【コメ兵のOMO+EC戦略】取り寄せサービスをフックに顧客の定着化、LINE活用の1to1接客、外部モール強化 | 通販新聞ダイジェスト | ネットショップ担当者フォーラム

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コメ兵のEC売上高が好調に推移している。優良顧客のうち3割とLINEでコミュニケーションできる状態にあるなど、コメ兵ならではの成功要因と取り組みを解説する

ブランド品リユース大手のコメ兵は、通販サイト「KOMEHYO ONLINESTORE」で気になった商品を近くの実店舗で確認できる「取り寄せサービス」を軸に、EC関与売上高を伸ばしている。LINEを活用した1to1接客などにも注力しており、CRMやOMO施策を強化することで顧客の定着化とファン化につなげているようだ。同社のOMOおよびEC強化策について見ていく。

「取り寄せサービス」「リユース市場の追い風」が好調の要因に 取り寄せをフックに顧客定着化

同社は1点もののブランドリユース品を取り扱うため、基本的には各店舗にある商品を共通在庫として自社ECや、越境ECを含む外部ECモールでも販売している。

ハイブランドのバッグや財布、ダイヤモンドジュエリー、高級腕時計などの高額なリユース品を数多く展開するため、顧客がカタログ代わりにECで商品を選び、店舗で実物を確かめてから購入できる「取り寄せサービス」との相性が良い

同サービスを利用するユーザーの購入額はEC完結型の純粋な通販購入額を大きく上回ることや、強みである店頭での接客を行えることから、顧客が定着化しやすいというメリットもある。

店頭接客を受けてからの商品取り寄せは顧客が定着しやすい店頭接客を受けてからの商品取り寄せは顧客が定着しやすい

「取り寄せサービス」は、自社EC売上高や外部ECモール売上高を含むEC関与売上高の過半数を占めるなど同社の武器になっている。

個人からの買取好調

ビジネスの源泉となる買取については、昨今の物価高に加えてサステナブルな価値観の広がりからリユース市場には追い風が吹いており、コメ兵は買取専門店の出店を強化中で、個人からの買取が好調だ。

ブランドのリユース品も大半の商品が値上がりしているため、実店舗で商品を確かめたいユーザーや、店頭でプロの接客や提案を受けたいニーズが引き続き強い

売上高は前期実績を大きく上回る見込み

客数が増えていることなどから、コメ兵の今第3四半期(2023年10~12月)のEC関与売上高は前年同期比34.1%増の34億6700万円となり、四半期の売上高としては過去最高を更新。第3四半期累計(2023年4~12月)のEC関与売上高は同25.7%増の91億7100万円で、通期では前期(2023年3月期)実績の約100億円を大きく上回る勢いだ。

足もとでは、実店舗における訪日外国人の売上高比率が上昇していることで、小売売上高に占めるEC関与率は4割弱に弱含んでいるものの、国内のユーザーに限るとEC関与率は40%台後半と高い水準を維持しているようだ。

同社は積極的な店舗出店により、「取り寄せサービス」に対する練度の高い販売員が不足しがちな時期もあったが、「今期は改めて取り寄せサービスに重点を置き、オペレーションの精度向上に努めている」(甲斐真司営業本部WEB事業部長)という。

オンラインでも1対1の接客を意識

コメ兵のEC関与売上高が好調な理由は、外部環境がプラスに向いていることや、「取り寄せサービス」が機能している点に加え、コロナ禍直後にスタートした全社横断型の「OMOプロジェクト」の進化も見逃せない。

当該プロジェクトでは、新しい時代の顧客行動に合わせた営業スタイルへの変革をめざして、LINE接客の強化やコンタクトセンターの設置、中国向けライブコマースの推進を掲げた。

オンライン上でも店頭同等の接客をめざすオンライン上でも店頭同等の接客をめざす
優良会員の3割とやりとり。LINE接客がCVR改善に効果

LINE接客は、実店舗のスタッフが接客専用のスマートフォンを持ち、商品購入後のフォローや顧客の好みに合わせた入荷案内などを店頭顧客と直接、LINE上で1to1のコミュニケーションをとっている。

LINE上での顧客とのやり取りのイメージLINE上での顧客とのやり取りのイメージ

顔なじみの顧客と常に接点を持てるLINE接客は、コロナ禍の店舗休業中などはもちろん、頻繁には来店できないユーザーに対しても情報発信や提案ができるため、既存顧客の離脱を防ぎ、来店やコンバージョン率の改善に寄与している。

1to1接客に使用する社用スマートフォンの台数は昨年10月末時点で325台まで拡大。1年前と比べて40台程度増えた。コメ兵では接客技術の高いスタッフからLINE接客をスタートし、接客事例やノウハウを共有しながら対象スタッフ数を拡充するとともに、LINE接客の精度を高めてきた

