「ナイジェリアで野球を普及し雇用創出を」。兄は元プロ野球選手、“元楽”“楽天マフィア”のマージェリック嶋社長の挑戦 | 忙しすぎて疲れているあなた。ちょっとしたECの小ネタでブレイクタイム | ネットショップ担当者フォーラム

ネットショップ担当者フォーラム - 2023年12月13日(水) 09:30
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多くのEC事業者を支援してきたマージェリックが、ナイジェリアの「野球普及」、それを通じた「産業創出」「雇用創出」をめざすプロジェクト「MERGERICK NIGERIA」を立ち上げた

楽天グループの成長を支えた楽天OBの通称“元楽”。なかでも、有名企業の出身者が新たなフィールドで活躍する「○○マフィア」にちなんで、「楽天マフィア」とも呼ばれる経営者も少なくない。

多くのEC事業者のビジネスを支援してきたマージェリックの嶋泰宣社長は、ファーストリテイリング、青山商事、楽天グループのECCなどを経てマージェリックを起業した“元楽”“楽天マフィア”の1人。大手ECサイトなど数多くのEC事業者をサポートしていることで知られる。

その嶋社長がマージェリックの事業として新たに立ち上げたのが、ナイジェリアの「野球普及」、それを通じた「産業創出」「雇用創出」をめざすプロジェクト「MERGERICK NIGERIA」だ。

マージェリックの事業として新たに立ち上げたのが、ナイジェリアの「野球普及」、それを通じた「産業創出」「雇用創出」をめざすプロジェクト「MERGERICK NIGERIA」「MERGERICK NIGERIA」のコンセプト
初期費用は1300万円、クラファンでの賛同者募集もスタート

現在、「Japanese quality」「Made in Nigeria」というコンセプトのグローブブランドを立ち上げるため、グローブの生産準備を進めているマージェリック。初期費用は1300万円を超える見通しで、投資金額は合計で2600万円を計画。自己資金、借入金で賄うと同時に、このプロジェクトの認知拡大、賛同者を募るためのクラウドファンディングもスタートしている。

グローブ技術習得のためのスタッフ採用や研修、プロジェクトを推進するための現地駐在員の採用、製品製造のための機器および原材料調達など、すでに「人」「物」「時間」へ大きな資金を投じている。

ナイジェリアの人口は約2億1800万人。メジャースポーツはサッカー、バスケットボールで、野球をする人は数百人程度。祖業であるECビジネスとは大きく異なるビジネスで、かつ野球に親しむ人も少ないという下地が“ゼロ”といった状況下でプロジェクトを進める原動力は何なのか――。

マージェリックの事業として新たに立ち上げたのが、ナイジェリアの「野球普及」、それを通じた「産業創出」「雇用創出」をめざすプロジェクト「MERGERICK NIGERIA」クラウドファンディング「READYFOR」を活用し賛同者を募っている(画像をクリックすると「 READYFOR」のサイトにジャンプします)
「この子供たちをどうにか救いたい」がプロジェクト推進の原動力

嶋社長の兄は広島カープで活躍した嶋重宣・元西武ライオンズ一軍打撃コーチ。自身の長男は甲子園常連校で野球部に所属、次男も2024年に名門校へ進学する予定など、野球とは切っては切れない生活を送る。

嶋社長は、幼少期から野球と触れ合う生活を送る一方、商売の表と裏を見聞きしてその楽しさを体験。「商売を通じ世の中に新たな提供価値を生み出したい」と中学時代に起業を決意している。大学卒業後、ファーストリテイリング、青山商事、楽天グループ、フィールドマネージメントを経て、2013年9月にマージェリックを立ち上げた。

ナイジェリアでの野球を通じた「産業創出」「雇用創出」を考えるきっかけになったのは、支援団体の活動の一環として、アフリカ野球振興プロジェクトに参加したこと。その時に、野球をする数少ないナイジェリア人の子どもに、「なぜ野球を選んだのか」を聞いてみたという。

返ってきた言葉は「野球は、打席が平等にまわってくる、チャンスが平等だから好き!」だった。

マージェリックの事業として新たに立ち上げたのが、ナイジェリアの「野球普及」、それを通じた「産業創出」「雇用創出」をめざすプロジェクト「MERGERICK NIGERIA」ナイジェリアの子どもたちと触れ合う嶋社長(左上から2人目)

世界でも有数の石油産出量と天然ガスの埋蔵量を誇り、近年著しい経済成長を遂げているナイジェリア。一方で、抱えている課題も多い。公益財団法人プラン・インターナショナル・ジャパンによると、所得格差が大きく、社会基盤の整備が不十分、多くの人々が厳しい貧困のなかで生活、2014年にはイスラム過激派組織ボコ・ハラムによる女子生徒拉致事件が発生するなど治安の問題もある。

