「俺のフレンチ」「俺のイタリアン」「俺の焼肉」などの飲食店を経営する「俺の株式会社」。品質の高い料理の提供で利用客を増やす一方、自宅でも「俺の」の味を味わえる商材をネット通販で届ける自社ECサイト「俺のEC」も順調に拡大を遂げている。その大きな要因は、ECシステムの乗り換えや、決済手段の追加といった施策。「俺の」の岩﨑菜乙美氏(常務執行役員 管理本部 外販部 ECグループ長)、GMOメイクショップの田村淳氏(makeshop事業部 事業部長)に「俺のEC」について話を聞いた。
クロワッサン1商品から公式EC立ち上げ
首都圏や大阪などで飲食店を運営する「俺の」の事業スタートは2011年。たった16坪のイタリアンレストランがその始まりだった。事業の特徴は、高級食材を使い、ミシュランで星付きの評価をされた経験があるシェフによる料理を、リーズナブルな価格帯で提供すること。
その後、「俺のフレンチ」「俺の割烹」「俺の焼肉」「俺のやきとり」などのジャンルにも着手し、2023年7月時点で東京・銀座など首都圏を中心に合計で33店舗運営している。
そんな「俺の」が公式オンラインショップ「俺のEC」を立ち上げたのは2020年4月、国内で新型コロナウイルス感染症が広がり始めたタイミングだった。ただ、コロナ禍のため急ピッチでECを始めたのではなく、さまざまな要因が重なりそのタイミングでの立ち上げになったというのが実際のところだ。
「俺のEC」サイト(画像は「俺のEC」サイトからキャプチャ)
実は、「俺の」は創業当初からEC展開を視野に入れていたものの、店舗展開への経営資源の集中などでECへ着手できない状況が続いていた。そんななか、ある商品の開発がきっかけで、EC事業が動き出すことになった。それが、「俺の」が2019年冬に開発した「クロワッサン食パン」だ。
「クロワッサン食パン」は通常の食パンに比べて硬いため、EC注文での運送に耐えることができる。この1種類の商品の販売から「俺のEC」の取り組みは始まった。
「俺のEC」オープンのサイト時に扱っていた商材
「俺のEC」で扱うのは「クロワッサン食パン」1種類という品ぞろえでスタートしたECだが、コロナ禍が深刻化するなか「ECを第二の事業の柱にしていく」という方針が決定。EC事業を強化していくことになった。
2022年12月には冷凍食品のラインアップに着手するなど、商品展開を拡充してきた。現在では、自家需要のショッピングに加えて、誕生日、結婚式、母の日、父の日などのギフト利用としても「俺のEC」が活用されている。
より良い使い勝手をめざして国産ECプラットフォーム「makeshop」に移行
コロナ禍でECに着手した「俺の」が最初に導入していたECプラットフォームは、UI(ユーザーインターフェース)などの使い勝手、サポート体制も納得のいくものではなかったという。そこで、「俺の」は2022年10月、ECプラットフォームをGMOメイクショップの「makeshop」に乗り換えた。
「makeshop」に変えた理由について、「俺の」の岩﨑常務は次のように説明する。
サポート体制で、電話対応をしていない企業は数多い。しかし、GMOメイクショップさんは電話ですぐに対応してくれました。ECに不慣れな企業として、それはすごくありがたいこと。不安感も払拭できたんです。サポート体制は本当に信頼しています。(岩﨑氏)
俺の 常務執行役員 管理本部 外販部 ECグループ長 岩﨑菜乙美氏
「makeshop」を採用した理由は、使いやすさやサポートだけではない。岩﨑氏は続ける。
「makeshop」に乗り換えた当時、飲食店用公式アプリの会員は8万人超。店舗を利用するお客さま向けのアプリでしたが、将来的にはEC連動を想定していました。アプリと連携できるECプラットフォームを探していたところ、見つかったのがGMOメイクショップさんでした。今では、ECと連動したアプリの会員は20万人を超えており、ネットと実店舗の連携が少しずつ始まっています。(岩﨑氏)
「俺の」アプリの機能の一例(画像は「Google Play」サイトからキャプチャ)
ECと公式アプリの連携の1つとしてあげられる例は、アプリによるプッシュ通知。「レストランの利用が目的なのであまり通販を訴求しすぎないようにしたい」(岩﨑氏)という意図で、EC関連の告知は月に2回にとどめている。配信が多すぎるとアプリの不使用につながる可能性があり、それを回避するという意味も含めて配信数を制限しているようだ。