現状、優良会員の約3割がLINEでコミュニケーションをとれる状態にあるという。

LINE接客を強化するのに当たっては、ビジネス版の「LINEワークス」に切り替えたことで、各店のアクション状況が確認でき、店舗単位やスタッフ単位で運用設計するのにも役立っているという。

また、同社では、ユーザーがLINEアカウントを利用して会員登録ができる「LINEログイン」も導入。店頭で多項目のフォームに入力してもらう手間を省くほか、CRM強化を進める上で不可欠なデジタル会員化が図れることから、積極的に取り組む考え

チャットは100%有人

コンタクトセンターについては、2020年8月にECの一機能として設置した。高額商品が多いため、非対面のECでも安心して買い物ができるよう、電話やチャットを通じて商品やサイトの操作方法に対する問い合わせなどに対応する。

同社は年配の顧客も多いため、電話で注文できる「電話注文」のサービスを自社ECで展開。サイト上では「スタッフとの会話で安心な電話注文」と目立つように表示している。

チャットについても100%有人で内製化しており、商品に対する問い合わせにただ返答するだけでなく、「取り寄せサービス」があることも伝えているという。

「チャットは短い時間で返答できないとお客さまの満足度が下がる危険がある」(甲斐事業部長)とし、現状では名古屋本店や新宿店などの売り場に問い合わせ担当のスタッフがおり、問い合わせが入ると当該スタッフが対応することで返答までの時間短縮につなげるなど、店舗の力を借りてチャットサービスを展開している。

今後は、チャット対応のリソースの拡充を進めるとともに、買取の問い合わせも受けられるようにしていきたい意向だ。

中国向けライブコマースの訴求は法人向け

中国向けのライブコマースについては当初、中国人のインフルエンサーを実店舗に呼び、ライブ配信しながら店頭の商品を販売していたが、実店舗の顧客を大事にする方針から2022年5月にライブコマース用の拠点を開設。店頭からのライブ配信をはやめた。同時に、ライブコマースで販売する商品も業者向けのリユース品を販売する形に変更した。

現状、BtoB向けが得意な中国人ライバーを中心に起用し、法人向けを軸にしたライブコマースを展開。コメ兵は場所と商品を用意し、各ライバーが中国のプラットフォームを利用してライブ配信する形で、ライブコマースの規模感はそこまで大きくはないが、計画通りで推移しているという。

モール展開を強化

今下期(2023年10月~2024年3月)は、自社ECの使い勝手改善や越境ECを含めた外部モールへの展開を強化している。

リユース市場に追い風が吹くなか、コメ兵の自社ECは新規客の流入が多いものの、コンバージョン率が低いことが課題だ。同社では自社ECのナビゲーションやUI・UXの改善を図る考えで、今期中に高機能な検索エンジンにリプレイスする予定だ。

ECチャネルは掲載商品数が5万点近くと膨大で、ユーザーが望んでいる商品にたどり着けていないと見ており、キーワード検索の強化や入力フォームの最適化を図るなど、誰でも使いやすいサイトをめざす

「当社は高単価の商品が多いので、コンバージョン率を改善できれば売り上げの大幅伸長が見込める」(甲斐事業部長)とし、ユーザーのノイズになる商品が表示されないようにして、欲しい商品にたどり着きやすくする。

加えて、自社ECのマイページの改修にも継続的に取り組む。同社では店頭買取の来店予約をマイページ上でできるようにしており、利用者が増えているほか、来店予約したユーザーの買取契約率は高いという。これまで、当日の来店予約は電話予約だけだったが、当日でもオンラインで申し込めるようにした

販路拡大は越境ECを強化

一方、販路の拡大に向けては越境ECを強化する。同社では欧米や東南アジア向けはチャンスがあると見ている。現在は「eBay(イーベイ)」を中心に展開。越境EC売上高は前年を大きく上回っており、為替相場の影響を受けるものの、「まだまだ伸ばせる」(甲斐事業部長)とする。

以前から高級時計専門のオンラインマーケットプレイス「Chrono(クロノ)24」も活用しているが、これらに加えて、新たにリユース品の越境ECプラットフォームへの出店準備を進めているという。

昨年10月下旬には自社ECに多言語化ツールを導入し、多言語での商品販売と商品情報の提供を始めた。インバウンドユーザーと日本在住の外国人への販売強化を目的に英語と中国語からスタート。将来的には外国語でも通販や「取り寄せサービス」に対応できるようにしたい考え。

また、昨年11月下旬には、スマホひとつで誰でもネットショップを開設できるECプラットフォーム「メルカリShops」に出店。幅広い消費者への認知拡大をめざした施策で、とくにメルカリユーザーは若い世代の構成比が高いため、コメ兵がこれまで取り込めていない顧客層にリーチしていく。

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