そんな環境下で育つナイジェリア人の子どもたちと触れ合いを重ねた。そして、こんな疑問が沸いてきた。「無邪気で楽しそうに、目を輝かせて、野球をする子供たちが確かにいる。どうして、この環境でこんなにも無邪気に笑っていられるんだろう」(嶋社長)

子どもたちに疑問を投げかけてみた。返ってきた言葉に衝撃を受けたという。

目の前の現実を見ると、死にたくなる……。だから、楽しいことを見つけて、笑ってないと、現実に打ちのめされてしまう。だから、ずっと、楽しいこと、笑顔でいられることを探してるんだ!

絶句し、涙が出たという。「この子供たちをどうにか救いたい」「この地に、新規産業・雇用創出、野球で生活ができる環境を作り上げたい」。ECビジネス支援事業が軌道に乗るなかで足を運んだナイジェリアの地で、嶋社長はこう決意した。

マージェリックの事業として新たに立ち上げたのが、ナイジェリアの「野球普及」、それを通じた「産業創出」「雇用創出」をめざすプロジェクト「MERGERICK NIGERIA」ナイジェリア視察で嶋社長が撮影した子どもたちの様子
グローブで雇用を創出しようとした背景+増えるプロジェクト賛同者 

経済的理由で野球を断念する子供たちがいる。ナイジェリアに新規産業と雇用創出を……。どうにか、この2つの課題を織り交ぜて、解決出来ないか?

こう考えた嶋社長は、アフリカのブルキナファソで野球振興を手がける人物と出会う。幼少期からブルキナファソで野球に打ち込んだことがあるその人物との会話のなかで、ナイジェリアでグローブを製造するというアイデアが浮かんだ。

「ナイジェリアでの新規産業、雇用の創出にもつながる案。日本にはグローブ製造技術がある」。早速、嶋社長はグローブ製造技術を教えてくれる職人探しを始めた。

断られたのは数十社。理由は「弟子はもうとらない、私の代で廃業」「アフリカ!? ナイジェリア!? なんかよくわかんないし、外国に技術は……」。さまざまだった。このような状況のなか、弟子の受け入れを快諾した職人がイクノ工房の生野秀次氏だった。

イクノ工房は江夏豊氏などプロ野球選手にグローブを提供すること50年以上。イクノ工房が手がけるグローブは「誠グローブ」というブランドで知られる。

日本でグローブ製造技術を習得するために日本人2人とブルキナ・ファソ人1人がイクノ工房で修行。技術を習得したその3人はナイジェリアへ向かい、現地のナイジェリア人にその技術を伝える。

グローブの原材料である牛革は、兵庫県で原皮加工を手がける平野工業から仕入れることが決定、原価抑制の見通しが立った。平野工業は国内で流通しにくくなった規格外の牛革を活用したグローブ提供を行っており、上田秀明社長がマージェリックのプロジェクトに快く賛同。「ぜひ規格外の牛革を提供したい」と快諾したという。

ナイジェリアでのグローブ製造の土台は整った。2023年12月、日本人を含む3人の有志がナイジェリアに駐在、現地でのスタッフ雇用、グローブの製造や販売などをスタートする。

マージェリックの事業として新たに立ち上げたのが、ナイジェリアの「野球普及」、それを通じた「産業創出」「雇用創出」をめざすプロジェクト「MERGERICK NIGERIA」グローブ製造の修行を経てナイジェリアに駐在する3人

「ナイジェリアで野球を普及し雇用を創出する」「ナイジェリアの子どもたちにチャレンジできる環境を提供する」。こんな壮大なビジョンを描く嶋社長の新たなチャレンジが始まった。

◇◇◇

「MERGERICK NIGERIA」のプロジェクトではまず、約2600万円の投資を予定。初期費用として、工業製品(約400万円)、製品原材料(約260万円)、輸送費(約670万円)、登記・外注・人件費など含めて約1321万円を投じる。

マージェリックでは、このプロジェクトの費用を補填、そしてプロジェクト賛同者を募るクラウドファンディングを実施している。なお、設定したゴールの金額に達しない場合も、自己資金、金融機関の借り入れでプロジェクトを継続していくという。

マージェリックの事業として新たに立ち上げたのが、ナイジェリアの「野球普及」、それを通じた「産業創出」「雇用創出」をめざすプロジェクト「MERGERICK NIGERIA」日本とナイジェリアのコラボで製造するグローブ。その費用の一部をクラウドファンディングで募っている(画像をクリックすると「READYFOR」のサイトにジャンプします)

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