ECプラットフォーム乗り換えのポイントは「導入企業への寄り添い」「拡張性の高さ」
ここで、「俺の」が導入した「makeshop」の特徴や強みはどのような点だろうか。GMOメイクショップの田村淳氏はこう語る。
ECでやりたいことは、事業規模、扱っている商材、事業形態(小売りか卸売りかなど)など、事業者さまによって異なります。加えて、多くのEC事業者さまでは、ECに取り組むと売り上げを伸ばすための施策が掛け算式に増えていく傾向があります。さまざまなニーズに応えるために、より多くの機能を「makeshop」では用意しているという自負があります。つまり、やりたいことがたくさんできるということ。そして、困ったときには、「makeshop」の担当やCSといったメンバーが画面を見ながらサポートします。その意味ではEC事業者さまに寄り添ってサービスを提供できるのが強みと言えます。
GMOメイクショップ makeshop事業部 事業部長 田村淳氏
競合サービスとの優位性については、次のように説明する。
GMOメイクショップは導入実績が多く、流通総額、1店舗あたりの売り上げも伸びています。多くの事業者さまが利用されているため、その分フィードバックも多くいただける。その結果、新しい機能開発につなげることが可能になります。そうした点も「makeshop」の強みの1つです。(田村氏)
「俺の」が導入しているのは、GMOメイクショップが多数展開するプランのうち「makeshopエンタープライズ」。セミカスタマイズできるという拡張性の高さが特徴のプランだ。「俺の」では、公式アプリとの連携といったカスタマイズによる外部連携などの点を重視してこのプランを選んだという。
GMOメイクショップが展開する「makeshopエンタープライズ」のメリット(画像は「makeshop」のサイトからキャプチャ)
クレカ以外を利用している顧客へアプローチ、その手段として「Amazon Pay」を導入
「俺の」がECに着手し、外資のECプラットフォームを利用して「俺のEC」を立ち上げた当初、ECサイトの決済手段はクレジットカードだけだった。
ID決済が徐々に広がり、短時間で簡単に購入を済ませたいというお客さまを獲得したいと考えたときに、クレジットカード以外の決済手段を好むお客さまにアプローチできていないということを課題に感じました。(岩﨑氏)
こうした課題を解決して、より多くの顧客にリーチする目的から「俺の」が「俺のEC」へ新たに導入した決済手段が「Amazon Pay」だ。
安心してお客さまに決済していただくという意味では、圧倒的に知名度が高く、利用者が多い「Amazon Pay」を導入することは不可避でした。初めて「俺のEC」を利用されるお客さまでも安心して決済していただけると思いました。私自身も実際にユーザーとして普段から「Amazon Pay」を利用していたこともあり、便利で安心な決済手段というイメージがあったのも大きいです。(岩﨑氏)
こうした理由から、「俺のEC」のECプラットフォームを「makeshop」に乗り換えたタイミングで、「Amazon Pay」を決済手段に加えることを決めた。
GMOメイクショップは、「Amazon Pay」のグローバルパートナープログラム(公式認定制度)の「Premier Partner」に認定されている。そのため、GMOメイクショップのECプラットフォームを導入しているECサイトは、新たに追加の開発などをすることなく「Amazon Pay」を導入できる。
GMOメイクショップは「Amazon Pay」の公式認定制度「グローバルパートナープログラム」の最上位「プレミアパートナー」に認定されている
そして、「俺のEC」に「Amazon Pay」を導入した結果、すぐに顧客の3割弱が「Amazon Pay」を利用するようになったという。
3割近くの顧客が「Amazon Pay」を選ぶ理由
新たな顧客にアプローチする目的から「Amazon Pay」を導入した。その後、他の決済手段も複数導入した「俺のEC」における決済手段の内訳は、6割がクレジットカードで、3割弱が「Amazon Pay」。
「Amazon Pay」が、導入からすぐに3割近くの顧客に利用されるようになったのはなぜだろうか?
