN1分析と組み合わせることで、これまで見えなかったユーザーの“生の声”をデータから読み解き、ユーザーインサイトを深く知ることでユーザー理解がすすみます。それがよりよい改善施策の立案につながります。

最初は少し難しく感じるかもしれませんが、少しずつ慣れていけば、きっと大きな成果があげられるでしょう。この記事が、あなたのWebサイトを成長させる一助になればうれしいです。今回は島田がお届けしました。

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用語集
EC / Googleアナリティクス / UA / URL / アクセス解析 / アドフラウド / エンゲージメント / コンバージョン / サイドバー / セッション / タグ / 訪問
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