「俺のEC」では、会員登録をしないと商品を購入できない設計を採用しているが、既にAmazonのアカウントを持っている場合、「Amazonでログイン」ボタンからAmazonアカウントでログイン。その後、「俺のEC」で新規登録もしくはログインをすることで、アカウント連携することができる。この仕組みを採用していることから、「Amazon Pay」利用者が一気に増えたと考えられる。
「俺のEC」のログイン画面
もちろん、「Amazon Pay」特有の買い物のしやすさも利用者増の要因。「Amazon Pay」は購入すると決済完了までの手間を省き、手軽に購入することができる決済手段。ユーザーにとってはストレスなくショッピングができ、結果的に購入時の離脱のリスクも低減できる。
さらには「Amazonならではの信頼度がある」と岩﨑氏は指摘する。こうした理由から「Amazon Pay」の利用が一気に広がったようだ。
買い物カゴ内の画面。「Amazonアカウントにご登録の住所・クレジットカード・ギフト券を利用して簡単にご注文」「Amazonプライム会員ならAmazonギフト券利用分の1%を還元」といった利用促進の文言を記載している
さらに「Amazon Pay」が選ばれている理由の1つとして、スマートフォンでショッピングする際の簡便さという視点も忘れてはならないだろう。現在、「俺のEC」ではスマートフォン経由の買い物が8割以上。スマホユーザーが手間をかけずに購入しようとする際に、簡単で手軽な決済手段である「Amazon Pay」が評価されているのではないかと、岩﨑氏は分析している。
知名度と安心感がエンドユーザーにとっての魅力に
岩﨑氏は「俺のEC」の決済手段に「Amazon Pay」を導入したことをきっかけに、この決済手段の魅力を次のように感じている。
「Amazon Pay」の魅力は何と言っても「圧倒的な知名度と安心感」です。Amazonのアカウントさえ持っていればすぐに使える決済手段なので、多くのAmazonのお客さまが気軽に利用されており、その効果を実感しました。「Amazonギフトカード」による決済も可能ですので、お客さまに幅広い決済の選択肢を提供できていると思います。(岩﨑氏)
「Amazonギフトカード」による支払いイメージ
さらに「安心感」という意味では、セキュリティ面でも関係しているようだ。
「『Amazon Pay』での注文であればクレジットカード情報は連携されず非保持化できるので、セキュリティ面において安心して管理することができています」と岩﨑氏は言う。
「俺のEC」をECプラットフォームの側面からサポートしているGMOメイクショップの田村氏も、「Amazon Pay」の魅力を次のように語る。
「Amazon Pay」を導入した企業は多くの場合、クレジットカード以外の新規顧客を獲得できるため、結果的に売り上げが伸びます。一見、「Amazon Pay」はクレジットカードの利用者と決済手段を奪い合うように思いますが、カード情報を入力したくないと考えるエンドユーザーは一定数存在します。そうした場合、「Amazon Pay」があると、信頼性が高いので利用者が増えるのです。(田村氏)
また、岩﨑氏は新たな決済手段として「Amazon Pay」が加わったことで「間口が広がった」と説明する。
まだまだ実店舗での展開が主力事業となっている「俺の」だが、ECサイトに「Amazon Pay」を導入したことで、EC事業の認知拡大やリピーターの獲得につながっていると感じている。
“EC事業を第2の柱に”
「俺の」ではコロナを契機に自社ECサイト「俺のEC」を展開し、GMOメイクショップのECプラットフォームや「Amazon Pay」を導入したことによって、順調に事業を拡大している。今後見据える先として、新商品の展開やECサイトのコンテンツ拡充などを視野に入れている。
「Amazon Pay」を活用しながら、新商品の発信や、コンテンツのバージョンアップを図っていきたいと考えています。また、GMOメイクショップさんをはじめとした皆さんにサポートしていただきながら、EC事業を会社の第2の柱に成長させていきたいです。(岩﨑氏)
ECプラットフォームで「俺のEC」を支えているGMOメイクショップとしても、引き続き「俺の」に伴走しながら事業の拡大を後押ししていく考えだ。
「makeshop」は2023年3月にリニューアルし、現在はシステムのフルリニューアルに向けても進行中です。当社のシステムの良いところは、ジャンルを選ばず幅広い業種で利用が可能で、始めやすいという点です。ECサイトを立ち上げた後も、カスタマーサポートのメンバーが電話応対によってEC事業者さまをバックアップします。今後もEC事業者さまに寄り添って、「makeshop」を使っていただく際のメリットをもっと増やしていきたいと考えています。これからECサイトを始める事業者さまにお勧めのECシステムですので、まずはお問い合わせください。(田村氏)
※このコンテンツはWebサイト「ネットショップ担当者フォーラム - 通販・ECの業界最新ニュースと実務に役立つ実践的な解説」で公開されている記事のフィードに含まれているものです。
オリジナル記事:「俺のフレンチ」「俺のイタリアン」などを展開する「俺の」はなぜECでも成功しているのか。自社ECのシステム変更+決済手段の見直しによる成功事例
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